ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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73 死の大地

 昨日、気球船で出発したダイたちは、まさに激動の一日を送っていた。

 カール王国の作戦基地に到着してまもなく、北方の漁港サババが敵の襲撃を受けたとの報が届く。

 

 死の大地へ渡るため、サババで大型船を建造していたのだが、ハドラー親衛騎団の襲撃により船は破壊されてしまった。

 ポップの奮闘により、なんとか親衛騎団を退けることに成功したが、彼らの目的は人間たちへの奇襲ではなかった。

 

 「死の大地で待つ」との挑戦を残し、親衛騎団はその地へと去っていったのである。

 作戦の中断を余儀なくされた一行は、いったんカール城へ戻ることとなった。

 

 一方その頃、チウは敵の本拠地を偵察すべく、単身で死の大地へ潜入していた。

 そこで海底に、バーンの居城へと通じる門を発見するが、敵に見つかり絶体絶命の危機に陥ってしまう。

 

 そんな彼を救ったのは、なんと竜騎将バランだった。

 チウの捜索に訪れたポップ、クロコダイン、ヒュンケルの三人は、瀕死の状態で倒れるチウを発見。

 

 姿を隠していたバランの存在にいち早く気づいたヒュンケルは、ポップとチウを仲間の元へ戻し、ひとりバランとの対峙を選ぶ。

 大魔王バーンを倒すため、共闘を願うも、説得は失敗。やがて剣を交えることになってしまった。

 

 決着の瞬間、突如として現れたのは新親衛騎団の女王・アルビナス。

 彼女とバラン、両者からの攻撃を受けたヒュンケルは、致命的な重傷を負ってしまう。

 

 しかし、その姿に心を動かされたバランは、ついに人間たちと手を組み、バーンを倒すための共闘を決意したのだった。

 

 チウの働きによって発見された海底の門。

 その門を破壊するための作戦が立案され、ダイたちはバランを加え、再び死の大地へと向かっていく――。

 

 

 +

 

 

「……なげぇよ」

 

 レオナから一連の出来事を説明され、俺の感想はその一言で終わった。

 

「なによっ。せっかく丁寧に説明してあげたのに、その態度はなに?」

 

 腕を組んでぷんすか怒るレオナを横目に、俺はこれから行われる作戦について思考を巡らせる。

 海底の門を破壊する〈ダイ・バラン組〉と、敵を引きつける〈地上組〉による二面作戦。

 

 どちらに同行しても、バーンと対面するチャンスはあるが、どうせなら俺はダイとバランのチームに加わりたい。

 ……が、肝心のあいつらの姿が見えない。どこに行ったんだ?

 

「なあ、ダイたちは?」

 

 俺の素朴な疑問に、レオナは呆れた顔で答えた。

 

「なに言ってるのよ。とっくに出発したわよ」

「はあああ!?」

 

 よく考えてみれば、隣のベッドはもぬけの殻。重症だったはずのヒュンケルがいないのも、どう考えてもおかしい。

 つまり、レオナの言う通り、みんなとっくに死の大地に向かったということだ。

 

 くそっ、あいつら……なぜ俺を置いていく!?

 いや、待てよ。そういえば昨日ダイたちを見送る時、「あとで追いかける」って言ったか?

 

 ……あ、言ってねぇや。

 だからか、チクショウめ。

 

 俺はダイたちを追うべく、勢いよく部屋を飛び出した。

 すると背後から、レオナの声が飛んできた。

 

「ヒュンケルが少し前に出発したばかりよ!! まだ近くにいると思うわっ!」

 

 俺は片手を挙げて応えると、そのままヒュンケルの後を追い、駆け出していった。

 

 

 +

 

 

 海岸へ行くと、ヒュンケルはすぐに見つかった。

 どうやらエイミとラブロマンスじみた雰囲気を漂わせており、合流のタイミングを掴みづらい。

 

 しばらく様子をうかがっていると、"鎧の魔槍"が宙を舞った。そろそろ終わるようだ。

 エイミを残して歩き出すヒュンケルの後を追い、声をかける。

 

「トーヤか。お前はパプニカに残ったのではなかったのか……なぜここに?」

 

 ようやく追いついた仲間の反応は、心なしか冷たかった。

 

「いや、最初から来るつもりだったから……っていうか――まあいいや別に。それより、お前すごいな」

 

 鎧を着てはいるが、その下のヒュンケルは明らかに重症だった。

 市中引き回しのうえ獄門磔にでもあったのかというくらいのボロボロっぷりだ。……そんなやつ見たことないけど。

 

 とりあえず"エリキシル剤"を飲ませて回復を試みるが、予想に反して効果がない。

 レオナの話ではベホマですら効果が薄いという。いかに俺の回復アイテムの性能が高かろうと、すぐには治らないということか。

 

