ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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64 ロン・ベルク

 いつも通り酒を買い、小屋へ戻ろうとすると、一人の青年がいた。

 どこにでもいる、普通の青年だ。……まあ、服装は変わってるが。

 

「どうしてこんな森の奥にいる。遭難者か?」

 

 親切心ってわけでもないが、気づいた時にはそう尋ねていた。

 どうやら青年は人を探しているらしい。

 

 嫌な予感がした。きっとコイツも、俺に武器を作ってほしくてやってきた口だろう。

 

「そうか、見つかるといいな」

 

 だから俺は白を切って、その場を離れようとした。だというのに――。

 

「それには及びません。たった今、見つかりましたから。魔界の名工、ロン・ベルクさん」

 

 一癖ありそうな野郎だな、と俺は思った。

 

 

 +

 

 

 「帰れ」

 

 短く告げると、俺は青年を追い返した。

 思いのほかあっさりと小屋から出て行った。家までついてきたから、もっと粘着質な奴かと思ったが、少し安心した。

 

 ――次の日。

 何気なく外へ出ると、そいつは小屋の前にいた。

 

 どうやら座り込みをしているらしい。俺が剣を作ってくれるまでは、ここを離れないそうだ。

 

「そうか」

 

 そっけなく一言返して、小屋に戻る。

 別段、驚きはしなかった。噂を聞きつけて、似たようなことをする輩はごまんといる。

 

 そして、こういう奴は放っておけばいい。相手にするだけ、時間の無駄だ。

 

 ――数日後。

 外は雨が降っていた。あの青年は、まだ小屋の前にいた。

 

 何をするでもなく、ただ雨に打たれて座り続ける青年の姿。

 その姿を見て、なぜか無性に腹が立った。

 

「――いい加減にしろよ、小僧。でないと地獄を見ることになるぞ」

 

 追い返すために凄んでみせると、青年は顔をほころばせた。

 

「なら、勝負をしてください。剣の勝負で、俺が勝ったら武器を作ると約束してください」

 

 その言葉に、違和感を覚えた。

 

 剣で勝負?

 俺が剣士だと知る者は少ない。それが地上となれば、皆無といっていい。

 

 だが、その違和感はすぐに打ち消した。

 深い理由なんてない。ただ、腕っ節で解決しようっていう短絡的な思考の持ち主なのだろう。

 

 それにコイツ自身が出した条件だ。さっさと負かして、追い返してやる。

 

 勝負が始まると、青年は腰にぶら下げていた木刀を構えた。

 こちらは真剣を構えているが、青年は怯む様子もない。……案外、肝が据わっているのかもしれないな。

 

 あるいは、ただ舐めているのか。

 

 どちらにしろ、少し脅かしてやるかと、俺は剣を振りかぶる。

 そして、青年の眉間めがけて振り下ろした。

 

 俺の放った、鈍く重い太刀筋。

 ゆっくりとした速度だが、それでも並の人間には対応できるものではない。

 

 慌てふためく青年の姿を予想した――が、 舐めていたのは、俺の方だったと知ることになる。

 

「――ッ!?」

 

 あろうことか、木刀で俺の刀身を受け止め、力任せに俺ごと振りぬき押し返してきた。

 数メートルほど後方へ吹き飛ばされた俺は、雨水をはじきながら地面を踏みしめる。

 

 信じられなかった。闘気を流していたとはいえ、たかが木刀が、俺の剣の一撃を受け止めるなんて。

 

 勝負のことなど忘れていた。俺はただ、あの木刀を斬ることに執心していた。

 何度か打ち合いを重ねるうちに、青年も俺の意図を察したのか、木刀を受けの体勢に構え直した。

 

 構わず、俺は剣を振り下ろす。何度も、何度も、がむしゃらに。

 それでも、木刀は斬れなかった。

 

 どれほどの時間が経っただろう。

 

 俺の一撃が、ついに青年の手から木刀を弾き飛ばした。

 その飛んでいく木刀を呆然と目で追っていると、青年が口を開いた。

 

「剣を手放してしまっては、負けを認めざるを得ませんね」

 

 青年は木刀を拾い上げ、雨に濡れた手を服でぬぐう。

 そして、一週間も粘って剣を作ってくれと懇願していたくせに、あっさりと負けを認めて帰っていった。

 

 

  +

 

 

 ダイの剣を作り終えた俺は、酒瓶を片手に、ふと昔のことを思い出していた。

 最高の気分だったはずなのに、台無しだ。

 

 トーヤ、か。奇妙な男だった。

 

 目的がまるで見えてこない。今回の訪問は、ダイの剣を目的にしていたことは分かる。

 だが、三年前のあれはなんだ?

 

 あの時は、ただ負けを認めて帰っていっただけに見えた。

 だが……あれ以来、俺の中に変化があった。

 

 酒を飲んでいても、剣のことが頭から離れない。

 知り合ったばかりのジャンクから仕事を引き受けたのも、もしかしたら剣を作りたかったからかもしれない。

 

 気づけば、頭の片隅ではいつも“最強の剣”を思い描いていた。

 ――心の奥底で、かつての夢を追い始めていたんだ。

 

 ……認めよう。俺は嫉妬していた。

 三年前、鍛冶師として、俺はあいつに負けたんだ。それが、ずっと尾を引いている。

 

 俺の剣では、ヤツの闘気剣を斬れなかった。

 だが――次は、必ず斬ってみせる。

 

 ダイの剣を作り終えたばかりだというのに、俺の心はまるで満たされていなかった。

 飲みかけの酒瓶を放り投げ、俺は再び小屋へと戻っていった。

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