五等分の運命   作:電波少年

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先日、この『五等分の運命』のお気に入り数が300件を突破しました!

これもひとえに読者の皆様のおかげです。本当にありがとうございます。


第17話:四葉、『逆転』

剣崎は泣きじゃくる四葉を慰め続けた。

今の四葉にはあらゆる気持ちが渦巻いていた。

 

あと2点で合格出来たという悔しさ。

 

結局自分だけが赤点を取ってしまい泣くことしか出来ないという情けなさ。

 

そして剣崎や五つ子に対する申し訳なさ。

 

それらのあらゆる感情が四葉に涙を止めさせなかった。

 

 

「私は...上杉さんの...みんなの努力を無駄にしました...私が...私が...!」

 

「四葉...違う、俺のせいだ。俺がもっと上手く教えられていれば...」

 

『俺はまた嘘をついた...

 

彼女たちを『笑顔』にさせると言ったのに』

 

剣崎は不甲斐ない自分自身を責めた。

 

四葉が姉妹の中で一番勉強ができなくて、それを彼女自身が理解して姉妹の中で一番努力していたことを彼は知っていた。

 

だから四葉に非は無い。悪いのはそんな誰よりも努力をした彼女を裏切った自分自身だ。

 

 

 

 

 

そこで屋上の扉が勢いよく開かれた。

 

「ちょっと何してんのよ!!

うちの可愛い妹を泣かせてるんじゃないわよ!」

 

そこにいたのは腕を組む二乃。その後ろには一花、三玖、五月がいた。

 

「ま、待って...二乃!やめて...悪いのは全部私たがら...お願いだから上杉さんを責めないで...」

 

四葉は涙でぐちゃぐちゃになった顔で二乃に懇願する。

 

「いや、悪いのは全て俺だ。俺はこんなにも努力した四葉を合格させてやれなかった。すべての責任は俺にある」

 

「ったく...これだから天才サマは...まぁあんたみたいに常に満点を取ってれば『アレ』は意識するはずないものね」

 

と二乃は呆れたような顔だ。

 

そこで剣崎は違和感を覚えた。今四葉だけが合格できずに泣いてしまっているという状況なのに、二乃に加えほかの三人も少し困ったような、嬉しいようなという顔つきである。

 

そこで五月が四葉に尋ねる。

 

「四葉。あなた2週間前の科学実験の結果を纏めたレポートは提出しましたか?」

 

「え?一応出したけど...上杉さんに色々と教えて貰いながらだけど自分で書いて提出したよ...」

 

そこで剣崎はハッとした。

 

「そうか!『アレ』か!

四葉!その提出されたレポート、この間返却されたよな? 」

 

「は、はい。されましたけど...」

 

「その右上に赤ペンで書かれてたアルファベット、覚えているか?」

 

 

 

 

「えぇと...確か...『A』でした...」

 

 

 

四葉がそういった瞬間、辺り一面がシン...となる。そして

 

 

 

「「「「「やったー!!」」」」」

 

 

と四葉を除く五人が一斉に喜ぶ。四葉はまだ何が起こったか分からないという顔だ。

 

「やるじゃん、四葉!」

「ほんとヒヤヒヤさせないでよね!」

「四葉、おめでとう」

「本当に...本当に良かったです...」

「よくやったぞ!四葉!」

 

とみんな口々に四葉を褒め称える。

 

「えーと...みんな?」

 

「おめでとう、四葉。これで全員赤点回避達成だ!」

 

と剣崎は四葉に笑いかける。

一瞬ドキリとした四葉であったが首を横にブンブン振って気を取り直す。

 

「ど、どういうことなんですか!?赤点回避達成って...私だけ理科が28点だから、上杉さんは...」

 

「フフフ...甘いな、四葉。今回の俺が解雇を免れる条件は赤点回避。だが何も親父さんは、『素点』だけで赤点回避とは一言も言っていない。

 

そしてお前が提出したレポートの評価は『A』...もうここまで言えば分かるだろ?」

 

 

「あっ、まさか!」

 

やっと四葉は気づいたようだ。

 

「ようやく気づいたな。四葉の理科は28点じゃない。素点の28点に加えて...

