原作ファンの方には不快に思われる方もいるかもしれません。閲覧される方は十分注意してください。
そして前回のように前編後編の2部で展開する予定です、ご了承ください。
あとボアタックルが当たります
「ハッ!」
ブレイドは剣を振るう。
ブレイドは♠︎7 トリロバイトアンデッドと交戦していた。普段朝起きる40分前に携帯が鳴り目を覚ますとアンデッドサーチャーが反応していた。そしてそれを見たブレイドは急いでサーチャーの示す場所に向かった。
ブレイドが来た時には、既にアンデッドが暴れていたからか近くには人は誰もいない。
ブレイドは一旦距離を取ると、カードをラウズする。
TACKLE
ブレイドはカードにより突進力を強化し、アンデッドに体当たりをかます。
アンデッドはその体当たりをもろに受け吹き飛ぶ。
そしてカードホルダーを展開し、『KICK』と
『THUNDER』のカードを取り出しトドメをさそうとする。
REMOTE
そう電子音がなると剣崎の手に持っていたカードに紫色の光が当てられる。
カードを離してしまうブレイド。
そのカードから急にアンデッドが復活し、ブレイドへと襲いかかった。
「なに!リモートだと!?」
剣崎はこの能力を知っていた。
『REMOTE』それは♣︎10 テイピアアンデッドが封印されたラウズカード。
その能力はラウズすることにより、ラウズカードに封印されたアンデッドを解放して使用者の意のままに操る、恐ろしい能力である
そしてそれは剣崎の元いた世界では、仮面ライダーレンゲルが持っていたラウズカードである。
睦月や桐生といったレンゲルの変身者はこのリモートを使い、剣崎や橘を幾度となく苦しめた。
そのカードの力が今使われたのだ。
剣崎は驚きのあまり、解放されたローカストアンデッドとディアーアンデッドに接近を許してしまい苦戦を余儀なくされた。
だが
「下がれ」
と機械で変えたかのような不自然な低い声の後、解放されたアンデッドは急に大人しくなるとブレイドへの攻撃を中止し、どこかへと去っていく。
どうやらトリロバイトアンデッドも復活したアンデッドに襲われるブレイドの隙を見て離脱したようだ。
そして剣崎の前に声の主は現れた。
『最強』の仮面ライダー、
『仮面ライダーレンゲル』がブレイドの前に立った。
「レ、レンゲル!?なぜこいつが!?」
「久しぶりだね、上杉風太郎君。
いきなり質問するようで悪いがなぜ君がレンゲルのことを?」
「黙れ!誰なんだお前は!?何故この世界にアンデッドがいる?何故俺がライダーシステムを持っている?そして...」
何故俺をこの世界に呼び出した?
ブレイドはそう告げようとしたところで「待ちたまえ」
とレンゲルに止められる。
「今はそれらの質問に答えるときではない。
今の君にやってもらいたいことは1つ。
アンデッドから彼女たちを守り抜くことだ」
「彼女たち?まさか五月たち、五つ子のことか?」
「そうだ。今の君の役目は彼女らを守り抜くことだ」
「なぜお前がそんなことを?」
「今それを話すときではない。
それに彼女たちを守らなくても構わないさ。
その代わり彼女たちには痛い目を見てもらうことになるがね」
とレンゲルは加工した抑揚のない声で続けたあと、
「何故君がレンゲルを知っていたかということについては保留しておく。それではまた会おう。上杉風太郎君」
と言い残し去ろうとする。
「待て!俺の質問に答えろ!!」
飛びかかるブレイド。だがそれをレンゲルは右手に持っていた杖状の槍-醒杖レンゲルラウザーの一振で吹き飛ばした。
「ぐあっ!」
もろにその一撃を受けたブレイドは直ぐに体制をたてなおす。
だがそこにはレンゲルの姿はなかった。
「くそっ!何なんだ...なんで俺は...」
この世界に来た?その疑問に答える者は誰もいなかった。
剣崎はあの後、変身を解除すると一度自宅に帰り鞄を取るとそのまま学校へ向かった。
だがその時も剣崎の頭の中は、いきなり現れたレンゲルのことでいっぱいだった。
あいつは何者だ?あいつは何を知っている?
あいつがアンデッドを?
あいつがこの世界に俺を?
