「お金がほしいです」
マリンのいる教会の神父に俺は相談していた。
新しい念能力を開発するにあたり道具を買いたい。
先日マリンから貰った指輪を使って能力を作ったら、意外にも上手くいったからな。
戦闘用と補助用ので多数の念能力が必要だと思う。
念能力の長所はその汎用性だ。
ならば霊丸だけでなく、多種多様な能力開発は進めておくべきだろう。
「うーむ。ならば道具屋に薬草を売るのはどうでしょう」
「薬草?」
「はい。トーヤくんは森に詳しいから、薬草の類を探すのは簡単でしょう」
「でも、薬草ってどんなものか分からないんですが・・・」
「幾つか買い置きがあったので持ってきましょう。それを参考に集めてくるといい」
神父はそう言って別室へ引っ込んだ。
ここは町の教会。マリンがこの町に滞在している場所だ。
マリンはこの町の住民ではないらしい。
パプニカでお姫様が産まれたらしく、その顔見せに同行しているのだそうだ。
しばらくしたら国に帰るらしいが、それまでは町へ来るたびに俺も教会に立ち寄るようにしている。
あと、この町の人達には俺は森の小屋で両親と一緒に住んでいることになっている。
マリンにもグリズリーを倒したことや一人暮らしのことは口止めしてある。
あの子は口が固そうなので大丈夫だろう。
「トーヤじゃないか。何をしているんだ?」
神父が戻るのをぼうっと待っていたら声をかけられた。
「おお、アポロか。ちょっと神父に相談をね」
少年の名はアポロ。マリンと同じくパプニカから来たらしい。
もうお気づきかと思うが、一応言っておこう。
ここ、ダイの大冒険の世界だったわ。
アポロとパプニカって聞いて思い出したわ。
マリンって結構普通な名前だし、全然気づかなかったぜ。
気づいた時はかなりショックだった。
だってダイの大冒険ってことは、ボスは大魔王バーンだろ?
あいつクッソ強いじゃん。
念能力でなんとかなるレベルとは思えない。
しかも放っといたら地上吹き飛ばされかねないし。
マジでブルーだわ。
「相談? 私で良ければ相談にのるぞ」
バーンをどうするか考えていると、アポロが人の良さそうな笑顔を向けてきた。
イケメンかコイツは。いや、イケメンだけれども。
「ちょっと欲しい道具があって、金が必要なんだよ」
「お金か。私もあまり持ち合わせはないな。高いものなのか?」
「特に買うもの決めてるわけじゃないよ。生活用品とか色々な。だから稼ぐ方法を聞きに来たんだよ」
「なるほど、そういうことか。なら、手伝えることがあればいつでも言ってくれ」
「あ、ああ。その時はお願いするよ」
まるで誠実と言う言葉が服を着て歩いている様なやつだな。ちょっと恐い。
アポロと雑談していると、神父が薬草を持って戻ってきた。
「はい、これは君にあげるよ。森で同じものを見つけて道具屋に持って行けば買い取ってくれるでしょう」
神父に礼を言って、さっそく薬草を採りに森へ戻ることにする。
「あ、トーヤ。来てたの」
しかし、教会を出ようとしたところでマリンに声を掛けられた。
「こんにちは」
そのとなりで、マリンの妹のエイミが行儀よくお辞儀をする。
「ああ。こんにちは」
エイミは挨拶をするとすぐにマリンの後ろに隠れた。
「これから遊びに行くの?」
「いや、もう帰るところだよ。薬草探しに行くんだ」
「私も手伝うっ」
「おい、マリン。君はしばらく町の外から出ないようにってテムジン様がおっしゃっていただろう」
「あ、そうだった」
アポロに窘められたマリンが悲しそうな表情で俯く。
先日行方不明になったことが尾を引いているようだ。
そういえば同じく行方不明と思っていたエイミだが、実は普通に教会に居たそうだ。
一緒に隠れんぼをしていて、マリンがキメラの翼を間違って使ったらしい。そして気がついたら森に居たそうだ。
マジックアイテムって恐い。
「明日また来るから、そしたら遊ぼうぜ」
「うんっ」
マリン達に手を振って俺は教会を後にした。
森へ入ると俺は両目に『凝』をした。
「お、あったあった」
薄くオーラを纏った植物、薬草だ。
教会で薬草を受け取った時、変な感じがしたので凝で見てみた。
すると微弱ではあるが、薬草からオーラが出ていることに気づいたのだ。
薬草は使用すると魔法のように輝き体力や傷が回復する。
もしかすると天然でホイミを蓄えるアイテムなのかもしれないな。
毒消し草や満月草も同じような要領で見つけることが出来た。
背負っている籠がいっぱいになるまで採取をし、今日は小屋へ戻ることにした。