 

 

 

『平常点』の+3点で合計点は31点だ!」

 

「......!!!」

 

と四葉の顔は一気に明るくなった。

 

すると携帯が鳴る。画面を見ると、五つ子の父親の電話番号だった。剣崎は電話に出る。

 

「はい、上杉です」

 

「もしもし、上杉君だね。確か今日はテスト返却日のはずだが、娘達の結果はどうだったかな?」

 

だが正直な話を言うと、マルオは姉妹たちがら赤点回避をできようができまいが剣崎を家庭教師として続投させるつもりだった。

これも全て計画のため、そう考えていたマルオに帰ってきたのは意外な答えだった。

 

「五人で五科目すべての赤点を回避出来ました!」

 

「!...ほう」

 

とマルオは興味深そうに頷く。

 

「正直に話すと四葉だけは平常点込みで30点を超えたんですけど...お父さんあの日赤点回避と言っただけで素点に関しては...」

 

「いや、それで結構だ。何事も結果が全てだ。その結果において赤点回避という目標を達成できているなら私が言うことは何も無いよ。よくやってくれた、上杉くん」

 

「お、お父さん...!」

 

「君にお父さんと呼ばれる筋合いはないよ。

ではまた」

 

と言うとそこで通話は途切れた。

 

「父は何と...?」

 

と恐る恐る尋ねる五月。

 

「何も言うことはないってさ...」

 

「!...つまりそれって...」

 

 

 

「あぁ。おめでとう、みんな。

そして、これからもよろしく」

 

とペコリとお辞儀をした剣崎。

 

そしてそんな剣崎にいきなり四葉が抱きついた。

 

「よ、四葉?!」

 

ビックリして声を上げる剣崎。ほかの姉妹達も「「「「あ!」」」」と驚く。

 

「上杉さん...本当に、本当に...ありがとうございました。私、生まれて初めて勉強して良かったって思えました!」

 

と最高の『笑顔』になる四葉。

 

「!...そうか、それは良かった」

 

と剣崎はまた誰かの笑顔を取り戻せたことを喜んだ。

 

 

「よし!テストも終わったことだし、テスト直し......といきたいところだが、正直いって俺も今日は疲れちゃったし...俺、今なんか甘いものでも食べたい気分だからさ。

 

みんなでもパフェでも食べに行かないか?」

 

と剣崎は五つ子を誘う。

そしてすぐさま彼女らはそれに返す。

 

「さんせーい!私もパフェとか食べたくなっちゃった!」

「私も行くわ!ここ最近頭使いすぎちゃったし、糖分補給しなくちゃ!」

「私も。抹茶パフェが食べたい気分」

「私はフルーツパフェがいいです!」

「では私は特盛で」

 

「よし!なら駅前のファミレスでいいか。今日は俺から見事赤点回避を成し遂げたみんなに奢ってやるぞ!」

 

と剣崎は意気揚々に五つ子たちと駅前のファミリーレストランに向かった。

 

 

 

 

 

 

30分後

 

「わぁ〜、美味しそう〜」

 

五つ子と剣崎の目の前には6つのパフェが並んでいた。

一花がチョコパフェ

二乃がストロベリーパフェ

三玖が抹茶パフェ

四葉がフルーツパフェ

五月がジャンボパフェ

剣崎は悩んだ結果、一番安いミニパフェにした。

 

五つ子たちはパフェに舌づつみをうっており、お互いのパフェを交換したりしていた。ちなみに注文した際に受け取った伝票を見て顔を青くした剣崎はたまの贅沢を無駄にしないようチビチビ食べていた。

 

ちなみにいま剣崎達が座る席も一悶着あって決まったのだ。ファミレスに着いた剣崎一行は店員に案内され席につこうとした。先頭にいた剣崎は特に何も考えずテーブルを挟んで6人がけの席に一番最初に座った。

 

だがそこで少し問題が起きた。誰が剣崎の横に座るかという問題である。三玖が「私でいいよ」と言い座ろうとしたが、一花が「ここは公平にジャンケン」でと提案し、みんながそれを飲んだ。そして結果は見ての通り、一花の一人勝ちだった。そして剣崎のテーブルを挟んで前に座るのは三玖である。

