ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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 カーテン越しに差し込む日差しと、小鳥のさえずりで目が覚めた。

 こんな穏やかな朝には、もう一度眠りにつきたくなる。

 

 けれど、それはできなかった。

 なぜなら、マリンが隣で寝ていたからだ。

 

「はあ〜……」

 

 重いため息をついて、俺は廊下を歩いていた。

 すると、向こうからアポロが歩いてくるのが見えた。

 

 「どうしたんだ? ずいぶんと疲れているように見えるが」

 「いや、なんでもないよ。ただ……俺は、間違ってしまったのかもしれない」

 

 アポロは眉をひそめて、俺の前で立ち止まった。

 ……いや、別に後悔してるわけじゃない。

 

 マリンは美人だし、優しいし……おっぱいも大きいからね。むしろバッチコイって感じだよ。

 

 だけどね、酒の勢いとか、そういうのは違うんですよ。

 

 俺は、もっとちゃんと恋愛したかった。段階を踏んで、気持ちを通わせて、それで……って。

 だから、それが間違いだという話なのです。

 

 最初は、本当に何もなかったと思ってた。ただ一緒に寝ただけだって。

 でも、マリンが朝になって顔を赤くして「き、昨日のこと、覚えてる?」なんて言うもんだから。

 

 ……いや、そりゃもう確定だろうね。

 しかも上下着替えてたし。下着も含めて。そこを突っ込まれたらもう言い逃れのしようがない。

 

 ただ、気になるのがマリンの言葉――。

 

 「あんなこと、あなたが言うの初めてだったから驚いちゃった。でも、すごく嬉しかったの」

 

 ……俺は一体、昨夜どんなセリフで彼女を口説いたんだ?

 そこがまったく思い出せない。それが何よりもムカつく。

 

 つまり今の心境をひと言でまとめるなら――。

 

 「勃つ鳥、後を濁す……って感じかな」

 「なにを言ってるんだ、キミは」

 

 アポロは完全に意味が分からないという顔で、俺を見つめていた。

 

 

 +

 

 

 マトリフの住んでいるあたりにある海岸。俺はダイやポップと一緒に特訓に来ていた。

 

「せりゃッ!」

「――うわっ。げほっ、げほっ!」

 

 数十回の打ち合いの末、俺の横一文字の一撃がダイを吹き飛ばした。

 

「痛てて……」

 

 砂浜に頭から突っ込んだダイは、頭をさすりながら立ち上がる。

 

「情けねぇなあ、ダイ。あっさり負けちまうんだから」

 

 歩み寄ったポップが、からかうように笑いながら言う。

 

「ポップだって、さっきマトリフさんに負けてたじゃないか」

「俺はまだ師匠に弟子入りして日が浅いから良いんでーす。お前はもう結構前からトーヤに教わってるだろーが」

「なんだよそれ〜」

 

 ……楽しそうだな、こいつら。

 

「それにしてもトーヤも人が悪いぜ。“もうダイに教えることはない”なんて言って特訓渋ってたくせにぃ」

「お前は本当にヒヨッコだな。もう少し洞察力を身につけろ」

 

 話を聞いていたマトリフが、珍しく俺たちの会話に口をはさんできた。

 

「なあ、ダイ。お前さん、トーヤと戦ってどうだった?」

「え? あ、えーっと……」

 

 マトリフの問いかけに、ダイは言いにくそうに頬をかいた。

 

「俺のことは気にせず、ズバッと言ってくれ」

「あ、うん。えっと、それじゃあ……。もちろん強かったけど、どっちかっていうと……戦いづらい、って感じかな?」

「まあ、そんなところだろう。わかったか?」

「ぜーんぜん。……ッイテ!」

 

 マトリフにゲンコツを食らって涙目になっているポップ。

 可哀想なので、俺からフォローがてら話すことにした。

 

「俺の戦い方は我流だからね。素振りくらいは兵士に習ったけど、剣術に関してはからっきしだよ。剣の腕だけでいえば、ダイの方がずっと上さ」

「ふーん。でもそれなら、なんでダイが負けるんだ?」

「トーヤの基礎能力がダイよりはるかに高いからだ。どんな達人だって、大人と子供ほどの差があったら勝てやしない。……まあ、要するに“基礎を疎かにするな”ってこった」

 

 マトリフに褒められた。ちょっと、いや、かなり嬉しい。

 

「じゃあ、ダイが言ってた“戦いづらい”ってのは?」

「トーヤみたいに、動きが素人同然だと、逆に正統派の剣術を学んだダイからするとやりにくいもんさ。それが、自分より速く動ける相手なら、なおさらな」

 

 俺の言いたかったことを、全部マトリフに言われてしまった。

 

「ダイがトーヤに勝とうと思ったら、基礎訓練をしっかり積むか、今以上の剣術でその差を埋めるしかねぇな。あと呪文って手もあるが、そんなもんは覚える必要ねえ」

「ええ!? なんで? 俺、もっと強い呪文も覚えたいよぉ!」

「勇者に強い呪文はいらねえ。そういうのは魔法使いに任せとけ。お前は、お前にしかできないことをしろ」

 

「俺にしかできないこと……?」

「決まってんだろ。“勇者”にしかできないこと。それは――『勇気』を出すことさ。どんな敵にも立ち向かう勇気があれば、それでいい。あとのことは仲間に任せりゃいいのさ」

「……勇気。――“自分にだけは負けられない”、か」

 

 それは、かつて俺がダイにかけた言葉だった。

 ダイはそれを噛みしめるように、ゆっくりと呟いた。

 

「お、いいこと言うじゃねぇか。そうだな、自分に負けるやつは、誰とやっても負けるもんさ。……まあ、せいぜい頑張んな」

 

 そう言い残すと、マトリフは洞窟の方へと去っていった。

 

 ……どうでもいいけど、なんか俺ってダサくない?

 せっかくダイの師匠ポジだったのに、マトリフにその座を奪われた気がする。

 

 アバンの次に慕われてるって、ちょっと自負してたのに……。このままじゃ、ダイを取られてしまう!

 

「よーし! これから必殺技を披露しまーす!」

 

 俺は海に向かって、全力で霊丸をぶっ放した。

 ダイとポップの視線を一気に奪い、心をわしづかみにするのであった。

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