五等分の運命   作:電波少年

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今回は戦闘はありません。

今回はあまり話は動かず、ほのぼの回的な感じです。


第15話:天才の『努力』

「ん...ふぁ〜あ...」

と欠伸をして伸びをする二乃。

この家での料理は専ら二乃が担当しているため彼女は家の中でも1番早起きである。

 

そしてまだ寝ている剣崎を尻目に二乃は眠い目を擦りながら洗面所へと向かう。朝ご飯を作るにしても、まずは顔を洗って歯を磨かなければ。

 

だがまだ二乃は寝起きだったかせいか、剣崎が寝ているソファの『違和感』に気づかなかった。

 

洗面所でやることを済まし、さぁ料理を作ろうとする二乃。

だがそこで初めてその『違和感』に気づく。

 

「あいつ...昨日布団かけてたかしら...?

それにあの布団...まさか!」

 

と二乃は寝ている剣崎の掛け布団を剥いだ。

そこには剣崎に覆い被さるようにしてすやすやと寝息をたてる一花がいた。

 

「ちょ、ちょっと!何してんの、一花!

起きなさいよ!」

 

と二乃はペシペシと一花の頭を叩く。

そこで一花ではなく剣崎が目を覚ます。

 

「んぅ...うるさいなぁ...

って一花!?何してんだお前!」

 

剣崎はそこで初めて一花がいたことに気づく。剣崎も一花の方を揺すって起こそうとする。

 

「んー...」

 

と一花はまだ半分しか開けられていない目で剣崎を見つめる。

 

そしていきなり目を見開いた。

 

「ってフータロー君。あ、やば」

 

と3時間前くらいのことを思い出す。

確か自分は寝ている剣崎に掛け布団をかけた。だがそこで一緒に寝たいという欲に負けてしまい同じ布団の中に潜り込んだ。

 

明日朝一番に起きればバレないだろうと考えていた一花であったが、どうやらその目論見は失敗したようだ。

 

「ほんっと最低!

せっかく見直したと思ったら、またこんなことしてるし!」

 

「ま、待ってくれ!誤解だ、二乃!

俺本当に知らなかったんだ!」

 

と冤罪を主張する剣崎。

 

「あ〜...ごめんね、フータロー君。

君の可愛い寝顔を見てたら、お姉さん我慢できなくなっちゃった」

 

とまさにテヘペロという擬音がつきそうな顔な一花。

 

そこでその騒ぎを聞きつけてか、三玖、四葉、五月も起きてくる。

 

「朝から何...ってフータロー...何してるの」

 

「ちょっと上杉さん!まさかもう二人はそんな関係に!?」

 

「ふ、不純です!!」

 

と口々に騒ぎ出す姉妹達。

 

「違うんだ、話を聞いてくれ!」

 

とタジタジになる剣崎。

だが剣崎はこの騒がしさがとてつもなく嬉しかった。またこの幸せを取り戻せたことが何よりも嬉しかった。

 

 

 

 

そして30分後...

 

「よし、完成だ」

と剣崎は6人分のプレートにトースターで焼いた食パン、スクランブルエッグ、ベーコンと小さなサラダを盛り合わせて、テーブルに置いていく。

 

「わ〜美味しそう!上杉さんは料理もできるんですね!」

 

と四葉は感心したように目を輝かせる。

できるとはいっても本当に簡単な料理だけだ。

剣崎は高校生の時から一人暮らしをしており、ある程度の家事スキルは身につけていた。ライダーになってからも虎太郎にちょこっとだけ料理を伝授してもらう時があった。

 

さすがに虎太郎や二乃ほど美味しくて凝った料理は作れないが、それでも朝ご飯としては十分すぎるほどであった。

 

結局あの後剣崎は姉妹たちに散々問い詰められたものの無実の罪を認める訳にはいかず、二乃の代わりに朝ご飯を作ることで解放してもらったのだ。

 

正直姉妹たちも剣崎の料理を見てみたいという気持ちもありその条件を承諾した。

そして目の前には出来たての美味しそうな朝ごはんが広がっている。

 

「はむっ...美味しいです!」

と五月も大絶賛だ。

 

