少々遅くなりましたが、今回は彼の出番です。
そして後半はオリジナル要素がまた入ります。どうかご容赦くださいませ。
お気に入り登録、評価を付けてくださった方ありがとうございます!これからもがんばりますです!
コツ、コツ、と足音が響く。
時々、魔物の唸り声が聞こえたりはするが、何年も旅をすれば慣れたもので、声が聞こえようがビビることはほとんど無い。
向かってきたやつを風の力を込めた杖でぶっ飛ばし、奥へ奥へと進むだけ。それでも、お化け型の魔物がでてくると少し驚くけどね。
さて、俺が今どこにいるかと言うと、森の中にあった人々に忘れさられたような遺跡である。
森の中で採取をしていたら、いつの間にか目の前にあったのだ。
地上部分は崩壊していたけど、地下への階段があったので潜ってみることにした。
べ、べつにレヴィさんの遺宝の話が気になったからとか、あわよくば金銀財宝ざっくざく~♪とか期待してるわけじゃないんだからねっ!?
「この辺は大体見たし、もう少し奥に行ってみるか。」
もう少し奥を捜索してみようと一歩踏み出した瞬間。
バキィ!
「は?」
石の床を踏むはずの右足が床を踏み抜いた。そこから一気に石の床は崩れて、重力に逆らうことなく床だった石は落ちていく。
もちろん俺も一緒に落ちていく。
「なんでだぁぁぁぁぁ!!!???」
「またかよ...。」
下の階層に落ちた俺の第一声だ。何故またかと言えば、以前も遺跡を調べようとして上の階層から落ちたことがあるからだ。
あの時はろくに準備もしてなかったので真っ暗な部屋に足をケガした状態で取り残され大変な状況だった。
今回は事前に調査の準備をしていたのでケガもなく、錬金術で作った松明がわりの明かりもあるから、周囲の状況も一応は把握できた。
とりあえずは落ちた拍子に散らばった俺の荷物を集めなきゃならんのだが...。
「誰か来ているな。」
聞こえてくる靴音から近づいてくるのは人間だとわかる。おそらくは学者か探検家だろうが、一応警戒はしとく。いつでも杖と爆弾をだせるように構えていると姿が見えてきた。
銀髪をバックにして眼鏡をかけ、腰には本と銃を携えた、どこか学者のような雰囲気を持つ人だ。
というか、すっごい見覚えがあるんですけど。
「そこにいる君!すごい音がしたが...って君は。」
「あっはは...またお会いしましたね『カルド』さん。」
「ははっ、まさか『また』同じ状況で出会うとはね。ケガはしてないかいマナス君?」
こうして『また』、俺は歴史家である『カルド』さんと出会うこととなった。
周囲に散らばった俺の荷物を二人で拾い集めて、俺達は一度休憩することに。その辺の瓦礫を整理して即席の椅子代わりに座る。
「さて、久しぶりだねマナス君。ソフィー君の手紙の件があったとはいえ元気そうで何よりだ。」
「何度か危ないことはありましたが、まぁこの通りピンピンしてますよ~。」
右手をヒラヒラさせながら答える俺。何で手紙のことをと聞きそうになったけど、レヴィさんの話の中にカルドさんの名前があったのを思い出した。
「おや、あまり驚かないのだね。てっきりソフィー君の名前を聞けばもっと驚くものかと思ったんだけども?」
「実はこの前、レヴィさんに会いましてね。ソフィーや他の人達の話はある程度聞いているんですよ。」
「なるほど、彼に会っていたのなら納得だ。そして君がここにいる理由も...遺宝だね?」
「うぐっ...!?」
完全にばれてーら。いや今回は遺宝が目当てであって、金銀財宝ざっくざく~♪はおまけみたいなところだから弁明の余地はある...え、ない?