 

「フータロー君、私のパフェも味見してみる?」

 

と剣崎の左隣りの一花が尋ねてくる。

 

「いいのか?」

 

「もちろん。そもそもこれフータロー君の奢りだしね」

 

と笑う一花。

 

「じゃ、ちょっと貰おうかな」

 

「じゃあ、はい。あーん」

 

と一花はスプーンに一口分のパフェを乗っけるとそれをそのまま剣崎の口に運ぼうとする。

 

「え?」

 

一花のパフェから自分で一口分掬おうとしていた剣崎は硬直した。

 

「え?じゃない!いいから早く口開けて」

 

と急かされた剣崎は「あ、あぁ」と言いながら口を開ける。

 

「あむっ」

 

「美味しい?」

 

「んっ、あぁ、美味しいよ。ありがとう、一花。」

 

と剣崎は飲み込んで答えた。

そしてその様子を少しムッとした顔で見ていた三玖はすぐさま一花と同じようにスプーンにパフェを一口分乗せて、剣崎の前に出してきた。

 

「フータロー、私のも。あーん」

 

「え、えぇ...」

 

「嫌なの?一花のは食べたのに」

 

「そ、そんなことないぞ!い、頂きます!」

 

というと剣崎は三玖にパフェを食べさせて貰った。

 

「ありがとう、三玖。美味しかったよ」

 

と微笑む剣崎に三玖は顔を少し赤くして

 

「よかった」

 

と返した。

そしてそれを一花は黙って見つめていた。

 

「はいそこ、さっきから何イチャついてんのよ」

 

「イ、イチャついてなんかない...」

 

と二乃が三玖をイジりだす。

 

そしてそこで四葉が「みんな!」と少し大きな声で席に座る剣崎達に呼びかける。

 

「今回は本当にありがとうございました!上杉さんやみんな協力のおかげです!」

 

と四葉がニッパリと笑う。

そこに剣崎が返す。

 

「本当によく頑張ったな、四葉。それにみんなも。最初の時に比べてあんなに頑張るもんだから、俺も教えてて楽しかったよ」

 

と笑う剣崎。

 

五つ子たちも笑う。

 

 

 

だがこの楽しい時間はいきなり終わりを告げた。

 

 

 

 

音を立てて割れる窓ガラス。現れる異形。そして響き渡る叫び声。

 

店内は一瞬として阿鼻叫喚の地獄と化した。

 

「な...」

 

目の前の異形-♥7 プラントアンデッドは剣崎と五つ子を視界に捉えると右手の蔦を彼らに向かって放つ。

 

「伏せろ!!」

 

そう叫ぶと剣崎は五つ子たちを無理やり地面に伏せさせた。

 

彼女らは状況を理解出来ていない。

 

 

だが一花と三玖は違った。

すぐさま立ち上がると

 

「逃げるよ!みんな」

 

とほかの三人を立ち上がらせて走り出した。だがアンデッドは逃がすまいと蔦を伸ばそうとする。だがそのアンデッドの背中に剣崎は組み付く。

 

「早く逃げろ!」

 

「で、でも上杉さんは!」

 

「俺もすぐ行く!だから早く!」

 

と心配の声を上げる五月に逃走を促す。

 

そして店外に出ようとした一花と三玖にアイコンタクトを交わす。だかアンデッドもいつまでも組み付かれているわけもなく背中にいる剣崎を振り払うように吹き飛ばす。

 

「グッ!」

 

と吹き飛ぶ剣崎だったがそれと同時にバックルを装着し、叫ぶ。

 

 

「変身!!」

TURN UP

 

幸い客や店員は全員避難が完了しており、変身する剣崎を見た者はいなかった。

 

 

 

 

「へぇ〜、あれが『仮面ライダー』...