「美味しい...これが、フータローの味...」

と三玖も恍惚の表情をうかべる。

 

まぁ昔見た料理レシピをそのまま再現しただけではあるが。

 

「フン、まぁまぁじゃない」

と二乃も申し分ないと言った様子だ。

 

「本当にすごいね〜フータロー君。

勉強も運動も出来て、料理も作れちゃうなんて。逆に君にできないことなんてあるの?」

と一花も驚いている。

 

「うーん、何だろう...」

と顎に手を当てて考える剣崎。元々彼は何事においても才能を発揮する天才タイプである。彼はやってみろと言われて出来なかったことなどほとんどなかった。

 

強いていえばライダーとしての戦いだけは、一人前になるまでにかなりの努力を要した。

 

「上杉さんって本当に天才ですね...

私にもそのスキルを色々と分けて欲しいです」

と剣崎の才能を羨ましがる四葉。

 

「ほら、みんな。早く食べないと遅刻するぞ」

と促す剣崎。

彼は昨日から着ていた制服のままであり、勉強道具が入ったカバンも全て教室に起きっなしである。

特に用意することもない剣崎は自分で作った料理を食べ終えると、ソファに座る。

 

そして全員が用意をし終わると、六人で玄関を出る。

 

そして取り留めもない会話をしながら通学する剣崎。

 

学校に近づくにつれて、周りからの視線も集まる。

「すごいな上杉君...あの五つ子たちと一緒に登校してるぞ」

「でもまぁ最近のあいつなんか変わったし分からんでもないかなぁ」

「あ、分かる!なんか朗らかな感じになったよね」

と噂する生徒達。

 

そして学校に着くと、五つ子達と別れ一人職員室に向かう。

 

「先生!」

 

「あっ!上杉!お前よくも昨日は授業を抜け出したなぁ〜?」

 

「す、すいません!急な事情があって!本当にすいませんでした!反省してます!」

と頭を下げ続ける剣崎。

 

「そ、そうか。ならとりあえず1枚でいいから反省文を書け。それにしてもお前...ホント変わったな〜」

 

「そ、そうですか?」

 

「あぁ、誰の目に見ても明らかだ。前のお前はあんなに偏屈でひん曲がったやつだったてのに、何がお前をそんなに変えたんだ?」

 

「い、いや〜、ええと...その...」

 

「まぁ、いいんだ。別に人が良い方に変わったことを一々咎めるやつはおらん。とにかく放課後までに反省文出して帰れよ」

 

「はい!わかりました」

 

と言うと剣崎は職員室を出て、教室へと向かう。教室に戻ると、普段より勉強している生徒が少しばかりか多い。

そういえば中間試験が迫っていた。

五つ子の義父との約束、五つ子全員の赤点回避という約束を思い出す。

 

そして自習をしている五月の方に歩く。

五月の後ろに着くと、五月のノートの一点を指さす。

 

「誰...上杉さん!どうしたんですか?」

「五月、その訳間違ってるぞ。この文は関係代名詞が省略されているから分かりにくいけどこれは2つの節で出来ている文だ」

 

「あっ...ありがとうございます」

 

そう言うと五月は間違った箇所を赤ペンで修正した。

 

「上杉さん...」

と心配そうな目を剣崎に向ける五月。昨日はやってみせると言った五月であったがやはりまだ自信が持てないでいるのだろう。

 

そんな五月を優しく剣崎が諭す。

 

「大丈夫だ。まだ時間はあるから今日から1つずつ苦手なところを潰していこう。俺はお前達が全員赤点回避できる力があると信じてるぞ」

といい、五月の頭を撫でる。

 

クラスの視線が一気に集まる。

五月は顔を赤くして恥ずかしそうに怒る。

 

「う、上杉さん!他の人がいらっしゃるところで頭を撫でないでください!」

「はは、ごめんごめん」

 

と謝ったところに担任が教室に入ってきた。

剣崎と五つ子たちは寝た時間が遅く、寝不足状態だったが、ここで授業を聞き逃すわけにはいくまいと一生懸命起きながら授業を聞いた。

 

そして反省文を提出した放課後、

一花、三玖、四葉、五月は学校の図書室で勉強していた。

四葉もバスケ部の助っ人を断りこちらに集中してくれている。

 

