五等分の運命   作:電波少年

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今回少し中途半端or手抜きに感じてしまうかもしれません。

本当に申し訳ございません。


第16話:運命の『分岐点』

「よし、こんなもんか」

 

剣崎は自作の味噌汁を味見し、頷く。

とうとう今日は試験当日である。

 

今の時刻は午前5時半。

五つ子達は今日のために死力を尽くして勉強してきた。いざ試験前日と彼女らは図らずとも不安になってしまったらしく、徹夜をしようとしたが、寝不足で試験に集中できなくなってもいけないと考えた剣崎は午前1時に彼女らを無理やり寝かせたのだった。

 

だが正直にいうと彼は彼女達なら大丈夫だと思っていた。何より相当な量をこなしてきたし、剣崎が当初予定した課題量の1.8倍を彼女たちはやり遂げてくれた。

 

ちなみに剣崎は特に自身の試験勉強は特にしていない。教科書を一度読み直しただけであり、それだけで彼は十分満点を取れるほどの実力を持っている。

 

そして彼が今作っているのは朝ごはんである。彼女らが起きる時間に合わせて、ご飯を炊いておき、味噌汁を作り、鮭を焼いた。

ちょうど冷蔵庫に食材もあったので、彼が作ることにしたのである。

 

そして7時になると五つの部屋から一斉に目覚まし時計の音が鳴る。そして一斉に全ての部屋の扉が開かれる。

 

「んぅ〜...おはよ〜...」

「おはよ...」

「よく寝た...」

「私はまだ眠いですぅ〜...」

「ふぁ〜...早いですね、上杉さん」

 

「みんな、おはよう。朝ごはん出来てるぞ。」

 

テーブルには先日とは違い、『ザ・日本の朝ご飯』という朝ごはんが並んでいた。

 

「あ〜、ありがと〜...ってあんた勝手に冷蔵庫開けたでしょ!」

 

「え?あ、あぁ。そりゃ冷蔵庫開けなきゃ料理は作れないだろ」

 

「そういう問題じゃなくて!なんで人ん家の冷蔵庫勝手に開けたか聞いてんのよ!」

 

「二乃!折角上杉さんが作ってくれたんだから、あんまり文句言っちゃダメだよ!」

 

怒る二乃を四葉がたしなめる。二乃もなんとか納得してくれたようで五つ子たちは洗顔と歯磨きをすると、テーブルに座った

 

「「「「「頂きます」」」」」

 

と手を合わせる五つ子達。剣崎は「はい、召し上がれ」と微笑みながら言うと自分も椅子に座り、朝ごはんを食べる。

 

「はむっ...相変わらず上杉さんの料理は美味しいです」

 

「この鮭もいい塩加減。やっぱりフータローの料理は美味しい」

 

「わっ、このお味噌汁美味しい〜」

 

と姉妹達は剣崎の作った朝ごはんに舌鼓をうつ。

 

「みんな慌てないで食べろよ。時間はまだあるからな」

 

そして全員が食べ終わった頃。

「そうだ、みんなに渡しておくものがあったんだ」

と剣崎は5枚の紙を姉妹に1枚ずつ渡していく。

 

「みんなの各教科ごとの苦手なところや間違いが多かった問題を軽くまとめておいた。

テスト前にでも見ておいてくれ」

 

そして一番下には1人ずつへのコメントが書いてあった。

 

一花には『終わったからって油断するな。ちゃんと見直しをすること』

二乃には『分からない英単語はローマ字読みで思い出すこと』

三玖には『気張りすぎるな。適度に肩の力を抜くこと』

四葉には『落ち着いて取り組むこと。ケアレスミスは極力ゼロに』

五月には『自信を持って挑め。自分を信じればきっといける』

 

それをみた姉妹たちは

「フータロー君...ほんとに真面目で優しいなぁ、君は」

「こ、こんなこと書かれなくてもちゃんと思い出せるわ!」

「フータロー...私絶対やってみせる」

「見ててください、上杉さん!」

「上杉さん...ここまでして頂けるなんて...」

 

とさらに決意を固める。

 

「よし、じゃあ行くか」

 

と五つ子たちと一緒にマンションをでた剣崎。

 

みんな心なしか足取りがいつもよりしっかりしている気がする。試験に向けて気合いは十分といったところか。

 