そんなことを考えながら剣崎は歩き続ける。
それに今のブレイドは『KICK』と『THUNDER』というコンボを使えるカードの2枚を失ったことで、弱体化していた。
この状況でアンデッドに、ましてや正体も分からぬあのレンゲルが襲って来た場合、勝てるのか。
剣崎は考え続ける。
俺はなんでこの世界にきたんだ
「......ー......くーん」
あのレンゲルは一体誰なんだ
「......くん?」
それに五つ子たちを守れ?訳が分からない...一体どうしてあいつはそんなこ...
「ちょっと!聞いてるの!フータロー君!」
「えっ?」
ハッとなる剣崎。その横には頬をふくらませる一花がいた。
「もうどうしたの?フータロー君。
なんかすごい悩んでるように見えたけど」
「い、いや。大丈夫だ、心配しないでくれ」
「本当に大丈夫?顔色悪いよ?まさかモンスターと戦ってる時に怪我でもしちゃった?」
「平気だ。気にするな...」
「うそ。絶対なんか怪しい。何があったか話してみ...」
「大丈夫だって言ってるだろ!」
いつもの優しい口調とは違い怒鳴る剣崎に一花はたじろぐ。
そして困ったような笑みを浮かべて
「ご、ごめんね...そ、そうだよね。言いたくないことの一つや二つくらい誰にだってあるってフータロー君言ってたもんね。わ、私先行ってるから!」
「あ、ま、待ってくれ、一花!」
そう叫ぶも既に時遅し。一花は走って先に行ってしまった。
ただ、今の剣崎に自分の行いを反省する余裕はなかった。今も彼の頭は未知に対する不安で埋め尽くされている。
剣崎は重い足を引きずりながら登校した。
結局授業には一切身が入らなかった。
まぁ元からあまり授業は聞いていなかった剣崎だが、今日は尚更だった。
授業中に指名されてもそれに気付かず、問題の答えを言えと言われても全く見当違いのことを言う剣崎。
何やかんやあり今や5時間目だ。
そんな明らかにおかしい剣崎を見て、クラスメイトたちは勝手なことを話し始める。
「今日の上杉君なんかヤバくない?」
「あぁ、なんか様子が変だぞ」
「これはもしや恋の悩みでは?」
「そういえば前、上杉が中野姉妹の3番目と一緒に歩いているところを見たぞ」
「あっ、私花火大会で上杉君が一花さんと一緒に走ってるところ見たよ!」
見当違いな憶測が飛び交う教室。
そんな中、五月は1人いつもと違い暗い様子の剣崎を見て、
『一体どうしたんでしょう、上杉さん...
まさか本当に...恋の悩み...?』
そして社会科担当の学年主任の頭の毛の薄い教師が生徒達を注意したその時、携帯のピピピピというアラーム音が教室に鳴り響いた。
「誰だ!授業中は電源を切っておけと言ってるだろう!」
だがある生徒が怒る教師を見向きもせず、教室の外へ走り出した。
それは剣崎だった。いきなり教室を飛び出した剣崎を教室が大声で呼び止める
「お、おい!待て、上杉!お前点数が高いからと言って授業放棄は許さんぞ!」
だがそんなことは剣崎はそんなことは聞こえていないと言った様子だ。
彼は一心不乱に走る。
そして明らかに顔に余裕が無い剣崎を隣のクラスの三玖が教室のドアに付いている窓越しにみていた。
『フータロー...?』
だが今の剣崎には誰の声も届かない。
それだけ今の剣崎には心の余裕がなかった。
新しく動き始めた『運命』
それに飲み込まれて行くかのように...
そして剣崎は校門を出て、サーチャーの示す場所...街の大型ショッピングモールに向かう。
今の剣崎にブルースペイダーはない。剣崎はただひたすらに走り続ける。
そしてショッピングモールの店外、人通りの多い歩道の真ん中に明らかに人とは思えない異形-ディアーアンデッドが手に持った剣を振り回し大暴れしていた。
近くにいた警察官達がアンデッドに発砲するも効果はなく、アンデッドが放った電撃に打たれてしまった。
雄叫びを上げるアンデッド。
そこに仮面ライダーブレイドが飛びかかった。
「ウェアアアア!!!」
ブレイドは型も何も無いといった様子でとにかくブレイラウザーを振り回してアンデッドを追い詰める。その猛攻にアンデッドはたじろぐ。
ブレイドの嵐のような連撃に得意の電撃攻撃すらできないアンデッド。そしてブレイドはアンデッドのガードが甘くなった足にブレイラウザーを叩き込む。
体勢を崩し転ぶアンデッド。そんなアンデッドにブレイドはひたすら剣を振り下ろし続ける。
いつもならどこからともなく現れ、敵を颯爽と倒していく街のヒーロー、『仮面ライダー』。
だが今回はいつもと違う。まるで理性のタガが外れた狂戦士のようにブレイドは、地面に突っ伏し反撃すらできないアンデッドに右手の剣を叩き込み続ける。
アンデッドバックルは既に割れていた。
それでもブレイドは剣を振るい続ける。
新しき『運命』から目を逸らすかのように。
アンデッドは不死の生物であり、倒しきることは不可能である。だからアンデッドを無力化する際はカードに封印するという方法をとる。だが今のブレイドはそんなことを忘れていた。
何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ!
