剣崎と始の血の色が赤になったところで、不覚にも涙が出そうになりました。
剣崎が救われて本当によかった...
「おい、起きろ。親父」
「......負けちまったか」
「あぁ。俺の勝ちだ」
剣崎は勇也を揺すり起こす。そして自分が勝利したという事実のみを端的に伝える。
「アンタが知っている全てを話してくれ」
「分かってる、約束だからな。とはいっても話すことが多すぎるな...お前が聞きたいことを俺に言ってくれ。応えられることには全て答えてやる」
「じゃあまず...なんでこの世界にアンデッドがいる?」
「知らん」
「...おい」
剣崎は呆れたように口を開く。
「すまねぇな。だが少なくともアンデッドは4年前から出現していた。
ただ、ここまで活発には活動してなかったけどな」
「4年前...」
「あぁ。俺が『ある男』に誘われて、『ギャレン』になった年だ」
「親父が、ギャレンに...その『ある男』ってのは?」
「そりゃ気になるよな。まぁ少なくともそいつが全てを握っているといっても過言じゃねぇ。
ただこれを聞いたらお前はもう引き返せなくなるぞ」
「いいんだ。俺は真実を知って...『運命』と戦う」
「分かった。なら全てを教えてやる。
その男の名は......」
〜病院〜
「江端、行こう。もはやこの病院に残って自分を偽る必要はない」
「畏まりました。それにしても良かったのですか?ギャレンバックルを勇也に渡して。今回は発信機も付けていませんが」
「大丈夫だ。そういえば先程ブレイドとギャレンの2人の変身を確認した。そして恐らく勇也は全てを上杉風太郎くんに話すだろう。ここで彼ら2人を殺すことは容易い。
だがそれをしてしまえば、三玖くんの融合係数に異常が出て13体融合を成し遂げられなくなる可能性もある」
「分かりました。では新しく出来た施設の方に直ぐに移動を」
「古い方は処理しておいてくれ。勇也が場所を知っているのが些か気がかりだ」
「畏まりました。直ぐに手配させます」
「では向かおうか」
そしてマルオは病院を出ると、江端の運転する車に乗って目的の場所へと向かった。
『それにしても驚いた。先程勇也と上杉風太郎の間で起きたと思われる戦闘。そこでまさか上杉風太郎の融合係数が1700を超えるとは。
これはもし仮に三玖くんが失敗した時のための保険になるかもしれない。
とにかく今はタランチュラアンデッドの封印を急がなくてはいけないね』
マルオは外を見る。目に映るのは今まで自分が過ごしてきた東町の風景。
『零奈...君は僕のことを恨んでくれ。君が愛した娘を利用し、この世界を破滅に導こうとする僕を...
僕は...この世界も...『二度』も失敗した自分自身も...許すことはできない』
〜ビルの屋上〜
「その男の名は...『中野マルオ』。お前が家庭教師をしている5つ子の義父だ」
「......え?あいつらの...父親が...」
「元々あいつは悪いやつじゃなかった。感情は表に出さねぇけど、それでもどこかに温かさを持ったやつだった。若くして自分の病院を持ってて、スーパードクターなんて言われてたな。
そしてあいつは5人の娘を持つ優しい女性と結婚した。ただあいつは...ある時から狂っちまった」
勇也は昔を思い出し、懐かしそうに、ただどこか悲しそうに続ける。
「5年前に、あいつの嫁さんは死んじまったんだよ。元から持っていた持病が悪化してしまったらしい。あいつはあらゆる手を尽くして嫁さんを救おうとしたが、もう既に手遅れになっていた。
その一年後に俺は...あいつから『アンデッド』と『ライダーシステム』の存在を教えられ、『ギャレン』となった」
「親父に、そんな過去が...」
「あともう1つお前に伝えておかなきゃいけないことがある。これはお前にもらいはにも伝えていないことだ。
そしてこれが俺が『ギャレン』として戦うことを決めた最大の理由だ。
ただこれはお前にとって辛い現実だろう。それでも聞く勇気はあるか?」
「ああ。俺は決めたんだ。『運命』と戦うって。そのために1つでも多くの真実を知っておきたい」
剣崎は覚悟を決めたような顔で口を開いた。
「そうか...なら話そう。俺が『ギャレン』になった理由はただ一つ。
『復讐』だ。お前の母であり、俺の妻だったあいつを殺した...アンデッドに対する復讐だ」
勇也は普段とは比べ物にならないくらいに真剣で顔つきになっていた。その表情にはどこか怒りの色も見える。
だが剣崎はそんな勇也に比べてどこか冷静だった。確かにその殺された女性は上杉風太郎の母であって、剣崎の母ではない。
「......意外と落ち着いてるんだな」
「...え。あ、ごめん」
「別に謝ることなんてねぇさ。そして復讐を決めてギャレンになってから俺はアンデッドを封印するために戦い続けた。酷い時なんて一日4体と戦う時もあった。
まぁそんだけ戦ってりゃあ、体も持たなくなってくる。」
勇也は悔しげに続ける
「そして俺はあるとき、蜘蛛のカテゴリーAと戦いそれをなんとか封印した。まぁ結局、封印が不完全だったせいでこんなことになっちまって...そして俺はその戦闘の際に負った傷が原因でギャレンには変身できなくなった。
もう戦えない。そんな時に...ライダーシステムに適合する資格を持った男がいた。
それが風太郎。お前だ。俺はお前を騙してライダーにしたんだよ。
あの時は驚いた。初めて見たはずのバックルやラウザーを一目見て使いこなしやがった。さすがは試験オール100点ってところだな」
冗談めかして言うものの、その顔にはもうしわけないという気持ちが見え隠れしている。
「俺から話せることはこれだけだ。アンデッドが現れた理由は俺にも分からねぇし、どうしてマルオがライダーシステムなんぞを作れたのかも分からねぇ」
「そうか...分かった」
「だけど風太郎...お前はもう戦わなくていい。俺ももう戦える。お前は...
