また作ってしまいました。今回はソフィー、フィリス、リディー&スールの不思議な錬金術師の世界です。
ネルケのアトリエが発売されていたのを見かけたのでリディー&スールをプレイしています。
例のごとく、気まぐれなるままに更新します。それでもよろしい方は続きをどうぞ。
それは単純に言えば運が悪かっただけのことだろう。泣きっ面に蜂、踏んだり蹴ったり、なんて言葉があるように、ただ不幸が連続で起きてしまっただけの悲劇。
故郷へと帰る道の途中、魔物に追いかけ回され追い詰められたと思えば、崖崩れが起きて激しく流れる川に頭から突っ込み、川の下流の方にまで流されて、なんとか生きてはいたものの記憶喪失となり、数年を経て記憶を取り戻し、今度こそと故郷へ戻ってみれば、故郷の村は滅んでいた、なんてホントに劇じゃねぇんだから。
隣に住んでた言動が少しおかしなばあ様も、魚を釣ってきては、お裾分けしてくれた青年も、体が弱いのに皆のために走り回る村長も、誰も誰もいなかった。なんせ建物のほとんどが土に埋もれて、視界に入るのは屋根だった物の残骸ぐらい。人がいたらすぐわかる。
こんな目に遭っても直、俺の心が折れなかったのは大事な大事な約束があったから。
「また会おうなっ!」
「ぐすっ...うんっ!絶対!絶対だよっ!」
絶対に会いに行くから。だから。
「待っててね、ソフィー。」
「ん、んぅ...?」
薄目を開けると、窓から日光が射し込んでるのが見える。どうやら寝落ちしていたようだ。
意識はまだ半分ほど沈んだままだが、体を少し動かそうとして、自分が椅子に座ったまま寝ていたことに気づいた。ぐーっとゆっくり背伸びをしてみると体中からゴキゴキッと鳴る音。身体中に走る痛みで覚醒した頭の中で考えることは、さきほど見た夢の光景。普段なら夢なんてほとんど忘れてしまうが、今回見たものは別ものだ。なんせ俺の実体験だし。
「久々に見たなぁ、あの日の夢。」
後の調査でわかったことは。
あの日、俺達の帰り道の近くでモンスターの縄張り争いがあり、モンスター達は普段よりも活発化していた。
あの日の前日、そのエリアは天候が悪く、大雨が降っていた。大地は水によって脆くなり、川の水は通常よりも量が増え、流れも早かった。
崖から落ちて流された時、頭に落ちてきた瓦礫が直撃した。
故郷の村は豪雨によって土砂崩れが発生して飲み込まれてしまった。
結局のところ、あの日起きたことは不幸が重なっただけの偶然の産物であることがわかった。自分なりに調査した結果が、まさかの偶然という一言で片付けられるというのがわかった時は、一日中、部屋で思考停止状態になっていた。
これが誰かの仕業であったなら、そいつを憎むことで自分を保つことができただろう。魔物の仕業であったなら世界中の魔物を根絶やしにすることが生き甲斐となっただろう。でも現実はそうじゃなかった。この結果が良かったのか悪かったのか。それも、
「あーやめやめ!んなこと考えてもしょーがねぇだろうに!」
マイナス方面に振り切れそうになった思考を無理やり戻す。さて、気分転換のためにもまずは、
「飯でも食いますかね...と、その前に。」
鞄の中から包帯を取り出して右腕に巻いていく。自分で巻くのに初めこそ30分もかかったりしていたが何年も繰り返していれば慣れるもので、数分もあれば出来るようになった。包帯を巻き終わった右腕を軽く動かして変にずれたり締めすぎたりしてないか確認。
「ん、これでよしっと。」
椅子に引っかけた少しばかりくたびれた愛用の深緑の上着を羽織り、部屋の扉を開ける。
「ご利用ありがとうございました。気をつけていってらっしゃいませ。」
宿屋の主人に見送られ街を出る。頭上に広がる青い空には雲一つ無く、太陽がこの上なく自己主張中。どうやら今日は少しばかり暑くなりそうだ。と、思ったら頬を撫でるように風が吹き、目の前の草の海に波が立つ。自然豊かな場所だからこそ見れる光景にちょっと見とれていた。
