今回はオリジナル要素の中のオリジナル登場人物の話となります。説明等々は後日また前書き辺りに書き込みますので、よろしくおねがいします。
「このクッキーうまいっ!!」
「おいし~♪」
最初の警戒心はどこへやら。テーブルを挟んで美味しそうにクッキーを頬張る二人。 口にあったようでよかった。ちょっと女の子の方のクッキーの減りが速すぎるのは気のせいだと思いたい。
「さて、それじゃあ自己紹介しようか。俺はマナス、錬金術師をやってる。よろしくな。」
「オレはアレン。こっちはトウカだ。」
「トウカだよ~。よろしくね~はぐはぐ。」
耳が隠れるかぐらいな長さの黒髪に赤い瞳の少年がレン。
白髪のボブカットに翠眼の少女がトウカ。よし覚えた。
いろいろと話を聞くと、二人はご近所さんで所謂、幼馴染みというやつだそうだ。ちなみに歳は二人とも10歳。
「それで、何日もウチの窓にへばりついてた理由を聞いても?」
「う...べ、別に。」
なんだ?さっきまで普通に話してたのに急に素っ気なくなったな。
「アレンくんはぁ~、恥ずかしがり屋さんだから~。」
「そ、そんなんじゃないし!」
「またまたぁ~。」
「もー!」
顔を赤くして反論するアレン君。なるほど、照れ屋さんなんだな。ってことは中に入ってこなかった理由もそういうことだろうなぁ。
からかわれてぐったりしているアレン君を尻目にトウカちゃんの話を聞く。
「アレン君はぁ~、れんきんじゅつ?にきょーみしんしんなのですよ~。今日だってぇ、あたしに『面白いもの見れるから来いよ!』って言ってきたからね~?」
「...。」
「...聞こえないフリか。」
「聞こえないフリだねぇはぐはぐ。」
「...っ!」
テーブルに突っ伏したまま動かないアレン君。しかしまぁ、そういうことなら期待に答えてあげようか。
「なぁ二人とも。錬金術、見たい?」
さて、今回作りますは『医者いらず』。一般的に出回ってる薬で、簡単に作れるものの一つだ。昨日までいろいろと作ってたから、手元にある材料が少なくなってきたので簡単なものにすることにした。
「まずは材料を選ぶんだけどー...薬の材料になりたいやつはいるかぁ!?」
『ここにいるぞ!』
『ここにもいるぞ!』
『こっちにもいるぞ!』
何かノリがいい奴らがいるな。まぁでもちょうどいいか。今日は君らの出番だ、よろしく頼むぜ。
「なにやってんのマナスさん?材料はしゃべらないよ?」
「ははっ!確かにそうだが、そうでもないんだよ。現に俺が持ってるこの子達は薬になりたいって願っているからな。」
師匠から言われたことがある。
優れた錬金術師の中には『素材の声』を聞くことができる者がいると。
そして素材の声、願いと言えるものを叶えてあげると、出来上がる物も同じ材料で作ったものより遥かに良いものが作れる。
俺も当時は半信半疑だったが、突然それが聞こえるようになった。あれは確かライゼンベルグにいた時だったか。
きっかけも何も心当たりは全く無かったが、声が聞こえるようになってからは、さらに錬金術に夢中になった。
より良い物を作るために材料達と相談したりすることも増えたし、保存環境だって暑すぎる寒すぎるといったことも教えてくれたりと、錬金術をしているのが楽しくなっていった。
「あたしも~しゃべってる声、聞こえないよ~?」
「大体の人は聞こえないものらしいから。ほら、釜の前にいくぞ。」
「「はーい。」」
釜の傍まで二人を呼んで、釜には熱いから絶対触らないよう注意してから一通りのやり方を見せてみる。
用意した材料を一つずつ入れていき、後はぐるぐるかき混ぜるだけ。
いつも通りに作っているだけなのだけれど、隣で材料を入れる度に、
「おぉ。」
とか、
「わぁ~。」
と声があがり、最後に中身をかき混ぜてる時に棒を目で追いかける二人を見てると、ちょっと楽しくて。それでいて、懐かしい。
今じゃ確かめる術なんて無いけれど、おばあちゃんも、こんな気持ちで俺達と一緒に錬金術をやってたのかな?
「よし、出来たぁ!」
「おー!」
「わーぱちぱち!」
釜の中から完成した医者いらずを取り出す。ふむ、ばっちり問題なしだ。
「これが錬金術だ、どうだ?驚いたか?」
「ホントにかき混ぜたら出来上がってる!すげー!」
「トウカちゃんもびっくりだよ~。」
出来上がった医者いらずを、目を輝かせながら見ている二人。期待には沿えることができたようだ。
「な、なぁ。」
「お、どうした?」
「えっと...その...。」
「んー?」
なんだかはっきりしないアレン君。なるほど、後ろでトウカちゃんがファイトだよ~と小声で応援してるが、俺にはバッチリと聞こえている。
「お...俺にもれんきんじゅつを教えてくれ!」
「よく言えました~♪」
「ちょ!?トウカくっつくなぁ!?」
勇気を出して言えたことを誉めるためにアレン君を抱きつくトウカちゃん。会って一日も経っちゃいないが、二人はホントに仲がいいな。
「マナスさん、あたしもれんきんじゅつ教えてほし~な~。」
「そうきたかぁー。」
何か欲しいものがあるとか、作ってほしい、とかなら一つぐらい記念になるようなものあげてもいいかなーなんて考えてたけど、教えてほしいかぁ。
いや、個人的には教えること自体は全然オッケーでむしろ大賛成。
この子達なら悪い方向には行かないと思うし、ただなぁスタートラインが問題なんだよなぁ。
「や、やっぱりダメ...なのか?」
「ダメなのか~?」
急に黙りこくった俺に、二人が涙目で俺の顔を覗きこんで来る。あぁそんな目で俺を見るなぁ!!!!
