皆さんも花粉症やら何やら、身体にはお気をつけください。
リリィさんの迎えの馬車に三人で揺られている中、ちょっと気になったことがあったのでアメリアさんに聞いてみることにした。
「そういえば、コルネリアはどうしてアメリアさんをレオンさんと呼ぶんだ?」
「あぁ、それね。私がキルヘン.ベルにいた時はレオンって名乗っていたからよ。まぁいろいろと事情があってね。クレアさんにはアメリアで呼んでもらってるけど、貴方はどっちの呼び方でもいいわよ?皆にはレオンで定着しちゃってるし。」
「いいの?それなら俺もレオンさんで呼ばせてもらうけど。」
「いいわよ。もう偽名どころか愛称とか渾名みたいになっちゃってるし。」
「そういうことなら遠慮なく。改めてよろしく頼む、レオンさん。」
「えぇ、よろしくねマナス。」
「お疲れ様リリィ。さて、みんな揃ったところで先日の小瓶の調査の結果を報告するわ。」
そう言ってクレアさんが昨日の小瓶と一枚の紙を出してきた。紙の内容を見ると、おそらく粉の成分表ではあるんだろうけど、専門じゃない俺達は首を傾げるばかり。
「あーごめん、これ見てもちょっとわかんないや。」
「いえごめんなさい。私も成分表は全くわからなくて、とりあえず貰ったものを見せただけですわ。結論から言いますと、これには微量の毒成分があることがわかりました。」
「つまり体調不良の原因は、この粉で間違いないんですね?」
「はい。医師の人も、その見解で間違いないだろうと言ってました。」
ふむ...ということは俺の予想はだいぶ当たってるかもしれないな。確証が取れないのが厳しいところだけども。
「成分はわかったけど、結局これってなんなのかしら?今日こそ話してくれるわよねマナス?」
先日はぐらかした分レオンさんが俺に強めに聞いてくる。この人、物事をはっきりさせないと気が済まないタイプかも。
「そうですね、まだ確証が持ててないですが答えましょう。俺の予想では、これはモンスターの鱗粉か何かだと思ってます。」
「モンスターの鱗粉...その根拠は?」
クレアさんから当たり前の質問。さて、順番に答えていこう。
「まず自然発生するような代物じゃないことが一つ。この辺りの植物とか調べてみたけど、毒性のある花粉とかは無かったし、何より屋上なんかに積もるようなものでもないしな。」
一歩踏み出したら、ふわっと舞う埃。部屋の中ならともかく風通しのいい屋上でそれが起きるのは、ちとおかしいよね。
「ちなみにリリィさんだけが体調不良にならなかったのは、作業をする時にマスクをつけてたからだと思います。」
普段からマスクを付けているリリィさんは粉を吸うことがほとんど無い。だからこそ一人だけ影響を受けなかったんだろうな。
「な、なるほど。私が平気なのはそういうことだったんですね。」
花粉等の対策がまさか異変の影響を防いでたとは思わず驚くリリィさん。このことも粉が原因と言える理由の証明にもなったので結果的にグッジョブ。
「次に空のキラキラについてだが。その正体は、その埃っぽい粉だと思ってる。」
「え!?」
「埃っぽいのは砂埃がついてるからで、それは元々無色透明なんじゃないかと。クレアさん、その辺も聞いてます?」
「はいそうです、取るのは難しかったですけど、埃っぽいのは砂埃の色で、粉自体は透明に近い色じゃないか、と言ってました。」
そう、この粉の厄介な所が無色透明なこと。地面に着いたこれは土とかの色が着くけど基本的には目に見えない。だから街中に舞っていることに気づかずに、いつも通りの生活を送る人々は体の中に粉が蓄積、その結果、体調不良を引き起こしたのだろう。
「やっぱりね。キラキラ光る理由は虹が見えるのと同じような原理で、透明の粉を通して光が屈折するからだと思う。あと屋上でキラキラを見てきた時に、街全体にかかってるんじゃなくて、何かが通った後みたいな感じに広がってたのも気になってね。」
まるで何かが通った後のように広がっていたキラキラ。モンスターが飛んでいた、というなら俺的にはかなりしっくりくる、のだが...。
「だからモンスターの鱗粉じゃないかとは思ったんだけど...肝心のモンスターの情報が無いんだよね。」
考え方は間違ってないと思う。だけど断定するには情報が足りない。
「...私は、その推測当たってると思うです。」
俺の考えを話していた時、ずっと何か考えていたコルネリアが突然口を開いた。皆もコルネリアに視線が移る。
