ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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66 孤立

 ヤバい、と思った時にはもう体が勝手に動いていた。

 あと数歩のところまで迫ったハドラーに、反射的にメラを放ちつつ後ろへ跳ぶ。

 

 視界を覆うように炎が広がるが、そんなもの、超魔生物と化したハドラーには目眩ましにもならない。

 俺はとっさに木刀を逆手に抜き、盾代わりに構えた。大怪我は覚悟のうえで、衝撃に備える――が、その瞬間。

 

「ぐあっ!?」

 

 ハドラーと俺の間で、突如として呪文の爆発が起きた。

 爆風に巻き込まれた俺の体は宙に舞い、踏ん張る暇もなく吹き飛ばされる。

 

 背後にいたダイが慌てて俺を受け止めようとするが、間に合わず、二人揃って地面を転がった。

 

「イテテ……だ、大丈夫?」

 

 痛みに顔をしかめながら、ダイが上体を起こしつつ尋ねる。

 どうやらさっきの爆発は、ダイのイオラだったようだ。おかげでハドラーの攻撃は回避できた。

 

「……かなり乱暴だが、助かったぜ、ダイ」

 

 軽く痛みをこらえながら立ち上がり、自分の体をざっとチェックする。

 痛みこそあれど、怪我自体は大したことなさそうだ。

 

「お、おいっ! 大丈夫か!? ダイ、トーヤ! ――あんたも助けに来てくれたんだな……俺のせいで、すまねぇ」

 

 ポップが駆け寄ってくる。

 自分の軽率な行動を悔やんでいるのだろう。俺の顔を見るなり、バツが悪そうに謝った。

 

「気にすんな。――それより、こいつらぶっ倒して皆で帰るぞっ!」

 

 まだ落ち込み気味のポップには言いたいことが山ほどある。

 けど、それは後だ。今は戦闘中。次の攻撃がいつ来てもおかしくない。俺はハドラーたちから目を離さず、ポップを背に庇うようにして木刀を構えた。

 

 視線の先には、超魔生物ハドラー、ミストバーン、キルバーン。

 どいつもこいつも、まさに化け物。3対3と言えば聞こえはいいが、戦力差は歴然だ。

 

「ポップ、呪文はあとどのくらい使える?」

「中級呪文なら……3、4発ってとこか……。くそっ、これじゃ戦えねえ……」

「いや、それだけ撃てれば十分だ。――だけど、念のためにこれも使え」

 

 そう言って、魔法力を回復させる“メンタルウォーター”をポップに手渡す。

 

「トーヤ、あいつらは半端じゃない。特に今のハドラーは、剣があっても一筋縄じゃいかないよ」

 

 俺がオーラを高めるのを見て、ダイが隣に立ち並びながら忠告してくる。

 だが、心配はいらない。俺にだってこいつら3人と戦うつもりなんて毛頭ない。さっきの啖呵は、わざとあいつらに聞こえるように言っただけだ。

 

「逃げるぞ。幸い、みんな脱出手段は持ってる。――お前も、ルーラくらいならまだ唱えられるだろ?」

 

 今度は二人にだけ聞こえるよう、小声で告げた。

 

「うん、わかった」

「でも、普通にルーラを唱えたって捕まっちまうぜ……相手は三人だ。隙を作るにしても分が悪すぎる」

 

 頷くダイに対して、ポップが疑念を口にする。彼の言う通り、ルーラを使ったからといって、そう簡単に逃げられるわけじゃない。

 ルーラは瞬間移動といっても、実際にはワープではない。魔法力を用いての超高速移動に過ぎないのだ。

 

 つまり、相手にその速度に対応する能力があれば、簡単に追いつかれる。

 そもそも、ここに誘い込まれたと気づいたときにポップがすぐにルーラで脱出しなかったのが、その証拠だ。

 

 だからこそ、多少なりとも隙を作る必要がある。

 だが、ダイはまだ余力がありそうとはいえ、満身創痍だ。ポップもメンタルウォーターで魔法力は回復したとはいえ、ハドラーたち相手では厳しい戦いになる。

 