なんで俺はここにいるんだ!
なぜジョーカーとなり戦い続けていた俺がここにいる!
どうして俺はこの青年に乗り移ったんだ!
頼む、頼む...誰か答えてくれ。
そして何度剣を叩き込んだのか分からなくなったころ、ブレイドは肩で息をしながら思い出したかのように封印のカードをアンデッドに落とすように手から離した。
アンデッドはカードに吸い込まれ、『THUNDER』と刻まれたカードは再びブレイドの手元に戻っていく。
そしてブレイドは人混みから離れるように歩き始めた。
いつもなら民衆は、好奇心から追いかけたりその仮面の裏の顔を知ろうとしただろう。
だが今行われた一方的な蹂躙を目にした民衆にそんなことを考える人間はいなかった。
だがその人混みから少し離れた場所で、その様子を見守っていた金髪の男、
『上杉 勇也』は悲しみと怒りが混ざったような顔をすると、
「すまねぇ、風太郎...」
と呟くとその場から姿を消した。
そしてブレイドは人がいない路地裏に入り込むとそこで変身を解除し、地面に倒れるように座り込んだ。
「俺は...俺はこれからどうすればいいんだ」
レンゲルが現れたことにより、この世界にやっと慣れてきた剣崎の日常は脆くも崩れ去った。
『これから俺はどこに行けばいい』
剣崎は恐ろしい『何か』が動き始めたことを悟っていた。そして剣崎はその『何か』に自分が近しい人間、
らいはや五つ子たちを巻き込みたくなかった。
目を瞑る剣崎。
そして剣崎の中である決心が生まれる。
この件には彼女らを巻き込みたくない。
なら俺がやることは一つ。
剣崎はある人物に電話をかけた。
何度か頭を下げながら通話をする剣崎。
そして通話が終わる。
これでもう心残りはない。そう思い立ちあがろうとする剣崎に
「フー...タロー...君」
と声がかけられた。
顔を上げるとそこには一花がいた。
「なんで、こんな所にいるの?」
「一花こそ、なんで...学校に行ったんじゃなかったのか?」
「えっと...それは...」
実は一花は先程のことがショックで学校に行こうとは思ったが、どうにもそんな気になれずサボってしまった。そこで行くあてもなく街をさまよっているとショッピングモールの前でアンデッドを倒すブレイドを見た。
そのことを正直に伝えて謝ろうとする一花。
だがそんな一花を、剣崎の言葉が遮った。
「まぁちょうどいい。一花と、姉妹みんなに伝えなきゃいけないことがある」
真剣な顔つきの剣崎。その真剣な顔に一花は何かイヤなものを覚える。
「まずは一花、さっきは酷い言い方してごめん」
とペコリと頭を下げる剣崎。
「それはもういいの。それで...みんなに伝えないといけないことって?」
恐る恐る尋ねる一花。
少しの沈黙の後、剣崎は意を決したように口を開く。
「俺は...お前達の家庭教師を下りることにした」
「............え?」
一花の目からハイライトが消え失せる。
「悪いけど俺はもうお前達の家庭教師を続けられない。急にこんな無責任なことしてごめん。他の姉妹にも伝えておいてくれ、じゃあ俺行くから」
そう一花に謝り、この場を立ち去ろうとする剣崎。
だが一花は半狂乱の状態で剣崎に縋り付く。
「ちょ、ちょっと待ってよ!
いきなり家庭教師をやめるってどういうこと?!まさか私が今日先に行っちゃったから!?」
剣崎の服をグイグイと引っ張り訴えかける一花。だが剣崎は口を開かない。
「なんで黙ってるの!答えてよ...答えてよ!
それにそんなこと急に言っても、お義父さんが許してくれるわけが...」
「お前達の親父さんには、もう許可は取ってある」
「え...?」
「なんでこんな急に、とは聞かれたけど理由は言わなかった。だけど親父さんも了承してくれたし、親父さんに俺なんかよりもっと良い家庭教師を付けてあげるよう言っておいたさ。
そういうわけだ。本当にごめん。」
「なんで...なんでよ...