そんな所を考えていた剣崎の携帯が鳴った。アンデッドサーチャーだった。最近はあまりアンデッドが出現していなかったこともあって完全に油断していた。

 

そして何より今日は試験日である。

五つ子たちはもちろん自分を試験を受けなくてはならない。それも今の自分の身体の元の持ち主は成績優秀者である。もし戻った時のことを考えて点数を下げるわけにはいかない。

 

だが事態が事態だ。今この街でアンデッドに対抗しうる力を持つのは『仮面ライダーブレイド』と『仮面ライダーレンゲル』の二人だけであり、後者はその目的などもはっきりせず間違いなく人助けのために戦うことなどはしないだろう。

 

なら、自分が行くしかない。

 

「みんな、先に行っててくれ。忘れ物を取ってくる」

四葉と五月は「分かりました」と言い、二乃は「ちゃんとしなさいよ」と軽口を飛ばす。

 

だがそんな剣崎を一花と三玖は心配そうに見つめる。

 

「フータロー...大丈夫?試験に間に合う?」

 

「あぁ。大丈夫だ。すぐ取ってくる」

 

と言いニッコリ笑う剣崎。

 

「フータロー君、絶対に来てね。私たちが赤点を回避する前に君が普段通りの点数を取ってくれないと私困っちゃうから」

と一花も剣崎に笑いかける。

 

恐らく一花なりの気遣いなのだろう。

 

「じゃあみんな!ちゃんとプリント見て確認しておいてくれよ」

 

と言いながら剣崎はマンションに戻るフリをして、アンデッドの元へと向かう。

 

「三玖もフータロー君が心配?」

 

「うん...だけど私も信じてるから。必ず時間通りに戻ってきてくれるって」

 

 

 

剣崎の秘密を自分だけのものだと思っている二人はまだそのすれ違いに気づいてはいなかった。

 

 

 

そして四葉はふと疑問に思った。

 

『あれ?上杉さん忘れ物を取りに帰るって言ってたけど...マンションの鍵どうするんだろ?』

だが四葉はすぐに「余計なことを考えちゃダメ!今は試験に集中!」と自分に釘を刺すとそのまま学校に向かって歩く。

 

 

試験開始まで、あと残り45分。

 

 

 

 

剣崎はアンデッドサーチャーの示す場所まで走った。

着いたのは歓楽街の路地裏。

 

そこにいたのは♢7 トータスアンデッドだった。

剣崎はついにきたかと思う。

今まで剣崎が戦ってきたのはスペードスートのアンデッドだけだった。

 

だが前回レンゲルの襲撃を受けた際、レンゲルにリモートを使われたこと、レンゲルの存在そのもの、そして今目の前にダイヤスートのアンデッドがいることからハートスートのアンデッドは確認できていないが、どうやらこの世界には全てのスートのアンデッドがいるだろうということを確信する。

 

だがそんなことを考えている余裕はない。

剣崎はバックルにカテゴリーAを装填する。そして腰に装着して変身する。

 

「変身!」

TURN UP

 

オリハルコンエレメントを通過したブレイドは勢いそのままにトータスアンデッドにパンチを食らわせる。

 

だがそのアンデッドの硬い甲羅に阻まれ、ダメージは入らない。

 

トータスアンデッドはその異常な筋肉を活用し、左手の亀の甲羅状の盾をブレイドに叩きつける。

 

「ぐぅ!」

 

と言いブレイドは吹き飛ばされる。

だがブレイドは受身をとり立ち上がると即座にブレイラウザーを抜き、剣戟を浴びせる。

 

だがその剣戟すらもアンデッドの甲羅が硬すぎるせいでダメージが入らない。

 

アンデッドも左手の盾で反撃するがブレイドはそれを躱して、距離を取る。

 

「くそっ!ならこれなら」

 

とMETALのカードをラウズする。

ブレイドの身体は一瞬にして硬質化した。

 

アンデッドが突進攻撃をしかけてくるが、ブレイドはそれを正面で受け止める。

そして『メタル』の力で硬化した拳をアンデッドの顔面に打ち込む。

 

METALの効果が切れてしまったが、アンデッドはまだ怯んでいる。ブレイドはその隙にトドメを刺そうとし、カードホルダーを展開しようとする。

 

 

だがそこに何者かがブレイドの背中に斬撃を浴びせた。

 