「ふっ、どのみちこのまま戦うつもりだった。お前が気にすることではない」

 

 そう言って再び歩き出すヒュンケル。しかし、このまま放っておく気にはなれなかった。

 

 こんな状態で戦うなんて、どう考えても無茶だ。

 トラックにはねられて血まみれになったやつのほうが、まだ元気に見えるぞ。

 

 このままだと確実に死ぬ。原作じゃ死んでなかったけど、それでも見ていられない。

 

「ちょっと待て。――ゲイン」

 

 3回しか使えない"大天使の息吹"。でも、今ここで使うしかない。

 

「なっ――!?」

 

 カードから現れる天使。その神々しい姿に、ヒュンケルは目を見開いて声を失う。

 

 ――妾に、何を望む?――

 

「ヒュンケルの身体を治してやってくれ」

 

 ――お安い御用。では、その者の身体を癒してしんぜよう――

 

 天使がひと息吹きかけると、ヒュンケルの傷はみるみる癒えていった。

 手を握っては開き、回復したことを確かめるような仕草を見せる。

 

「お、おどろいた……お前は天使か何か、なのか?」

「なにそれ、口説いてんの?」

 

 気持ち悪いセリフに思わずツッコミを入れてしまう。

 アイテムの力だと説明して納得させると、俺たちは先を急いだ。

 

 それにしても"大天使の息吹"がちゃんと機能してよかった。

 一度も使ったことがなかったから、正直ちょっと自信なかったんだ。

 

 でもこの様子なら大丈夫そうだな。

 ……もし俺の手が原作のゴンみたいに吹き飛ばされても、治るのかな。

 

 いや、試してみたいような、でも絶対そんな状況にはなりたくないような。

 ――そんなことを考えながら、俺はヒュンケルの隣を歩き続けた。

 

 

 +

 

 

「お前は来ないと思っていた」

 

 死の大地に降り立った直後、ヒュンケルがふいにそんなことを言い出した。

 

「何の話だ?」

「魔王軍との戦いのことだ。今までの戦いでも、薄々感じていた。お前は、仕方なく戦いに身を投じていたのだろう」

「あー、そういう話か。マリンにも、それっぽいことをついこの間言われたよ」

 

 マリンとは付き合いが長いからまだ分かるけど……まさかヒュンケルにまでそう思われていたとはな。

 ってことは、もしかしてダイや他のみんなもそう思ってるのか?

 

「フレイザードや竜騎衆の墓を作っていただろう。ああいう行動をするやつは、本来、戦いには向かない。だからパプニカに残ると聞いた時、それでいいと思った」

「墓って……よく見てるな。でも、あれはそういうんじゃないよ」

 

 そう、あれは優しさとか、そういうんじゃない。

 ただ、責任を背負いたくなかっただけなんだ。

 

 運命を変えてしまう、その結果を。

 だから死者を弔うことで、言い訳してただけ。

 

 ……けど、それももう終わり。俺の中ではケリがついてる。

 これからは、俺は俺のやりたいようにやる。そのためにも――

 

「バーンは俺が倒す。期待しとけ。我に秘策あり、だ」

 

 冗談めかして言いながらも、胸を張って自信たっぷりに言い放った。

 

「ふふ、すごい自信だな。それが通じなかったらどうする気だ」

「そんときは気合でなんとかする。世の中、気合さえあればどうにでもなるもんだ」

「ならば俺も、それに負けないよう気合を入れて戦おう」

 

 ヒュンケルがニヒルに笑う。

 軽く拳をぶつけ合い、それぞれの戦場へと駆け出した。

 

 ヒュンケルはポップたちのもとへ。

 そして俺は、ダイたちがいるはずの“門”を目指して走った。

 

 

 +

 

 

 この辺かな――。

 

 死の大地の海岸沿いを歩き、海を見渡す。

 ダイとバランが向かったという“門”へ行くには、どうやら海に潜る必要があるらしい。

 

 とはいえ、泳いで行くには距離がありすぎる。できるだけ陸沿いに進んで、門の近くまで移動しておきたい。

 下手に“同行”を使うと、また前みたいにハドラーと交戦中のど真ん中に飛び込むことになりかねない。

 

 急いではいるけど、さすがにそんな無茶は控えたい。

 

 ポーチからエアドロップを取り出して口に含む。

 さて、そろそろ潜って……――ッ!?

 

 突如、感じた殺気に、弾けるように振り返った。

 耳を裂くような異音が響く。反射的に耳を覆いたくなるのをこらえ、気配のした方向へと視線を送る。

 

 そこにいたのは――

 巨大な鎌を、まるで扇でも回すかのように優雅に振るう“死神”の姿だった。

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