「一応二乃も呼んでみるよ」

 

といい剣崎は一旦図書館を出る。

 

「二乃〜今日はどこ遊び行く〜」

「あっ、駅前に美味しいパンケーキ屋さん出来たらしいよ〜」

と二乃を遊びに誘う女子達。だが二乃は

 

「ごめん、今日はパス。私ちょっとやらなきゃいけないことがあるの。また次の機会に行くわ」

とその誘いを断り、女子達と別れる。

すると二乃は教室の外に設置されている自分のロッカーから教科書や問題集を出すと、それらをバッグに入れる。

 

「よっ、二乃」

 

「な、あんた...見てたの...?」

 

「あぁ、バッチリな。なんか安心したよ」

 

「〜〜〜っ!」

と二乃は顔を赤くする。

 

「一花も三玖も五月も図書館にいる。

よかったら二乃も...」

 

「嫌よ。別にあんたに頼らなくても私は一人で出来るわ」

 

と二乃は一人で歩いていってしまう。

 

「仕方ないか...」

 

と図書室へ戻った剣崎。

 

「フータロー君ちょっといい?分からないとこがあるんだけど」

「フータロー、私にも教えて」

「上杉さんっ!質問いいですか?」

「上杉さん。ここの問題なんですが...」

 

と二乃を除く姉妹達が次々に聞いてくる。

 

「わ、分かったから1人ずつな」

 

と一人一人丁寧に教えていく剣崎。

彼も基礎復習の甲斐があり、初めての時に比べて格段に教えるのが上手くなっていた。

 

そして今日予定していた課題は粗方片付いた。

 

「すごいじゃないかみんな。

俺もこんなに早く終わるとは思わなかったぞ」

四人を褒める剣崎。

 

「まーね。私達も最初の時とは違うってこと」

「これもフータローのおかげ」

「上杉さんも教えるのがとても上手くなってて分かりやすかったです!」

「ありがとうございます。上杉さん。」

 

「フータロー、私はまだできる」

 

「まだ試験は終わっちゃいない。でもあんまり煮詰めすぎても体に毒だ。

休憩するのも大事な仕事だぞ。一旦休憩にしよう」

 

と言い、三玖の頭を撫でてやる。三玖は顔を真っ赤にしつつも幸せそうな顔をしている。

そんな様子を羨ましそうに、そして少し嬉しそうに眺める一花。

 

今回の件を経て、姉妹の結束はさらに固くなっていた。

剣崎の家庭教師を続けてもらうために、二乃も過程は違えど姉妹一丸となって赤点回避のために努力している。

 

とてもいい傾向だと思った。最初はまったく勉強に乗り気でなかった姉妹達が今は一生懸命頑張っている。

 

「そうだ、上杉さんっ」

 

「ん?どうした四葉」

 

四葉が剣崎に尋ねる。

 

「このテストのあと、何があるかご存じですか?」

 

「え?何かあったっけ」

 

「忘れちゃったんですか?林間学校ですよ、林間学校!」

 

剣崎は「あぁ」と頷き、その存在を思い出す。

 

「そういえばそんなのあったなぁ」

 

「上杉さんは楽しみじゃないんですか?」

 

「まぁ普通かな」

 

剣崎は林間学校に、そもそも学生時代にいい思い出というものがなかった。友達がいなかった剣崎は寂しい学生時代を過ごしてきたからだ。

 

そこで剣崎は時計を見る。休憩してから20分が経っていた。

 

「よし、じゃあみんな。今日予定していたところは終わったけど、まだやれるか?」

 

「もちろん、まだ全然いけるよ」

「大丈夫」

「さぁ頑張っちゃいましょう!」

「わ、私もやれます!」

 

四人はまだまだやる気だ。ならと剣崎は明日の予定を前倒して進めることにする。

 

四人は再び教科書とノートに視線を戻す。

その間に剣崎は勉強スケジュールの組み直す。このペースならさらに試験対策を磐石なものに出来る。

剣崎は質問されたらそれを教えつつ、スケジュールを組み直した。

 

そしてあっという間に完全下校時刻になる。

 

