ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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65 ダイの剣

 さまよう鎧の軍勢を前に、俺たちは思わず足を止めた。

 ポップが悔しげに歯噛みする。こうして立ち止まっている間にも、敵は鬼岩城の内部から次々と雪崩れ出てくる。

 

「我が魔影軍団は不死の軍団。暗黒闘気のある限り、何度でも蘇る」

 

 悪魔のような声――魔影軍団の軍団長ミストバーンが、心までも挫こうとするかのように冷たく告げた。

 

「じゃあ……奴らの軍勢は……無限、なのか……」

「く、くそ……。いくらやっつけても減らねえなんて」

 

 迫り来る軍勢に、ポップとチウ、それにバダックも怯む。

 共に戦うマァムやクロコダインでさえ、僅かに顔色が悪い。

 

 だが、俺は違った。

 皆と違い、余裕があった。なぜか。

 

「みんな、諦めちゃダメだっ! あの鬼岩城とミストバーンさえ倒せば、俺たちの勝ちなんだから!」

 

 “ダイの剣”を背負い、みんなを励ます我らが勇者・ダイが、ここにいるからだ。

 

 やっぱり勇者は頼りになるわぁ。

 

 

 +

 

 

 メルルが敵の危険を察知し、作戦会議のために小屋に入ると、剣はほとんど形になっていた。

 本来なら“覇者の冠”を取りに行き、その後ロモス王の許可を取る必要がある。

 

 だが、その行程を飛ばしたことで、“ダイの剣”完成までの時間が大幅に短縮されたのだ。

 そのおかげで、鬼岩城がパプニカに上陸する前に駆けつけることができた。

 

 “ダイの剣”さえあれば、巨大ロボットもかくやと言わんばかりの鬼岩城も、容易く撃退してくれることだろう。

 ――なんて考えていると、いつの間にか合流していたヒュンケルが、いつになく真剣な表情をしていることに気づいた。

 

「どうしたんだ、難しい顔して。何か気になることでもあるの?」

「……ミストバーンは俺が倒す。一人でな」

「お、おい。何バカなこと言ってんだよっ!」

 

 会話を聞いていたポップが声を荒らげてヒュンケルに抗議する。

 同じく聞いていた皆も、不安げな様子を隠せない。

 

 「すまんが、こればかりは譲るつもりはない。お前たちは鬼岩城を頼む」

 「な、なんだとっ。こら、ヒュンケルっ! こんなときに勝手言ってんじゃねぇぞ!」

 

 尚も続けるポップだが、ヒュンケルは無言のまま答えない。

 頑として譲る気配のない彼に、クロコダインを除く皆は困惑していた。

 

「ど、どうするよぉ……」

 

 助けを求めるように、ポップは俺とクロコダインに視線を送ってきた。

 ……これでも年長者ですからね。ここは見事に仕切らせていただこう。

 

「ミストバーンと鬼岩城の両方を相手にするのは骨が折れる。ここは二手に分かれて戦おう」

「なら俺は鬼岩城の方へ行くよ。レオナも心配だし。みんなはどうする?」

 

 ダイがそう言うと、皆それぞれどちらに行くか悩みだす。

 だが、そんな迷いを断ち切るように俺は口を開いた。

 

「二手に分かれるからといって、必ずしも人数を半分にする必要はない。鬼岩城はダイ一人で十分だろう。残りはミストバーンだ」

「え、ダイを一人で行かせるつもり?」

 

 心配そうにするマァムに、ダイは自信満々に笑って返す。

 

「へへ、大丈夫だよ。この剣さえあれば負ける気がしないんだ」

「よし、決まりだな。まずはミストバーンと鬼岩城を引き離すぞ――安心しろ。お前がやられない限り、手は出さないって」

 

 不満そうなヒュンケルに、言い訳するように肩を叩くと、有無を言わせず先を急ぐ。

 

 そう――ミストバーンを刺激してはいけない。

 鬼岩城を倒すことだけを考えれば、それでいいんだ。俺たちはあくまで時間稼ぎ。

 

 ダイがいるという安心感の裏で、一抹の不安が胸をよぎる。

 しかし、これ以上悩んでいる時間はない。その不安を頭の片隅に追いやり、俺たちは鬼岩城へ向けて、ひた走った。

 

 

 +

 

 

