五等分の運命   作:電波少年

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久々の投稿です。


第36話:『切札』は自分だけ

「俺は...俺は...」

 

 

「決めるのはお前だ、上杉風太郎。

 

それにまだ世界の崩壊が始まるまで3日はある。

 

それまでにしっかり考えるんだな」

 

 

 

伝えることを伝え終えた士は風太郎に背を向けると、そのまま歩き出す。

 

 

 

「あんた、なぜ俺にこんなことを教えた?」

 

 

 

「なぜ?どういう意味だ?」

 

 

 

「そのままの意味だ。

 

この世界が滅びることで何かアンタにデメリットはあるのか?

 

時空を超えることが出来るならアンタだけこの世界からほかの世界に逃げれば済む話だ」

 

 

 

 

そう尋ねる風太郎に士は背を向けたまま小さく笑う。

 

 

 

「俺は『世界の破壊者』だ。どんな世界だろうと滅びるか、滅びないかは俺が決める。

 

それを身勝手なルールで世界を壊そうとしているやつが個人的に気に食わなかっただけだ」

 

 

 

「...そうか」

 

 

 

「そういうことだ」

 

 

 

 

士と風太郎はその会話を最後に互いに逆方向に歩いていった。

 

 

 

 

そして士が向かった先には

 

 

 

 

 

「まったく...きみも嘘が下手だねぇ。

 

士」

 

 

 

「...海東。なぜお前が」

 

 

 

「当然だろう?僕は士がいる所にならどこだろうと現れるさ」

 

 

 

士の視線の先にいた男の名は『海東大樹』。

 

 

あらゆる世界の宝を探し求めており、その正体は士がディケイドになる前から『通りすがりの仮面ライダー』だった『仮面ライダーディエンド』である。

 

 

 

「それにしても君は嘘が下手だ。

 

 

自分が『世界の破壊者』だとか勝手に世界を壊すやつが気に食わないだとか...

 

そんなことは君にとって何一つ関係ないはずだ」

 

 

 

「何を根拠にそんなことを言っている?」

 

 

 

 

士は海東の横を通り過ぎつつ、海東に問掛ける。

 

 

 

それに対し士の方に振り向いた海東は飄々とした態度で答える。

 

 

「根拠なんて、君が『仮面ライダーだから』で十分だろう。

 

そしていま上杉風太郎の中に眠る『剣崎一真』だって『仮面ライダー』だ。

 

きっと彼も『仮面ライダーとして』自分自身の成すべきことを成すはずさ。

 

 

それに君はこれからどうするつもりなんだい?上杉風太郎の選択によってはこの世界が滅びてしまうこともありえる訳だが」

 

 

 

「どうなろうと俺には関係ない。

 

そうなった際に考えれば済む話だ」

 

 

 

「そうか。僕としては君と共に世界の滅びを迎えるのも吝かではないのだがね」

 

 

「お前と共に滅びを迎えるだなんて死んでも御免だ」

 

 

「全くつれないなぁ」

 

 

 

海東はそう悪戯っぽく笑うと、士の横に並ぶ。

 

 

 

「なぜついてくる?」

 

 

 

「どうせこの世界に一人でいても暇なだけさ。

 

この世界にめぼしいお宝は特になくてね。彼が選択をするまでは君と共に行動させてもらうよ」

 

 

 

「...勝手にしろ」

 

 

 

士はそうぶっきらぼうに応えると、海東と共に歩を進めていった。

 

 

 

───────────────────────

 

 

その頃士と別れた風太郎はどこへ行くわけでもなく彷徨い歩いていた。

 

 

 

『本当に、この世界は滅びるのか?

 

見た感じではこの街並みは特にいつもと変わらない。

 

 

この平和な世界が、あと3日で本当に...』

 

 

 

 

 

 

「何してんだ、こんな所で」

 

 

 

 

 

 

それは聞き慣れた声。

 

 

 

上杉風太郎という人間が生まれて初めて聴いたその声の主は

 

 

 

 

 

「親父.....」

 

 

 

 

上杉勇也。正真正銘の上杉風太郎の父である。

 

 

風太郎を探して走り回ったのか、息は少し乱れており、額には汗が滲んでいる。

 

 

 

 

 

「どうした風太郎。そんな湿っぽい顔して。

 

 

四葉ちゃんや五月ちゃんが心配してるぞ」

 

 

 

 

「.....今は一人にしてくれ。色々と考えたいことが

 

 

 

「風太郎、お前...なんか変わったな」

 