だがもちろん夜も勉強はある。そして今日もマンションに泊まることを勧められた剣崎は一旦四人と別れ、荷物をまとめるために自宅へと帰る。

 

「あ、お兄ちゃんおかえり。昨日少しの間帰れないって言ってたけど大丈夫なの?」

 

「あ、あぁ。思ったより用事が早く片付いたんだよ。じゃあ行ってくる」

 

「五月さん達に迷惑かけちゃダメだよー」

 

「もちろん、分かってるって」

 

玄関を出て姉妹らのマンションへと向かう剣崎。

 

「風太郎。どこ行くんだ」

 

「ん?あぁ親父か」

 

そこにいたのは上杉風太郎の父親、上杉勇也だった。

「五月たちの家だよ、家庭教師さ」

 

「そうか、お前変なことすんじゃねぇぞ?」

 

「!!あ、当たり前だろ!」

 

といいいつものようにガハハハハと笑う勇也。そこで笑うのをやめるといつもとは違う様子で剣崎に尋ねる。

 

「なぁ、風太郎。家庭教師のバイトは楽しいか?」

 

「あぁ。楽しいよ。あいつらも勉強にやる気出してれてるしこっちもやり甲斐があるさ」

 

「そっか!なら大丈夫だな!五月ちゃん達によろしく言っといてくれよ」

と剣崎の背中をバンと叩く勇也。

 

「いった!

ったく...行ってくるよ、親父」

 

「おう、行ってこい!風太郎」

 

剣崎はこの『親父』という呼称が好きだった。勇也のことを騙すことになっているのは彼自身が一番よく分かっている。

だが剣崎はあの日、11歳の時に両親を失ったあの日を思い出す。

 

あの日失った『父親』という存在。それが今の自分にいることがとても嬉しく感じられた。

 

そして剣崎の姿が見えなくなったところで、勇也は一人悔しそうな顔をする。

 

「風太郎...お前にだけ背負わせちまって、本当にすまねぇ...」

 

そして勇也は決意する。いつか必ず息子を戦いの『運命』から解放すると。今息子が感じている『幸せ』を守ると。

 

そして勇也は自宅へと戻っていく。

 

「帰ったぞ!らいは」

 

「あ、お帰り!お父さん!今お兄ちゃんが五月さん達の家に行ったよ。

あと今日の晩御飯はシチューだよ!」

 

「美味そうじゃねぇか!早く出してくれ!」

 

「もう、お父さんは大人なんだからもうちょっと我慢しなきゃダメだよ!」

 

そうだ。自分は父親だ。風太郎とらいはを守るのが俺の役目だ。

 

たとえ俺自身が命を落とすことになったとしても、この2人だけは守り抜く。

 

『もう家族を...大事な人を失うわけにはいかねぇ』

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

そして五つ子たちが住むマンションでは、みんなで夕食を摂ったあと、剣崎が作った勉強スケジュールに沿って勉強している。

 

二乃だけは自分でやるといって、部屋に戻ってしまったが。

 

彼女は何度か躓きながらも一つ一つ習ったことをモノにしている。

 

 

だが剣崎が1つ気がかりなことが残っていた。

二乃のことである。彼女は唯一自分が教えていない。一人で大丈夫とは言っていたが、やはり心配である。

 

すくっと立ち上がる剣崎。

 

「フータロー君?」

 

「みんなちょっとだけ自分でやれるところをやって待っててくれ。二乃を呼んでみる」

 

というと二乃の部屋の前へと行き、彼女の部屋のドアをノックする。

「俺だ。二乃、ちょっといいか?」

 

「.........入りなさい」

 

といわれ二乃の部屋に入る剣崎。

それを五月達は心配そうに見つめる。

 

「なんの用よ」

 

「二乃がちゃんとやれてるか気になってさ」

 

「フン、馬鹿にしてくれちゃって

ならこれ見なさいよ」

 

といい、ノートを剣崎に見せてくる。

そこには数学の問題が解いてあった。

 

「どうよ、これで分かったでしょ。あんたなんか...」

 

「これ間違ってるぞ」

 

「え!?」

 

