ソードアート・オンライン~黒の剣士と灰の剣聖~   作:カノン・キズナ

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第3話 ホルンカ村

俺とカイトは、はじまりの街を出て日が沈む前に次の拠点、《ホルンカ村》に到着した。日が沈んできており、夜になりつつあったが俺の頭には急いで次の行動を取らなくてはという思いがあった

 

 

「キリト、村についたけどこれからどうするんだ?」

 

 

「まずは道中で倒したモンスターのドロップ品を売って、それで出来たお金で防具と回復と解毒ポーションを買おう」

 

 

 そう言いながら俺はそこそこ防御力の高い茶革のハーフコートに手を伸ばした。

 するとそれを隣で見ていたカイトが不思議そうな顔で聞いてきた。

 

 

「あれ?鎧とかもあるのに、それで良いのか?」

 

 

「動きが少し遅くなるのが嫌でさ、それに避ければダメージはないし」

 

 

 というのは恐らくあまり説得力のある理由にはならない、実際は今のアバター…つまり自身の外見に綺羅びやかな金属鎧をつけている状況を想像すると猛烈な拒否反応が全身を駆け巡ったからだ。

 

 

「なるほどな、なら俺も同じのにするかな。武器は買わなくても良いのか?」

 

 

「武器はいらない、ここで売ってる《ブロンスソード》は初期装備の《スモールソード》より威力は高いけど、耐久が低くて壊れやすいんだ。しかもこの辺に出る植物モンスターの腐食液にも弱いから今のままのほうが良い」

 

 

「そういうものなのか、威力があればいいってわけでもないんだな」

 

 

「それにここには報酬で剣がもらえる片手剣使い必須のクエストがあるからな、剣はそっちでなんとかすればいい」

 

 

 俺は単純に少し強い次の街へ来たわけではなく、《森の秘薬》クエストを受けに来たのだ。このクエストをクリアすれば報酬として《アニールブレード》が手に入る。少なくともこれがあれば3層程度まではこれで事足りる

 

 

「剣が報酬のクエストかたしかにやっておきたいな」

 

 

「けどこれが結構面倒なんだ。クエストをクリアするためにはこの辺にいるネペントの花がついてるやつから落ちる《リトルネペントの胚珠》が必要なんだけど、この花つきが全然出てこなくて普通のネペントを倒して出現率を上げるしか無い」

 

 

「ということは、二人でひたすらネペントを狩って、花つきが2体出るまで粘るってことか」

 

 

「そういうこと。まあ慣れてくれば良いレベリングにもなるだろうし地道にやってこう」

 

 

そして俺達はクエストを受注するため、村の奥の民家に入ると、鍋でなにかを作っていたいかにもおかみさんみたいな見た目のNPCが話しかけてきた

 

 

「こんばんは、旅の剣士さん。お疲れでしょう、食事を差し上げたいけど今はなにもないの。出せるのは一杯のお水くらいなんです」

 

 

「それでいいですよ」

 

 

するとNPCはカップに入れた水を置いた

俺はそれを飲み干し、一息つくとおかみさんは再び鍋に向き直した

 

 

「気になったんだけど、鍋でなにか作ってるのに食事はないんだな」

 

 

「カイト、中々いいところに気づくじゃないかそれがヒントなんだよ。もうしばらくするとクエスト発生のマークが着くから」

 

 

そして数秒待つと、おかみさんの頭上に金色のクエスチョンマークが点灯し、それを見てすかさず俺は声をかける。

 

 

「なにかお困りですか?」

 

 

幾つかあるクエスト受諾フレーズの一つだ。するとおかみさんの頭上の?マークが点滅する。

 

 

「旅の剣士さん、実は私の娘が……」

 

 

このクエストの内容は、おかみさんの娘が重病にかかってしまい、それを治療するためには森の補食植物の胚珠からとれる薬がいるというものだ

 

 

クエストが進行し家からでた俺はカイトがクエストを受けるのを家の前で待っていると時鐘メロディが流れた、午後七時の知らせだ

 

 

