ソードアート・オンライン~黒の剣士と灰の剣聖~   作:カノン・キズナ

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第16話 ダークエルフのNPC

 アインクラッド第3層は全体が森に包まれている。だけどそれは1層のホルンカ村の周辺などにあった森とは全然違う。例えるとあっちは現実世界でもよく見かける森だ。木々が生い茂る一般的な森。

 

 

 だが3層の森は少し違う、どれもが幹の太さが1mを超えるものばかりで大樹と呼ばれるような樹ばかりだ。そんな樹が埋め尽くす森というのは、とても幻想的な風景だまさにファンタジーの世界に出てくるようなそんな森で出来ているのが第3層になる。

 

 

「わあ……!」

 

「すごいねえ…!」

 

 そしてこの風景を始めてみたものは必ず感動の言葉が出てくる。それはアスナやユウキも例外ではなく、思わず走り回りこの森林を満喫している。

 

 

「驚いたな…!こんな風景が見れるなんて」

 

 

「ここまで来たかいがあるだろ?」

 

 

 相変わらずユウキと走り回っているアスナを見ていると、その美貌も相まって森の妖精か何かと勘違いしてしましそうだ。

 

「随分と見とれてるな、まあ気持ちはわからないでもないけど」

 

 

「…なんでお前はそう心を見透かしたようなことばかり言うんだ」

 

 

「分かりやすすぎなんだよキリトが。フルダイブの世界じゃ感情は隠しにくいとは言うけどお前は特に分かりやすいからな」

 

 

 なんだかいつまでもカイトには隠し事が出来ないような気がしてきた。

 

 と、いつまでも3層の風景に感動しているわけにもいかない。この層でも…いやこの層から出来るとあることのためにも、なし崩し的についてきたパートナーさんに確認することがある。

 

 

「えーっと、おふたりさんお楽しみの所悪いんだけどちょっといいかな?」

 

 

「ん?…なに?」

 

 

 諸事情で機嫌の悪いアスナの顔ばかり見ていた最近とは打って変わった笑顔を俺に向けながら返事をした。そして俺は人差し指を北の方に差しながら話を続けた。

 

 

「このまま北へ行くと主街区のズムフトがある。西に行けば次のむらがあるんだがまあそれは置いておいて、本当ならこのまま転移門へ言ってアクティベートを済ませるんだが、その役目はあとから来るリンド隊かキバオウ隊に今回は任せたいんだ」

 

 

「キリト君にしては珍しいじゃない。先にしておきたいことでも有るの?」

 

 

「察しが良くて助かるよ、実は西の森であるクエストを先に済ませておきたいんだ。ただあくまで俺の個人的な事情だし、補給やメンテを先に済ませたいならここでお別れってことになる」

 

 

「ふーん――まあ別に私はソロプレイヤーだしここで別行動を取るってのは間違いじゃないけど…」

 

 

 そういいながらアスナは俺の目をじっと見ていた。さっきのカイトの話じゃないけど俺の様子をうかがっているような気がする。

 

 

「キリト君はどうしたいの? もちろんあなたがどうしても私と別行動したいって言うなら仕方ないけど」

 

 

「俺は……、出来ればいてほしいと思ってるけど」

 

 

「そう――ならこのままついていくわ、それに君がわざわざ今行くってことは先に済ませたほうがお得ってことでしょ? 私、効率の悪いこと嫌いだからちょうどいいわ」

 

 

 ついていくと言われて少しホッとしていたのは間違いない。もちろんそれはこの間アルゴが言ったようなお姫様を独り占めしている愉悦感などではもちろんなく、なんというかアスナと行動するようになってから毎日が新鮮とでも言うのだろうか、そんな気持ちがここ数日確かにある。

 

 

 もちろんゲーム初心者と言うのもあるだろけど、これまでの俺なら考えつかないようなことを彼女はやってのける。そんな彼女に興味が出てきている、その発想や行動力はこれからも苦境が続くであろうアインクラッドにおいて重要なものだ。

 

 

 そんな事を考えながら、森をしばらく進み大体のクエストのスタート地点にはたどり着いた。

 

 

「さてと、ベータ通りならこの辺りなんだけどな」

 

 

「キリト君のやっておきたかったクエスト?」

 

 

「そういうこと。ただスタート位置がちょっとランダムなんだよな。アスナ、耳に自信ある?」

 

 

 もし目的の場所が近ければ剣戟の音がするからそう聞いたのだが、アスナの方を見ると何故か頬を少し赤くしながら耳を隠してこう言った。

 

 

