ソードアート・オンライン~黒の剣士と灰の剣聖~ 作:カノン・キズナ
ナーヴギア(NerveGear)
それは天才科学者、茅場晶彦が設計したフルダイブ型VRマシン。
無数の信号素子が埋め込まれ、それが発生させる多重電界がユーザーの脳と直接接続する
己の耳や目ではなく、脳に直接送り込まれる情報を見て聞く。
完全な仮想現実を可能にしたそれはまさに画期的な発明といえるだろう。
そんなナーブギアの新作ゲームタイトルソードアート・オンライン。
VRMMORPGというゲームジャンルの初タイトルでもあり世間ではかなりの注目を浴びていた。
この通称SAOと言われるゲームに彼"甲斐 綾人"はゲーム名カイトとしてはじまりの街に降り立った。
「これがSAO、試験の段階で知ってたけどここまで現実に近いなんて」
ナーブギアの試験に参加していた俺はどのようなものかは知っていたが、実際にソフトを体験するのは初めてで、自分の体や周りを見渡して感覚を確かめていた。
――まるで本当に体を動かしているみたいだな。
実際の体は病院のベッドでヘッドギアをかぶったまま微動だにはしていないはずなのに現実で生活している時と少しの違和感もない。
これが仮想現実なんだと実感する半面これから起こるであろう事実に少し気分が落ちる。
――少し外に出て戦闘練習をしてみるか
ゲームそのものの詳しい情報は持っていなかったが少なくともはじまりの街周辺には
非アクテイブのモンスターが多く練習するにはちょうどいいことぐらいはベータの資料を見て知っていた。
武器を振ってモンスターを倒すぐらい簡単に行くだろうと思っていた数分前の自分に少し苛立ちを覚えていた。いや武器は振れる、流石にそれくらいは出来る。だが問題はソードスキルがうまく発動できないことだった。何度か素振り行うのだがどうにもうまくいかない。どうしたものか悩んでいたとき近くから声が聞こえてきた。
「ぬぉ……とりゃ……うへぇぇ!」
「そうじゃないよ、大事なのは初動のモーションだ、クライン」
赤みがかった髪にバンダナをした男と、黒い髪のファンタジーの主人公のような見た目の男がフレンジーボアを相手に練習戦闘をしているようだった。
「んなこと言ったってよぉ、キリト……アイツ動きやがるしよぉ」
どうやら、キリトと呼ばれた黒髪の青年が戦闘のレクチャーをしているようだ
初対面でいきなり声をかけるのも少し悩んだが、俺は思い切って彼らに声をかけてみることにした
「すいませーん、もしかして戦闘の練習ですか?良ければ俺もお願いできませんかどうもうまく行かなくて」
「いいよ、こっちで一緒にやろう」
幸い簡単に受け入れてもらえて二人と合流し自己紹介からすることになった
「俺は、キリトだ」
「カイトって言います、ごめんなさい二人でやってたみたいなのに」
「なぁに、いいってことよこういうのは一緒にやったほうが楽しいからな、俺はクラインっていうんだ」
「よろしくおねがいします、キリトさんクラインさん」
名前はあくまでキャラクターネームのため呼び捨てでも問題はないのだが初対面で少し遠慮してしまった
「キリトでいいよ、堅苦しいのあんまり好きじゃないしさ」
「俺も、クラインでいいぜ敬語使われるとくすぐったくなっちまうしよ」
ソードスキルがうまく出来ないと話すとクラインもやっぱそうだよなと言い、アイツ動きやがるからよお
とキリトにぼやいていた
「カカシじゃないんだからそりゃ動くさ、ちゃんとモーションを起こしてソードスキルを発動させれば
あとはシステムが技を命中させてくれるよ」
――モーション、モーション
クラインと俺は呪文のようにブツブツ言いながらそれぞれの武器を振っていた。
「うーんどう言えばいいかなあ……1、2、3で振りかぶって斬るんじゃなくて少しタメを入れてスキルが
発動するのを感じたら、ズバーンといくんだよ」
――ズバーンか…
キリトの言うように構えてからタメを作ると右手に何かがみなぎるような感じがした。
ここだと剣を振り切ると心地よい効果音とともに片手剣基本技スラントを発動させ眼の前にいたフレンジーボアを1撃で倒すことに成功した。クラインもうまく発動できたらしく少し大げさ気味に喜んでいた
「なかなかいい感じじゃないか、その調子でもう少し勘がつかめるまでやるか」
「ったりめえよ!……と言いてえところだけど…」
クラインの視線が少しずれるどうやら時計の確認をしているらしい
「そろそろ一度落ちて、メシ食わねえとなんだよな。ピザの宅配5時半に指定してっからよ」
「準備万端だな」
呆れ声を出すキリトにおうよと胸を張り、思いついたように続けた。
「あ、んで、オレその後他のゲームで知り合いだった奴らと、はじまりの街で落ち会う約束してんだよな
どうだ、紹介すっからあいつらともフレンド登録しねえか?いつでもメッセージ飛ばせて便利だからよ」
「え……うーん」
キリトは少々歯切れの悪い返事をした。もしかしたらキリトはあまり人と付き合うのが得意ではないのかもしれない。クラインは良いやつだが他のメンバーもそうとは限らない、だからこそどうしようか悩んでいるのではないかもしれない。
かくいう俺も、正直迷っていた。人付き合いが苦手なわけじゃないけどすでに出来上がっている集団の中に入るというのがどうも二の足を踏ませた。
すると俺とキリトのその様子に気づいたクラインがすぐに首を振った。
「いや、もちろん無理にとは言わねえよ。そのうち紹介する機会もあるだろうからな?」
「なんだか悪いな、せっかく誘ってくれたのに」
「良いんだって、礼を言うのはこっちの方だしよ、この借りはいつか返すぜ精神的に!」
「そんじゃあ、これで落ちるわ。ありがとなキリト、カイトもこれからよろしくな」
そういってログアウトの操作をしていたクラインだったが急にその手が止まった
「あれ、何だこりゃ……ログアウトボタンがねえよ」
――ついに始まったか
「ボタンがないってそんなわけ無いだろ、よく見てみろ」
二人はお互い自分のウインドウを確認するがやはりログアウトボタンはなかった
念の為俺も確認したがやはりログアウトボタンななくなっていた。二人がバグかもなどと慌てていたとき急に始まりの街の鐘が鳴った
次の瞬間3人はシステムによる強制転移ではじまりの街の中央広場につれてこられていた