ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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60 闘気

 ロモス城の一室。俺はそこでダイたちに“絶”を実演して見せた。

 もっとも、俺の場合は指輪の効果で強制的に“堅”になっている状態なので、正確には“隠”なんだけどな。

 

 「す、すごいわ。目の前にいるのに、まるで気配を感じないっ!」

 「すっげぇ! ねぇねぇ、それどうやるのっ!?」

 

 目を輝かせて教えを乞うダイ。

 

「まあ待て、教えるのは全部見せ終わってからだ」

 

 興奮するダイをなだめながら、続けて“纒”と“練”を実演する。

 ……だが、気のせいか、“絶”のときより反応が薄い。

 

 理由を尋ねると、「達人であれば“纒”や“練”程度なら自然にできているから」だとマァムが教えてくれた。

 期待していただけに、ちょっとがっかりだ。

 

「でも、こんなに綺麗で穏やかな闘気を操る人なんて他にいないわよ」

 

 そんな俺に気を使って、優しくフォローを入れてくれるマァム。

 ……どうやら、俺って顔に出やすいタイプらしい。

 

「さて、残りの基本は“発”だけど……これは省略でいいよな? アバンストラッシュとかと原理は同じだし」

 

 さすがに水見式を見せるわけにはいかないので、うまくごまかしておく。

 

 「じゃあ次、応用技ってやつも見せてっ!」

 「はいはい」

 

 そのまま“周”“凝”“堅”“円”“流”を順に見せていく。

 ただし、“硬”は俺の能力上、使えないのでスルーだ。

 

「すげぇな、あんた。こんなの、どこで覚えたんだ?」

 

 すべてを見終えたポップが、感心した様子で尋ねてきた。

 

「昔、住んでた場所にそういう技術が詳しく書かれた本があってな。俺はそれを真似しただけさ」

「へぇ、本ねぇ。でも、真似するだけで身につくもんでもないんだろ?」

「ああ、もちろん。ここまでになるのに、そりゃあもう苦労したよ。何しろ、20年近く特訓してるからな」

「ふふっ、あなたって、見かけによらず努力家なのね」

 

 そりゃあ命がかかってますからね……。

 俺は口をつぐんで、微笑むマァムを静かに見つめる。

 

「でも、なんだか不思議だね。“練”とか“周”とか、“発”ってやつも、俺たち知らないうちに使ってたなんて」

 

 感慨深げに語るダイをよそに、俺は水面下で、ある作戦を実行に移す。

 ――わざわざ口頭ではなく実演までして見せたのは、このためだったのだ。

 

「よし! じゃあ今度は、ダイもやってみようぜ。外で特訓だっ。新しい剣にも慣れないとな」

「うん、わかったっ! よーし、頑張るぞっ!」

「「「おーっ!!」」」

 

 掛け声とともに、ダイは四大行の特訓に勤しむべく、剣を掲げて町外れへと駆け出していく。

 剣はしまえ。剣は。

 

 

 +

 

 

 闘気と念は、似て非なる能力だ。

 どちらも生命エネルギーを源としているという点では共通しているが、その“あり方”がまるで違う。

 

 念のオーラは、使用者の思念に作用する。その効果は多種多様で、物や人を破壊することもあれば、癒すこともある。

 あるいは、ただ存在するだけで無害なものすらある。たとえば、ゼパイルさんの贋作の壺に込められたあれなんかがそうだな。

 

 具現化、変化、操作──そういった系統に見られる通り、念の真価はその応用性にある。汎用性が高く、あらゆる局面に対応できる。それが“念”という能力だ。

 そして、念のオーラは意識・無意識を問わず、使用者の思念によってその性質や方向性が決まる。

 

 それに比べると、闘気は指向性がはるかに高く、用途も限定的だ。

 闘気の力の源は、“攻撃的生命エネルギー”。この「攻撃的」という性質こそが、闘気の本質を表している。

 

 確かに念も攻撃に使えるが、闘気は初めから“他を害する”ことに特化している。そしてその攻撃性は、時に使用者自身さえも蝕む。

 

 以前、竜の闘気に武器が耐えきれず砕けたのも、その“攻撃的性質”によるところが大きい。

 仮に同じことを念でやったとしても、武器が壊れることはないだろう。もっとも、威力もそれなりに落ちるだろうが……。

 

 俺自身のオーラ量はかなり多い。下手をすると、紋章を発動したダイと同等か、それ以上かもしれない。

 それでも、単純な攻撃力では敵わない。やはり、戦闘特化という点では闘気に軍配が上がる。これは認めざるを得ない。

 

 ──まあ、それでも俺は、あらゆる場面で対応できる念の方が“上”だと思ってるけどなっ!