「…キリト君そういう趣味だったの?耳フェチ?」

 

 

「なるほど、キリトにそんな趣味が…」

 

 

「なんでそうなるんだよ!この状況なら聴力のこと言うだろ普通」

 

 

 何故か俺の性癖の話にスイッチしそうだったので、慌てて話題を元に戻した。

 

 

「目的の場所から金属音、まあ戦闘の音が聞こえるはずなんだ。手分けして探そう、4人なら見つけやすいだろうし」

 

 

 そして俺達は耳を澄まし、周囲の音を必死に探った。この仮想世界はゲームとは思えないほど細かい所にまでこだわっていて、足音や葉っぱ残すれる音、小動物のさえずりに至るまであらゆる雑音が入ってくる。それを集中して金属音だけ探し当てるのはそれなりに大変だ。

 

 

「キリト、あっちから何か聞こえるよ。モンスターとかの音じゃなさそう」

 

 

 こういう捜し物をすると何故かいつも索敵スキルを持ってないユウキが見つけるのが実に不思議だが、俺達はユウキの言う方向に集中するとたしかにかすかに金属音らしき音が聞こえてくる。

 

 5分ほど音の聞こえる方へ走ると音がかなり大きくなっていた。更にもう少し行くとカーソルマークが2つ浮かび、目的地まですぐという所まで来たところで茂みに身を隠し他の3人にこのクエストの説明をすることにした。

 

 

「見ろ、アレが俺が探してたクエストNPCだ」

 

 

「へぇ…」

 

「凄いねえ本物みたい」

 

「ね、ねぇキリト君、あの人達ほんとにNPCなの?」

 

 

 アスナが驚くのも無理はない。そこにいたのはまるでプレイヤーと変わらない風貌で俺達より耳が少し長く尖った種族…RPGゲームではよく出てくるエルフ族だった。

 

 

 戦っているエルフ族は2人、片方は男性のエルフで北欧風の外見で剣と盾を持ちいかにも騎士のような見た目だ。そしてもう片方は対象的に褐色の肌を持つ女性のエルフで、こちらは盾を持たず曲刀を装備していた。

 

 

「NPCどころか厳密に言えば、俺達的にはモンスター扱いさ」

 

 

「あれ、エルフでしょ?」

 

 

「ああ、男のほうが《森(フォレスト)エルフ》、女のほうが《ダークエルフ》さ。2人の頭の上を見てみろよ」

 

 

「両方の頭の上にクエストマークが出てるわ。どういうこと?」

 

 

「簡単な話さ、このクエストはどちらのを受けるか選択するんだ」

 

 

 そう言うと、パーティ3人は揃って俺の方へと向き直った。

 

 

「選択型のクエストってことは、もしかして何らかの勢力系のクエストなのか?」

 

 

 察しのいいカイトは概要に気づいたらしい。今だにキョトンとしているアスナとユウキのために俺は詳細を説明することにした。

 

 

「このクエストは今まであったような単発型のクエストやシリーズクエストとは規模が違う。SAO初の大型キャンペーンクエストなんだ、層をまたいで続いていって完全クリアは9層になる」

 

 

「きゅ!……9層ってそんなにボリュームのあるクエストなの?」

 

 

 思わず大声を出しそうになったアスナは慌てて声を抑えたが、その顔は驚愕の表情になっていた。

 

 

「しかも、途中でミスっても受け直し不可。当然対立ルートへの変更不可。ここで選んだ方のクエストを9層まで続けなくちゃいけない」

 

 

「対立ルート?それってもしかしてあの2人のエルフの?」

 

 

「そう、今あそこで戦ってるエルフのどちらかを助け、もう一方と戦うんだ。まあ俺はβの時に一度クリアしてるから、どっちを選ぶかはアスナたちで好きに選んでいいぞ」

 

 

「好きな方ね…、心情的には女性を斬るのは気が引けるな」

 

 

「ボクもお姉さんの方に味方したいなあ」

 

 

「私もカイトくんとユウキに賛成だわ。それにキリト君がクリアした方を選んだほうが良いだろうし」

 

 

 どうやらみんなダークエルフの方に味方することで意見が一致したらしいが…

 

 

「俺がどっちに味方したか言ってないよな?」

 

 

「わからないとでも?」

 

 

 ものすごく得意げな顔で言い返されてしまった。やっぱり俺って分かりやすいんだろうか…

 

 

「とにかく方針は決まったんだし、早くいきましょ」

 

 

「ちょ、ちょっと待った!もう一つ大事なことがある」

 

 

「なに?」

 

 