面白そうじゃん。俺もちょっかいだしてみるとするかね」

 

 

と店の外の電柱から店内を見つめる派手な格好をした男-♠︎Q カプリコーンアンデッドを除いて。

 

 

ブレイドは剣戟をプラントアンデッドに浴びせようとするものの、蔦による妨害で中々接近することが出来ない。

 

「クソっ!」

 

ブレイドは一旦距離を取ると、カードをラウズする。

 

TACKLE

 

突進力が強化され、ブレイドはプラントアンデッド目掛けて突撃する。

 

アンデッドはそれを蔦で迎撃しようとするものの、ブレイドは止まらない。

 

そしてブレイドがアンデッドに体当たりを直撃させる瞬間、横から来た衝撃に彼は吹き飛ばされた。

 

 

「ヴェア!!」

 

 

床を転がるブレイド。見上げるとそこにはやけに派手な格好をした男。剣崎はこの男に見覚えがあった。

 

「お前は...カテゴリーQ!」

 

剣崎は一度、ジョーカーとなる前にこのカテゴリーQ カプリコーンアンデッドと戦ったことがあった。彼は上級アンデッドと呼ばれる知能の高いアンデッドであり人間の姿に変身することを可能としている。一度ブレイドと戦った際も♥Q オーキッドアンデッドと組んで剣崎の親友の虎太郎を人質にとることで、剣崎を変身させずに始末しようとした卑劣なアンデッドである。

 

そしてカプリコーンアンデッド-矢沢は告げる。

 

「あれぇ?仮面ライダーブレイドォ、俺のこと知ってんの?

なら都合がいい。俺も混ぜてくれよな?」

 

矢沢は剣崎のことが記憶にないらしい。剣崎はこれで自分を『上杉風太郎』と言う青年に乗り移らせた存在以外、自分のことを知らないのだと確信した。そしてその乗り移らせた存在が『仮面ライダーレンゲル』の正体であるということも。

 

だが考える剣崎を尻目に矢沢は

 

 

「フォーーーー!!!!!」

 

 

と甲高い叫び声をあげると、その姿を♠︎Q カプリコーンアンデッドへと変化させた。

 

そしてブレイドに飛びかかる。

 

取っ組み合いになるブレイド。だがそのブレイドの背中をプラントアンデッドが右手の蔦で打つ。

 

「ガっ!」

 

と苦痛に喘ぐブレイド。そんなブレイドにさらに二体のアンデッドは追撃をかける。

 

「どうした?仮面ライダー。こんなもんかぁ?」

 

カプリコーンアンデッドはブレイドの周りをジャンプで飛びまわる。店の机や壁を蹴って、その軌道をブレイドに悟らせない。

 

そして彼の背中に回り込む。蹴りを放ち、それをガードするブレイド。だがその背中をプラントアンデッドが蔦で打つ。

 

ブレイドは完全に二体のアンデッドの連携攻撃に翻弄されていた。

 

前回、家庭教師をやめた時にもブレイドは二体のアンデッドと同時に戦った。だがあの時は戦意が高揚しており、アンデッドはどちらとも下級アンデッドだった。

 

だが今目の前にいるアンデッドの一体はカテゴリーQに属する知能の高い上級アンデッド。彼は常にブレイドが嫌がる攻撃を繰り出し、それをブレイドがガードするとその隙にプラントアンデッドに攻撃させるという手法を取った。

 

その戦術に見事にハマったブレイドは一瞬にして追い詰められた。

 

「なんだよ、つまらねぇなぁ。それなりの数のアンデッドが封印されていると聞いて来てみたが所詮こんなもんかよ」

 

とカプリコーンアンデッドはつまらなそうに頭の後ろで手を組む。

 

「待て!お前どこでそれを聞いた!?」

 

「どこって...同じアンデッドからだよ。カテゴリーKのアンデッドから聞いたのさ」

 

「カテゴリーKだって!? その正体は誰だ!言え!」

 

「言え、だって...?それは負けてるやつの態度じゃねぇよなぁ!?」

 

カプリコーンアンデッドはブーメラン状の武器をブレイドに飛ばしてきた。ブレイドはそれをもろに食らうと店の奥に吹き飛ばされる。

 

「これで、終わりだなぁ?仮面ライダー!」

 

カプリコーンアンデッドは角に青い炎を、プラントアンデッドは右手の蔦を硬質化させ、ブレイドにトドメを刺そうとする。

 

 

MACH

 

と電子音が鳴ると、ブレイドは高速移動をして、その2つの攻撃を躱した。

 

 