「それはできない」
剣崎が勇也の言葉を遮る。
「言っただろ?俺は『運命』と戦うって。それに...俺には救ってあげなくちゃいけない奴がいる。
俺が一花を...蜘蛛の呪縛から解放する」
「そうか...」
「帰ろう、親父。らいはも心配してるだろう」
「...あぁ」
「でもその前に...行っておきたいところがある。親父は先に帰ってらいはを安心させてやってくれ」
「あの子達の家か」
剣崎は無言で首を縦に降ると、勇也はフッと鼻を鳴らして笑った。
こうして2人はビルの屋上を後にする。いつも通りの他愛ない会話をしながら階段を下っていく。
『すみません、勇也さん。今だけは...俺に人間として家族を演じさせてください』
しかし、決して剣崎の顔が明るくなることは無かった。
〜中野家〜
時刻は現在午前1時。結局四葉と五月は眠ることも出来ず2人でリビングのソファに身を寄せ合いながら座っていた。
「三玖...遅いね」
「大丈夫。きっと...きっと帰ってきてくれます。そしたら上杉さんとちゃんとお話して、前みたいに...」
また涙を流しそうになるのを堪える五月。
だがその時、5つ子達の部屋のインターホンがピンポーンと音を立てた。
四葉と五月はいてもたってもいられず走り出す。その扉の向こうに三玖がいることを信じて。
だがそこに居たのは予想外の人物だった。
「三玖!...ってあなたは...」
「おぉ...五月ちゃんか...あまりに先生とクリソツだから見間違えそうになったぜ...」
ボロボロのスーツに身を包み、弱々しく声をあげる下田だった。その体からは所々緑色の液体が滲んでいる。
「まさかあなたは...下田先生!?どうしてこんなところに...しかもその怪我...とにかく今は中に!」
「いや、いいんだ。一つだけ伝えることがあってきた」
下田は扉の前に座り込んだまま今のにも途切れそうな声で言葉をつむぎ続ける。
「お前らの義父...中野マルオには気をつけろ。あいつは...五月ちゃんたち5つ子を利用して何か...とんでもないことをしようと...カハッ...!」
すると下田は口を手で抑える。その指の隙間から緑色の液体が地面に零れ落ちる。
「し、下田さん?」
「悪ぃな五月ちゃん。一つだけこちらから聞きたいことがある。一花ちゃんが今どこにいるか分かるかい?」
「一花ならちょっと事情があって部屋のベッドで寝込んじゃって...」
そう答えた四葉。すると下田はなにかありえないことを聞いたような顔になり、思考をめぐらせる。
「まさか...今家に二乃ちゃんか三玖ちゃんはいるかい?」
「実は...三玖が...」
『そういうことか...ってことはさっきレンゲルから発せられた声は、一花ちゃんのものじゃなく三玖ちゃんの...』
下田が考えをめぐらせていると、心配そうに自信を見てくる四葉と五月の姿が目に入る。すると下田はスッと立ち上がる。
「おっといけねぇ...これ以上汚したら管理人さんに怒られちまうな...私はそろそろお暇させてもらうぜ...」
それだけ言うと下田は非常階段に向かって走り出した。
「ま、待ってください!下田さん!」
五月も走って非常階段に向かったが、そこに下田の姿はない。
下田は非常階段に向かうと1つ下の階からアンデッドに変身して飛び降りたのだった。
『待ってろ、三玖ちゃん。私がレンゲルと接触できりゃあ、ブレイドの兄ちゃんを上手いことレンゲルに誘導できる。
零奈さん。これが今の自分に出来る、精一杯の恩返しです。』
ウルフアンデッドは決意を胸にすると、その嗅覚を生かし、レンゲルの元へと向かった。