絶対無敵のヒーローアカデミア   作:DestinyImpulse

56 / 91
絶望の戦い

 

「やめろ!勝てるわけがない!あいつは本物の化物なんだぞ!」

 

 叫ぶ爆豪の視界には今、絶望的な戦いに挑む響香達の姿が映っていた。レシプロを発動させた飯田、深淵闇躯(ブラックアンク)を発動した常闇が必死に戦ってはいるものの、21号との差は余りに歴然だ。

 

 唯一戦えるのは轟と八百万の氷結界の龍(トリシューラ)だけだ。21号の攻撃を氷のウロコで防ぎながら強靭な腕で吹き飛ばす。それでもケロッとしている21号に八百万は戦慄した。

 

「攻撃が効かない…!」

「そ~れ!」

「くっ!?」

 

 そして何より…21号は龍悟と同じ気弾を放つのだ。スレスレで回避する氷結界の龍(トリシューラ)に21号の拳が迫る。

 

「させるか!」

「やらせん!」

 

 其処に飯田と常闇が同時に仕掛ける。21号は吹き飛ばされたが…直に起き上がる。

 

「……僕達の攻撃が効いていないのか…!」

「絶望の権化め…!」

「それでも!」

 

 飯田、常闇、響香は敵の強大さに戦慄しながらも挑むその後に障子、麗日、蛙吹も続いた。

 

「あんな奴を野放しにしたら私達どころか皆まで…!」

「……あぁ!」

 

 蛙吹が最悪の未来を想像し無口な障子すら震える。

 

「絶対に勝たなきゃならん!!」

 

 最後に麗日が叫び、3人が挑む。障子が正面から拳を振るい、麗日と蛙吹が両側面から殴りかかる。だが21号はどれも気にせず突進し、体当たりで3人の身体を跳ね飛ばした。

 

 入れ替わるように飯田と常闇が飛びかかるが、これもまるで意に介さない。二人の頭を鷲づかみにし、地面へと叩き付けた。それだけで大地が陥没し、二人の身体が地面へと埋もれてしまう。

 

「はぁぁぁ!!」

 

 相澤が裂帛の叫びをあげながら上空から強襲し、拘束包帯を放つ、だが通じない。21号の気弾に呆気なく弾かれ、回し蹴りで地面を無様に転がる。それを追って21号が突進し、慌てて止めに入った障子は何の障害にもならずラリアットで吹き飛んだ。そして21号は倒れている相澤の腹を蹴り上げ、宙へ浮かばせた。

 

「ぐほああっ!!」

 

 唾液を撒き散らしながら悲鳴をあげる相澤へ、更に追い討ち。気弾を放ち、またも相澤の腹へ当てて彼を遙か彼方へと吹き飛ばした。

 

「ぐはっ!」

 

 相澤は丁度爆豪がいる付近へと墜落し、爆発が響く。それを気にも止めず21号は響香に迫る。響香の予測も今回ばかりは相手が悪く先ほどから上手く21号の攻撃をいなしつつカウンターを決めているがまるで効果がない。

 

(どうなってんの!?痛がる素振りすらないなんて!?)

 

 21号の攻撃を音の予測で的確に避けカウンターを決めている響香は殴っているのに痛がる素振りを見せない21号に戦慄していた。龍悟みたいに強靭な筋肉の硬さはない……確実にダメージは与えている筈なのに。

 

「上手に避けるじゃあない……これならどう!」

 

 なんと21号の腕がいきなり伸びたのだ。突然の出来事に響香は避けきれず。拳が響香を吹き飛ばし近くの木に叩きつけた。

 

「ガバッ…!」

「響香ちゃん!」

 

 響香の危機に麗日が駆け付けるが、21号が連続で発射する気弾を前にガードしながら近付くだけで精一杯だ。

 

「こらあ!少しは手加減しろぉ!」

「手加減って何かしら……?」

 

 余りの力の差に麗日から弱音が零れるが、残念ながら21号は手加減という言葉など知らない。気弾を撃ち続け、それでも近づいて来る麗日へ強力な一撃を放った。

 