カプリコーンアンデッドがブレイドを吹き飛ばしていたことにより、ブレイドはカードをラウズする隙ができていたのだ。

 

そしてすぐさまプラントアンデッドの後ろに回り込み、ブレイラウザーの刃をアンデッドの背中に突き刺し、その体を貫いた。

 

 

「グゲェア!」

 

とアンデッドは苦悶の声をあげたあと倒れる。そしてブレイドは封印のカードをアンデッドに落とすと、カードに『BIO』と刻まれた。

 

 

「ちっ!」

 

と舌打ちをすると、状況の悪化をみて逃走しようとするカプリコーンアンデッド。

だがブレイドはそれを許さなかった。

 

 

BIO

 

 

と今封印したカードをラウズし、切っ先から放たれた蔦で、カプリコーンアンデッドを拘束した。

 

「なっ!?放しやがれ!!」

 

もがくカプリコーンアンデッド。

そしてブレイドはトドメを刺すためにカードホルダーから二枚のカードを取り出してラウズした。

 

 

SLASH

THUNDER

《ライトニングスラッシュ》

 

 

そう電子音がなると、電撃を纏い、切れ味の強化されたブレイラウザーで、カプリコーンアンデッドを叩き斬った。

 

 

「ガァ!!」

 

と断末魔をあげて、倒れるカプリコーンアンデッド。

 

そしてブレイドは倒れたカプリコーンアンデッドに尋ねる。

 

「カテゴリーKの正体は誰なんだ?そいつから何を聞いた?」

 

「さぁねぇ...」

 

「しらばっくれるな!答えろ!」

 

「知らねぇもんは答えられねぇよ。それに聞いたって言ってもお前がアンデッドを封印してるってことくらいだ」

 

と答えるアンデッド。どうも嘘を言っているようには見えない。ブレイドは諦めたようにカードを投げ、アンデッドはそれに吸い込まれる。カードには『ABSORB』と刻まれた。

 

「これだけあってもなぁ...」

 

とブレイドは封印されたABSORBのカードを見つめた。そしてブレイドは店の外に出て変身を解除しようとする。

 

だがそんなブレイドの行く手を阻むように目の前にある人物が立ち塞がった。

 

「待って!」

 

それは二乃だった。彼女は店内でブレイドが勝利したのを見ると、姉妹の制止を振り切り、ブレイドに会いに来たのだ。

 

「私は前駅まであなたに助けてもらいました。な、名前は中野二乃と言います!」

 

剣崎は内心で「知ってるよ...」と呟く。だが間違ってもそんなことを口に出すわけにはいかない。ブレイドは無言で店内を去ろうとする。

 

だが二乃は両手を広げて、ブレイドを行かせまいとする。

 

「待って!まだ行かないで。私はあなたに聞きたいことがあるんです!あなたは誰なんですか?その素顔を見せてください!」

 

とまるで自分の運命の相手を見つけたかのように必死に尋ねる二乃。

 

どうしようかと困り果てる剣崎。だがそこに他の姉妹達が駆けつけた。

 

「二乃ー!いきなり走ったら危ないでしょ!」

「やめて、二乃。仮面ライダーが困ってる」

 

と一花と三玖は二乃を抑える。そして二人はブレイドに目で「行って」と伝える。

 

ブレイドはそんな二人に心の中で礼を言うと、割れた窓からジャンプで店外に出ると、誰も見ていないところで変身を解除した。

 

そして店内に残された五つ子たち。

 

「すごい...仮面ライダーって本当にいたんだ...」

 

と未だに驚きの色を隠せない四葉。

 

「ちょっと!せっかく仮面ライダーの正体を聞くチャンスだったのに逃しちゃったじゃない!どうしてくれんのよ!」

 

と怒る二乃に一花は優しく言う。

 

「誰だって知られたくない秘密の一つや二つくらいあるってフータロー君も言ってたでしょ。きっと仮面ライダーにもそれがあるんだよ」

 

とわざとらしく言う。以前納得した様子を見せない二乃。

 

三玖はそれを聞いて頷く。

そして思う。

 

 

『誰にだって秘密はある。でも...フータローの秘密を知ってるのは、私だけ』

 