ふと、現実世界はどうなっているのか気になった。少なくともまだ自分が生きているということは現実世界において自身のナーヴギアはまだ外されていないということだ

 

 

このデスゲームから生還するには百層にも及ぶ浮遊城アインクラッドを攻略し、ゲームをクリアするしかない。もちろん自分がそれを成し遂げてやろう、などという勇者的思考は持ち合わせていない。

 

 

今はただ強くなって生き残るだけ、せめて自分の命とついてきてくれたカイトの命だけでも…自分の手の届く範囲の命は守りたい。その先のことはそれからでもいい。

 

 

ーーごめんな、母さん心配かけて……。ごめんな、スグ。お前が嫌ってたVRゲームで、こんなことになって……

 

 

「スグ、っていうのは妹さんか?」

 

 

クエストの受諾が終わって家から出てきたカイトが声をかけた。

 

 

 

「そうだけど…ってもしかして、声に出てたか?」

 

 

 

「ごく普通にな。そうかキリトはお兄さんか」

 

 

 

「妹って言っても血は繋がってないけどな、正式には従兄妹だから」

 

 

 

 俺は10歳のときに戸籍の情報から自身が、母親の妹夫婦の養子になっていることを知った。それ以来周囲との距離感が分からなくなり、結果的にそれがゲームや仮想世界へ傾倒していった。

 

――もし、奇跡的にこのゲーム抜け出せたらしっかり顔を合わせてスグと呼んでやろう

 

 

 特に理由もなくそう決意した。

 

 

「さあ、カイトもクエストを受け終わったんだろ早速森に行こう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 それから、1時間半ほど俺とカイトはネペント狩りをしていたが、なかなかお目当ての花つきは出てこない。すでにネペントの相手にも慣れ、レベルも俺が3になりカイトももうじき3に上がろうとしていた。二人的には完全に自分の運との戦いになりつつあった。

 

 

「流石になかなか出ないな、花つき」

 

 

「そうだな俺もさっきからサーチングしてるんだけど、全然見当たらない」

 

 

 

 SAOにはスキルシステムがありレベル1のプレイヤーがセットできるスキルは2つまで。一つは片手用直剣で埋め、もう一つをどうするかカイトと相談し俺は敵の周囲の状況把握のため索敵を、カイトは武器防御をセットした。

 

 

 本来安全性の高いパーティープレイに索敵スキルはあまり必要ないが、カイトがまだこの世界に不慣れなことを考えどちらかといえばソロ御用達の索敵スキルを取ることにした。

 

 

「今の感じならもうしばらくは無理なくネペントを狩れそうだししばらく頑張れるか、カイト?」

 

 

 

「問題ないと思う、なんていうか馴染んできた感じがするよ。辛くなったら言うからこの調子で頑張ろう」

 

 

 

 俺はほんの2時間ほど前に出会ったこの少年カイトに不思議な感覚を感じていた。最初にあったときは、動きも少しぎこちなかった。ゲーム用語で言うところのニュービー(初心者)なのは間違いない。

 だがその後は、恐ろしいほどの飲み込みの速さで今では、俺ともそれなりに連携できるぐらいには上達している。

 

 

 はじまりの街を出た頃は、カイト一人くらいなら自分でも守れると思っていたが、今ではそんな考えはすでになく、逆に今後ろを気にせず戦えているのはカイトのおかげだと思うほどだった。

 

 

 ――パーティーで行動するのも案外悪くないのかもな…

 

 

 β時代ソロプレイヤーだった俺らしくもなく、そう思いかけたときだった

 

 

 

「うわぁーー!!」

 

 

 

 急に叫び声がどこからか聞こえてきた。とっさの出来事に今の声が何処から聞こえてきたか必死に探したが、反応はカイトのほうが少し早かった。

 

 

「こっちだ!こっちの方から聞こえてきた」

 

 

 

 もしプレイヤーであれば文字通り命の危険があるがNPCの可能性も大いにありえた、β時代になかったクエストの可能性もある。だが俺達ははそこまで考える前に体が悲鳴の方向へ動き出していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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