 

 

 

勇也を遠ざけようとした風太郎の言葉を遮る。

 

 

 

勇也の目は不思議そうに、かつどこか懐かしそうな目をしている。

 

 

 

「いや、変わったってよりは...戻ったのか?」

 

 

 

 

「な、なんの事かさっぱりだな。

 

とにかく1人にさせてくれ」

 

 

 

「そういう訳にはいかねぇな。またいつマルオ達が襲ってくるか分からねぇ。

 

 

そんな中お前だけ一人でいるのは危険すぎる」

 

 

 

勇也はいつもと違い、至極真剣な様子で風太郎に告げる。

 

 

 

 

「だ、だから今俺は

 

 

 

 

「そうだ。久しぶりに2人でゆっくりと話でもしながら歩かねぇか?」

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

「全員揃ったようだね」

 

 

 

 

市内にあるビルの最上階。

 

 

そこには中野マルオ、そして新世代ライダーとして選ばれた三人が集められていた。

 

 

 

 

「では、これより新しい任務を言い渡す」

 

 

 

「待って。その前に話があるわ」

 

 

 

「何だね?二乃くん。

 

任務の説明もある、手短に頼むよ」

 

 

 

「...なんで...どうして一花が変身していたの」

 

 

 

二乃は震えながら必死に言葉を紡ぎ出す。

 

 

 

 

 

「バックルとカテゴリーAは私が一花くんに渡した。

 

 

そしてレンゲルになることも一花くん自身が望んだことだ」

 

 

「だからって...約束が違うじゃない!

 

 

私は、『他の四人をライダーになることを強制しない代わりに私がライダーとして戦う』ことだったはずよ!」

 

 

 

 

二乃はマルオに詰め寄る。

 

 

 

実は二乃はラルクになる前、マルオとある契約を交わしていた。

 

 

 

二乃はある日マルオに呼ばれ、そこで『上杉風太郎』が『仮面ライダーブレイド』に、『中野三玖』がスパイダーアンデッドによって操られ『仮面ライダーレンゲル』になっていたことを伝えられた。

 

 

マルオは新世代ライダーを開発した際、そのうちの一つを姉妹の誰かに託すことを決めていた。

 

 

そして五つ子の中で最も他の姉妹を守ろうとする意志が強い二乃に白羽の矢を立てた。

 

 

案の定二乃はその条件を飲み、『仮面ライダーラルク』として戦うこととなった。

 

 

 

 

「確かに私は君と約束を交わした。

 

だが決して私は一花くんにレンゲルになることを強制した訳では無い。

 

 

力が欲しいと、彼女が強く私に望んだからこそ私は彼女の思いに答えた迄だ」

 

 

 

「そ、そんな屁理屈...私が許さない!」

 

 

 

遂に怒りが頂点に達した二乃はバックルを取り出すと、カテゴリーAを装填しようとする。

 

 

だが

 

 

 

 

「待ちたまえ。

 

今ここで揉め事を起こすことは、新世代ライダー部隊の隊長を任されたこの僕が許さない」

 

 

 

 

新世代ライダー部隊の隊長である『仮面ライダーグレイブ』、武田祐介がそれを制止する。

 

 

 

その静止により、少し冷静になった二乃はバックルをしまう。

 

 

 

「でも...私は認めないわ。私は『仮面ライダー』よ。

 

私は『仮面ライダー』として、守るべきものを守る。それが私の使命よ」

 

 

 

「そうか。ライダーとしての自覚があるようで何よりだ」

 

 

 

 

「...おい」

 

 

 

一向に進まないやり取りに業を煮やしたのか、武田の横に静かにたっていた、『仮面ライダーランス』である前田が声を上げた。

 

 

 

「テメェらの話は他所でやれ。

 

俺はライダーなんざとっとと辞めたいんだ。なにか仕事があるなら早く言え。

 

すぐにでもこなしてやる」

 

 

 

「辞めたいならいつ辞めてもらっても構わないのだがね」

 

 

 

「よく言うぜ。俺の家族や彼女を人質に取っておいて...」

 

 

 

 

 

 

そして武田や二乃と同じく『新世代ライダー』となった前田も、ライダーとなるための理由があった。

 

 

 

新世代ライダーの開発にあたって、アンデッドとの融合係数が高い数値を出す見込みがある人間に限って調査したところ、前田はその見込みがある人間の中でも、とりわけ高い数値を出したのだった。

 

 