「ウェア!」

 

とブレイドは吹き飛ばされる。立ち上がって後ろを見ると 、

 

そこには『仮面ライダーレンゲル』が立っていた。

 

「やぁ、上杉風太郎君。今日もアンデッド退治に精が出ているね」

 

と加工した低く抑揚のない声で喋りかけるレンゲル。

 

ブレイドはレンゲルを警戒する。

 

だがそれを隙とみたアンデッドはブレイドに襲いかかる。

回避運動を取ろうとするブレイド。

 

だが

 

 

BITE

BLLIZARD

《ブリザードクラッシュ》

 

という電子音と共に、レンゲルは飛び上がり、その足から冷気が発せられ、それによりアンデッドは一瞬にして凍りつく。

そしてレンゲルは大きく足を開くと、アンデッドに挟み蹴りを食らわせた。

 

アンデッドは一切抵抗出来ず、吹き飛ばされて倒れると、封印可能な状態を示すようにアンデッドバックルが割れる。

レンゲルはそこに封印のカードを投げ、アンデッドを封印した。カードには『ROCK』

と刻まれた。

 

 

アンデッドを倒したレンゲルはブレイドの方を向く。

 

「何故お前がアンデッドを封印した!」

 

「後々のためさ」

 

と怒るブレイドに答えるレンゲル。

 

「お前の目的は何なんだ!答えろ!」

 

「今はそれに答えるときではないよ。それにこの出会いは偶然だ。私は本当にこのアンデッドを封印しに来ただけだったからね」

 

と剣崎と会ったことを偶然と言うレンゲル。

 

「そんなわけないだろ!何が目的なんだ!」

 

「今言ったことが真実だよ。

それに目的を答えろ、か...君が試験を円滑に受けられるよう手助けして上げようとしたことかな」

 

「ふざけるな!」

 

とまるで冗談のようにいうレンゲルにブレイドは斬りかかった。

 

だがレンゲルは『SMOG』と刻まれたカードをラウズする。すると辺り一面に煙幕がはられる。

 

そして煙幕が晴れるとそこにレンゲルの姿はなかった。

 

「くそっ!!」

 

とブレイドは地団駄を踏む。

だがこんなことをしている場合ではない。試験開始まであと15分。

ブレイドは変身を解除し、『上杉風太郎』の姿に戻ると、全力疾走で学校に向かって走った。

 

 

「遅い...」

と剣崎の手作りプリントを確認していた五月はちらちらと黒板の上に取り付けられている時計をチラチラと確認する。

 

試験開始まであと5分だった。仮に今着いたとしても完全に遅刻である。

 

五月は祈った。どうにか間に合って欲しいと。五つ子は全員全科目赤点回避、剣崎はいつも通り満点。それがベストだが、剣崎は間に合うのだろうか。

試験官が各列ごとのプリントを数えている。

 

このままでは試験が始まってしまう。

もうダメなのかと思ったその時、教室のトビラが開かれた。

 

「すいません!遅れました!」

 

剣崎だった。階段を駆け上がってきた彼はゼェゼェと息を荒くしている。

 

「遅刻だぞ!上杉!テスト用紙を配るから早く席につけ!」

 

と試験官の教師が怒鳴る。

 

「はい、すいません!」

 

と言いながら剣崎はいきの整わぬまま席に着く。そしてちらりと後ろを向くと、五月に向かってサムズアップした。

 

「!」

 

それに気づいた五月はさらに気を引き締めた。

そして用紙が配られ、この日最初のテスト、国語が開始された。

 

 

───────────────────────

 

「よぉ、マルオ」

 

「私のことを名前で呼ぶなと言ったはずだが」

 

勇也は中野マルオが医院長を務める病院の屋上で彼に話しかけた。

 

「まだそんなことを気にしてんのかよ。それにお前は...」

 

「そんな話をしに来たのではないだろう」

 

と勇也の言葉を遮る。

 

「...まぁちょいと質問と頼み事があってな。

まずは質問だ」

 

「今そんなことをしている時間はないのだがね」

 

「とりあえず聞いていけよ。今朝風太郎を襲ったレンゲルに変身していたのはお前か?」

 

勇也がいつものおちゃらけた感じから一気に真剣な面持ちで聞く。

 

「そうだといったら?」

 

