ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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43 出陣

「どうだ? 俺のいる位置がわかるか?」

 

 『練』をしながら、ダイの周囲をゆっくりと歩く。

 

 空裂斬は“見えないもの”を斬る剣。その習得には、相手の“闘気”を感じ取る力が不可欠だ。

 ならば、練習相手には闘気を操れないマァムよりも、俺の方が適任だろう。

 

 巨大なオーラをまとえば、戦士でなくともその気配に気づける。今はあえて、常人では気づくかどうかのギリギリの強さでオーラをまとっている。

 これに慣れていけば、徐々にオーラの量を減らしながら精度を上げることで、格段に上達するはずだ。

 

 実際、今のダイはこの状態の俺を、目隠ししたままでも正確に追ってきている。

 

「――うん、感じるよ。トーヤの闘気。大きくて、静かで、力強い気だ」

「よし。じゃあ今度は、この耳栓を使え。音で場所を探るなよ? 一分経ったら、俺にタッチしてみろ」

 

 ……

 

「ここだっ!」

「――きゃっ!? ダ、ダイ……私よっ!」

 

 勢いよく突っ込んできたダイが、思いっきりマァムの胸をつかんでしまう。

 目隠しを外したダイは、顔を真っ赤にして盛大に謝っている。

 

 もちろん、ダイがわざとそんなことをするはずもない。マァムもまったく怒ってはいない。

 ……羨ましい。

 

 そんなこんなで、俺たちは空裂斬の習得を目指して特訓を続けていった。

 

 

 +

 

 

「ホイミの効果が、ほとんどなかったって?」

 

 マトリフから話を聞いた俺は、ダイたちやアポロたちを交えて作戦会議を開いていた。

 

「ええ、それどころか、力も五分の一程度に落ちてしまうと、フレイザードが言っていたわ」

 

 マァムは悔しそうに拳を握りしめながら言った。

 

「よくそんな状態で逃げ出せたな。フレイザードも必死で追ってきただろうに」

「これを奴にぶつけたのよ」

 

 俺の問いに、マァムは腰のホルスターから魔弾銃を取り出して見せた。

 

「これは“魔弾銃”っていって、あらかじめこの弾に呪文を込めておくことで、それを撃ち出せるの。銃自体は結界内じゃ使えなかったけど、呪文の込められた弾をフレイザードの呪文にぶつけて誘爆させたのよ。その隙に逃げることができたわ」

「……なるほどね」

 

 あたかも今初めて知ったかのように頷いてみせる。いきなり事情通になっても怪しまれるだけだ。

 これで、俺も“作戦を思いついた”体で動くことができる。

 

「みんなの話を聞いて、気づいたことがある。――どうやら結界の中では呪文が“使えない”んじゃなくて、“弱くなるだけ”みたいだな」

「どういうこと?」

 

 ダイが首をかしげて俺を見る。

 

「もし呪文が完全に使えないんだったら、効果が弱いなりにもホイミが発動するはずがない。魔弾銃だって、引き金を引いても呪文は発動しなかったのに、相手の呪文で誘爆したなんて、おかしいじゃないか。つまり、あの結界内では呪文が使えないわけじゃない。弱くなっているだけなんだ」

「それって同じことなんじゃねぇのか? 結局呪文は使えないってことだろ?」

 

 特訓から戻ってきたポップが、マァムにベホイミをかけてもらいながら口を挟んできた。

 

「いや、使えるのなら話は変わってくる。発動さえするなら、あとは魔法力を底上げすれば、なんとか形にはなるはずだ」

「でもよぉ、そんな半端な呪文じゃフレイザードには太刀打ちできねぇだろ?」

「ああ、その通りだ。だが、俺の狙いは別にある。――レオナ姫の生命力は“明日の日没まで”とか言ってたよな?」

 

 ダイは、俺の問いかけに無言で頷いた。

 

「ヤツの言ってることが本当かどうかは分からない。だから、もしもの時に備えて、俺は回復呪文を使える誰かと一緒に先に塔へ乗り込もうと思う。レオナ姫に少しでも回復呪文をかけておきたい」

「ま、待って。それは無謀すぎるわ! 塔にはフレイザードがいるのよっ!」

 

 危険極まりない俺の提案に、マァムが慌てて止めに入る。

 

「かもな。でも、俺はあくまでお前たちが結界を破るまでの“時間稼ぎ”のつもりだ。それなりに腕には自信がある。敵を引きつけるだけなら、まず大丈夫だろう」

「だけど――」

「心配いらないって。俺一人で乗り込もうってわけじゃない。もう一人仲間を連れていくって言ってるだろ? 勝算のないことは絶対にしないさ」

 

 ――何より、俺自身死にたくはないからな。当然、ちゃんと考えがあっての行動だ。

 

 それよりも気がかりなのは、俺がこの世界にいることで、物語にどんな変化が起きるか分からないこと。

 今のところ大きな違いはなさそうだが、油断はできない。

 

 原作では、フレイザードを倒したあと、レオナは氷を自力で溶かすことができなかった。

 もともとギリギリの状態だったんだから、少しでもタイミングがズレれば“助けられない”なんてこともあり得る。

 

 俺は、ダイたちをなんとか納得させると、頭の中でこれからの行動をシミュレーションし、準備を整えていった――。

 

 

 +

 

 

 ダイたち四人とゴメちゃんは、マトリフの力でバルジ島へと飛んだ。

 あとはタイミングを見計らって、俺と回復呪文を使えるマリンが「同行」して向かうだけだ。――向かうだけなのだが。

 

「私も行く。回復呪文だったら私だって使えるぞ」

「私もよ。それに、フレイザードの足止めなら、戦力は少しでも多いほうがいいと思うわ」

 

 回復呪文を使える誰か一人、と言ったにもかかわらず、選ばれなかった残りの二人が食い下がってきた。

 ちなみにマリンは、俺と一緒に行くと言って梃子でも動かない様子だったため、二人も渋々引き下がるしかなかったらしい。

 

「ダメだ。フレイザードの足止めは、近接戦闘が得意な俺一人でやるつもりだ。人数は少ない方が都合がいい」

「……あなた一人で足止めできるの?」

「さっきも言ったけど、マリンも一緒に行くんだ。仲間まで巻き込んで、無謀なことはしないよ」

 

 自信満々に答える俺をどう思ったのか、アポロたちはようやく少し落ち着いた様子を見せた。

 

「っていうか、お前たちには気球船の修理を頼みたいんだけど」

「なぜだ?」

「きっと激しい戦いになるだろうし、ポップも俺も、みんなを連れて戻る余裕なんてないと思うからさ」

「……そういうことなら任された。君たちを見送ったら、すぐに修理に取りかかろう」

 

 見送りなんていいから、さっさと取りかかれば?

 とは思ったけど、口には出さない。早く着きすぎても困るからね。

 

 というか、船でバルジ島へ飛んだダイたちだって、ポップ一人だけ行かせてルーラで戻ってもらえば、全員で一緒に行けたわけだし。

 ……まあ、あくまでこれはダイのレベルアップイベント。

 

 俺はまだ、サポートに徹する段階なんだ。

 出しゃばりすぎないように自制しながら、俺はマリンと共にバルジ島へと飛ぶのだった。

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