ダイの大冒険の世界を念能力で生きていく   作:どか0623

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97 トーヤ、先へと進む。

 なんだろう。まったくモンスターが出てこない。

 130階付近まで進んだが、俺とマリンは警戒しながら周囲を見回した。

 

 よくよく考えてみれば、100階付近で呑気していた頃から異変は始まっていた。破邪の洞窟といえばモンスターの巣窟である。生態系云々ではない。ここでは洞窟内に満ちる瘴気がモンスターの形となって現れるのだ。地下へ潜るだけ瘴気は強くなっていき、より強力なモンスターが顕現する。

 

 だというのに、かれこれ2時間はモンスターに遭遇していないし、最後に戦ったのもかなり弱かった(俺は戦ってない)。

 なので予想よりかなりハイペースだ。良いことなのは間違いないのだが不気味である。

 

 そんな俺達の心情はむべなるかな。イライラしながら他方を見れば、でろりん達は楽し気に宝箱チャレンジなる遊びをしている。

 

「行くぜ、今度は俺の番だ!」

 

 道端に唐突に置かれている宝箱の前で、でろりんは針金を噛んで形を変えるとニヤリと笑ってみせる。んな怪しいもん触るなよ。と、心の中でツッコミを入れるが、そんな思いは届くはずもなく次々に鍵穴に突っ込んでカチャカチャと音をたてている。

 

 ――ガチャリ。

 

 僅か十数秒ほどで錠前から音が響く。同時にずるぼん達の歓喜の声があがった。

 

 ……チッ、罠じゃなかったか。ミミックか人食い箱なら良かったのに。

 

 なんてことを考えつつも、正直、宝箱の中身が気になって仕方ない。

 先ほどからずっと抱いていた彼らへの怒りよりも好奇心の方がちょっとだけ上回る。マリンも気になったらしく、ゆっくりと開かれる宝箱を彼らの後ろから覗き込んでいた。

 

 だって、ここは古代迷宮の下層130階だぞ? 一体、どんなお宝が入っているんだ……?

 

「いえーい! 金貨だぜ金貨。じゃあ約束通り俺の総取りな」

「ちぇっ、さっきは薬草だったじゃないか。降りときゃよかったよ」

 

 悔し気に表情を歪めるずるぼん達。どうやら賭けはでろりんの勝ちだったようだ。

 

 説明しよう! でろりんたちがやっていた『宝箱チャレンジ』とは、宝箱の中身を巡るギャンブルである。

 

 まず初めに親(今回はでろりんが担当)が自分を含めた参加人数×120ゴールドを参加料として賭ける。それに対し子はそれぞれ参加料を超えない範囲で金額を賭ける。そして宝箱を開け、もし中身が掛け金を上回る価値があれば親の勝ち、そうでなければ負けというルールだ。

 宝箱を開ける際、ミミックや罠が仕掛けられていた場合も親の負けとなる。親が負けた場合、子たちは160ゴールドの儲けを得て、中身はみんなで山分け。逆に親が勝った場合は、掛け金と中身を総取りする。

 

 なあ、腹立つだろ?

 

 

 +

 

 

「それにしてもお前たちスゴいな」

 

 下層へと進みながら、俺は彼らに話しかけた。

 先へ進む道線上の罠はすべてアバンが解除しているため不要な作業ではあるのだが、彼らは宝欲しさにあちこち捜索しては罠を解除して回っていた。それだけじゃない、ほぼ100%の確率でミミックなどの擬態に引っかからないのだ。

 開錠とは違い、こうしたものは技術よりも目利きや集中力、そして注意力が求められるものだと思う。

 

「ガハハ、俺たちは昔から遺跡とか廃墟とか巡ってきたからな。あると分かってる罠なんて大して怖くねえのよ」

「魔王軍にやられた町なんかじゃ瓦礫や崩落なんかがあるからな。罠なんかよりよっぽど厄介なんだぜ。知ってるか? 家屋の木材や石材に使用されてる塗料の中には、火災の熱で溶けると吸うだけでヤバい毒に変わることがあるんだ。そこを誤って入ったら即お陀仏なんだぜ」

 

 でろりんとへろへろが自慢げに話す。ていうかお前らが「お陀仏」って言うのはオカシイだろ!

 その横で、まぞっほは手で髭を撫でながら、眉を寄せて考え込み、さっきの金貨を取り出して松明の炎にかざしていた。

 

「わしはあんまり得意じゃないがのう。どっちかと言うと、こ奴らが持ってきたものを目利きする方が向いとるわい。これ《さっきの金貨》なんかは特に珍しいものでの。通貨としての貨幣ではなく、収集型金貨と呼べるものじゃよ。刻まれている年号や文字はほとんどすり減っておるが、特徴的なギザギザはローレット加工と呼ばれておってな。おそらく400年前の――(以下略)」

 

 どう考えてもおかしいだろ! なんでそんなもんが前人未踏の地下洞窟の宝箱に入ってるんだよ!

 

 まぁいいや。なんか突然スイッチの入ったまぞっほは放っておくことにしよう。

 

「で、まぞっほが見立てた価値を下回らないようにアタシが売り捌くってわけ。これが儲かるのよね」

 

 下品に笑う口元を隠すことなく、ずるぼんが胸を張った。

 でろりんとへろへろが集めて、残りの二人は換金作業か。なるほど、良いチームだな――なんて言うと思ったかバーカ!

 

「勇者一行どころか盗掘集団じゃねえかよ。もっと人の役に立つことやれよ」

「あら、市場に流れない通貨や商品を経済に戻してあげてるのよ。絶対に現れない持ち主のことなんて気にしたってしょうがないでしょ」

 

 ぐぬぬ、火事場泥棒のくせに居直りやがって…。

 

 

 +

 

 

 なんて色々と気になる言動を取る彼らだったが、やはり優秀と言わざるを得ない。

 たまに現れるモンスターは、彼らは一方的に排除していた。しかも、イオラやメラ系などの屋内では使用が危ぶまれる呪文は使わないなど、徹底ぶりは素晴らしい。

 

 目的地までの戦闘は、マリンに頼りっきりになるだろうと思っていたので、嬉しい誤算となった。

 感心する俺の横で、なぜかマリンはちょっとだけ拗ねていた。

 

 しかしまたしても疑問に思う。やはりこの階層にしては、出てくるモンスターがちょっと弱い気がする。

 呪文を控えるというのは、戦術としては正しいことだと俺も思う。だけど、裏を返せば、呪文を控えてなお楽に倒せるレベルの敵しか出てきていないということになる。

 

 …………まぁ、考えても仕方ない。とにかく急ごう。

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