と、その秘密を知るものが姉妹にもう一人いることなどを知らない三玖は心の中でそう呟いて静かに笑った。

 

 

 

「みんな!大丈夫だったか?」

 

剣崎はわざとらしくみんなのもとに駆け寄る。

 

「上杉さん!上杉さんの方こそお怪我はありませんか?」

 

と心配そうに尋ねる五月。

 

「あぁ、俺は大丈夫だよ。見ての通りピンピンしてる」

 

「それにしても仮面ライダーが来てくれて助かりましたね」

 

「え?あぁ、まぁそうだな」

 

としどろもどろになって答える剣崎。その様子を一花と三玖は笑いを堪えながら見ている。

 

「あら、アンタも無事だったんだ。そうだ!アンタ仮面ライダー見なかった?確かそっちの方から出ていったハズなんだけど」

 

「い、いや、知らないぞ!俺はなんも見てない!」

 

と大嘘をつく剣崎。二乃は「まったく...使えないわねぇ」とため息をつく。

 

「とにかくみんな怪我がなくて良かったよ。なんかごめんな、折角休んでもらおうと思ったのに...」

 

「ううん、フータローは何も悪くない」

「まぁ店の中もこんなんになっちゃたし、とりあえず帰ろっか」

 

と五つ子と剣崎はファミレスを後にする。辺りには数台のパトカーが到着しており、店内から出てきたために色々と事情を聞かれたが、怪物に襲われそうになったところを『仮面ライダー』に助けてもらったということを一花が上手く説明してくれたことで、直ぐに解放された。

 

 

そして剣崎は五つ子をマンションへと送った。

「上杉さん、今日までどうもありがとうございました。また明日からもよろしくお願いします」

 

と恭しく頭を下げる五月。

 

「こちらこそありがとう。みんなが頑張ってくれたおかげで俺はまた家庭教師を続けられる。みんな本当によく頑張ったな。いろいろあったけど今日はゆっくり休んでくれ」

 

「はい!ではまた明日、上杉さん」

 

とマンションの中に戻っていく五つ子たち。

 

それを見届けると、剣崎も上杉家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

〜病院〜

 

「旦那様、カテゴリーQがブレイドに封印されました」

 

「あぁ、知っているさ。だが同時に驚きもしているよ。これだけの短期間で、もうカテゴリーQを倒すまでに至るとは」

 

「それにしても良かったのですか?ラウズアブゾーバーを上杉勇也に与えて」

 

「心配ないさ、江端。彼は直接ではないにしても必ずあれを風太郎君に渡すだろう。ブレイバックルを彼に渡させたようにね。

そして上杉風太郎、彼のポテンシャルは計り知れないものだ。おそらく彼はもっと強くなる。それこそ......

 

 

私や江端を倒すほどにね」

 

「左様ですか」

 

「あぁ。そして彼には来たるべき滅びの日のためにもっと役立ってもらわなくてはならない。

そして彼の存在が、この偽りのバトルファイトに『存在しない』真のダークホース...

 

 

 

 

 

『ジョーカー』を目覚めさせる鍵になる」

 

 

 

そういうとマルオは患者の診療のために席を立った。




♥7 プラントアンデッド
地底に根を張り巡らせて獲物を探知し、右手や背中にある蔦で獲物を絡めとりその体液を吸い取る。また毒液をまき散らしながら右手の蔦を硬質化させた武器で相手に襲い掛かることもある。

♠︎Q カプリコーンアンデッド
普段は矢沢という名前のエキセントリックな青年に変身している。
トリッキーな動きで敵を翻弄し、角からの青い炎やブーメランで攻撃する。
矢沢の姿でも口から衝撃波を発する事が出来る。

今回名前だけでてきたオーキッドアンデッドの説明はいずれ載せます。

活動報告にも書きましたが、これから少しの間、毎日更新をすることが厳しくなります。事前報告なしに更新しない時も出てくると思いますのでご了承ください。

あともう1つ、今回はラウズカードのAP使用量をブレイラウザーの初期APの5000に合わせましたが、次からの戦闘はイメージした描写のために、使用したAPの合計値が5000にならない時も出てきますのでこちらもご了承願います。

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