今まで読んでくださった方々、本当にありがとうございます。
気まぐれ更新なのは全く変わりませんが、それでも付き合って戴ける方々。どうぞこれからもこのSSをよろしくおねがいします。
最近のご時世、風邪で倒れると物凄く不安になりますね。自分は四月と五月に一回ずつ風邪ひいちゃいまして。皆さんも体調にはお気をつけて。
『ざわめきの森』
絵画で受けた印象通り、不気味であり不思議な場所だ。
夜の森は明かりが無ければ歩けないぐらいには真っ暗なはずなのに、時折射し込む月明かりと、木になる見たこともない植物やお化けの仮装でよくみかける顔の形にくりぬかれたカボチャがそこらじゅうに散らばり、怪しく光を放ち光源となって辺りを照らす。
とりあえず真っ暗で身動きが取れない、なんてことにはならなそうで安心した。灯りのない夜の森はマジで怖いからな。どこから魔物が来るかもかわからんし。
まぁ『風詠み』ができる今はそこまで気にはならないけど。
「ふーむ、いつまでも突っ立ってるわけにはいかないか。」
まずは進んでみよう。明かりを頼りに歩いていくと、なにやらでかい看板が。
「なんだこりゃ。えーとなになに?」
『この看板を読んだ貴方へ』
『お気の毒ですが、あなたは呪われてしまいました。』
『呪いを解きたければ、墓場までおいでください。』
「...こいつはまた。」
いやまぁ、うん。なんだこの子供の落書きというか悪戯感よ。これを本気で真に受けるやついるのかねぇこれ。
誰が考えたのかは知らないが、この程度でびびる俺じゃないぞ?
「けけけ...呪われた子みーっけ。呪われた子は...僕たちが連れて帰っちゃうぞー!」
おや、さっそく犯人のおでましか。現れたのはオバケ型の魔物達。どうやらこの森はお化け達の集会場のようだ。よし、絵の中での最初の戦闘だ。外での戦闘と違いがあるのか、いろいろと試しながら戦うとしよう。
「ギャー!逃げろー!」
うーん、戦ってみた結果。絵の中であっても特に体を動かす分には問題はなさそうだ。というかお化けさん達が想定よりも弱かったのがな。まさか棒で叩くだけでノックアウトしてしまうとは思わなかった。爆弾とか投げれてないけど、使わずに済むならそれでいいや。あ、そうだ。
「逃がさん。」
「ぎゃ!?」
逃げるお化け達の逃げ遅れた一匹の尻尾を捕まえる。話相手もいないことだし、案内人としては丁度いい。
「おっと動くなよ?透明化して逃げようとした瞬間、消滅させるからな?」
「ひ、ひえっ!」
自分なりの満面な笑顔で脅してみると途端に大人しくなった。おーけーおーけー、喋ってたから意思疎通できるかなと思ったけど問題無さそうだ。
「よしお前さんには二つの選択肢がある。ここで俺に消滅されるか、この森を案内するか、どっちがいい?」
「案内する!案内するから消さないで!」
よし、これなら勝手に逃げなさそうだ。それじゃお化けさん、案内よろしくね?
行くあても無いので看板のとおりに墓場まで案内してもらうことにした。
道中素材もあったのでいろいろ拾ってみたんだが、驚いたことに外で拾えるものよりも品質が全然いい。しかも外で集めにくいものも所々にあるし、絵の世界サイコーひゃっほううう!