「別になにかするわけじゃねぇさ。それに風太郎は俺がスクーターに乗っけてった。多分テストには間に合ってるだろうな」

 

「そうか。では頼み事とは何かな?一応聞いておこう」

 

そう言われた勇也はスゥと息を吸うと口を開いた。

 

「俺にギャレンバックルとカテゴリーAを返せ」

 

「また唐突に何故だね?戦うことを放棄したのは君自身だろう。それに君はその身体で戦ってももたないはずだ」

 

「うるせぇよ。これ以上風太郎の命を脅かさせるわけにはいかない。お前がバックルを返せば俺はあいつに全てを話して、戦いから身を引かせる」

 

「答えを言おう。断る」

 

「何故だ!戦うことなら俺だってできる。下級アンデッドぐらいなら余裕だし、上級が来たとしても戦い用によれば...」

 

「そういう話ではないんだよ、勇也」

 

そう冷たく言い放ちながら、彼は勇也の方を向き直る。

 

「私の計画を達成するためには、今は上杉風太郎君をアンデッドと戦わせる必要がある」

 

「ふざけんな!もうあいつには...」

 

と勇也が言いかけたところでマルオは白衣のポケットから何かを取り出す。

 

「だが君にはカテゴリーAを不完全な形ではあるが封印してもらったという恩もあるからね。これを渡しておこう」

 

とマルオは勇也にその何かを放り投げた。

 

「こ、これは...!」

 

「ラウズアブゾーバーだ。上杉風太郎くんにはその実戦調整をしてもらいたい」

 

「そもそもこれを俺があいつに素直に渡すと思うか?」

 

「渡すか渡さないかは君の勝手だ。だがこれから上級アンデッドが、ましてやカテゴリーKなどが出現した際、彼はそれ無しでやれると思うかい?」

 

「テメェ...」

 

「そもそも私が君にバックルを返さなければ戦えるのは彼しかいない。それとも戦うなと説得でもしてみるかね?風太郎君の性格上聞き入れるとは思えないが」

 

「マルオ!お前はどこまでクズになりゃ気が済むんだ!」

 

「さぁね。だが何度も君に言っただろう。私はあの日から...『妻』を失ったあの日から悪魔になったとね。それに君にならこの気持ちは分かるはずだ。

 

 

同じく『妻』を失った君になら」

 

 

「......!!」

 

「少し話し過ぎた。診療の時間だ、私は戻る」

 

と言いながらマルオは院内に戻っていく。

 

だがそんなマルオを勇也が呼び止める。

 

「待て!分かった、アブゾーバーはあいつに渡す。だがせめて...この試験が終わった後の林間学校の期間中に、東町にアンデッドが出た時だけバックルを返してくれ」

 

と頭を下げる勇也。

 

「何故だ?何故君がそこまでする?」

 

「決まってんだろ...『父親』だからだ。風太郎には林間学校くらいは普通の高校生として楽しんで欲しい。

 

それに父親が子供の幸せを願って何が悪い?」

 

「ッ......。考えておこう」

 

というとマルオは再び院内に戻る。そんな彼の背中を見届けた勇也は少し空を見上げると自身も病院を後にした。

 

 

───────────────────────

 

剣崎と五つ子たちは試験を解いていた。今は最後の科目、英語である。

 

剣崎は開始30分程で全ての問題を時終わったものの、五月はかなり苦戦している様子だった。

 

『えぇと...この文確かどこかで...』

 

五月は必死に記憶を漁り、目の前の文を訳そうとする。そこで電撃のように記憶が蘇る。

 

『五月、その訳間違ってるぞ。この文は関係代名詞が省略されているから分かりにくいけどこれは2つの節で出来ている文だ』

 

『そうでした。この文型は省略されているからそれなら訳は...』

 

閃いた五月は解答欄にカリカリと答えを書き込む。

 

そしてさらに30分が経過し、試験の全科目が終了した。

 

 

 

 

そして三日後

 

「先日の中間試験の返却を行う」

 

と担任から全員に答案が返された。

まさに今日は運命の分かれ道である。

 

そして剣崎のもとにも答案が返却される。

周りに生徒が集まる。

 

上杉風太郎の人格が剣崎になってから、彼の持ち前の素直さと優しさが周りに受けたようで、クラスの人気者になっていた。

 