それこそ剣崎や三玖には及ばないものの、ライダーとして戦うには十分な数値である。

 

 

そしてすぐに武田はマルオが手配した特殊部隊によって連れて行かれた。

 

そこで家族や、林間学校で出来た恋人に手を出さないことを条件に、彼はライダーになる運命を受け入れたのだった。

 

 

 

「すまないことをしたね。だがこちらもかなり切羽詰まっていてね。

 

汚い手段を講じざるを得なかったことに関しては謝罪しよう」

 

 

 

「...そんな謝罪が聞きたくて来たんじゃねぇよコラ」

 

 

 

「では話を本題に戻そう。

 

 

私が君たちに与える任務は他でもない、『あるアンデッド』を倒して欲しいのだ」

 

 

 

「アンデッド如き、我々新世代ライダーの敵ではありません。すぐにでも片付けましょう」

 

 

武田は自身満々にそう答える。

 

 

 

「頼もしいね。だがそのアンデッドはそう簡単に倒せるような敵ではないよ。

 

この私ですら、1度戦った際に手こずったからね。

 

その時に倒すことも出来なかったのだが」

 

 

 

「そんなやつの相手を私たちにさせるの?

 

パパが倒せなかったやつが私たちで倒せるの?」

 

 

「新世代ライダーの性能なら、連携をすることで必ず倒せるはずだ。

 

シュミレーションでも撃破可能という結果が出ている。

 

あとは君たち自身の技量次第だ」

 

 

「んで、そのアンデッドはどこにいんだ?」

 

 

「実は少しここから遠いところにいてね。

 

近辺までの移動手段はこちらから手配しよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのアンデッドは、『熊虎』という旅館の店主で人間としての仮の姿をしているが、構うことなく倒してくれ」

 

 

 

 

 

 

「ッ.....!!!

 

パパッ!! そこって...」

 

 

 

二乃は思わず声を上げる。

 

 

 

「なんだ?知ってんのか?」

 

 

「だって...だって...そこは...」

 

 

 

二乃はプルプルと震えており、彼女の顔は青くなっている。

 

 

「そこにいるアンデッドは

 

 

 

『カテゴリーK』-タランチュラアンデッド。

 

 

 

 

私の妻の父、二乃くんたちの祖父だ」

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

風太郎と勇也は広場を歩いていた。

 

雨は弱くなったが止んだ訳ではなく、二人を濡らす。

 

 

「風太郎、覚えてるか?

 

まだお前がちっちゃかった頃、よくこの広場に来ただろう」

 

 

「そんなことも...あったな」

 

 

「あん時のお前はかわいかったぜ?

 

まだこーんなにちっこくてな」

 

 

そう言いながら勇也は自身の腰の辺りに手を伸ばす。

 

 

 

「あぁ」

 

 

「変わっちまったよな、色々と」

 

 

どこか気の抜けた返事をする風太郎に対し、切なげ目で空を見上げる勇也。

 

 

 

「何か、あったのか?

 

まぁそりゃ色々とお前には世話かけちまったわけだが...こんなオヤジで良ければ、何か話してくれ。

 

できる限りは力になるぜ」

 

 

 

勇也なりの不器用な優しさだった。

 

 

うまい言葉は言えないが、それでも自分なりの言い方で息子に向き合おうとする勇也の姿は、何よりも『父親』らしい姿だった。

 

 

 

 

 

「もし...さ」

 

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「もし、自分の命と引き換えに大勢の人の命を救えるなら、親父は...なんの躊躇いもなく自身の命を捨てられるか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

必死に絞り出した言葉だった。

 

 

 

風太郎はこの決断だけは自分自身の中に留めておこうと決めていた。

 

 

そもそも自分が命を捧げなければ、どのみち世界とともに自分自身も死ぬしかないのだ。

 

 

そうなれば自分が消えることが、犠牲を減らす最善の方法だと風太郎自身もわかっていた。

 

 

 

 

だがその1つの決断を出すことが、彼にとってなによりも難しい決断なのだ。

 

 

最善の方法が分かってるとはいえ、自分を育ててくれた父親に、愛する妹に別れを告げなければならない。

 

 

だが自身を犠牲にしなければ父親も妹も世界

も全てが滅ぶ。

 

 

 

 

 

 

何が正しいことか分かっているはずなのに、

 

 

 

上杉風太郎はその決断を出すことが、ただ単純に『怖かった』。

 

 

 

 

 

 

不安、恐怖、そして現実に対する怒り

 

 

 