「ふふっ。これだから旅はやめられないのよな!」
さてさて、目的地までは後もう少し。今日はどんな光景があるかなー。
「あはははは!!!おれをつかまえてみろー!!!」
「まてまてー!ぜったいつかまえるんだからー!!!」
あたしの目の前に二人の子供がいた。一人は元気一杯な男の子。もう一人も男の子に負けないぐらいの元気一杯な女の子だ。
一見すると男の子の方がお兄ちゃんのように思えるけど、実は同い年の隣人であることををあたしは知っている。どうしてかって?だって目の前の子供たちは、昔のあたしとお兄ちゃん風を吹かす幼なじみだった人なんだから。
場面は変わる。子供達は二人で街の外を歩いていた。
門番の人の目を盗んで、街から抜け出した時のことだね。初めて見る街の外の景色にあたしたちは夢中になりすぎて、魔物に気づくのが遅れちゃったんだ。
「グルルルァァァァ!!!」
「ソフィーっ!!!」
「え?キャッ!?」
いきなり突き飛ばされて、急にどうしたの!?って聞こうとして男の子の方を見たら、右腕から血がたくさん出ているのを見てパニック状態になっちゃって。
でも男の子はすごい痛いのわかるのに、あたしに「大丈夫だから。」って無理に作った笑顔で言ってきたんだ。その時の彼の姿を見て、そんなことを思ってる場合じゃないのはわかってたけど、格好いいって思ったんだ。でも、その時だったんだろうなぁ。皆が憧れるって言ってた『恋』って気持ちが芽生えたのは。
「...フィー。...さい!」
誰か呼んでる?あれ、それになんだか体が揺れて?
「ソフィー!起きてください!」
「ん...プラフタ?おはよー。」
あたしの目の前に銀髪の綺麗な人、正確には人形だけど、プラフタの顔があった。
「おはようございますソフィー。...大丈夫ですか?」
心配そうにあたしの顔を覗き込んでくるプラフタ。挨拶の後にいきなり大丈夫と言われても何が大丈夫なんだろう?
「いきなりどうしたの?」
「気づいてないのですか?自分が泣いてることに。」
「え?」
プラフタに言われて頬を触ってみると、何か頬に濡れてるものが。
「何か悪い夢でも見たんですか?」
「ううん!そうじゃないの!ただ...『マナス』の事思い出しちゃって。」
「...確かソフィーが小さい時に行方不明になったという幼馴染み、でしたか。」
マナス、それが幼馴染みの中で一番早く産まれたからって理由でお兄ちゃん風を吹かしていた彼の名前だ。
「うん、久しぶりに夢見ちゃったからかも。でも大丈夫だよ。それにマナスはきっと生きてる。悪運だけは強いから、大丈夫だよ...きっと。さ、朝御飯の準備をしよっか!」
「ソフィー...。」
プラフタが何か言いたそうな顔をしてるのを気づかないふりをして、あたしは朝御飯の仕度にとりかかった。
あの後、あたし達の声に気づいた街の警備の人達がすぐに駆けつけてくれて、二人とも事なきを得たけど、マナスのケガは完全には治らなかった。身体には影響は無かったけど、右腕にケガの痕が残っちゃったんだ。見る人が見れば気分を害するくらいには酷い痕で、その日からマナスは右腕に包帯を巻くようになって、あたしはそれを見るたびに胸が締め付けられる思いだった。
それから数年経って、親の事情で故郷に戻らなきゃいけないマナスを泣きながらも見送って、その一ヶ月後だった。マナスの故郷の村が無くなって、マナスが行方不明になったって聞いたのは。
でも、あたしは信じてる。行方不明っていうだけなら、生きてる可能性だってあるということ。なら、あたしは、その可能性にかける。そう決めたんだ。
「ご飯も食べ終わったし、それじゃしゅっぱーつ!目指す街は...えーっと?」
「ライゼンベルグ、ですよソフィー。」
「そうそうライゼンベルグ!頑張って公認錬金術師になるぞー!」
「その意気や良し...ふむ、今度は少し難しい課題でも考えておきますか。」
「あはは、ほどほどにお願いします。」