「とっておきよ…!」

「へへっ……ちょっとしつこすぎるよ……」

 

 ここまで力の差があると笑うしかないのだろう。麗日は薄ら笑いを浮かべながら21号の気弾を浴び、空高く吹き飛んで行った。

 

「お前ぇぇえ!」

 

 其処に轟の怒号と共に氷結界の龍(トリシューラ)がその爪で21号の腕を切り裂いた……だが。

 

「再生した…!」

 

 無くなった腕から新しい腕が生え何事もなかったかの様に笑う。轟はある結論に辿り着く。

 

「アイツは常に再生し続けている…!それこそ…不死身に近い程に…!」

「不死身なんて……一体どうすれば…!」

 

 ダメージがない相手にどうやって勝てばいいのか……八百万の絶望は尤もだろう。

 

 

 

 響香達の必死の戦い、そして敗北を見届けた爆豪は地面に手を突いて絶望の声を漏らし続けていた。

 

「もう駄目だ、おしまいだぁ……殺される、みんな殺される……逃げるんだあ……勝てるわけがない…!」

 

 だがそんな彼の髪を相澤が鷲掴みにし、強引に起き上がらせた。

 

「何を寝言を言っている!不貞腐れてる暇があったら戦え!」

「だ……駄目だぁ……アンタには分からないのか。やはりあいつは化物……俺達が勝てる相手じゃあねぇ…」

「チッ、何が自分はオールマイトを超えるヒーローだ!」

 

 相澤は爆豪へ軽くない失望を感じていた。自分勝手で気に食わない奴ではあったが、それでも戦闘におけるその天才性は認めていたのだ。

 

 だというのに今のこいつは何だ?絶望が強ければそれで諦めるのか。戦いすらしないのか。ナンバーワンだと叫んで居た爆豪は一体どこに消えたのだ。

 

 結局コイツは強過ぎる相手には立ち向かわない……自分より弱い相手にしか強くなれないヘタレだったのか…相澤は失望した。

 

 

 

 

 

「ふふふ、貴方達は他とは別格ね…アイツ等じゃあ勝てない訳よ……そうこなくちゃ面白くないわ!」

 

 21号が表情を好戦的に歪め、お返しとばかりに殴りかかった。それを腕で防ぎながら氷結界の龍(トリシューラ)は尻尾を振るう。21号は残像で避け後方から迫るが……

 

「グルルオオオォォォォォ!」

「死角がない…!」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)の右の頭が後ろを向き氷のブレスを放つ。21号は飲み込まれ体中が凍りつき爆発が起こる。だが、ブレスが終わると煙の中から21号が飛び出し右の頭を掴んだ。

 

「なっ!?」

「何かしら今のは…?」

 

 21号がアッパーで氷の肉体を砕く、右の頭は半壊してしまった。だが、次の瞬間…その頭が再生した。

 

「同じ芸当なら…俺達もできる!」

「ふふふ、良いわよ…とてもね!」

 

 次の瞬間…氷結界の龍(トリシューラ)のブレスと21号の気弾がぶつかり合う。その見事な戦いぶりに相澤は呆然とし、爆豪の髪を掴んだまま戦いに魅入っていた。

 

 だが21号を恐れる爆豪は恐れているからこそ、一つの事実に気付く。

 

「だ、駄目だ……やはり勝てない……逃げるんだ……」

「どこへ逃げても同じだ。奴を倒さん限り俺達に未来はない!」

「分からないのか?や、奴はダメージすら負っていない………勝てっこない!」

「そこまで性根が腐っていたとはな!消え失せろ!二度とその面見せるな!」

 

 爆豪はもう駄目だ。相澤はそう悟り、爆豪から手を離して捨てた。そして響香達を救うべく走り出す。勝てる勝てないではない。例え勝てないと分かっていても挑まねばならない時があるのだ。その相澤の背を見ながら爆豪は考える。

 

