ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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71 出発

「じゃあ、行ってきます」

 

 短く別れのあいさつを済ませると、ダイは笑顔で気球に乗り込んだ。

 まるで遠足みたいだな、と思いつつ軽く手を振って応え、空高く飛んでいく気球を見送った。

 

 ――この4日前、俺はアバンと一緒に、バーンを倒すための作戦を話し合った。

 見落としやうっかりは許されない。

 

 これでもかってほど慎重に、何度も何度も作戦を見直した。

 原作の内容だけでなく、これまでの戦いの中で生じた相違点も、事細かに検証した。

 

 その結果、次に死の大地へ攻め込むまでは俺は静観し、アバンは洞窟に残ることになった。

 この案を出したのは俺ではなくアバンだ。

 

 理由は二つある。

 

 一つ目は、バーンを倒すには、まだダイたちの力が足りないということ。

 この点について、アバンの意見は驚くほどシビアだった。てっきりアバンも含めて、総力戦で死の大地に乗り込むつもりかと思っていたから意外だった。

 

 アバンが言うには、「双竜紋のダイ」と「覚醒したポップ」、最低でもこの二人は必要不可欠だと。

 バランかハドラーを味方にする案も出してみたが、アバンは首を縦に振らなかった。

 

 どちらも信念ある男たちだ。バランはともかく、ハドラーは寿命が尽きかけていると知れば、戦闘に発展する可能性があるという。

 まあ、ハドラーが体内の黒の核晶(コア)に気づいた時点で、バーンが誘爆を仕掛けてくるだろうしな。

 

 二つ目は、これまた意外なことに――俺のオーラが格段に強くなったことだった。

 突然、オーラの質が変わって、自分でも驚いた。最初は正直、かなり動揺した。

 

 けれど、それはいいことばかりでもない。

 急激に強くなった力では、格上の相手にまともに戦うことはできない、らしい。

 

 ダイたちがバランを伴って死の大地へ向かうのは明日。

 それまでの間に少しでもオーラの扱いに慣れておかなくてはならない。

 

 以上の理由から、俺とアバンは、自分たちの力の練磨に時間を使うことにした。

 

 なぜ突然、俺が急激にパワーアップしたのか。

 心当たりはある。

 

 ”念”は心の動きが力の加減に大きく影響する。

 今までの俺は、歴史の改変を恐れて、無意識に力をセーブしていた。

 

 しかし4日前、俺は決意した。

 たとえこの世界の運命を狂わせることになろうと――バーンを倒す、と。

 

 その迷いを振り払ったことが、俺の”念”を研ぎ澄ませる結果につながったのだ。

 

 正直、その思いを完全に拭いきれたのかと問われれば、自信はない。

 

 誰かの言葉で一瞬で悩みが解決するなんてことはそうそうないし、その言葉が正しい保証もない。

 それでも――こうして実際に力が増している以上、俺の中で何かしらの決着はついたのだろう。

 

 まあ、それは置いておいて。

 時間もないし、俺は俺でやるべきことを進めないとな。

 

 スコップを地面に突き立て、土を掘り返す。

 オーラを流したスコップは、まるでプリンでも掘るかのように、地面を軽々と切り崩していく。

 

 この感覚も懐かしい。

 指輪に頼るようになってから、こういう基本的な修行は久しくやっていない。

 

 ……おっと。

 今、俺が地面を掘ってるのを修行だと思ったなら、それは勘違いだぞ?

 

 確かに基本に立ち返るのも大事だが、今回掘ってる理由は別にある。

 何をしているのかって? 決まってるだろ――墓荒らしだよっ!!

 

 地中から現れた棺桶。

 目当ての物を見つけたというのに、俺の気持ちはむしろブルーになる。

 

 墓を荒らしているという罪悪感と、死体が腐乱していないことを祈りながら、俺はそっと棺の蓋を開けた。

 

 

 +

 

 

 破邪の洞窟へ戻ると、アバンは気配で気づいたのかすぐにこちらを振り返った。

 

「おや、思いのほか時間がかかったようですね。お願いしていたアイテムはどうなりましたか?」

「はあぁ……一応、完成しましたよ。効果のほども、自分の身体で実証済みです」

 

 未だに腐った死体の嫌な感触と臭いが、脳裏に焼き付いて離れない。

 アバンの天才的アイデア(怒)に、嫌味のひとつでも言ってやりたいところだが、そんな気力すら湧いてこない。

 

「グッドですねえ。私も手伝ってあげたかったのですが、うかつに地上に出て敵に見つかってはいけませんからねえ」

「せめて、もっと早く言ってくださいよ。明日が決戦だってのに、今朝になって言い出すなんて」

「いやぁ、寝て起きたら急にビビッときたんですよ。これはもう、天啓とでも言うべきですかねえ」

 

 この野郎……いけしゃあしゃあと。

 アバンに頼まれていたアイテムをすべて袋にまとめて渡すと、彼は中身を確認して、満足そうに頷いた。

 

 

 +

 

 

 夜が明けた。

 身支度を整えると、アバンが口を開いた。

 

「いいですか。打ち合わせ通りに行かなくとも、無理は禁物ですよ。そのために私は備えているんですから」

「無理は百も承知ですよ。まあ……死ぬつもりはないんで、それだけは安心してください」

 

 軽口で返して、スペルカードを片手に出立しようとした――が、その動きを止めた。

 

「アバンさん。どうして総力戦じゃなく、こっちの作戦にしたんですか。これじゃあ俺の話した内容の通りじゃないですか」

 

 アバンは「運命に囚われるな」と言っていた。

 それなのに、彼はあえて原作通りの展開を選んだ。その理由を、どうしても聞いておきたかった。

 

「結局、神託や運命なんて、その程度のものですよ。そこに“知る責任”や“使命”なんてものがあったとしても、そんなのは関係ありません。笑って生きるために、ただ戦うだけです」

 

 その言葉に、自然と笑みがこぼれてきた。

 気の利いたセリフでも返そうかと思ったが、何も思い浮かばなかった。

 

「じゃあ、行ってきます」

 

 短く、それだけを告げて、笑顔で洞窟を後にした。

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