ひのきのぼう、こんぼう、どうのつるぎ、せいなるナイフ、くさりがま、てつのやり――なんとも微妙なラインナップだ。
あとは木刀とかメリケンサックっぽいのとか、ドラクエっぽくないのも混じってる。
どれにしよう。やっぱり聖なるナイフかな。鎖鎌は絶対使いづらいし、槍はかさばるしな。
「どれにするの?」
俺が商品を見ながら悩んでいると、マリンが尋ねてきた。さっき道具屋から出るときにばったり出くわして、そのまま武器屋まで一緒に来たんだ。
「んー、どうしようかな」
「お金はどれくらいあるの?」
「それは心配ない。一番高い鉄の槍でも余裕で買える」
「すごいね。この間までお金ないって言ってたのに」
「まあな」
一番威力があるのはやっぱり槍だろうけど、我流でどこまで扱えるかが問題だ。剣やナイフとは勝手が違いそうだしな。
「トーヤは武器を買ってどうするの?」
そりゃあ、バーンを倒すため……と思ったところで、ふと我に返る。
ここで買った武器でバーンを倒すとか無理がある。そもそも今は武器の練習が目的で、いずれはロン・ベルクに本物を作ってもらうつもりでいるし。
となると、今選ぶべきなのは、最終的に持つ武器の練習用だ。
ロン・ベルクは剣を鍛える職人。ならば俺が目指すべき武器も剣ってことになる。
マリンがいてくれてよかったな。そうと決まれば、銅の剣一択だ。
樽の中からぞんざいに放り込まれていた銅の剣を取り出し、鞘から抜いてみる。
「痛って!」
指を切った。超痛ぇ。血も出てる。
「だ、大丈夫?」
すぐにマリンが俺の手を取ってホイミをかけてくれた。
銅の剣のくせに、なんて切れ味だ。扱いを間違えたら洒落にならん。
「この木刀ください」
ビビって隣の樽の木刀にした。うん、木刀の方が練習向きだし、何より安全。
それに銀さんみたいでちょっとカッコいい。
「ねえ、もうすぐパプニカに帰らないといけないの」
武器屋から教会へ向かう途中、マリンが言った。
「そうなんだ。寂しくなるな」
なんだかんだで、一ヶ月近く一緒に遊んだり喋ったりしてたしな。
5歳児と一緒じゃ退屈かと思うかもしれないが、基本一人の俺からすればいい話し相手だった。
「ま、また会えるかな……」
「そんなの簡単だろ。パプニカとここは同じ大陸なんだし、会おうと思えばすぐだよ」
「ほ、本当っ?」
「ああ。会いに行くよ。呪文も教えてもらう約束だしな」
「うんっ」
そう、まだ呪文を教わっていない。
念の修行を優先していたのもあるが、この世界で呪文を覚えるには契約が必要で、その契約の魔法陣が載っている呪文書がこの町にはなかった。
大魔王と戦うなら、魔法の一つくらいは使えるようになっておきたい。
万が一才能があれば、強力な武器になる。
マリンたちは3日後にパプニカに帰るらしい。その日は見送りに行くと約束して、教会で別れた。
そういえば姫が産まれたから顔見せに来たって言ってたけど、姫ってレオナ姫のことだよな?
どうせならひと目くらい見ておきたかった。すごい美人だってダイが言ってたっけ……あ、今は赤ちゃんか。
マリンやエイミは子供でも美人になりそうな顔立ちだし、アポロなんかすでにイケメンだった。
この感じだと、作品屈指の超絶イケメン・ヒュンケルなんてどんな顔になるんだ?
ホモじゃないぞッ。
「さて、こんなもんかな」
小屋に戻って、今日買ったばかりの木刀を見る。その木刀には、所狭しと文字が書き込まれている。
HUNTER×HUNTERでダルツォルネが持っていた剣と同じイメージだ。あれには「神字」と呼ばれるオーラを増幅する文字が刻まれていた。
俺は神字が使えないので、固有の念能力として似たような効果を持たせた。
【旧文字】
・『蓄える指輪』のオーラを込めたペンで対象に文字を書くと、その文章通りの効果が発動する。
・文字を使う者が意味を理解できなければ発動しない。
・誤字脱字がある場合は発動しない。
効果が本当に出るかはわからない。でも、ただ『周』や『硬』で木刀を強化するよりは期待できる。
木刀には漢字で、「強靭・無敵・最強・屈強・強固・堅牢・強烈・剛力・豪胆・不屈・気鋭……」といった言葉がビッシリ書かれている。
「……だっせぇ」
何が「こんなもんかな」なの? 超ダサいんですけど。
しかも誤字NGとか。結構重い制約つけちゃってるし、こっちの世界じゃ漢字を忘れても確かめようがない。
大体誰が誤字を指摘できるんだっつーの。
試しに木刀にオーラを流してみたら、信じられないほどの力が吹き出した。
……なんか複雑な気分だな。
成功したのは嬉しいけども。