 

 そんなことを、ロモスの町外れで地面にあぐらをかきながら、のんびりと考えていた。

 少し離れた場所では、ダイとマァムが“四大行”の修行に励んでいる。ポップはというと、魔法力を使って何やら念の技を試しているようだ。

 

「まだかなぁ……早く、あの剣ぶち折りたいなぁ」

 

 俺は、ヒソカよろしくオーラでドクロやハートの形を作りながら、彼らの様子を見守っていたのだった。

 

 

 +

 

 

「トーヤァ! 見てよっ、結構様になってるでしょっ!」

 

 日が傾き始め、あたり一帯がオレンジ色に染まり始めた頃。

 ダイが大声で俺を呼びながら、手をぶんぶん振っているのが見えた。

 

 近づいてみると、ダイは竜闘気を右手から左手、左足から右足へと移動させていた。

 どうやら“四大行”のひとつ、「流」の修行に挑戦していたらしい。……また難しいやつに手を出してるな。

 

「おおっ、凄いぞダイ! たった数時間でここまで形になるなんて、驚いた!」

 

 オーラの動きはまだまだ粗いが、闘気という難物を相手にしていることを考えれば上出来だ。

 初挑戦にしては十分すぎる。

 

 マァムとポップは、それぞれ“纏”と“練”に集中しているようだ。

 まあこの辺は、普段からやってる基本動作だから、今さら目新しさは感じないな。

 

 ……さて、そろそろいい頃合いか。

 みんなの気も済んできただろうし、ここらで――作戦を実行に移すか。

 

「なあ、せっかくだから……ちょっと試してみないか?」

 

 木刀にオーラを込めて、構えを取る。

 

「“凝”と“周”を上手く使えば、この木刀を斬れると思うぞ」

「へへっ、トーヤ。あとで文句言わないでよねっ」

「ずいぶん自信あるみたいだな。だけど、これでも真魔剛竜剣と打ち合えたんだ。本気で来なきゃ折れないぜ」

 

 ダイは笑みを浮かべながら紋章を発動し、竜闘気を全開にする。

 ポップとマァムは慌てて小走りで安全圏へ避難した。

 

「よし、まずは様子見だ。“凝”で打ち込んでこい!」

 

 二人が十分に距離を取ったのを確認してから、俺はダイに声をかける。

 

 ダイの全身からほとばしる竜闘気が、一点に集中していく。

 剣に宿るその気配に、俺の背筋がゾクッとする。

 

「……いくよ。――大、地、斬ッ!」

 

 ――え!? ちょ、ちょっと待って!?

 咄嗟に、受け止めるのは危険だと判断し、俺も反射的に攻撃に転じる。

 

「だらァアアッ!!」

 

 ――――パキィィィンッ――――

 

 鋭く高い金属音が空気を切り裂き、ほんの一瞬遅れて、木刀の刀身が宙に舞った。

 

「う……うそおぉぉ……お、折れちゃった……」

 

 剣を振りぬいたままの姿勢で固まるダイ。

 そして、遠巻きに目を見開いて驚くポップとマァム。

 

 思い通り! 思い通り! 思い通り!

 

 少し予想とは違ったが、狙いどおり“覇者の剣(偽)”をへし折ることに成功した。

 とはいえ、そんな内心はまるで見せず、俺は何食わぬ顔で驚いたふりをして、その場に立ち尽くす。

 

 それにしても……ダイめ。まさかいきなり大地斬をぶっ放してくるとは恐ろしいやつ。死ぬかと思ったわ……。

 未だしびれる両手をさすりながら、俺は冷や汗を流すのだった。

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