「上杉何点だった?」

「やっぱり全科目満点?」

 

「あぁ、今回は簡単だったかな」

と剣崎は右上に100と書かれた5枚の用紙を机の上に置いた。

 

「さっすが天才上杉!」

「いやいや、俺なんてまだまだだよ。

っとそうだった。俺テストの復習があるから 行かなきゃ。じゃあまた!」

 

と剣崎は席を立った。周りは100点のテストの何を復習するんだと思ったが剣崎の本来の目的は違った。

 

 

 

 

それは三日前。テスト最終日にまで遡る。

 

「みんな。まずはお疲れ様。今日までよく頑張ったな」

 

と五つ子を労う剣崎。

 

「ほんっと疲れた〜」

「やっと勉強から解放されるわ〜」

「これでいっぱい眠れる...」

「結果が心配です〜」

「ここまで必死に頑張ってきたのです。だからきっと...」

 

と五つ子たちは思い思いに口にする。そこで剣崎が彼女らにある提案をする。

 

「そこでだ。テスト返却日、俺は屋上に行く。それぞれの結果は1人ずつ見ることにしようと思う」

 

「なんでそんな面倒なことするのよ」

 

と二乃は訝しむ。

 

「なんというか、まぁ...プライバシーかな...」

 

と剣崎はお茶を濁す。これは剣崎なりの配慮だった。もし仮に誰かが一科目でも赤点をとってしまっていた場合、みんなの前で言い出すには非常に辛い思いをするのは想像にかたくない。

 

だから剣崎は1人ずつ結果を見ることにしたのだ。

 

「まぁフータロー君がそうするってのなら、私はそれに従うよ」

 

と一花も了承し、他の五つ子たちも了承してくれたようだ。

 

 

そして三日後に時を戻す。

 

剣崎は屋上で五つ子の誰かが来るのを1人待っていた。

 

そして屋上の扉が開かれる。

 

そこにいたのは三玖だった。

 

「フータロー、待った?」

 

「いや今来たところだよ」

 

「良かった。じゃあこれ試験結果」

 

と彼女は用紙を見せる。それをみた剣崎は「おぉ」と声を上げる。

 

その5枚の試験用紙の結果は剣崎が期待していたものだった。

 

 

国:39 数:46 理:40 社:70 英:36 計:231

 

 

見事三玖は全科目赤点を回避したのだった。

 

「すごいじゃないか、おめでとう三玖」

 

「ううん、私の力じゃない。フータローのおかげ」

 

「いやそれは違うぞ、三玖。これは三玖が自分で努力して取った点数だ。だから三玖はもっと自分を誇っていいんだぞ」

 

と剣崎は三玖の頭をわしゃわしゃ撫でる。三玖は幸せそうな顔でうっとりしている。

 

「ありがとう、フータロー。じゃあ私、行くね」

 

「あぁ、じゃあまた後でな」

 

三玖は屋上の扉を開けた。そして三玖が出ると同時にある人物が屋上に来た。

 

それは二乃だった。

 

「次は二乃か。三玖は全科目赤点回避を成し遂げたぞ」

 

「へぇ...そうなんだ」

 

と二乃はなにか飄々とした様子だ。

 

そこで「そんなに見たいなら見せてあげるわ」と言いながら剣崎に用紙を差し出した。

 

 

国:35 数:32 理:34 社:40 英:59 計:200

 

 

二乃もちゃんと合格ラインを超えてきた。

 

「さすがは二乃だな」

 

「フン、当然よ」

 

と鼻を鳴らす二乃。彼女は始めたのが少しだけ遅かったのもあったが、そんなハンデは何のそのと赤点回避を達成したのだった。

 

「本当によく頑張った。おめでとう」

 

と剣崎は三玖にしたのと同じように二乃に笑いかけながら頭を撫でた。

 

二乃は剣崎の笑顔を見て、またあの時の胸が熱くなる感じを覚えた。

だが「人の頭を気安く撫でないで!」と手を払い除けるとそのまま屋上を出た。

 

 

そして剣崎は二乃が屋上を出てから15分ほど待つと、扉が開く。

 

そこにいたのは一花だった。

 

「やっほー、フータロー君ー」

 

と一花はパタパタと手を振りながら剣崎の方に歩み寄る。

 

「よっ、一花。ってその様子は大丈夫そうだな」

 

