ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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 木々の合間から上空を見上げて、かつて大魔導士と謳われた男は深く息を吐いた。

 

「しばらく見ないうちに随分と成長しやがった。一体いつの間にあれだけの魔法力を身につけやがったんだ」

 

 枝に足を着けてトベルーラを解除する。

 飛翔呪文は発動している間は魔法力を消費し続ける。戦いにおいて空を飛べるというのは凄まじいアドバンテージとなるが、相手も条件が同じとなればその効力は半減したと考えていい。

 

 魔法力は無限じゃない。当然のことであるのに疎かにしている魔法使いが多いのが現状である。したがって魔法使い同士の戦いのセオリーは二つ。

 短期決戦で叩き潰すか、あるいは長期戦で疲弊するのを待つか。この二択である。

 

 それが長きに渡り地上随一の使い手を自負する男の戦い方だった。

 

 ポップが取った行動は前者。低ランクの初級呪文の連打で動きを封じ、止めに上級呪文で勝負を決めるつもりだったのだろう。

 マトリフが取ったのは後者。回避と防御に魔力を回し、1発でも多く相手に呪文を撃たせる。

 

 上空でキョロキョロと自分を探す弟子の姿をマトリフは静かに捉えていた。

 つまり今の状況はマトリフの術中ということだ。

 

 とはいえ驚かされたのはポップの魔法力だ。

 初級呪文とは思えないほどの威力を持ち、初級呪文であるからこその発動時間の短さは相殺する暇さえ与えない。したがってイオの応酬は脅威としか言いようがなかった。

 

 仮にあの場で、ポップがメラゾーマなどの上級呪文を放っていたのなら、マトリフは迷わずマホカンタでのカウンターを行っていただろう。

 もちろんイオに対してでもマホカンタで迎え撃つことは可能であった。しかしマトリフは敢えてそれをしなかった。何故ならマホカンタでイオを反射させても、連続して飛来するイオとぶつかり合ってしまうからだ。

 

 イオラ級の威力の数十発が眼前で爆発してはひとたまりもない。

 老齢に達した身で痛み分けでは自分にとっては不利でしかない。そんな下策を講じる程マトリフの頭は鈍ってはいなかった。

 

 魔法使いは常にクールでなければならない。それがマトリフの持論である。

 

 天才的な魔法の才を持ちながら、それに溺れることのない計算高さを備えている。随一の使い手と称しているし、それなりのプライドも持っている。だが少しでもリスクを感じれば迷わず引くことを考える。

 

 彼と戦うものにとってこれ程厄介なことはない。

 

「さぁ、ぼちぼち行かせてもらうぜ」

 

【メラミ】

 

 地上に降り立とうとするポップへ呪文を放つ。連続する火炎球にポップは狙い撃ちにされるしかなかった。

 多少のダメージ覚悟で突っ切ろうとしても、その瞬間にはメラゾーマが飛んでくる。

 

 ポップはヒャド系の呪文はヒャダルコまでしか使えない。同レベルの使い手同士ならメラゾーマを相殺するにはマヒャドで対抗するしかない。

 それにそもそもーー

 

「くっそぉッ、見えねぇ!!」

 

 呪文の間隙を縫って突破しようにも、マトリフの見えない炎には為す術がなかった。

 

 マトリフの放つメラミは2種類あった。

 一つは、威力はそのままに色の濃い赤いメラミ。そしてもう一つは極限まで薄く、広範囲に発せられた炎のメラミだ。

 

 性質の異なる二種類のメラミはポップの目を惑わし、色の薄い方はほとんど視認することができなかった。

 

 時間にして正午近く。ただでさえ昼間というのは陽の光が邪魔をして火は見え辛くなる。

 だというのに濃い炎と薄い炎を立て続けに放たれては目が慣れるはずがない。

 

 マトリフの術中にはまったポップは、ひたすらに呪文を躱しながら多量の汗を流した。

 

 そう、ここは遮蔽物の無い空。いつの間にやら高度を上げた太陽がジリジリとポップの体力を奪っていく。

 あと数十分も経たないうちに、極度の温度変化と脱水によりポップは意識を失うだろう。

 

 そしてそれは、あっけなく訪れた。

 

 

 +

 

 

「きゃっ」

 

 唐突に手首を捕らわれて、マァムは短い悲鳴をあげた。

 枯れ枝のような腕がマァムを掴み、そのまま引き回した。ブロキーナは自分を中心に体を何度も回転させた。なまじ半端な速度故に身体は浮かず、マァムは足をもつれさせながらも倒れないように自ら回転させられ、ついには地面を転がった。

 

 おかしい。手首を捕られる前、先にブロキーナの腕を掴んでいたのはマァムだった。だというのに投げの体勢に入る頃には自分が技に掛けられていた。

 

 立ち上がりブロキーナを見るが、彼は変わらぬ様子で手指の調子を確かめるように動かしている。

 

「不思議かね?」

 

 尋ねるように言葉を発するブロキーナだが、マァムは疑問を口にせず飛び掛かった。

 速度に頼った突進はブロキーナには効果がないのは先の攻防で分かっている。フェイントで裏をかこうにも、彼の観察眼の前ではすべてを見通されているとみて間違いない。

 

 となればマァムに残されたのは投げ技くらいのものだった。一度失敗した程度では諦めるにはまだ早い。

 今一度何をしたのか見極めなければ………。

 

「ハァっ」

 

 一気に間合いを詰め、正面から大きく振り上げた左腕を叩き込む。

 右側面への袈裟斬りの手刀。愚直なまでの一撃は、強烈な威力こそ込められているが、目を瞑っていても避けられるほどに正直なものだった。

 

 当然、ブロキーナがこれをまともに受けるはずもなく、腕を少し掲げて簡単に受け止めてしまった。

 

 しかし手刀はあくまで囮だ。マァムは狙い通り、手刀を受けさせたブロキーナの右手首掴むと、地面へ向かって落とす様に体重を乗せた。

 重心を崩されたブロキーナの足の片方が地面を離れる。と、同時に半身を滑り込ませて空いた右手でブロキーナの襟元を掴んだ。

 

 あとは再び半身を捻り地面へ落とすだけ。そう思った瞬間のこと。スローモーションのようにゆっくりと宙に浮いたブロキーナが動き出した。

 

「綺麗な”入り”と”掴み”だね。だけど、ワシがこの体勢から何万回技をかけているか知っているかい?」

 

 その言葉の意味を理解した時、マァムは宙に浮いていた。

 視界がぐるりと反転し、次の瞬間、全身に衝撃が駆け抜けた。受け身などとれる筈もない。

 

 続けて2度、3度、4度……容赦なく叩きつけられ、18を超えたあたりで、ついに意識が途切れた。

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