折角フータロー君と分かり合えたと思ったのに...こんなの自分勝手だよ!」
叫ぶ一花。そしてその目からは涙がこぼれ落ちる。
だが剣崎はそんな一花に冷たく言い放った。
「ならそう思ってくれて構わない。
お前達は...俺のそばにいちゃダメだ」
そういうと剣崎は尚もワイシャツにしがみつく一花を振り払うと、走りだした。
「ま、待って!待ってよ、フータロー君!
なんで...なんで...私たちに笑って卒業して欲しいって、私たちにずっと笑っていて欲しいって言ったのに...
......嘘つき...」
1人残された一花はそう呟くと、路地裏から出てマンションへと幽鬼のような足取で帰り始めた。
そして剣崎は最後の仕事として、らいはに電話をかける。
「もしもし、らいはか?」
「あ、もしもし。お兄ちゃん?どうしたの」
そして剣崎はらいはに、自分に緊急のバイトが入ってしまい家に少しの間帰れなくなったことを伝えた。
らいはは何やら文句を言っていたものの、剣崎はとにかく「頼む、わかってくれ」と繰り返し、とうとうらいはも折れてしまった。
「用事が済んだら早く帰ってきてね。
約束だよ、お兄ちゃん」
「あぁ、約束だ」
剣崎は電話を切る。
これで思い残すことはない。
彼女らを守ることだけなら、別に家庭教師を続けなくともできる。
それにまだ自分にはわかっていないことが多すぎる。それらを調べるのに、家庭教師という仕事は足枷になる。
剣崎は今自分がやっている『家庭教師』という仕事が好きだった。
目の前の5つ子達が笑顔になってくれるのが嬉しかった。
だからこそ彼女らの笑顔を守るために自分が彼女たちと近すぎる場所にいるのは良くない。
「『運命』に巻き込まれるのは、俺だけで十分だ...」
そう呟くと剣崎はどこへ行くわけでもなく歩き始めた。
そして中野姉妹が住むマンション。
その部屋の中はかなり険悪なムードになっていた。
「ったく家庭教師が聞いて呆れるわ!
いきなり学校の授業を抜け出すなんて、それ家庭教師以前に学生としてアウトじゃないの!」
二乃は随分とイライラしている。
「でもどうしたんでしょう、上杉さん...
何か今日は、いつもと違う感じだったというか...」
と心配そうな五月。
「それに今日の家庭教師にも来てくれてないし、本当にどうしちゃったんでしょう」
四葉は不思議そうな顔をする。
「フータロー...どうしたんだろう...」
三玖も心配そうな顔を隠せない。
そんな所に、部屋のチャイムがなった。
五月が鍵を開けると、そこには目の光を失った一花がいた。
玄関に入った一花は力なく倒れ込む。
「一花!?どうしたんですか、一花!」
と五月は一花に呼びかける。
その騒ぎを聞いてリビングにいた、二乃、三玖、四葉の三人も玄関に集まる。
そして全員集まったところで一花がいつもとは比べ物にならないくらい弱々しい声で
「フータロー君...家庭教師、やめちゃった...」
と姉妹たちに伝えた。
場の空気が一瞬にして凍りつく。
誰も口を開くことが出来ない。
そして三玖が何も言わずに走り出そうと玄関のドアへと向かう。
だがそんな三玖の腕を四葉が掴む。
「ちょっと三玖!靴も履かずにどこ行こうとしてるの!?」
「フータローを探しに行く。あって直接話を聞く。時間はない...四葉、離して」
四葉は三玖に気圧されてしまう。
だが四葉は
「落ち着いて、三玖!