 崩れ去った鬼岩城の残骸の山。

 その上に腰を下ろして、水平線をぼんやりと眺めていた。

 

 ミストバーンとキルバーンを追って、ポップが一人で行ってしまったのだ。

 

 あの二人を相手にするなんて、無謀もいいところだ。すぐにダイがトベルーラで後を追って飛び立っていった。

 空を飛べない俺たちには、無事を祈ることしかできない。

 

 ……それはそれとして、今、俺はこれからのことを考えていた。

 さっきまでの不安は杞憂だったようで、鬼岩城は原作どおり、あっさり撃退できた。

 

 ミストバーンもヒュンケルの光の闘気で押し返して、なんとか持ちこたえた。

 原作通りとは言わないまでも、かなり近い展開だ。

 

 さて、次は――超魔生物ハドラーとの戦い。オリハルコン軍団との激突。その後は……。

 うん、こうして整理してみると、まだまだ危険は山積みだな。

 

 けど、悪くない流れだ。理想的と言っていい。

 

 俺がこの世界に来たことで、微妙な変化はあっても、大筋には大きな影響を与えていない。

 今回だって“ダイの剣”の完成は早まったけど、物語の根幹は揺らいでいない。パプニカの被害も想定より軽く、復旧もそう時間はかからないだろう。

 

 ――ストーリーに余計な影響を与えず、被害を最小限に抑える。

 それが今の俺にできる、ベストな立ち回りだ。

 

 飛び立つ前、ダイにはしっかり回復薬を飲ませた。

 これでハドラーにやられるリスクも減ったし、氷海に投げ出されても原作よりはだいぶマシなはず。

 

 クロコダインがポップを迎えに行く流れも変わらないはずだし、その後、ダイが敵地に取り残されてから助けに行けばいい。

 予定を整理しながらイメージトレーニングをしていると、遠慮がちにマァムが俺の元へやってきた。

 

「ねえ、トーヤ。あなたの力で、何とかならないの?」

「ん?」

「不思議なアイテムをいくつも持ってたでしょ? それで……ダイたちを助けに行けないのかなって」

 

 ――ムリ。そう即答したかった。

 けど、その瞬間、脳裏に電流が走った。

 

 ――やっべ、俺……さっきダイに“同行”のこと、バラしちまったじゃん。

 

 他の仲間にはまだ話してないけど、このままじゃダイが戻ってきたときに全部バレる。

 いや、絶対話すだろ、あいつ。

 

【同行(アカンパニー)】

・発動者を、行ったことのある場所か会ったことのある人の元へ飛ばす呪文。

・カード名を読み上げ、「オン」と唱えた後、対象の名前を宣言すると発動。

 

 “同行”の能力は、ダイに嘘偽りなく説明してしまった。

 つまり、俺は今ここからでもダイやポップはもちろん、ミストバーンやキルバーンの元にだって飛べてしまう。

 

 だとしたら、今ここで動かないのは明らかに不自然だ。

 下手すりゃ、仲間から不信感を持たれかねない。

 

 それはまずい。

 瞬時に言い訳を構築し、マァムに笑顔を向けた。

 

「安心しろ。これを使って、すぐ連れ戻してくるよ」

 

 そう言って、俺はカードの効果を皆に説明し、しぶしぶ迎えに行く“フリ”をすることにした。

 

「こんな便利なものがあるなら、どうしてすぐに行かなかったのよっ」

 

 説明を聞き終えたマァムは、珍しくむっとした顔をしていた。

 ……エイミも、いつもこんな感じで怒ってたな。

 

「まあ落ち着け。カードで飛んだ先が空だったら落ちるだけだ。助けるにしてもタイミングってもんがある」

「あっ、そ、そうよね……ごめんなさい、私ったら……何も考えずに……」

 

 ――とっさにしては、いい言い訳だった。

 

 俺は「迎えに行くだけだし、一人で十分だ」と伝えて、周囲を静めた。

 

 そして、しばらく経ってから。

 カードを手に、俺は立ち上がる。

 

「じゃあ、行ってくる。アカンパニー、オン。ダイ」

 

 カードが光り、浮遊感が全身を包む。

 視界が開けると、目の前にはダイ――そして、炎の闘気をまとったハドラーが、すぐそこまで迫っていた。

 

 どうやら俺、戦闘のど真ん中に飛び込んじまったらしい。

 

 あ、これアカンやつや。

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