「それにここも、ここも。」

と間違っている問題を次々に指摘する。

結果的に間違っていた問題は見開き1ページにやってあった8問中6問だった。

 

「う、うそ...ちゃんと授業の復習したのに...」

 

呆然とする二乃。だがそんな二乃の肩にポンと手をのせる剣崎。

 

「大丈夫だ。まだ時間はある。今からやったらきっと間に合う。

あの日言っただろ?俺はみんなに『笑顔』でいて欲しいって。その気持ちに嘘はないって。

もし五人の中で誰か一人でも赤点を取ってしまえば、きっと五人みんな笑えなくなってしまう」

 

優しく諭す剣崎。それを黙って聞く二乃。

 

「だからさ、二乃。俺の授業を受けてくれ。

頼りないヘタレ教師かもしれないけど、全力でお前達の力になる。俺を信じてくれ」

 

と頭を下げる剣崎。

二乃は一瞬驚いたような顔をして頬を赤くしたあと、すぐに呆れたような顔になって言う。

「ほんっとあんたってバカね。なんで教える側 のアンタが頭下げてんのよ...

ならあんたの授業、受けてやってもいいわ」

 

「本当か?!」

 

「その代わり、あんたに聞きたいことがあるの」

 

何だ?頭に疑問符を浮かべる剣崎に二乃がポケットからあるものを取り出す。

 

それは生徒手帳だった。

 

「生徒手帳?」

 

「あんた気づいてないの?これはあんたのものよ。ソファに挟まってたわよ」

 

今日寝ていた時か、朝ごはんを食べ終わりソファに座った際に落としたのだろうか?

 

「拾ってくれてたのか。ありがとう、二乃」

 

と二乃の手から生徒手帳を返してもらおうとするが、二乃はその手を上にあげる。

 

「え?」

 

「教えてもらうって言ったでしょ。

この生徒手帳に入れてたあの写真の金髪の子、誰なのよ」

 

「????」

 

「あんたが入れてたんじゃないの?

なら自分で見なさいよ」

 

と二乃が剣崎に生徒手帳を渡してくる。

そして生徒手帳を開くとその最後のページにある写真が挟んであった。

その写真には金髪の柄の悪そうな少年が写っていた。

 

誰だ?この少年。剣崎は考える。まさか今の自分、『上杉風太郎』の少年時代?

いやいやそれは無いだろう。この根暗で真面目そうな青年がこの子なわけはないだろう。

 

 

「で、誰なのよこの子」

 

「えーと...そもそも何で二乃はこの子のこと知りたがってるんだ?」

 

すると二乃は顔を赤らめながらまるで恋する乙女のようになる。

 

「だ、だって...その子の見た目、めちゃくちゃタイプなんだもん!

ってかそんなこと一々聞かないでよ!とにかくこの子が誰かを教えてくれればいいのよ!!」

 

どうする?答えが全く見つからない問に直面してしまった剣崎。そして

 

「え、ええっと...知り合い

そうそう、昔の知り合いだよ!」

 

と大嘘をつく剣崎。

『すまん、二乃...許してくれ。俺にもわからないんだ』

と心の中で謝る剣崎。

 

「ふーん。知り合いね...

まさかあなたが話してたあの子のこと?」

 

そうだと剣崎は思い出す。剣崎は二乃と二人で話しをした際、自分のことを上杉風太郎の知り合いだということにして話したのだ。

 

「いや、それは違うよ。それはまた別の知り合いさ。

というか二乃。教えることは教えたぞ。勉強は...」

 

「はいはい、分かってるわよ。約束だもんね、受けてあげるわよ」

 

「ほ、本当か?!ありがとう、二乃!」

 

と嬉しそうに笑う剣崎。

 

二乃はドキッとする。

 

『なんで...なんでこいつの笑顔を見ると、こんなに嬉しくなるの...』

と二乃は自分に問いかける。

 

「じゃあ、二乃。学校の教材を持ってリビングに来てくれ。今から猛スピードで復習して、他のみんなに追いつくぞ!」

 

「あっ...ちょっと待ちなさいよ!