「おい人間、だいじょうぶか?」
「大丈夫だ、問題ない。」
「...なんでこんな人と一緒にいるんだろ。」
お前が捕まったのが悪いのだ、うん。
さて、いい素材が採れることを冷静に考えてみると、おそらくはここが錬金術で出来た世界だからってのが一番納得できる理由か。ほんとどんな仕組みになってるのやら。あぁ待てよ?そもそもここの素材は持ち帰れるのか?まずはそこからか。
そのためにも、お化け達とは全く違う変なのをどうにかせんとならんか。
「少しさがってなお化けさん。ちょっとばかし暴れるから。」
「いきなりなんだ人間...っ!?」
「#$%¥@/.#$%!!!!!!」
暗がりから現れたソイツは全身は真っ黒、下半身は蛇、腕はカマキリ、体と頭は人型なんだがのっぺらぼうときたか。今まで見たこともねぇ魔物だな。
「コイツもお前さんのお仲間かい?」
「ち、違うよ!こんな奴知らない!たまに小さくて黒いのはいるけど、コイツは見たことない!」
正体はわからないものの、『風』達もコイツは明確な敵だと騒ぐのだ。なら倒すことに遠慮はしない。
「風がまた泣き始めたか...全力で倒してやるよ。」
「んー、思ってたよりは全然弱かったな。」
最初から全力で戦った結果、完封しちまった。一気に接近して三発杖で殴り飛ばしてオリフラム投げたら消滅しちまった。
でもおかしいんだよなぁ。これぐらいの強さだったら、『風詠み』には反応しねぇんだよな。そうなると、強さがどうこうじゃなくて存在自体が何か厄介だったりするのか?
絵の中の黒い魔物は要注意、と。メモメモ。戻ったらネージュについて調べてみよう。錬金術師だけだとちょっと大変だが、画家としても有名ならまだ調べられるはずだ。
「ねぇ、あなた、ほんとに人間?」
「何を言うか。どこからどうみてもただの人間だろうに。失礼しちゃうぜ。」
「...えー。」
さらに俺達は森の深くへ歩いていく。目に入ったさっきの黒い魔物の同族っぽいのは片っ端から排除しておく。可能性の芽は早い内に潰しとかないとね。
「おうおう止まりな!そこの人間!」
「ここは俺達『木賊』の縄張りだ!通りたければ、俺達にいい肥料よこしな!」
いきなり木の枝が道を塞いできたと思ったら、上からそんな声が響いてきた。
肥料かぁ、肥料ってさっき拾ったやつでいいのかな?取り出して見せてみる。
「あっ、コレコレ!我が青春に悔いな~し。」
木の枝が器用に伸びて肥料を取っていき、肥料を確認すると道を塞いでいた枝を引っ込めてくれた。よし、先を急ごう。
「ここが墓場だよ人間。あの看板にやることは書いてあるから。」
お化けさんに促されるがままに看板を読んでみる。
「えーとなになに...。」
『呪いを解きたければ、墓に一つ一つ井戸で汲める聖水をふりかけろ』
「お墓に聖水ね...。」
奥の方を見ると井戸が一つ見えた。そこから聖水を汲めるだけ汲んでお墓にかけていく。ちょっと数が多いけど丁寧にやっていく。誰のものかは知らないけど、お墓なのは間違いないわけだし。
「どうか安らかにお眠りください...っと。」
さて、これで全部か。それであとは何があるんだ?