「どうかな〜?実は悲しいのを隠してるだけかもよ?」

 

「......嘘だよな?」

 

「嘘嘘。ごめんね、からかっちゃって」

 

と一瞬疑いかけた剣崎に用紙を渡した。

 

国:31 数:61 理:49 社:35 英:47 計:223

 

「どう?私もちょっとはやるようになったでしょ」

 

「ちょっとなんかじゃないよ。最初の時と比べたら雲泥の差だ。本当によく頑張ったな、一花」

 

「フータロー君」

 

「ん?どうした一花」

 

一花は褒められていた時は違い、真剣な面持ちになり剣崎に言う。

 

「私たちの家庭教師になってくれてありがとう。あなたのおかげで私たちは本当の笑顔を取り戻せた気がする。

あなたが『仮面ライダー』で人の笑顔を守るために戦わなきゃいけないってのはよく分かってる。だから...せめて私たちが笑顔で卒業する時までは側にいて...

何があってもその時までは私たちの前からいなくならないで...」

 

「一花...」

 

「って何言ってんだかなー私。ごめんね、なんか変な空気にしちゃって」

 

「いや、そんなことないよ。今俺、内心めちゃくちゃ喜んでるんだ」

 

「え?」

 

「一花が今言ってくれただろ。私たちはあなたのおかげで本当の笑顔を取り戻せたって。俺、自分のやったことで人が笑顔になってくれるのが嬉しいんだ」

 

「フータロー君...」

 

「それに一花が、姉妹みんなが俺を必要としてくれてるってのも本当に嬉しい。またこうして誰かと一緒に色んな感情を共有できることが今の俺にとっての一番の幸せなんだ」

 

 

ああ、この笑顔だ。本当にこの笑顔は、私たちの心を暖かくしてくれる。

 

 

「フータロー君...」

 

 

 

 

『あなたが好きです。』

 

 

 

 

 

この言葉を一花は飲み込んだ。この『上杉風太郎』への想いは本物だ。だがもしここでその一歩を踏み出してしまえば、きっともう戻れなくなる。

せっかく揃った姉妹たちの足並みが、崩れてしまう。

一花は恐れた。長女として、姉妹を纏めることに責任感を持つ彼女は自分の想いを押し殺した。

そして彼女は気づいていた。自分の『上杉風太郎』への想い。

 

三玖はそれと同じものを持っているだろうと。

 

一花は三玖を心配していた。剣崎が家庭教師をやるようになってから、三玖はよく笑うようになった。自分を出すようになった。

 

だが時折一花は見ていた。自分やそれ以外の姉妹が剣崎と仲良くしているのを、三玖は嬉しそうに、姉妹が笑えていることが幸せそうに、

 

 

そして何か辛そうに、その様子を眺めていたことを。

 

だから一花は言い出せなかった。三玖のために、姉妹のために。彼女の想いを五つ子の長女という責任感が蓋をした。

 

「一花?」

 

と剣崎は不思議そうな顔で一花に尋ねた。

すると一花はハッとした。

 

「えっ、あ、いや!なんでもない...何でもないよ!」

 

「本当か?なんか今の一花、すごい辛そうな顔してたぞ」

 

「し、してないよ!勘違いだって、勘違い!

じゃあ私行くから!四葉と五月ちゃんが合格してたらちゃんと褒めてあげなきゃダメだぞ〜」

 

と一花は逃げるように屋上を出た。

 

 

剣崎はまた一人になった。

残るは四葉と五月。

 

だがこの二人がなかなか来なかった。一花が去ってから一時間ほど経った。

 

そして剣崎が眠くなってきたところで、屋上のドアがゆっくりと開かれた。

 

そこには少し難しい顔をした五月がいた。

 

剣崎は少し嫌な予感がした。だがなるべくそれを剣崎は出さないように五月に話しかける。

 

「よっ、五月。どうしたんだ、そんな難しい顔して」

 

「え、えっとですね...こ、この度は私ら五つ子の家庭教師を担当して頂き誠に...」

 

「いやいやいや、何言ってるんだ?五月」

 

妙に畏まって言う五月に剣崎はツッこむ。

 

「え、えーとこれはそのぉ...