ったく本当にあいつ...子供っぽいのか大人っぽいのか分からないわ...」

 

なぜか二乃は目の前の青年-『上杉風太郎』に対して、同年代なような気がしなかった。

子供のような純粋な面もあれば、妙に大人びているところもある。

 

「どうした?俺の顔になんかついてる?」

と尋ねる剣崎。

 

ハッとした二乃は

「べ、別に見てなんかないわよ!早く行くわよ!」

 

と剣崎と一緒にリビングに降りる。

 

「あっ、二乃!二乃も一緒に勉強するの?」

 

「不本意だけどね...」

 

と二乃はリビングにあるテーブルに教材を置いて座る。

 

「よし、みんな何か分からなかったりしたところはあるか?」

と一花、三玖、四葉、五月に聞く。

 

「私はやっぱ国語かなぁ。漢文がどうにもねぇ...」

「私は英語。比較とか関係代名詞とか、難しすぎる」

「私は全般的にわからないことばっかりです...」

「私は社会と数学が特に...」

 

剣崎はふむふむといった感じで5つのノートに色々と書き込む。

 

「なるほどな...」

と言いつつ、緑色のノートをパラパラとめくる。

 

「じゃあ四葉、一花が今やってる漢文を見てやってくれないか?」

 

「え?!私がですか?!」

 

「あぁ、四葉に見て欲しい」

 

と四葉に促す剣崎。

 

四葉は渋々一花のノートを見る。そして何か引っかかるところを見つけたようだ。

 

「あれ?一花、この書き下し文ちょっと変じゃない?これ再読文字があるから正しくはこうだと思うけど」

 

「あ、そっか。この『将』って再読文字だったっけ」

と一花は間違った部分を訂正する。

 

そして剣崎は青いノートを開いて何かを確認すると三玖に告げる。

 

「三玖。五月が解いてる社会の練習問題を見てやってくれ」

 

三玖はコクリと頷くと、五月の社会の練習問題の回答を見る。三玖も何かを見つけたようだ。

 

「五月。日本海海戦の時の日本側の指揮官は大塩平八郎じゃない。同じ平八郎でもこっちは東郷平八郎」

 

「あっ!私としたことが下らないミスを...」

 

と五月は間違いを訂正する。

 

「すごいじゃないか、四葉、三玖。」

と剣崎は2人の頭を撫でる。

嬉しそうに笑う四葉と三玖。

 

そして剣崎は五つ子全員に向けて言う。

 

「勉強ってのは、他人に教えられて始めて身に付いたって言うんだ。

お前達同士で教え合えれば、教える側はさらなるスキルアップ、教えられる側は自分のミスに気づくことができる。

もし教える側がわからなければ、自分の知識の抜けがあるってことも分かる」

 

と剣崎はこの間買った『良い教師になるためのいろは』という本に書いてあったことをまるで自分の言葉のように話す。

 

だが五つ子達はそれを感心して聞いている。

 

「もちろん今まで通り、どうしてもわからない所は俺が教える。

でも自分自身が分かっているところは積極的に分からない人に教えてあげて欲しい」

 

と剣崎は新しい方針を話した。

 

「何よそれ、あんたが楽したいだけじゃないの?」

 

「二乃!」

 

「ってさすがに冗談よ!こいつのバカ真面目さくらい私もさすがに気づいてるわよ!」

 

怒る五月に二乃が返す。

 

「じゃあ早速その方法で勉強していこう」

 

と新しい学習方針で勉強を再開した五つ子たち。そして2時間半ほどそれを続けたところで、一旦休憩が入る。

時刻は10時半。今まであまり勉強をしてこなかった彼女たちだ、2時間半も続ければさすがに疲れてしまったようだ。

 

だが新しい学習方針のおかげもあってか、試験対策一日目にして、既に剣崎が放課後に組みなおしたスケジュールの2日目の半分ほどの内容が片付いていた。

 

「すごいなぁフータロー君。やっぱり教えるのめちゃくちゃ上手くなったじゃん」

 

「悔しいけど確かに分かり易いわ...」

 

「やっぱりフータローはすごい。

あと五月、理科を教えてくれてありがとう」

 

「なんか勉強出来るようになってきた感じがします!」

 

「い、いえ三玖!私なんてまだまだです。

それに三玖の社会も分かりやすかったですよ」

正直予想以上の進度だった。

剣崎は彼女たちの潜在能力とそのやる気に感動していた。

彼女たちは勉強が出来なかったんじゃない、やってこなかっただけだったんだと改めてそう認識する。

 

だが彼女たちのやる気の源は、剣崎だ。赤点を回避して、剣崎に家庭教師を続けてもらう。その一心で今こうして必死に頑張っている。

 

「てかもうこんな時間じゃない!