「もうやることはないよ。ほら、看板見てみて?」
「んーっと?」
『聖水をかけてくれてありがとう。あなたたちの呪いはこれで解けました。』
『私たちと一緒に遊んでくれたこと、とても感謝しています』
『あなたたちにお礼の品を用意したので、ぜひ受け取ってください』
『ざわめきの森に暮らすもの一同より』
「ボクらの遊びに付き合ってくれてありがとう人間。これがお礼だよ。」
オバケさんは、いくつか素材になりそうなものを差し出してきた。
「いいのか?これ結構いいものだろうに。」
「大丈夫だよ、また探せば見つかるもん。それじゃあね人間。また来ることがあったら歓迎するよ!」
手を振りながら森に溶け込んでいくオバケさん。あっという間にいなくなってしまった。
「...あれ、そういや結局どうやって帰ればいいんだ?」
ここに来て早々、オバケさん達の遊びに巻き込まれちゃったからなぁ。とはいえ、歩いてきた感じ出口っぽいのはなさそうなんだよな。
そもそもどうやって入ってこれたのかって話もある。直前にやったことといえば『開けゴマ』だしなぁ...。
あ、違うわ。お願いしたんだった。ふーむ、となればだ。
「...もしや、念じればでられちゃう感じ?」
そろそろ荷物(鞄の中身)が大変なことになるのでアトリエに戻りたいのよね。中身が異次元な鞄だから詰め込む分には問題無いんだけど、取り出すのが大変だからなぁ。
「それでは...どうか現実世界に帰らせてくれ!」
目を閉じて願ってみる。俺の予想どおりなら少しだけ待って目を開けてみればそこは、
「知らない天井でした...なんてね。」
目に入った光景は、どこかの建物の部屋。どこかじゃないね、ここはベルグさんの家だ。後ろを見れば『ざわめきの森』が飾ってある。
「今まで俺、この中にいたんだよな...あっ!」
そういえば拾ったものどうなってるんだ?慌てて鞄の中身を漁ってみる。
「...あったわ。」
あったのだ。全部。拾ったものも、オバケさんからもらった物もだ。もう一回『ざわめきの森』を見る。
「いやほんと、ネージュって人はすげぇわな。こんなすごいの作っちまうなんて。」
描いた絵の中に入れて、しかも絵の中の物が持ち帰り可能とか、改めて錬金術の凄さってのを見せつけられたわ。
ベルグさんに軽く挨拶をしてから宿への帰り道を急ぐ。たまたま見つけたネージュの絵。そして絵の中の世界。そして何故か回収できた素材。帰ってからはやることがいっぱいで楽しみだ。
だからこそ、この街に不釣り合いな鎧を着こんだ金髪イケメンの騎士とすれ違っても、この時は何の違和感も感じなかったのだ。
「売れちゃった!?しかも昨日!?」
「うむ、しかもとんでもない大金でのぉ。」
今日も『ざわめきの森』で素材集めしようと意気揚々と乗り込んだら、ベルグさんから残酷な現実を突きつけられた。う、うそだろ。昨日の今日で売れるとかあるのかよ...。い、一応誰が持ってったのか聞いておくか。
「ちなみになんですが、どこの貴族様が持ってったので?」
「あまり大きな声では言えんのだが、オヌシならいいじゃろ。絵を買ったのは、アダレットの王族様じゃ。正確には使いのものじゃがな。金髪の若い騎士様じゃった。」
「金髪...アイツか!」
昨日すれ違ったあの金髪イケメソ騎士様か!しかもアダレットと来たか。
アダレットは隣国の王国で、昨日別れたばかりのジュリオさんが騎士団として所属している所でもある。
しかし王族の考えることはわからん。わざわざ国一つ越えて絵画を一枚買いにくるとか、よほど暇をもて余してるか物好きなんだなぁと思っちゃう。
「いや待てよ...?」
もしもだ。もしも『ネージュの絵画』を探しに来ていたとしたらどうだ。あの絵の中に世界が出来上がってることを知っていたのだとしたら?それが集める理由となるなら、アダレットは一体何をしようとしてるんだ...考えてもしょうがないか。
「教えてくれてありがとうございますベルグさん。」
「いやいや、見に来てくれたというのに無駄足をさせてしまってすまないのぅ。」
ベルグさん達の今後の幸せを願いながら、コレクションの家を後にする。
あーあ、もう一回ぐらい素材集めしたかったなぁ。あの世界もう少し調べてみたかったなぁ。
ま、無い物は仕方ない、俺も次の街へ行こう。ここにもソフィーはいなかったしな。
でもアダレットの動向が少し気になるのはホントだ。気が向いたらアダレットに向かうのもいいかもしれない。
しかしまぁあれだな。
「もういっかい絵の中に入りたかったなぁ。」
木賊の最後の台詞に覚えがある方、いるでしょーか?
久々に動画で見かけたので思わずやってしまったぜ。
次回こそは植物大好きマンか今をときめく大天才錬金術師のお話となります。首を長くしてお待ちくださいませ。