「ははっ!君は相変わらずのようだ...どうだろう?この遺跡の調査を二人でやってみないかい?」
カルドさんから突然のパーティ申請が来た。お宝探しだけなら一人でも出来なくはない。でもこの遺跡自体に興味が無いっていうわけでもない。
現にさっきまでの調査でいくつか壁画を目にしているのだ。返事に悩むことなんて無かった。
「是非ともお願いします!」
こうして俺はカルドさんと遺跡調査することになった。
「...ふふっ。」
遺跡の中を二人で歩き続ける。時々なにかの壁画や文字のような物を見つけては、何年前の代物などなどと二人で推測しながら進んでいると急にカルドさんが笑い始めた。
「どうしました?」
「あぁいや、こうして二人で調査しているとフィリス君を思い出してね。彼女との調査もなかなか楽しい時間だった。」
確か名前はフィリス=ミストルート。たった一年で公認錬金術師の試験に受かった女の子にしてソフィーの弟子。
試験が終わった後も色んな所を旅していたとはレヴィさんからも聞いていたのだが、疑問が一つ。
「あれ?確かその子ってレヴィさんと遺宝探しに行ってたんじゃ?」
「ん?あぁ、彼女は好奇心の塊のような子でね。レヴィ君の他にも一緒に旅をしていた人達といろんな事をしているんだよ。僕との遺跡調査もその内の一つ。今はおそらく、ソフィー君と一緒にいるんじゃないかな?」
「な、なるほど。」
どうやら俺の考えてるよりずっとアグレッシブなタイプの子のようだ。ソフィーと一緒にいるならば出会う機会はあるだろうし、その時を楽しみにしていよう。
「ふむ、どうやらここが一番奥のようだね。」
おっと、気づいたら遺跡の最奥の部屋に入ってきたようだ。
「こいつはまた...すげぇな。」
部屋に入るとこれまで見てきたものとは全然違う、大きな壁画が出迎えてくれた。
円形になっている部屋をぐるっと見回してみると、一周全てが壁画。ただ、やはり風化していて所々崩れているところもあった。
「ふむ...ふむ、やはりそうか。」
「カルドさんは、ここの壁画が何かわかったんです?」
「そうだね...君はここの壁画に何が書かれていると思う?」
おおう、質問を質問で返されたわ。まぁいい、壁画をもう一度ぐるっと見渡す。
そうして俺が出した答えは。
「この周辺にあっただろう国か集落の生活風景?」
「うん、僕もそう思う。」
カルドさんが俺に笑いかける。どうやら望んだ答えを返せたようでよかった。
「でもそれだけじゃ少し足りないかな?」
「というと?」
「もう一度壁画を見てごらん?どの絵にも必ず『ある物』が書かれているだろう?」
そう言われて見ると、確かにあった。民を導いただろう指導者の元に渦巻き、生活する人々の横に寄り添うように存在する白い線。どういった関連があるかはわからないけど、俺の思う答えを言ってみよう。
「もしかして...『風』ですか?」
俺の言葉にカルドさんが驚いた。まさか当たりだった?
「正解だ。前にも遺跡の中を一緒に歩いた時に思ったけど、君の観察眼は中々のものだね。君の言うとおり、これは風。ここに書かれている人々は風と共に生きてきたのだろう。そしておそらく、この指導者が『風詠み人』だと僕は思う。」
『風詠み人』?聞き慣れない単語が出てきたので聞き返してみる。
「ああすまない、『風詠み人』って言うのはね...風の声が聞けるらしいんだ。」
カルドさん曰く、『風詠み人』とは風の声を聞き、民を国を繁栄へと導いた者のことをそう呼ぶらしい。
『風詠み人』がいた村や国は例外無く何百年と存続出来ていたと記録が残っていたそうで。
カルドさんも、別の遺跡で『風詠み人』の記録を見たことがある、と言った。
「じゃあつまり、ここも『風詠み人』によって栄えていた国の一つ?」
「そういうことになる。彼らがどうやって『風詠み人』となったか、なってしまったのか。遺伝なのか道具があったのか。それはまだわからないけれど、いつかは解明したいものだ。」
そうしてカルドさんの説明は終わった。
『風詠み人』風の声を聞く者、ね。
それはまるで、『素材の声』を聞く錬金術師に似てるような感じだけど、関係性があったりするのだろうか?
ぐ~
「...。」
「...あぅ。」
そういや採取してる途中で此処に来たから何にも食べてなかったわ、めっちゃ恥ずかしい!
「ふふっ、そろそろ戻ろうか。これ以上は何も無さそうだし。」
「了解です...うぅ。」
さすがに20越えてんのに腹の虫の音を人に聞かれるとは...。しばらく立ち直れないかも。
カルドさんの案内で近くの村に着き、アトリエで物の整理をする。今日は森に遺跡と色々集めたから整理しとかないと。師匠みたいに俺は散らかしたりはしないのだ。
物を集めるのはいいけど、整理したりするのはいつも俺かメイドの『ロゼ』さんだったし。
結局、師匠が片付けをする姿は最後まで見たこと無かったし...。
「ん?そういえば師匠、風について何か話してたっけ?」
確かあれは師匠達と旅をしている時に、次の目的地を聞いた時だっけか。
『師匠!次はどこ行くんです?』
『そうだな。少し待つといい。』
俺が質問すると、その場で立ち止まり、目を瞑る。そして10秒ぐらい経つと目を開けて、
『あっちに行こう。』
と言い出した。どうして?と聞き返したら、
『あっちに面白いものがあるからだ。』
『なんで面白いものがあるってわかるの?』
『風が教えてくれるのさ。』
確かこんなやり取りだったはず。あの時は、風が喋る訳ないのに何を言ってるんだろう、って思ってたけれど。
「...まさかね?」
???
「...ふむ。」
「こちらにいましたかマスター。」
「ロゼか。すまない、長居しすぎたようだ。」
「いいえ構いません...風の噂を聞いていたのですか?」
「ああ、あのバカ弟子も元気にやっているようだ...なぁロゼ?」
「はい、なんでしょうか?」
「どうやら、これから暫くは楽しい時代になりそうだぞ?」
「それは風の噂から、ですか?」
「あぁ。ソフィー=ノイエンミュラー。フィリス=ミストルート、あのバカ弟子。それと...プラフタ。」
「プラフタ...まさか。」
「もしそうならば...また会ってみたいものだ。」
追記
最後に登場しましたメイドのロゼはオリジナルキャラであり、他アトリエ作品のキャラではありません。
紛らわしいかもしれませんが、よろしくお願いいたします。