「実は部下の人達に色々と街の人からお話を聞いてもらっていたです。そしたら、空のキラキラの中に、でっかい蝶々みたいなのを見たって子供達がいたそうです。」
「まじか!?どんな姿だった?」
「それが、それっぽい影というか輪郭を見ただけで、姿は見てないそうです。なので子供の戯れ言とか勘違いで片付けられてしまっていた情報のようですね。」
「そうでしたか...やはり直接街の人達の声を聞きに行かないと。ここからでは見えないものもたくさんあるのね。」
そんなことを呟くクレアさん。こういうことに気付ける人だからこそ、お父さんも仕事の手伝いを許してるんだろうなぁ。きっといつかは、いい町長になるだろうな。
「あ、あと目撃証言は街の西と南の二ヵ所でバラバラでしたが、両方とも、その蝶の影は北に向かったと言ってましたです。」
喋り終わったのだろう、用意された紅茶を口に付けるコルネリア。この証言はかなりの収穫だ、鱗粉を撒き散らす存在の可能性が出てきたことで俺の考えが間違ってないのがわかった。
「でも、これでマナスさんの推測の信憑性がだいぶ濃くなりましたね。」
「コルネリア、その蝶の影は確かに『北に向かった』のね?」
北に向かったことに今度はレオンさんが口を開く。何か気になることがあるのだろうか?
「はい、そうですが、何か心当たりあるです?」
「昨日ちょっと旅の人から話を聞いてね、なんでも北の森の深いところで、おかしなことが起きてるらしいのよ。もしかしたら無関係じゃないかもしれないわね。」
「北の森...そういえば森の奥で霧が発生していると報告があったわね。これから調査を誰かにお願いしようとしたのだけれど...。」
レオンさんの言葉にクレアさんが北の森に異変の報告があったことを話始める。
「ちなみに、そのおかしなことってのは?」
「その霧の中を進もうとすると、元いた場所に戻ってくる、らしいわ。奥に進めなくなってる、ってことね。」
奥に進めない、ね。ふーむ、もしも意図的に誰かが進めないようにしてるならば、その存在はたぶん...。
「そんなことが...でもどうして森の奥地に霧?一体何が?」
森の調査のことを考え始めるクレアさん。でも話の流れを考えると、これはだいぶやばい案件だ。クレアさんなら気づくと思うので一度止めて改めて考えてもらおう。
「ちょい待った。ここは一旦情報を整理すべきかな。クレアさん、紙に纏めてみてくれる?」
「え、えぇわかったわ。えーと...。」
まず俺の推論から、体調不良の原因は大きなモンスターが撒き散らす鱗粉。微量に毒の成分がある。
コルネリアの証言から、姿が見えないのが気になるものの、巨大な蝶々の存在が街の上空を飛び、北の森へ向かったこと。
そしてレオンさんの証言、北の森の奥地に発生した霧。森の奥に入ろうとした旅人が元の場所に戻される不思議現象。
ここまで書き終わって見えてくる事実。それは。
「まさか、北の森の霧もモンスターが関わっている?」
「うん、可能性は高いかも知れしないな。」
「私もそう思うです。」
「私もその考えに賛成するわ。」
どうやら皆も同じ結論。さて、モンスターが関わってくるとなると、危険度はかなり増す。
「それなら街にいる旅人にすぐモンスターの退治依頼を!」
「それはダメだ。」
「どうして!?」
早く事態を解決したいのか、すぐに動こうとするクレアさんを止める。
「もし、この騒動を引き起こしたモンスターが霧の犯人なら、その霧にだって鱗粉が混じってる可能性はかなり高い。いたずらに人数増やしても被害者が増えるだけかもしれない。」
それに、もしも本気で人を近づけたくない場合、毒素が街中にある鱗粉よりも強い可能性もある。そうなったら森で動けないまま、モンスターに袋叩きにされることも。そうなったら目も当てられない状態になりかねない。
「な、なるほど。でもそうなると誰に調査を依頼すべきでしょう?」
その言葉に俺はコルネリアとレオンさんに視線を向けると、二人とも目があった。考えることは、どうやら一緒らしい。
「その調査、俺達に任せてもらえませんか?」
アメリアさんですが、ソフィーのアトリエの影響が大きく自分の中でもレオンさん呼びが定着してるので、こんな形にさせていただきました。思うところがあるかもしれませんが、この方向で進ませていただきます。ご了承くださいませ。