(何故なんだ……何故あいつらは奴に立ち向かうんだ……勝てるわけないのになぜ戦うんだ……何故……)

 

 爆豪の消えかけていたプライドの炎。それが今、小さく点火されようとしていた。

 

 

 

 

 氷結界の龍と暴食の魔人の戦い……それは21号が優勢だった。氷結界の龍(トリシューラ)の破損部分は轟と八百万によって修復されるが二人の体力は無限ではないのに対して21号は正に不死身の再生能力とスタミナを持っていた。動きが遅くなり敗北は必然だ。

 

「そろそろ…おしまいね」

「まだだ……こんな所で終わってたまるか!!」

 

 轟の叫びに八百万も己を奮い立たせる。そんな二人を嘲笑う様に21号は気弾をぶつけようとする。その決戦を遠くで見ながら、爆豪は拳を握り締めていた。

 

「アイツ等が戦っているのに…クソ……!」

 

 

 相手は勝ち目のない不死身の怪物だ。だがそんな相手に自分以下の奴等や轟が挑んでいる。なのに自分が何もせず縮こまってばかり…それは彼の自尊心が許さぬ事だった。

 

 遂に爆豪のプライドが蘇った。

 

 

「ナンバーワン、わぁぁあ!この、俺だぁぁ!!っちゃああああああ!!」

 

 爆破で飛び上がった爆豪は21号目掛けて落下と一緒に回転を始める。両手から交互に放つ爆発で回転スピードを上げて行く。

 

「!?」

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

 21号が気づいた時にはもう遅い。爆豪が放った超爆破は21号に決して浅くないダメージを与えた。

 

「この!」

「この俺が相手だ!くらええええええ!」

 

 爆豪は次々と爆破を放っていく。21号の反撃もその天才的センスで躱しカウンターを放っていく。

 

閃光弾(スタングレネード)!!」

「くっ!?」

 

 爆豪が放った閃光は21号から一時的に視覚を奪う。21号が視力を回復したその時に見えたものは……

 

 

「半分野郎!露出女!!」

 

 こちらに向かって冷気を最大まで凝縮させている氷結界の龍(トリシューラ)が居た。

 

 

「「氷結のブリザードバースト!!」」

 

 

「!?、アブソリュートリリースボール!!」

 

 

 放たれた絶対零度の一撃……いくら21号でもタダでは済まない。21号は赤黒い気を凝縮させた一撃を放った。

 

 強大な一撃は中央でぶつかり合い、爆風で辺り一面全てを吹き飛ばしながら押し合う。だが21号が上だ、ブリザードバーストは除々に押されていく。

 

「くっ!」

「このままでは!」

 

 負ける!そう思われたその時…

 

「「必殺!!メテオファロッキーズ!!」」

 

 戦いの余波で溢れていた木の残骸や岩石が21号に流星群の様に激突する。それは…麗日が軽くした物を蛙吹がベロで弾いた物だった。蛙吹だけではない飯田や常闇、障子も次々と投げ、相澤も包帯を巧みに使い21号にぶつけていく。

 

「心音増幅MAX!ハートビートファズ!!!!」

 

 復活した響香も衝撃波を放つ。響香達はここを唯一の勝機と見なし、二人へ全力で加勢する。それは…爆豪もだ。

 

 

徹甲弾 機関銃!(A・Pショット・オートカノン)!」

 

 掌全体ではなく一点に集中して起爆させることで破壊力を増大・及び極小規模で貫通力を上げ連続で放つ。爆破の弾丸が21号に命中する。

 

「鬱陶しい!!」

 

 ダメージは無いが単純に気が散る。だがその気の乱れこそが今は致命的だ。一瞬の隙も逃さずに轟が叫ぶ。

 

「今だああ!」

 

 ここが勝機!轟と八百万が最後の力を振り絞りブリザードバーストがアブソリュートリリースボールを打ち破る。

 

「………!」

 

