ホントは変態おじさんの話を書こうとしたのですが、なかなか進まず、先にこの二人の話を書くことにいたしました。
「ぐーるぐる、ぐーるぐる、ぐーるぐるっと。」
釜の中を一定の早さでひたすら混ぜる。
今俺が作っている物には珍しい材料を結構使っているので失敗は許されない。
もし失敗したら、一から素材をかき集めなければならず、そうなるとまたかなりの時間を取られてしまう。
だからこそ油断はせず、火加減に気を付けながら、かき混ぜるのに集中集中。
そうしてかき混ぜていると、ようやく釜の中身が光りだす。これの意味する所は、
「でっきたぁぁぁ!!!」
完成したということだっ!いやぁよかったぁ。これは替えが効く代物じゃないからうまくいってホントよかった。
肝心の中身を取り出してみると、深緑の色をした靴、というかブーツが出てきた。色合いとかも予想通りだ。
「見た目は問題なし。後はちゃんと飛べるかどうかなんだが...。」
そう、これは空を飛ぶための靴なのだ。
皆も子供の頃に一度なら本の中に出てくる魔法とかに憧れたことぐらいあるだろ?
俺の場合は空を飛んで仲間のピンチに駆けつけるヒーローだったな。
錬金術師となった今なら空を飛ぶことも可能なんじゃないかと思い始めてからは、試行錯誤の繰り返しだ。
前に遺跡探検で上の階から落下した時も、このブーツのおかげでケガをしないで済んだのだ。
まぁこの時のブーツは滞空できるだけで飛び上がることはできなかったので、使い方は『飛ぶ』のではなく『跳ぶ』の方だったけど。
そして今回作ったものこそ、自由に空を飛び回れるようにできた...ハズ。後で実験の準備をしなければ。
ただ飛ぶだけならいらないだろ、とか思ったそこのアナタ。
以前、何も準備しなかったせいで加減を失敗してとんでもない勢いで大木にぶつかり、ハチの巣が落っこちてきて、ハチの怒りを買い、逃げるために使ったら今度は川に頭から突っ込んだことのある人がいましてね、ええ。
よい子の皆は真似しないでね!
「へぇ、なかなか面白いものを作っているね?」
「おおぅ!?」
いきなり横合いから声が聞こえたもんだから変な声がでたぞおい。
完成した『エリアルブーツ』も落としかけたが、どうにか持ち直し、声が聞こえた方へ顔を向けると、俺よりも年下で、ちょっと変な服装をした男女の二人組がいた。
民族衣装?とも言えなくはないが、二人とも肌の露出が多い。しかも二人揃ってヘソだしルックとは。
女の子の方はコート?ケープ?を羽織っちゃいるが、どこか虫を連想させるコートだし。うん、めっちゃ怪しい。
とにもかくにも杖を構えて警戒はしておく。
「いろいろと言いたいことはあるが、とりあえず何者か聞いておこうか?」
「わわわ、待って待って。僕らは泥棒とかじゃないし、話を聞いてほしいだけなんだ。」
「それに一応アナタには声をかけたわよ?反応してくれなかったけど。」
「ありゃ?そうなの?すまんな。」
あーまたやっちまったぽいなぁ。一度集中すると周りの声が聞こえなくなることがたまにあって、モニカ達にも結構怒られた覚えがある。
まぁとにかく、杖を降ろして話の続きを聞くとする。
「よかった。まずは自己紹介かな。ボクはメクレット。」
「アタシはアトミナ。よろしく。」
「ああ俺はマナス...いやまて、メクレットとアトミナと言ったか?」
「そうだけど...?」
さて、これはどうしたものか。突然の出来事すぎて頭の整理がつかんぞ。
メクレットとアトミナ。俺の記憶が間違ってないなら、この二人は世界を滅ぼそうとした悪人である。
まぁそれは俺にとってはどうでもいいことだが。問題なのは、その世界を滅ぼす関係でソフィー達を傷つけていることだ。大事な大事な妹分達を傷つけた罪は重いわけで。はてさてどーするか。
「えっと、キミは一体何に悩んでいるんだい?」
「今の二人への対応をどうするかで悩んでる。一応三つほど思いついてはいるがな。」
「とりあえず聞いてみてもいいかしら?」
あ、聞いちゃう?それならば答えてしんぜよう。
「ああ。けちょんけちょんにするかギッタギタにするかボッコボコにするか、だな。」
「それ全部一緒だよね!?というかボクら初対面なのにいきなり何をする気だい!?」
これ一回言ってみたかったんだよね!そんでもってナイスなリアクションだメクレット。
「はっはっはっ。冗談だ。」
「じゃあホントの選択肢はどうなるのかしら?」
アトミナが首をかしげながら聞いてくる。今度は大真面目に答えるか。
「ああ。一発殴られるか爆弾をぶつけられるか作った道具の実験台になるかださぁえらべ。」
「最初の三択並に結末が一緒だよね!?ボクらは君に何かしたかい?」
「俺には何もしてないが...俺の大事な妹分達を傷つけたことがある、とモニカ達から聞いたぞルアードさんよ?」
「「!」」
俺の言葉に一瞬驚いた表情を見せる二人。そう、この二人、正確には人形である二体は元は一人の『ルアード』という人間、というか錬金術師だ。
現在ソフィーと一緒にいるだろうプラフタとライバルのような仲だったとも聞いてはいるが。
「...なるほど、キミがソフィーの言っていた『お兄さん』か。これはちょっと予想外だね...。」
「それで?三択は決まったのかしら?」
「そうさなぁ...。」
改めて目の前の二人を見ながら考えてみる。うんそうだな。
「どれも選ばん。」
「さっきの三択の意味は!?」
すかさず反応をしてくれるメクレット。あれ意外とメクレットって真面目なタイプか?見た目とか雰囲気は少し軽く見えるけど。
「それはまたどうして?」
「ソフィー達を傷つけたことに思う所はあるが当事者じゃないし。そもそもソフィーは二人を許してるわけだし、これ以上俺が言うのも何か違う気がするしな。」
それに人形の身体でも錬金術ができるように、とソフィーが道具を作ったとも聞いている。であるなら、問題は無いかなって思うんだよね。
「いいのかい?もしかしたら皆に隠れて、また根絶の錬金術をやってるかもしれないよ?」
「そういうことを自分で言うヤツは大体やってねぇよ。それにもしホントだったら俺の全力でもって止めるだけだ。」
「...やれやれ、君達は揃いも揃ってお人好しだね。」
「俺がお人好しとか冗談。ほら、そこの椅子に座っとけ。クッキーと紅茶ぐらい出してやるから、二人の話を聞かせてもらおうじゃないさ。」
顎でテーブルの方に行くよう二人に促す。どうして俺のところに来たのかも気になるが、約500年前の錬金術師の話を聞けることなんてそうそうない。
この機会に、いろいろと聞いてみるのもいいかもしれない。師匠とはまた違った錬金術の考え方を持っているかもしれないしね。
いつもより短めですみません。
筆が進まない内に、仕事まで忙しくなり始めて考える時間ががががががが。
暫く更新速度が激減するかもしれませんが、どうかご容赦くださいませ。