 つまり、今この場で、奴らとまともに戦えるのは俺一人。

 本当は原作通りに、ダイだけを残して行きたかった。だが、今の状況で残せば、本当に死んでしまいかねない。

 

 それでは元も子もない。

 原作とは違ってしまうが、ここは全員で逃げるのが最善だ。

 

「フフフ、作戦は決まったのかな?」

「ん?」

 

 浮いていたはずのキルバーンとミストバーンが、ゆっくりとハドラーの隣へ降り立った。

 

「わざわざ死にに来るなんて、人間って本当に変わってるよねぇ。でも、ハドラー君とダイ君の一騎打ちを邪魔するなんて、イケナイなぁ」

「卑怯者~っ! 一対一の勝負なんだぞっ!」

 

 キルバーンの肩に乗った、小さな子供が俺に向かって叫ぶ。

 

「今来たばかりなのに知るわけねぇだろ、バカ」

「おやおや、口が悪いねぇ。彼はハドラー君の邪魔だから、殺しちゃおうか。ね、ピロロ?」

 

 キルバーンは大鎌を両手で構え、攻撃の体勢に入る。沸点低いなこいつ……本体が子供だからか?

 しかもキルバーンだけじゃない。ミストバーンまでが爪を構え、こちらを睨んでいる。どうやら、いきなり総力戦になるようだ。

 

 俺は一歩前に出て、再び小声で二人に話しかけた。

 

「いいか、作戦はこうだ。俺が正面から突っ込む。ダイ、お前は全体を見渡して牽制してくれ」

「わかった」

 

「ポップは呪文をひたすら撃ってくれ。とにかく派手にな。注意を逸らせばそれでいい」

「よ、よしっ!」

 

「あとは、それぞれ逃げられると思った瞬間にルーラで離脱しろ。いいな?」

「「おう!」」

 

 一際大きな声で気合を入れ、俺たちはハドラーたちへ向かって突き進んだ。

 

 

 +

 

 

 俺は一人で、ミストバーンとハドラーという二人の化け物を相手にしていた。

 

 作戦は成功し、ダイとポップは隙を突いて飛び立っていった。

 だが、俺だけはうまく脱出できずにいた。

 

 せめてもの救いは、キルバーンがいないことだ。ヤツはダイとポップのルーラの光を追って消えた。

 最初からポップを狙っていたからだろう。それでも、あの様子なら二人はきっと逃げ切れるはずだ。

 

 問題は……俺だ。

 二人の猛攻に膝をつきながら、必死に思考を巡らせる。

 

「意外だな。あんたはダイを追わなくていいのか?」

 

 何か手がかりを得ようと、無理にでも会話を試みる。

 

「ふん、邪魔をしておいて何を言うかと思えば……ダイは必ずこのオレが倒す。だが、そのときにまたお前のような邪魔者がいては厄介だ。だから今、先に片づけることにしたまでのことよ」

 

 ハドラーの言葉の最中、ミストバーンの爪が音もなく飛んでくる。それを木刀で弾くが、すぐさまハドラーが追撃を仕掛けてきた。

 ”覇者の剣”の一閃を木刀で受け止める。しかし、勢いは殺しきれず、俺の身体はそのまま岸壁まで吹き飛ばされた。

 

 両手は痺れ、肩が悲鳴を上げる。

 

「……っ痛、バカ力しやがって」

 

 舌打ちしながらも、俺はこの一瞬に賭ける。

 ミストバーンの爪はまだ伸びきったまま、ハドラーも一撃を放った直後で動きが鈍っている。そして、一撃で距離も開いた。

 

 今しかない!

 

 痺れる手を懐に突っ込み、“同行”を取り出して使用する。だが――。

 

 「な、なんだと!?」

 

 “同行”は効果を発動することなく、ミストバーンのもう片方の爪に貫かれてた。

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