ネルケのアトリエも着々と進んでますが、とうとうスマラクトやサファイアスといった宝石類を使用した品物も出てきました。どんどん必要な材料が増えてきて目が回るぅ!
「あーまだちょっと痛いっぽいぃ。」
さきほどハロルさんに貰ったゴム弾の一撃がまだ微妙に残っている。いやね、もしかしたら殴られたりとかそういうのもあるかも?とは考えたりもしたことあったよ?
けどさ、さすがに銃で撃たれるってのは予想外だったわ。
「それならどこかで休む?」
「いやいい、これぐらいならどうとでも。家に戻ったら薬作っとこ。」
今手元にある材料は少ないが、これぐらいの痛み止めに使う分なら問題はないだろう。
「というか、依頼こなすなら材料集めなきゃだなぁ。モニカはこの辺のどこでどんなもんが採れるかわかる?」
「それなら、ソフィーがまとめてた本があったはずよ。確か本棚に片したと思うわ。」
「まじか!そいつは助かるな。」
普段から片付けとかはできないくせに結構マメな所あるよなぁ。でもホント助かった。0から開拓となると、かなり時間とられちまう所だったしね。
「採取に行くなら私も行くわよ?」
「おいおい、さすがにそいつはまずいんじゃねぇか?」
モニカが、さも当然のごとく提案してきたけど、シスターの代理みたいなのを引き受けてるのに教会を留守にするのはどうなのよ?って思ったんだが、なんということもなく返答してきた。
「大丈夫よ、シスター代理は私だけじゃないし。そもそも貴方を一人で行かせるわけにはいかないでしょう。ただでさえ前科持ちなのに。」
「うぐっ...返す言葉もございません。」
勝手に街を抜け出して大ケガしたのと行方不明になったことの二つの経歴を持った人物。うん、一人で行動させたら次は何が起きるのか怖くなるよね、わかるよ。
「そういうわけで採取に行く時は必ず私に声をかけてね?」
「わーったよ。」
モニカと約束を交わした所で最後の目的地、旧市街地の一角にある本屋さんに着いた。俺の会いたい人物は、現在ここの店主らしい。
「失礼しまーす...全体的に暗いな。」
店の中に入るとたくさんの本棚、よりも先に部屋の暗さに驚く。ここにくるまでにもいくつかの街を巡ってきたけど、ここまで暗い本屋は無かったかも。あーでも光も紙を痛める原因になるとか。前にそんなことを聞いたな。
「いらっしゃいませ。どんな本をお探しですか?」
部屋の暗さに気をとられていたら、お店の人であろう女性に声をかけられた。腰まである長い黒に近い茶髪に眼鏡をかけた見るからにインドア、というより本の虫っぽいイメージな人だった。
「あーっと、本も探してるんですけど、今日は人を探しにきたんですよね。」
「人...ですか?」
「はい、ここにエリーゼって人はいませんか?モニカには此処にいるって聞いたんですけど...。」
「えっと、わたしがエリーゼですけど...?」
「...え?エリーゼ姉?」
「え、その呼び方はマナスぐらいしかしないのに...?」
いやちょっと待て。確かに俺はソフィーと比べてエリーゼ姉とは接点が少なかったけど、顔を忘れたつもりはないぞ?だってテス姉は見ただけですぐわかったし。
「そのマナスよ、エリーゼ。私も驚いたけどね。」
互いに相手の変わり様に言葉が出ないでいるとモニカが言葉を挟んでくれた。
「ホントに!?あ、でもよく見たらマナスの面影があるわね...お帰りなさいマナス。」グスッ
「だいぶ遅くなっちゃったけど、ただいまエリーゼ姉。」
エリーゼ姉が眼鏡を外して涙を拭う。あれ?