「わかった!わかった!教えてやる!」
「やったー!」
「やった~♪」
さっきとはうってかわって、はしゃぐ二人。でも教えはするが、先にやらなきゃいけないことがある。
「ただし!」
「ただし?」
首を傾ける二人。今おなじタイミングでおなじ方向に傾いたな。
「テストを受けてもらわにゃならんな。」
「テスト...うぅ、べんきょーはやだ...。」
あ、頭の方はあまりダメなのねアレンくん。
「あー安心してくれ。テストっていっても勉学じゃないから。」
「それじゃあ、何をするの~?」
「今お前さんらが持ってる医者いらず。それを一人で作ることさ。道具とかはここにあるやつ使っていいから...どうだ、やるか?」
二人は互いに顔を見合わせる。が、すぐに俺の方に向き直った。
「やります!」
「やりま~す!」
やる気は充分、と。ただな~やる気だけじゃどうにもならないんだよなこれ。
俺が今回見たいのは、二人に錬金術師としての適正があるかどうか。才能って言い換えてもいいと思う。
これがないと、何をどうやっても釜は爆発してしまうのだ。
「まずはアレン君から。材料はコレとコレとコレね。はい始め!」
「えっと、さっきは確か...。」
俺の作り方をそのまま再現しようとしているね。順調順調。材料を放り込んだら後はかき混ぜるだけ。頼むから爆発はしないでくれよ...!
内心ドキドキしながら完成まで待つ。そして、
ピカッと釜の中身が光った。いよっし!
「あ、でき...てる?」
アレン君はまだ小さいから、釜の中身を代わりに俺が取り出す。
ふふっ、ちょっと形が歪だったり色がちょっと違ったりしてはいるが、ちゃんと医者いらずだ。まずは一安心。
「ほい、お前さんの初錬金術の品物だぞ。」
「あ、ありがとうございます...じゃなくて合格なのか!?」
「待て待て、焦るな。次はトウカちゃんだ。やれるな?」
「あたし~頑張る~!」
うむ、トウカちゃんもやる気満々。俺にアレン君と前列があるおかげで、動きに迷いがない。
そして最後に釜をぐーるぐる、と。
お願い!成功して!会って数時間しか話しちゃいないが、二人一緒じゃないとダメな気がするんだ!
だからお願い神様!今まで教会行かなかったりめんどくさくてお祈りサボったりしたの謝りますから成功してください!
そうして暫くかき混ぜていると、さっきと同じように釜がピカッと光った!イエスっ!心の中だけガッツポーズ!
「お、お~?」
出来たものを手にとってみる。こっちも形がどこか歪だったりするが、紛うことなく医者いらずだ。
「うむ、これがトウカちゃんの初錬金術の品物だぜ。」
「ありがと~ございます~?」
「なぁなぁ!それで結果はどうなんだ?合格か!?」
どうしても合否が気になるアレン君。あ、こら服引っ張るな!
「わかった!わかった!だから一端離れろ。」
とりあえず二人を下がらせる。
「さて結果発表だ。アレン君、トウカちゃん。お前たちは...。」
「「...ごくり。」」
「お前たちは...合格だぁぁ!!!」
「「やったー!」」
その場で跳び跳ねる二人。いやーホントによかった!俺も一緒に跳び跳ねたいなぁ!やらないけどねっ!
「そういうわけで、約束だからな。錬金術について俺がわかることなら教えてやる。まぁまだやることあるけどさ。」
「え、えぇ!?それは何なのさっ!」
「んなもん決まってる。お父さんお母さんに説明してこい。ちゃんと許可もらってきたら教えてやるよ。」
「わかったー!」
「あ~待ってよ~。」
元気よく返事をしてアトリエを飛び出すアレン君。
その後を慌てて追いかけるトウカちゃん。ちゃんと許可もらってくるよな?一応ご両親に反対された時の対応も考えておくか。うん、そうしよう。
「あ、そうだ~。師匠、トウカちゃんは明日はパンが食べたいな~。」
外に出る前に、こっちを振り向いたトウカちゃんは、それだけ言って、今度こそアレン君を追いかけて出ていった。
「...食い意地張りすぎだろぅ。」
テーブルを見てみると俺のおやつも含めて大量に焼き上げていたクッキーがほとんど無くなっていた。その上でパンを要求してくるとか、あの子、絶対に大物になるわ。
まぁとにかく今やるべきは。
「パンのレシピ探しか。」