 絶対零度の一撃が21号へと着弾し巨大な氷山が彼女を閉じ込めた。やがて、静寂が場を支配し…響香達は一斉に座りこんだ。

 

「や、やった……」

 

 化物だった…本当にそれしか言葉が出ない。ハッチヒャックを遥かに超えた存在…こちらは全員満身創痍。だが、それでも勝つ事が出来た。

 

「ウチ等の勝ちだ…!」

「やったよ!梅雨ちゃん!!」

「えぇ…勝ったのよ!」

 

 勝利に喜ぶ響香達……轟は爆豪に礼を言う。

 

「ありがとよ……爆豪…」

「………すまねぇな……」

 

 さっきまでヘタレていた事に爆豪は負い目を感じていたが、それでも勝てたのは爆豪のお陰だ……腐っているは訂正するか……相澤がそう思ったその時……

 

 

 ーー氷山が赤黒い光と共に吹き飛ばされた。

 

 

「良くもやってくれたわね!!お菓子の癖して!!」

 

 希望を絶望が吹き飛ばす。そのあまりの光景に響香達は声も発せない。誰もが目を見開き、身体を震わせて見ているだけだ。

 

 

「フォトンウェイブ!!」

 

 宙に浮かんだ21号は指先から赤黒い細いビームを放つ……それが地面を薙ぎ払い大爆発を起こす。響香と飯田は辛うじて回避できたが常闇達が薙ぎ払われてしまった。

 

 21号は次に爆豪に迫る。

 

「ヘタレてれば痛い目を見ずに済んだのに……アンタは簡単には殺さないわ!!」

 

「ふおぉあ!?」

 

 

 彼女は怒りの形相で爆豪へと一直線に飛翔し、逃げる暇も与えずに腕を爆豪の顔へと衝突させた。そのままラリアットで前へと飛び、準備していたかの様に其処にあった岩盤へと衝突、めり込ませた。

 

 

「もう終わりかしら?」

 

 爆豪を岩盤へと押し付ける。彼女の圧倒的力に晒された爆豪に成す術などない。力が抜けた身体は岩盤を滑り落ちていくだけだ。そんな爆豪を見届け21号は笑う。

 

「終わりね。所詮クズはクズなのよ……」

 

 倒れた爆豪から完全に興味を失い、21号は氷結界の龍(トリシューラ)へと視線を移す。庇うように飯田が前に出て蹴りを放つが全く意味がない。邪魔な石でも除けるかのように腕を振り上げる。

 

「グハッ!」

 

 アッパーカットで跳ね上げられ、この一撃だけで飯田は倒れ込む。

 

「飯田ッ!」

 

 響香が慌てたように飯田を助けに行く。だが遅い。21号が振り向きざまにラリアットを叩き込み、響香も何も出来ずに吹き飛ばされてしまった。

 

「よくもぉぉお!」

 

 八百万の叫びと共鳴して氷結界の龍(トリシューラ)が突撃するも轟と八百万の体力も既に限界だ。放つ攻撃には速さがない…それを見て21号は薄ら笑いを浮かべ赤黒い気を纏う。

 

「!?、八百万!」

「轟さん、何を!?」

 

 それを見た轟は八百万を氷結界の龍(トリシューラ)から分離させ避難させる。

 

「エクセレントフルコース!!」

 

 それと同時に赤黒い槍へと姿を変えた21号が氷結界の龍(トリシューラ)を貫いた。

 

 遂に氷結界の龍(トリシューラ)をも破壊され轟は地面へと投げ出された。

 

「よく頑張ったと褒めて上げるわ」

 

 そんな轟に21号は再びアブソリュートリリースボールを放つ……響香達は倒れ轟も力は残ってない……

 

(此処までか………)

 

 轟は静かに目を閉じる。

 

 

「遅れてすまねぇ……後は任してくれ!」

 

 

「!」

 

 声が聞こえた。思わず目を開ける。其処にはーー

 

 

 ーー龍悟(ヒーロー)が居た。

 

 

 

END

 




新しい活動報告を出しました。
ご意見よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。