「あ...。」
「どうしたのマナス?」
「あぁいや、眼鏡外してるのを先に見たらエリーゼ姉ってわかったなーって。」
うん、眼鏡を外しているエリーゼ姉の顔をちゃんと見る。うん、こっちの方が俺的にはしっくりくるな。
「あら、そう?ソフィーには眼鏡を外してたら別人扱いされちゃったのだけど。」
「それはたぶんマナスがいなくなった後で眼鏡をかけ始めたからじゃない?」
「あー確かに。」
記憶の中のエリーゼ姉は確かに眼鏡はまだかけていなかったわ。だから俺は眼鏡をかけてない方、ソフィーは眼鏡をかけてる方がわかるわけだ。
「エリーゼ姉、本のために店を暗くしてるのはわかるけど、自分の目も大事にしてね?」
「ふふっ。貴方もソフィーと同じようなことを言うのね、心配してくれてありがとう。でも貴方も自分の体を大事にしなさいね?」
その言葉と共にエリーゼ姉の視線が俺の右腕に移った。正確には服の下にある包帯、というか傷痕なんだろうけど。あの時はソフィーだけじゃなくてモニカもオスカーも、テス姉やエリーゼ姉も大騒ぎだったもんなぁ。
「あーうん。滅多なことがない限りは無茶はする気ないから大丈夫だよエリーゼ姉。」
基本的には物を作る方がメインだしね。魔物討伐も一人の時は、ちゃんと相手を選んでるから、この右腕みたいなことにはならないと思うし。
「そうだといいんだけど...それにしても、お店を暗くしてる理由がよくわかったわね?理由がわかる人、あまりいないのに。」
心底不思議そうに、エリーゼ姉が首を傾げながら聞いてきた。まぁ図書館に半年ほど通い詰めだったから知る機会があっただけなのだけれど。
「ここに来る前に、大きな図書館に行ったことがあってね。そこの司書さんに教えてもらったんだよね。」
「図書館ですって...!ねぇマナス、その図書館の話、詳しく教えてくれないかしら!?」
図書館と聞いた途端、目の色が変わるエリーゼ姉。ちょっとさっきと雰囲気が違ってぐいぐい来るな!?
「お、おお!?わかった、わかったから落ち着いてエリーゼ姉!?えっとね、俺が行った所はヴァイスラークって所とライゼンベルグって所で...。」
このあとエリーゼ姉に小一時間ぐらい図書館の話をすることになった。やっぱりエリーゼ姉は本が好きなんだなぁって思いました、まる。
「ふー、ようやく戻ってこれたなぁ。」
昔、お世話になった人達の所への挨拶周りも無事終わり、ソフィーの家に戻ってきた。あの後、もう一度マルグリッドさんの所へ行ったら、俺が帰ってきたことが何処からか伝わったみたいで、知ってる顔の人達が集まってきてちょっと対応が大変だった。
でも同時に、これだけの人達が俺のことを心配してくれてたんだってわかって、嬉しさやら申し訳なさやらで胸が一杯になっちゃった。今も皆の顔を思い出すと泣いちゃいそう。
「いけないいけない。取り敢えず、まずは荷物を出さなきゃ。」
眼から溢れ出そうな涙を雑に拭って、持ってきた荷物を出していく。錬金術に使う道具、今まで作った物のレシピ集。護身用の武器に俺の服やらの雑貨...を入れている入れ物等々。どっからそんなもん取り出したかって?錬金術には無限の可能性が詰まっているんだよ?そして、どんどんセッティングしていく。
「...ん、これでよし!」
いろいろと準備して一時間ぐらい。これでいつでも錬金術ができるようになった。昔は、ここにおばあちゃんが立っていて、俺とソフィーは二人で釜を覗きこんで、中身の色が変わったりするのを見てわいわい会話をしてたっけ...。
「早く会いたいなぁ。」
公認錬金術師になるために、プラフタって人を人間に戻すために旅にでたソフィー。今頃どこにいるんだろう?ここからライゼンベルグまでは結構距離があるし、最短距離で向かうとも思えないしなぁ。
まぁソフィーだけだとちょっと心配だったが、プラフタって人とオスカーも付いてるらしいし、安否に関しては心配してはいない。無事にライゼンベルグに着くことを願うばかりだ。試験を受ければ俺の無事もソフィーに伝わるはずだしね。
さてと。ソフィーの事も大事だが、今は目の前のことだ。まだ部屋の準備をするに当たって一番大事なことが残っている。錬金術も大事だが、それと同じぐらいには俺にとっての重要案件だ。
「寝る場所、マジでどうしよう。」
テス姉があんなこと言うからマジで意識しちゃうじゃんか!視線を移せばそこにはソフィーが使っていたであろうベッドが!そう、あそこで昔の俺はソフィーと一緒にお泊まりしてたわけだ。そんでもってあんなに可愛くなってて、あのベッドで寝て...。
「だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!煩悩退散煩悩退散煩悩退散んんんんんんんん!!!!!!!」
結局、ベッドで寝ることはせず、視界に映ったソファーで寝ることにしました。