「ダークエルフに加勢するのは良いんだけど、あのエルフは両方7層で出てくるのエリートクラスの強さだから俺達じゃまだ勝てないんだ」

 

 

 倒せないと言われると倒したくなる。βの時にその思いに駆られ挑戦したものの全く刃が立たなかったのはいい思い出だ。

 

 

「勝てないって…私死にたくないわよ!?」

 

 

「それは大丈夫、俺達のHPが半分減ったところで加勢した方―今ならあのお姉さんが奥の手を使ってくれて倒せるから」

 

 

「――奥の手ってことはなにか使いたくない理由があるのよね?」

 

 

 流石に鋭いなと感心しながら、俺はこのクエストの顛末を説明する。

 

 

「―――自爆攻撃で相手のエルフと相打ちするんだよ」

 

 

「…なるほどそういうことか」

 

 

「…そんなの私イヤだわ」

 

 

「気持ちはわかるけど、こればっかりはどうしようも…」

 

 

 そういいかけたところで、アスナの横顔がえらく真剣になっていることに気がついた。こういう顔をしている時は大抵本気モードで一切の妥協を許さない傾向があることを短い付き合いながら理解していた。

 

 

「体力を削られずに倒せばいいんでしょ」

 

 

「その方がやる気は出るな。俺がアイツのタゲを取るからアスナ達は死角を狙って攻撃を仕掛けてくれ」

 

 

 カイト達は本気であの相当に強いエルフを倒そうとしているらしい。そんなやる気を見せられたらゲーマーの俺が黙ってみているのはなんだか癪だ。

 

 

「分かった分かった!倒せばいいんだろアイツを。仲間はずれはゴメンだからな」

 

 

「わかればいいのよ。それじゃいきましょ」

 

 

 

 

 

『人族がこんなところで何をしている!』

 

 

 と《森エルフ》の男

 

 

 

『邪魔立て不要! ここから立ち去れ!』

 

 

 

 と《ダークエルフ》のお姉さん

 

 

 正直逃げ出したい気持ちも多少はあるけど、強敵に立ち向かうという行動はRPGの醍醐味でもある。アスナ達とアイコンタクトを交わすと、俺達は《森エルフ》に剣の切っ先を向けた。

 

 

 すると《森エルフ》の顔つきがみるみる険しくなり、カーソルが危険を表す赤色へと変わる。

 

 

「愚かな…ダークエルフ如きに加勢するというのか」

 

 

「人族にも道理の分かる者たちが居るということだろう」

 

 

 βの時と少し会話内容が違うなと感じた。

 

 

「男として女性に剣を向けたくないしな」

 

 

「あなたに恨みはないけど、消えるのはそっちよDV男!」

 

 

 これがDVに当てはまるのかはとっても疑問だけど、そんなツッコミを入れる余裕はあいにく今はない。なにせ《森エルフ》のカーソルがどドス黒い赤色へと変わったからだ。分かって吐いたけど、とてつもなく強そうなその表示思わず「うへえ…」とため息が出てしまいそうだ。

 

 

 

「予定通りアイツのタゲは俺が取る、ユウキはカバー頼む。キリトとアスナはアイツへの攻撃頼む」

 

 

「分かったよ!」

 

「任せて!」

 

 

「盾持ちとの戦闘は初めてだから気をつけろ!」

 

 

 

 

 

――――20分後

 

 

「ば…バカな……」

 

 

 β時代3分ほどしかもたなかった対エルフ戦だったが今回は20分ももった上に相手を倒してしまった。もちろんダークエルフのお姉さんの強さも有るが、カイトのタゲ取りが的確だったおかげで俺達に攻撃が来ることがほとんど無く、時折あるスキルの硬直もユウキがカバーに入り危なげなく戦闘が進んだ。

 

 

 やはりカイトのパリィや武器防御のセンスは目を見張るものが有る。本格的な盾持ちは初めてだったにも関わらず、難なく捌いていた。

 

 

「ふう、やれば出来るじゃない」

 

 

「ほんとに出来ると思わなかった」

 

 

 普通は負けイベントなんだけどそれをこなしてしまう辺り、このパーティの強さを実感する。それと同時に俺はこれから起きることへの予想がたたないという、SAOではじめての事態になったことに若干の不安を覚えていた。

 

 

 

「助けられたようだな。感謝する人族達」

 

 

 

 なにせ、俺の知っているこのクエストでは彼女は既に死んでいたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで3層導入部分になります。


少々リアル多忙に付き短めで切り上げています。


3層は小説版のストーリーで進めていく予定です。



来週は2話挙げられる予定です(そう予定)


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