ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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40 氷炎将軍

 「は、はなせっ! この野郎!!!」

 「うるせえっ!」

 

 バルジの塔で、兵士の一人が別の兵士とつかみ合いの喧嘩を始めた。

 あわてて他の兵士が止めに入るが、まるで収まる気配がない。

 

「どうした!? 何ごとだっ」

 

 騒ぎを聞きつけたアポロとマリンが階下から駆け上がってくる。

 

「こ、こいつらが……さっきまで普通に話してたと思ったら、急に……」

 

 仲裁に入っていた兵士は、収まらない二人を前にどうしたものかと困惑している。

 

「やめないかっ、見苦しい!」

 

 業を煮やしたアポロが厳しい声で止めに入るが、それでも二人の怒りはおさまらない。

 

「こいつが悪いんだ! 辛気臭ぇことばっか言いやがってっ!」

「本当のことだろうがっ! どうせ俺たちは魔王軍に殺されるんだ! こんなこと、ムダなんだよっ!!」

「うるせえっ。だったら貴様だけ、さっさとこの島から出て行けっ!」

 

 まるで止まる気配のない二人に、周囲の兵士たちは手を出すこともできず、ただ見守るしかなかった。

 

「おやめなさい」

 

 凛とした声が場の空気を変えた。

 

「うるせぇ、黙って……っ姫!?」

 

 いつの間にか現れたレオナが、毅然とした態度で二人の間に割って入る。

 頭に血が上っていた二人の兵士も、レオナの姿を見るとたちまち大人しくなった。

 

「……あたしたちが身を隠し、反撃の準備をしているのは、魔王軍の悪事を挫くためなのよ。それなのに、自己本位に他人を傷つけたりしてどうするの!?」

「――ですが、こいつが……そんな俺たちのやってることがムダだなんて言うからっ!」

「だからって、“島から出て行け”なんて言いすぎよ。気に食わないからって追い出してたら、それこそ魔王軍と同じじゃない!」

 

 なおも食ってかかる兵士に対し、レオナは言葉を重ねる。

 

「あたしたちは“人間らしく”、優しさと正義の心を持って生き続けるのよ。最後までね。それができないなら、死んだほうがマシだわ」

「め、面目ない。気が立っていたとはいえ、決して言ってはいけないことを……。申し訳ありません」

「わ、私こそ……みんな恐いのを我慢して戦っているのに、八つ当たりなんてして……お許しください」

 

 叱責を受けた兵士たちは深く反省し、頭を下げる。

 レオナがそれを受け止め、優しく励まそうとしたその時――。

 

 嘲るような、残虐な笑い声が場を引き裂いた。

 

「クッハッハッハッハッ! ならオレが“人間らしい最後”ってやつをくれてやるぜ! 脆弱で薄汚え、人間らしい“惨めな最後”をなァッ!!」

「き、貴様っ……何者だっ!」

 

 突如響いた声の主に、アポロが鋭く問いかける。

 すでにマリンはレオナを後方へと下がらせ、守りの態勢をとっていた。

 

「氷炎将軍フレイザード様のご到着だッ! 今日限り、パプニカ王国はお家断絶・お取り潰し! さあ、死んでもらうぜ、お姫さんよ! ――カァッ!!」

 

 次の瞬間、フレイザードは近くにいた兵士たちに、火炎と冷気を浴びせて蹂躙を開始した。

 その勢いは凄まじく、状況に呑まれて動けなかった兵士たちは次々と焼き尽くされ、あるいは氷漬けにされていった。

 

 仲間が倒れる光景を目にした兵士たちは、奮い立ち、フレイザードへと果敢に挑みかかっていく。

 だが、フレイザードはさらに火炎と冷気を浴びせ、突進しながら兵士たちを次々と弾き飛ばしていった。

 

「そ、そんな……。兵士たちが、あの程度の攻撃で……! それほど強力なのか、奴の攻撃は!?」

 

 倒れたまま動かない兵士たちを見て、別の兵士が震え声で呟いた。

 

「いや、温度差だ。やつの火炎と吹雪、その極端な温度差で鎧が脆くなり、攻撃をまともに受けてしまったのだ……!」

 

 レオナを庇いながらも、冷静に戦況を見つめていたアポロ。

 このままでは兵士たちを無駄死にさせるだけだ――そう悟った彼は、レオナを別の兵士に託し、マリンと共にフレイザードの前に立ちはだかった。

 

「ほう……ちったぁ冴えてる奴がいるじゃねえか」

「私は、パプニカ三賢者の一人、アポロ!」

「同じく、マリン!」

 