さっさとシャワー浴びちゃいたいわ」

 

時刻は10時半だった。

 

「なら先にフータロー君浴びてきちゃいなよ」

 

「いや、俺は一番最後でいいよ。」

 

と遠慮する剣崎。あくまで自分はこの家においては余所者だ。しかも泊めてもらう以上あまり迷惑をかけるわけにはいかない。

 

「いえ!上杉さんが一番疲れてるはずです!遠慮なんかせず先に入ってちゃってください!」

 

と四葉がぐいぐいと剣崎を押す。

 

「わ、分かったよ!四葉!

分かったからそんなに押すなって!」

 

と仕方なく一番風呂をご馳走になることにした。

 

そして剣崎が風呂に入っている間、お喋りをしながら休憩をする五つ子たち。

 

だがそこで二乃はあるものの存在に気づく。

それは先程五つ子達が勉強中に、教えている時以外はずっと何かを書き込んでいた。

 

表紙には『試験対策』とだけ書かれた5冊のノート。

恐らく国語、数学、社会、理科、英語の5教科だろう。

一体どんな剣崎がどんな勉強をしているのか、気になった二乃。

そして二乃はノートをめくって驚愕した。

 

「どうしたの?二乃」

 

と三玖は不思議そうな顔をする。二乃は震え声で

 

「あいつ、どこまで真面目なのよ...」

 

と手に持ったノートを他のみんなに向かって見せた。

 

 

 

そこには各姉妹の教科事に関するデータがビッシリと書かれていた。

間違えた問題、それが書いてある教科書のページ数、分かりやすい教え方やそれの練習になる基礎問題。

それが5冊分、各姉妹ごとに書かれている。

一花が黄色。二乃が黒。三玖が青。四葉が緑。五月が赤。

 

しかも問題だけではなく、各教科事に関する正答率や誤答の傾向。その教科に対する取り組み方なども記されている。

 

そして、良い点、これから改善していく点などが全て手書きで書かれていた。

 

つまりこの5冊のノートは五つ子専用の『試験対策』ノートだったのだ。

 

「フ、フータロー君。ここまで...」

「ほんとバカよあいつ...何も普通ここまでやらないわよ」

「フータロー...こんなにまで私たちのこと...」

「上杉さん...私感動しました!」

「本当に上杉さん...真面目すぎですよ...」

 

感動する五つ子たち。三玖と五月に至っては目尻に涙を浮かべている。

 

あんなに馬鹿だった自分たちのためにここまで彼は尽くそうとしてくれている。

 

そして五つ子たちは改めて『赤点を回避して風太郎を救う』という決意をより固いものにした。

 

そして剣崎が風呂から上がってきた。

 

「いや〜いい湯だったぁ〜...

って何泣いてんだ?!三玖!五月!

まさか泣くほど難しい問題があったのか!?」

 

と三玖と五月に駆け寄る剣崎。

そんな剣崎に三玖は告げる。

 

「フータロー」

 

「どうした、三玖?」

 

「私たち頑張るから。絶対赤点なんて取らない。何がなんでもフータローには家庭教師を続けてもらう」

 

他の姉妹たちもその決意を目で剣崎に語る。

 

「みんな...ありがとう!こんな不出来な家庭教師なのに...俺、嬉しいよ!」

 

とまた子供のように笑う剣崎。

その笑顔を見て、五つ子たちは自身の心が暖かくなっていくのを感じた。

 

そして0時まで勉強をすると、今日のように寝不足になって授業に集中できないなんて事がないよう、五つ子たちは各自の自室に、剣崎はソファに行くとそのまま眠りについた。




やばい...
完全にサブストーリーを作るタイミングを逃してしまった...
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