お、遅れてすみませんでした!」

 

「え?あ、うん」

 

といきなり謝る五月に驚いてうまく言葉が出てこない剣崎。

 

「どうして遅れたりなんかしたんだ?五月にしては珍しいな」

 

「そ、そのぉ...上杉さんへの感謝の言葉を考えていたら、その...少し遅くなってしまって」

 

「そうだったのか...でも感謝の言葉ってことは...」

 

「は、はい!テストの方は大丈夫でした!」

 

と五月は慌てながら用紙を剣崎に見せる。

 

国:45 数:31 理:69 社:38 英:43 計:226

 

「五月も合格か。頑張ったな」

 

と剣崎は五月の頭を撫でる。五月は「ひゃう」と驚きながらもまんざらでもなさそうだ。

 

そしていきなり五月は声を上げた。

 

「う、上杉さん!本当にありがとうございました!あなたのおかげで私たちは少しだけ前に進めたような気がします」

 

「そうか。そう言って貰えると嬉しいよ。でもテスト直しは忘れるなよ?」

 

「も、もちろんです。でも最後に一つだけ言わせてください。

 

これからもよろしくお願いします。上杉さん」

 

と微笑む五月。

 

と五月も屋上を出たところで残るのは四葉だけとなった。

 

だが待てども待てども四葉は来なかった。

 

既に三時間が経過し、時刻は四時。そろそろ完全下校の時間になってしまう。四葉を除く姉妹たちは五つ子全員と剣崎の六人で一緒に帰ってなにか美味しいものでも食べようと言い、図書館で待っている。

 

 

そろそろこっちから探しに行くか。そう考え屋上を出ようと立ち上がった時、扉が開いた。

 

 

そこには四葉がいた。

だが剣崎は一目見て全てを察した。握りしめてくちゃりと潰れた点数用紙、そして泣き腫らしたであろう赤い目。

 

そしてようやく四葉が口を開く。

 

「待たせて...ごめんなさい、上杉さん...」

 

「あぁ、待ったぞ、四葉」

 

剣崎は優しく微笑みながら答える。

 

「テスト、今日返されたんですけど...他のみんなは?」

 

「他のみんなはかなり前に来たよ。

みんな...全科目の赤点を回避したよ」

 

それを聞いた四葉は「あっ...」と声を漏らすと、目から涙を流し、膝をついてしまった。

駆け寄り、しゃがむ剣崎。そんな剣崎の胸に顔を埋めて、彼女は泣きじゃくった。

 

「ごめんなさい...!ごめんなさい!上杉さん...!私のせいで...!私なんかのせいで...!」

 

彼女の手から点数の書かれた用紙が落ちる。

 

そこには

 

国:54 数:35 理科:28 社:34 英:33 計184

 

と無情にも理科の点数が赤で書かれていた。

 

以前の彼女ならなんとも思わなかっただろう。むしろこれだけ点数を取れたことを大喜びしていたに違いない。

 

だが今は違った。五つ子で全科目赤点回避。それができなければ、剣崎は家庭教師を解雇。

 

そのボーダーラインを四葉は、一人だけ、一教科だけ超えることが出来なかった。

 

「本当にごめんなさい!上杉さん...あんなに頑張ってくれたのに...私なんかのためにあれだけ頑張ってくれたのに...!それに答えられなくてごめんなさい!本当にごめんなさい!」

 

と大粒の涙を零しながら、四葉はひたすら剣崎に謝り続ける。剣崎はそんな四葉の背中をさすりながら宥める。

 

「何を言うんだ四葉。お前は十分頑張ったじゃないか。俺はお前達の努力を一番近くで見てきた。だから分かるぞ」

 

「でも...それじゃあ上杉さんは...」

 

「いいんだ、四葉。俺は家庭教師をやめたりなんかしない。別に給料なんか貰えなくたって続けてやるさ」

 

「え?」

 

「その代わりほかのバイトをしなきゃいけなくなるから今まで通りは行けなくなるかもしれないけど、心配するな。何ももう会えなくなった訳じゃない」

 

「でも...でも...」

 

と四葉は泣き続ける。

 

今の剣崎にはどうすることも出来なかった。いくら四葉が泣こうとも、剣崎が慰めようとも、目の前にあるのは理科が28点という無情な赤点、剣崎の家庭教師解雇の印があるだけだった。




少し中途半端なところで終わって申し訳ないですが、明日は投稿できないかもしれません。

本当にすみません。
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