「命に代えても、姫様をお守りする!」

「ああ、そうかいそうかい。立派なことで」

 

 フレイザードは、目の前に立つ二人をまるで歯牙にもかけず、嘲るように笑った。

 

「マリン。奴の“炎”の身体をヒャドで攻撃してくれ。私は“冷気”の方を狙う」

「わかったわ」

 

 二人は小声で手短に打ち合わせを交わすと、すぐに動き出した。

 

「メラゾーマッ!」

「ヒャダインッ!」

 

 同時に放たれた呪文がフレイザードへと迫る。だが、その光景にフレイザードはなおも嘲笑を浮かべた。

 ――こんな稚拙な作戦、オーザムを攻めたときに何度も見た。

 

「こいつぁいいや。歓迎でごちそうしてくれるってか!」

 

 余裕を見せたフレイザードは、両の手でそれぞれの呪文を受け止め、そのままエネルギーを吸収してしまった。

 その光景を見て、レオナが叫ぶ。

 

「ダメよ! 奴は呪文のエネルギーを吸収してる! 攻撃するならギラかイオを使わないとっ!」

 

 忠告の声は確かに届いているはずだった。

 だが、アポロはレオナの言葉に目もくれず、マリンに視線を送る。

 

「マリン。メラで攻めるぞ」

 

 アポロは、先ほどと違いフレイザードの様子を気にするそぶりも見せずに合図を送った。

 マリンは頷くと、すぐに呪文の詠唱に入った。

 

「――メラゾーマッ!!」

「――メラゾーマッ!!」

 

 二人の声が重なり、再び巨大な火球がフレイザードへと放たれる。

 

「なっ……!?」

 

 驚いたのは、レオナだった。

 忠告を無視し、しかも相手に力を与えてしまうような行動に、彼女は思わず目を見張った。

 

「ふっ、そらよ!!」

 

 炎の腕で二人分のメラゾーマを受け止めたフレイザードは、それを呪文ごと吸収し、無力化してみせた。

 火炎放射のように激しい二人の炎を飲み込みながら、フレイザードは冷静に二人を見据える。

 

「カッハッハハハ。バカな奴らだ。ムダだってことが分かんねェか」

「笑っていられるのも今のうちだ! すぐに後悔することになるぞっ!」

 

 二人は魔力をさらに込め、次々とメラゾーマを放つ。だが、フレイザードは余裕の笑みを浮かべたまま動じない。

 その様子に、レオナや周囲の兵士たちも徐々に不安を募らせていく。

 

 フレイザードは、一見するとただの残虐な狂戦士に見える。しかし実際には、冷酷な攻撃性の裏に氷のような冷静さを秘めた、優れた戦士だった。

 勝利と栄光に対する執念は魔王軍の中でも際立っており、他の幹部たちからも一目置かれる存在だった。

 

 そんなフレイザードにとって、敵の攻撃や自らの弱点は、常に最優先で警戒すべきものだった。

 

 炎の身体は冷気に弱く、氷の身体は炎に弱い。

 当たり前の弱点だからこそ、あらゆる敵がそこを突こうとしてくる。

 

 オーザムでの戦いでも、多くの者がそれを実行し、そして無意味だと悟ると、レオナの言ったように別系統の呪文を使ってきた。

 だが、付け焼刃のギラやイオで倒せるほど、フレイザードは甘くはない。そうした魔法使いや賢者たちを、彼は何人も屠ってきた。

 

 その中には、変わった戦術をとる者も当然いた。すなわち――。

 

「バカがッ。魔力の吸収により自滅を狙ってるんだろうが……見え透いてんだよ! せいぜい足掻いてみやがれッ! ケケケケ!」

 

 呪文を吸収するといっても、限界はある。どんなものであれ、必ず許容量というものは存在するのだ。

 

 実際、これまでの戦いの中で、自滅を狙って呪文を撃ち続けた者もいた。

 だが、人間の魔力量で、フレイザードの魔力許容量を超えるなど無謀だった。

 

 禁呪法によって生み出されてまだ一年も経っていない彼だったが、その戦いの経験はすでに一流と呼べる域に達している。

 その経験に裏打ちされた自信が、彼らの行為がムダだと確信させていた。

 

 あとは、奴らの魔力が尽きるのを待つばかり。

 魔力が尽きたとき、この場の人間たちには、もはやなす術などないだろう。

 

 ――彼らが呪文を放ち始めてから、数分が経過した頃、フレイザードは異変に気づいた。

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