ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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4 呪文

 スライムが五匹。けれど、マリンは怯むことなく一歩、前へ出た。

 スライムとはいえモンスターだ。最弱とは言われているが、それでも五歳児よりはよっぽど強い。

 

 それが五匹もいるんだ。普通に命にかかわる。

 俺は思わずマリンを後ろに下げようと手を伸ばす。

 

「イオっ!」

 

 その瞬間、マリンが手をかざして叫んだ。光の玉が手から飛び出し、スライムたちの真ん中で大爆発を起こす。

 スライムたちは吹き飛び、その場には無残な死骸が転がった。

 

 ……ちょっと可哀想だと思った。

 

 いや、それよりなにこれ。イオ? 強くね?

 

 俺の霊丸とそう変わらない威力じゃん。

 こっちは制約つけて、一日四発しか撃てないのに。

 

「……す、すごいなマリン。もしかして、魔法使い?」

 

 なんとか気を取り直し、賛辞を送る。

 でも、劣等感が半端ない。

 

 もしかして俺の念って、大したことないんじゃ……?

 

「うん! 賢者なの。まだ、卵みたいなものだけど」

「へ、へぇ。すごいねぇ」

 

 マリンは満面の笑みで頷いた。嬉しそうだ。

 本当にすごすぎる。俺の二年あまりの修行はなんだったんだよ。

 

 ……いや、待て。人と比べるのはよくない。

 

 俺にだって魔法が使える可能性はある。その上で念で強化すればいいのだ!

 

「メ、メラァ!」

 

 誰もいない木に向かって、思いっきり叫んでみた。

 しかし……何も起こらなかった。

 

「ど、どうしたの?」

 

 突然の行動にマリンが驚いて振り返る。

 

「……いや、俺も使えないかなって」

「呪文?」

 

「そう。メラならできるかなって思って」

「トーヤは、魔法使いになりたいの?」

 

「いや、別にそういうわけじゃないけど……使えたらカッコいいなって思って」

「だったら、今度教えてあげるね。きっとすぐ使えるようになるよ」

 

 ――やめて。そんな無邪気な目で見つめないで。

 せめて、バカにしてくれ。

 

 

 +

 

 

 二時間ほど歩いたところで、休憩をとることにした。

 

 ちょうど昼時。昼食にしよう。

 道中で採っておいた果物を籠から取り出し、マリンに渡す。

 

「ありがとう。トーヤって、本当にすごいね」

「え? 何が?」

「私、迷子になったとき、食べ物もないし、喉が乾いても何もできなかったのに……トーヤはこんな簡単に食べ物採ってきちゃうんだもん」

 

 なんだ、それか。

 

「森で暮らしてたら、嫌でも身につくよ。できなきゃ死ぬだけだしな」

 

 梨のような果実にかじりつきながら、周囲の気配を探る。

 

「……ずっとこの森に住んでるの?」

「そうだな。気づいたら、この森にいた。それからはずっと、食べ物を採って、小屋で過ごすの繰り返しだ」

 

 嘘は言ってない。でも、これ以上は自分の話をしたくない。ボロが出そうだ。

 

「とりあえず、それを食べて少し休んだら出発しよう。それと、魔法はあとどれくらい使える?」

「えっと、イオだったらあと四回くらいかな。メラとかヒャドなら、もうちょっと使えると思う」

「なら、今度からモンスターは俺が倒す。マリンは自分の身を守ることだけに集中してくれ」

「う、うん。わかった。でも……トーヤ、モンスターと戦えるの?」

 

 さっきメラが使えなかったからって、甘く見られてるな。

 なら、今度は俺の戦闘能力を拝ませてやろうじゃないか。

 

 昼食を終えてしばらく休憩したあと、俺たちは再び町を目指して歩き始めた。

 

 

 +

 

 

 それからさらに二時間が経過した。

 

 モンスターの気配はまったくない。

 いや、いいんだけどね? いいんだけどさ……なんか寂しい。せっかく俺の強さを見せつけてやろうと思ってたのに。

 

「もうすぐ森を抜けるな。町まではあと少しだぞ」

「うん!」

 

 マリンは疲れを隠して元気に返事をする。でも、内心はかなりきつそうだ。

 精神的にどれくらい歩くか分からないのも辛いだろう。少しでも希望を持たせないと。

 

 最悪、俺が背負って歩いてもいい。

 ただ、それだとモンスターに即応できなくなるから悩ましいところだ。

 

「お、見ろよ。あそこから平原が見えるぞ」

 

 話している間に、森の出口が見えてきた。百メートルほど先に開けた場所がある。

 

「ほんとっ?」

 

 マリンはパッと表情を明るくして、走り出した。俺も後を追う。

 

「見て見て、トーヤ! あそこに家が見えるよ!」

 

 森を抜け、遠くに町らしき建物を見つけたマリンは、歓喜の声を上げた。

 ――しかし、マリンの喜びとは裏腹に、俺は酷く焦っていた。

 

 ほんの一歩遅れて森を抜けた俺は、奴と目が合ってしまったのだ。

 

 こいつの名前はなんと言っただろうか。

 そう、確かグリズリー。

 

 どう見ても、クマです。

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