ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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54 実力

「下がってろ」

「ッ!?」

 

 俺はダイの襟を掴むと、強引に後方へと投げ飛ばした。

 入れ替わるようにして木刀を構え、バランのギガブレイクを受け止める。

 

「――ッ痛ェえな!」

 

 雷鳴が轟き、衝撃が一帯を襲った。

 俺とバランを除く全員が、その余波で吹き飛ばされていく。

 

「――そこをどけ、人間。邪魔をするなら容赦はせんぞ」

「うるせぇ……竜の騎士だかなんだか知らねぇが、調子に乗るなよ――オラァアアッ!!」

 

 鍔迫り合いのまま、バランを力ずくで押し返し、木刀の鋒を相手の眉間に突きつける。

 

「ちょっと強いぐらいで偉そうにしやがって……おいッ、お前らは下がってろ! こいつは俺が相手する」

「で、でも――」

「トーヤの言う通りだ。バランの相手は、今のお前たちには荷が重い」

「――クロコダイン!?」

 

 突如現れたクロコダインが、皆を守るように斧を構えて俺の隣に立つ。

 

「気をつけろ、トーヤ。ヤツの実力は、魔王軍随一と言っても過言ではない」

「……強さは大体見て分かる。クロコダインは皆の盾になってやってくれ」

 

 そう言ってクロコダインを下がらせ、俺は再び前に出て戦闘態勢を取る。

 

「バカめが。調子に乗っているのは貴様の方だ。ギガブレイクを受け止めたことで勘違いしたようだが――先ほどは息子が相手だったゆえ、手加減していただけのこと。本来ならば貴様など、とうに消し炭だ」

 

 バランの額に紋章が浮かび上がり、静かな怒りと殺意が烈風となって吹き荒れる。

 

「そーかよ。安心したぜ、さっきのが全力じゃないってんならな。お前の大嫌いな“人間”が相手になるぜ。遠慮すんなんかいらねえよ」

 

 言い終わると同時に、バランが霞のようなスピードで突進してきた。

 俺は抜かりなく『円』でその動きを感知し、慌てることなく剣戟を木刀で受け止める。

 

 バランがわずかに驚いた表情を見せたその刹那、俺は木刀の柄から右手を離し、バランの顔面めがけて拳を叩き込む。

 

 だがバランは避けようともしない。

 当然だ。竜闘気に包まれた今のバランは鋼鉄のように硬い。

 

 加えて、俺の拳は体重も乗っていないただのジャブ。

 当て身ほどの威力もないと、そう高を括っているんだろうな。

 

「っぐは!!」

 

 拳がめり込み、バランが仰け反る。

 その勢いのまま、前蹴りで追撃を叩き込んだ。

 

 たたらを踏んで後退するバランは、困惑の表情で口元を拭う。

 

「余裕ぶっこいて、そのザマか。情けないねェ……息子が見てんだぜ? もっと気合入れろよ」

「……何者だ、お前は」

 

 問いには答えず、俺はさっきの借りを返すように地を駆ける。

 さあ、ここからが正念場だ。

 

 

 +

 

 

 戦いは膠着状態にあり、すぐに決着がつきそうになかった。

 その空間は、他者の介入を一切許さない。

 

 地を砕き、雷鳴が轟き、暴風が吹き荒れる。

 ただ見ることさえ困難を極めるほどに、激しい攻防が繰り広げられていた。

 

 突如、甲高い金属音が響き渡る。

 バランの剣戟を、トーヤの木刀が弾き返した音だった。

 

 バランの剣は徐々にその速度を上げていく。その一撃一撃は、すでにトーヤの動体視力を凌駕していた。

 重い踏み込みと共に振り下ろされる凶刃――しかし、それすらも木刀の一閃が阻む。

 

「くッ……」

 

 必中と思われた攻撃を退けられ、バランの眉間に皺が寄る。

 その一瞬の逡巡を見逃さず、トーヤの蹴りが飛ぶ。だが、それを危なげなく躱し、バランは大きく距離を取った。

 

 バランの視線には、警戒の色が宿っていた。

 トーヤの動きは素人同然だ。多少は場数を踏んでいるようだが、その動きには隙が多く、とても洗練されているとは言い難い。

 

 対して、バランの動きは超一流。流れるような剣さばきと身のこなしは美しくすらあった。

 にもかかわらず、この戦いはすでに十数分が経過していた。普通であれば戦いにすらならないはずが、互角のまま続いている。

 

 その理由は、トーヤの使う『念』にある。

 

 先ほどバランを殴り飛ばした一撃には、『凝』が用いられていた。

 だが、それだけではない。この世界の者は、トーヤの『オーラ』を視認できる。ゆえに、ただ『凝』を使っただけではバランほどの戦士には通じない。

 

 しかし、トーヤは『流』と『隠』を巧みに使い分け、その存在を悟らせなかった。

 結果、バランはオーラを込められた攻撃を無防備のまま受けることになったのだ。

 

 この世界には存在しない技術。

 四大行とその応用技の特性を活かした戦い方は、トーヤにとって最大の強みであると同時に、唯一の手段でもあった。

 

「……そろそろ、本気で行かせてもらおうか」

 

 技の正体を見抜けずにいたはずのバランだったが、ここにきて余裕を取り戻していた。

 だが、余裕を持っていたのは彼だけではない。今まで互角の戦いを続けてきたトーヤもまた、自らの強さに確かな自信を抱きつつあった。

 

「なら、俺も――」

「嘯くな。貴様は確かに、人間としてはよくできている。しかし、それもここまでだ。お前の手の内は、よくわかった」

「……へぇ」

 

 一瞬、トーヤは自身の能力を見破られたかと疑った。

 だが、すぐにその考えを打ち消す。

 

 バランの両眼には、闘気が集まっていなかったからだ。

 仮に闘気でオーラの代替が可能であるとしても、『凝』のように力を集中するには両眼に闘気が集まるはずだ。

 

 それがないということは――見破られてはいない。

 

 その判断は正しかった。

 実際、バランはトーヤの能力の正体を掴んではいない。ただ、「手の内がわかった」と言ったにすぎない。

 

「打撃の際、何らかの手段で威力を増しているのだろう? ならば、それ以上の防御力で受ければよいだけのこと」

 

 ――正体不明の技に対するその答えは、あまりにもシンプルだった。

 だからこそ、トーヤの怒りを買った。

 

 いかに伝説の竜の騎士といえど、それは傲慢にもほどがある。

 ほぼ拮抗した力を持つ相手の――ましてや『凝』を用いた一撃を、防ぎきれるなどとは。

 

「なら、やってみろよッ!!」

 

 怒声とともにトーヤの身体が疾風と化す。一瞬にして間合いを詰める。

 もはや『隠』を用いるつもりもない。木刀に堂々と『凝』を込め、そのまま振りかぶった。

 

 最大の威力と最高の速度を乗せた一撃が、バランの首を――粉砕する。

 ……かに思えた。

 

 「なん……だと……」

 

 木刀が止まっていた。

 驚愕に染まるトーヤの表情。その声には、信じられないという思いが滲んでいた。

 

 最大にして渾身の一撃は、バランに届くことすらなく――竜闘気により完全に遮られていた。

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