先に一つ謝罪を。今回の話はイルメリアの話のみとなります。
小話みたいな形で作ろうと思ってたら想定より長くなっちゃって、これもう一話として使った方がいいな、うん。と、なりましたすみません。
彼女側のお話は8月中には投稿できると思いますので、ご了承くださいませ。
ソフィーに迷惑をかけないためにも公認錬金術士になると決めた俺。
俺に見合った課題と言っていたけど、結局の所は街の人たちの依頼の延長線上にあるものばかりだった。
例えば完成度の高い釣り竿、例えば完成度の高い虫取り網、例えば特性のバックパックなどなど・・・。
ねぇイルメリアさん、課題と称して単純に依頼の消化をしたかったんじゃないよね?
理由はどうあれ、課題としては合格点をもらえたので無事に一つ目の推薦状をもらうことができた。
公認試験を受けるためには後二人分の公認錬金術士の推薦状が必要だ。
そのうちの一つは昔、荒野で迷子になった時に助けてくれた人からもらおうと思っている。
普段は適当で、人をからかい、平気で仕事をサボるどーしようもないおじさんなんだが、その割には村の人達には愛されてるという不思議な人だ。
今もどうせ、アトリエを留守にして村中をほっつき歩いてそうだ。そういえば、あの荒野で起きてた砂嵐はもう止んだんだろうか?
危うく入りかけた所を保護してもらった身としては気になるところ。あれが無くなれば、おじさんも態々村から離れた所まで見回りに行かなくてもよくなるだろうに。
そうだな、もしまだ砂嵐が残ってるのであれば、その時は力になろう。きっと恩返しになるはずだ。
もちろん課題があるからって、他に何もしてなかったわけじゃない。これまでのイルメリアとの交流で、いくつか戦闘で使える道具のアイデアを思い付いた。
すぐには出来ないだろうけど、上手くいけば、いちいち鞄から道具を取り出さないで済むかもしれない。
人の真似事にはなってしまうだろうけど、人命がかかってるので、そういうのは気にしない。見て見ぬフリ。どこ吹く風。
嘘ですごめんない。もし苦情が来たら全力で謝りますので許してくださいプラフタさん!主に自分用にしか使いませんから!
イルメリアの方も錬金術に風の属性を加えられないかという打診を受けたので、俺が理解できる範囲で教えてみた。
まぁ半分は感覚で振るってるところもあるから大した事は教えられなかったと思うけど、何か掴めたみたいなので後は本人の頑張り次第かも。
彼女の得意な炎の錬金術に風が加わり最強に見える。ちなみにこれ、ふざけてはない。
実際、属性が混ざる錬金術って扱うの大変なのよ?相性悪かったりすると問答無用で爆発するし、暴発するし。
こういう時、素材の声が聞ける恩恵というのは大きい。素材同士が会話してくれるおかげで、釜を大爆発させることはほとんどなくなったからな。
またイルメリアからも火の錬金術が得意と言うので教わってみた。
俺の場合、師匠がよく振るっていた風の錬金術を目標に頑張っていたので、どうにも他の火や水の捉え方が甘く、ルアードの奴にも指摘されたことがあった。
なので彼女のような存在はありがたい。これでまた、よりよい物が作れるようになるかもしれない。
まぁ、まだまだ理解が足りなくて宿題をたっくさん渡されてしまったが。
そして、今日は街を出る日。別れの挨拶をするためにイルメリアのアトリエに顔を出す。
「あら、わざわざ来てくれたの?」
「まぁな。いろいろ世話になったし。これもつくってもらったしな。」
手を振って着ている服をひらひらとさせる。魔物に破かれた服の代わりとして作ってもらったものだ。
破けた服の生地を再利用した上で、さらに前より性能を上げたものが出来上がった。
師匠が作ってくれたものは本人曰く有り合わせで作った物らしく、当時は気づかなかったが今ならわかる。師匠が本気で作ったら、丈夫程度では済まないものが出来上がるはずだ。例えば破けても勝手に修繕されていく、とか。
イルメリアはその辺りをわかった上で改善してくれたのだ。
「ふふっ、似合ってるわよマナス。」
「いや、派手すぎない?目立ってない?」
さらにイルメリアはデザインまで変えてくれた。もともと無地の深緑だったのが、襟や袖口の部分には金の刺繍が入っており、膝上まで垂れた前面下部の部分に左右それぞれに大きなト音記号とヘ音記号が。これは俺が楽器を扱えるところから考えたか。背中には風をイメージした紋章が入っている。
ある時、自分の作品に印を入れるならどんなのがいい?なんて言われたから、どうしたのかと思えば背中の紋章になるとはびっくりしたわ。
「気にしすぎよ。例え目立ってるとしても堂々としなさい。変にビクビクしてる方が変に映るわよ?」
「むぅ、そうか。」
これから人とすれ違うたびに好奇の視線に向けられるのを予想する。なるべく早めに慣れればいいのだが。
「そういうものよ。さ、もう行きなさい。のんびりしてると試験に間に合わなくなるわよ?」
「さすがに一年待つのは嫌だな。それじゃ行くとするわ、ありがとうよ。」
「こちらこそ。試験もそうだけど、ソフィーさんと早い内に会えるといいわね。」
最後に握手をしてイルメリアと別れる。ブーツから翼を生やし、空を飛ぶ。次の目的地はライゼンベルグだ。
「行っちゃったわね。」
翼を生やして飛び上がったかと思えば、あっという間に姿が見えなくなってしまった。
「少しは協力できたかしらね?」
『ソフィー先生はマナスさんが大好きなんですね!』
『す、好き!?い、いや好きって言ってもアタシにとってはお兄ちゃんみたいな存在なだけでその・・・!?』
『でもマナスの話になるとソフィーは目の色変わりますし、説得力は無いかもしれませんね。』
『ちょっとプラフタ!?』
『大丈夫ですよソフィー先生!ワタシたちは全力で協力しますから!ね、イルちゃん?』
『え、えぇ、いいわよ?』
フィリスの勢いに押されたとはいえ、約束は約束だし。
マナスさんも公認錬金術士として名が上がればソフィーさんも探しやすいし、悪いことは無い、はず。
「イルメリアさーん!お手紙ですー!」
二人が出会えますように、と思っていたら、いつも手紙を届けてくれるお兄さんが来た。
「いつもありがとう・・・あら?」
もらった手紙は二通。片方は定期的に来るお父様からの手紙。
そろそろ来ることだとは思ってたから不思議ではないけど、問題はもう片方。
とても綺麗な便箋は、この近くではあまり見かけない物だった。
「宛名はアタシで間違ってないわね。差出人は・・・アダレット?」
お読みいただきありがとうございました。
次回もおたのしみに!