様々な感情が綯い交ぜになって震える風太郎に、勇也は静かに答えた。

 

 

 

 

 

「当然だ。

 

 

 

俺はほかの大勢の人の命を救えるなら自分の命くらい捧げるさ」

 

 

 

「!!!!」

 

 

 

 

「そりゃあ死ぬのは怖いが、それ以前に俺は他の人が苦しむのはもっと嫌だな」

 

 

 

「何で...どうしてそこまで、見ず知らずの人間に対して献身的になれるんだ...」

 

 

 

「何で...って当然だろ。

 

 

 

俺は『仮面ライダー』だからさ」

 

 

 

 

 

「仮面...ライダー...」

 

 

 

 

「別にお前にまでそういう風に生きろとは言わねぇ。

 

 

 

 

自分の息子が辛い思いをして喜ぶ親なんざいねぇからな。

 

 

 

でも、俺は、自分自身は『仮面ライダー』としてそういう風にありたいと思ってる」

 

 

 

 

勇也はその目に確かな決意を宿してそう答えた。

 

 

 

 

 

『そうか...

 

 

ただ俺は、自分の意志とは関係なく流されていただけだった。

 

 

 

でも...』

 

 

 

 

風太郎は自身が持っていたバックルを手に取る。

 

 

 

そのバックルは『上杉風太郎』という人間が『仮面ライダー』であることの確かな証明だった。

 

 

 

 

「親父...」

 

 

 

「まぁ、そう暗い顔すんな!

 

 

さっきメールでらいはが飯作ってるってよ。

 

 

とりあえず四葉ちゃんや五月ちゃんも連れて一旦家に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「残念ですが、このまま帰らせるわけにはいきませんな。上杉勇也」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その瞬間、辺りの空気が変わった。

 

 

 

異常なほどの威圧感に一帯が包まれる。

 

 

 

 

それほどの威圧感の正体とは

 

 

 

 

 

「...久しぶりだな、江端さん。

 

昔からアンタは変わんねぇな」

 

 

 

 

『江端』。中野家の執事で、初老の紳士といった風貌だが、その正体は最強クラスのアンデッド-『カテゴリーK』、コーカサスビートルアンデッドである

 

 

 

 

「そちらもお変わりないようで。

 

 

そして出会って早速ではあるが、あなたには消えてもらわなければならない。

 

上杉風太郎、あなたは我々の元に来てもらいます」

 

 

 

「親父...どうする」

 

 

 

「決まってるだろ。ここでむざむざやられる訳にはいかねぇ...

 

さっさと倒して、夕飯までには帰らないとな...

 

 

 

 

『変身』!!」

TURN UP

 

 

 

すぐさま勇也はギャレンに姿を変えると、江端に接近する。

 

 

 

「無駄なことを...

 

手荒な真似はしたくなかったのですが、仕方ありますまい」

 

 

 

そう言って江端もコーカサスビートルアンデッドに姿を変える。

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

 

コーカサスビートルアンデッドに鋭い突きを放つギャレン。

 

 

 

だがその拳は、突然虚空に現れた堅牢な盾によって阻まれる。

 

 

「グッ...それなら!」

 

 

 

ギャレンはすぐさま回り込んで背中に蹴りを放つ。

 

 

 

だがその蹴りも盾によって阻まれる。

 

 

 

「無駄だ。あなたの攻撃は決して私に当たることは無い」

 

 

 

「何を...!」

 

 

ギャレンは距離をとると、ラウザーを抜き銃撃を放つ。

 

 

それすらも盾に阻まれるが、ギャレンは銃撃を放ったままカードホルダーを展開する。

 

 

そして2枚のラウズカードを使用した。

 

 

 

BULLET

ROCK

 

 

 

「これならどうだ!」

 

 

 

カードの効果をまとった銃弾が放たれる。

 

 

特に気にする様子もなく江端は盾を出現させ、銃弾は盾に着弾する。

 

 

 

だが

 

 

「ほぅ...」

 

 

「かかったな」

 

 

 

弾が命中した盾は一瞬のうちに石化してしまった。

 

 

 

「これなら簡単に砕けるぜ!」

 

 

 

ギャレンはまたも接近すると、石化した盾に飛び蹴りを浴びせる。

 

 

 

「無駄なことだと、言ったはずだ」

 

 

 

ギャレンの蹴りが当たる寸前に、石化したはずの盾はまとわりついた石を吹き飛ばして元の姿を現すとギャレンの蹴りを跳ね返した。

 

 

 

「ぐあっ...!