それにまずは一花から話を聞こうよ」
すると五月が一花の背中を擦りながら
「何があったのですか?一花」
と一花に話を聞こうとする。
一花の目は真っ赤になっており、泣いたことは火を見るより明らかだった。
そして一花は昼に剣崎にあったことを話した。
二乃、四葉、五月はそれぞれ考え込んでいた。
だが一花と三玖は剣崎が消えた理由に多少の目処はついていた。
2人は剣崎がライダーであることを知っている。そして剣崎がいなくなった理由も、何となくライダーに関わることだろうと。
「とりあえず一旦リビングに戻って、そこで話し合いましょう」
五月は内心とても困惑していた。だがとりあえず話し合わなければ事態は動かないと思っていた。
二乃と四葉はフラフラになった一花を立たせると、五人でリビングに向かう。
そして一花を座らせると、ほかの四人も腰を下ろす。
「い、一花!上杉さんが家庭教師やめちゃったって...」
「私にもはっきりとしたことはよく分からない...でも今日の彼、何か辛そうだった...」
そこで五月は思い出す。今日の何をするにしても上の空な剣崎のことを。彼は自分の勉強はあまりしないにしても学校の授業はきちんと受けていた。
はっきりいって誰の目から見ても今日の彼は異常だった。
でも自分たちが今何をすべきなのか、五月にはそれが全く分からなかった。
話し合いでは主に2つの意見が出た。
三玖は今すぐ剣崎を探しに行くべきだと主張した。
それに対し二乃はなんの情報もない今、下手に動くべきではないと返す。
議論は平行線をたどる。
「だ!か!ら!今動いてもアイツがどこにいるかわかんないのに探しようも無いでしょうが!!」
「ならいい。私は一人で行く」
「どうしてあなたがアイツのためにそこまでするのよ!」
「......二乃には関係ない」
もはや今の三玖に冷静な判断力はない。
あの時四葉が止めていなければ裸足のまま街を駆け回っていたに違いない。
四葉と五月には今の2人を諌めることも出来ず、一花はずっと蹲って動かない。
いつもなら一花は自分が長女らしくあるために、他の姉妹を纏めようとする。
だが今の一花にはそれをする余裕なんて欠片ほども残されていなかった。
剣崎に振り払われた、あの感触。それを思い出す度彼女は大切な人からの『拒絶』されたことへの絶望から震え出す。
「そう思うなら二乃はここで待っていればいい、私は行く」
と三玖はスマホなどをいそいそと用意し、肩がけのバッグに詰め始める。
「...! そう、なら勝手にしなさい。
別に三玖がすることを私が止める義務はないわ」
「に、二乃!待ってください!それに三玖も少しは落ち着いて...」
「五月、うるさい。別に私がどこに行こうがあなたには関係ない」
「......!
三玖!あんた少しは言葉を選びなさいよ!
五月はあんたのこと心配して...」
「悪いけど今の私は、彼のこと以外に注意を払えるほどの余裕はない。
じゃあ私、行くから」
三玖はいつもより冷たく、より無機質にそう言い放つと玄関へと向かいドアを開けて外に出た。
そして剣崎を探すために街へと走り出す。
そして三玖が部屋からいなくなったことで流れた沈黙を二乃が破る。
「ったく...何なのよ!なんでこんなことになっちゃったのよ!」
二乃は叫ぶ。もちろん二乃だって剣崎のことは心配だし、探しに行きたい気持ちで一杯だった。
だがいつも姉妹の諍いを宥めている一花がこの様では、今この場を冷静に纏めるのは次女である自分の役目。
そんな責任感が二乃の気持ちを邪魔した。
「わ、私、三玖を探しに行く!」
そういい玄関に向かう四葉に二乃がまた叫ぶ。
「ちょっ、ちょっと四葉!あんたが今行ってどうなるのよ!」
「それはそうだけど、やっぱり私たち姉妹だもん!ほっとけないよ!」
そういうと四葉も三玖を探すために玄関を出た。
再びの沈黙。そして部屋に残された一花がいつもとは比べ物にならない弱々しい声で
「私のせいだ...私がこんなことになるなんて考えずに、フータロー君のこと言っちゃったから...
私のせいで...私のせいでみんながバラバラになっちゃった...
私、長女失格だなぁ...」
と自分を責め出す。
「そ、そんな!一花はいつも私たちのことを纏めてくれました!一花は何も悪くありません!
だから、だから...
そんなに自分を責めないで...」
そういって五月も泣き出してしまう。
いつも他の姉妹に助けられてばかりで、一人では何も出来ない自分が情けなくて。
「何よ...本当に何なのよ...
何もかも全部...アイツのせいじゃない...」
『俺は君たち姉妹に...いつまでも笑顔でいて欲しい』
二乃はあの日、鍵を忘れてマンションに入れなくなった自分にかけてくれたあの言葉を思い出す。
あの優しい太陽のような笑顔。それを思い出すと胸が苦しくなる。
いつも何をするのも一緒だった仲良し姉妹達の輪に、ヒビが入りかけていた。
♠︎7 トリロバイトアンデッド
カテゴリー7に分類される三葉虫の祖たる不死生物。
水棲のアンデッドで獲物を捕食する際には陸上に上がって左腕の爪と左肩の二本角を手裏剣にして投げつける。
前回姉妹達が絆を深めたばかりなのにこのような展開になってしまい申し訳ありません。次回で一旦解決させます。