 

 

な、なぜ...」

 

 

 

「そのような下級アンデッドの力でこの盾を封じることなど不可能だ」

 

 

 

「どうすれば...って風太郎!!

 

どうした!

 

なぜ変身しない!?」

 

 

 

 

 

「え!あ、あぁ...」

 

 

 

勇也の声にハッとする風太郎。

 

 

剣崎の『記憶』を通して知識はあったものの、実際の戦いを前に足がすくんでいた。

 

 

 

『できるのか...『剣崎一真』ではない、この俺に!』

 

 

 

そして風太郎はどこか願うようにして、バックルにカテゴリーAを装填する。

 

 

 

「変身!」

TURN UP

 

 

 

風太郎の前に、オリハルコンエレメントが現れる。

 

 

それを前にゴクリと唾を飲む。

 

 

「やるしか...ない!うぉおおおおお!!!」

 

 

 

彼は決意を固めると、その光の壁に突っ込んだ。

 

 

風太郎はするりと光の壁を抜けると、その体は『仮面ライダーブレイド』に変化した。

 

 

 

 

「い、いけた!」

 

 

 

「風太郎、連携だ!

 

俺が盾を引き付けてる間にお前が本体を攻撃しろ!」

 

 

 

勇也の言葉に首を縦に降る風太郎。

 

 

 

ギャレンはすぐに銃撃をコーカサスビートルアンデッド目掛けて放つ。

 

 

 

当然その銃撃は盾に阻まれるが、そのおかげで今アンデッドを守る盾はない。

 

 

その隙を突いてブレイドはカードホルダーを展開する。

 

 

 

 

『確か...この組み合わせで』

 

 

 

KICK

THUNDER

《ライトニングブラスト》

 

 

 

 

すると2枚のラウズカードの力がブレイドの右足に集約される。

 

 

 

 

「うぉおおおおお!!!」

 

 

 

 

剣崎のようにスムーズな動きではないが、風太郎は我武者羅にキックを江端に放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「フン!」

 

 

 

「ガッ...」

 

 

 

 

 

 

しかし、コーカサスビートルアンデッドは右手に剣を出現させると、その剣を振るいブレイドを一撃で叩き落とした。

 

 

 

 

「風太郎!」

 

 

 

 

地面にぐったりと横たわるブレイドに駆け寄ろうとするギャレン。

 

 

 

 

「上杉勇也。あなたでは私に勝つことは叶いません」

 

 

 

 

そう告げると同時にアンデッドの剛腕をもってしてギャレンの突きを放った腕を掴みあげる。

 

 

そしてガラ空きの胴体に渾身の剣戟を浴びせた。

 

 

 

 

「カハッ...」

 

 

 

 

ギャレンは宙を舞うと、地面に倒れ込んだ。

 

 

ダメージの蓄積によって変身も解除されてしまった。

 

 

 

 

「親父ィ...」

 

 

 

風太郎は立ち上がろうとするも、崩れ落ちる。

 

 

 

 

「もはや立ち上がる気力すら見受けられない...

 

残念ですが、1度完全に眠ってもらいます」

 

 

 

 

 

 

 

そう言って、江端は右手に持つ剣を地面に横たわるブレイドに振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何も無い真っ白な空間がそこにはあった。

 

 

 

 

前も、ここに来たことがある気がする。

 

 

 

 

 

 

『戻らなきゃ...みんなを、助けに...』

 

 

 

 

 

 

『彼』は歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

だがどれだけ歩いても、何も見えてこない。

 

 

 

 

 

出口が、『答え』が見つからない。

 

 

 

 

 

 

『どうすれば、いいんだ』

 

 

 

 

 

 

『彼』は、膝をつく。

 

 

 

 

 

もう誰も、犠牲にしたくない。

 

 

 

 

 

だが、『世界』を救うためには、誰かが犠牲になる必要がある。

 

 

 

 

 

 

『そんなこと、俺には決められない!』

 

 

 

 

 

犠牲になるのが自分自身なら、彼は喜んでその身を差し出しただろう。

 

 

 

 

 

だが、今回ばかりは、自分を犠牲にしては何もことが進まない。

 

 

 

 

少なくとも、『彼』が消えれば事態は最悪の方向へ動くことになる。

 

 

 

 

 

 

 

『彼』は、自身が抱える『戸惑いや迷い』を振り払えずにいる。

 

 

 

 

 

 

『ジレンマに叫ぶ声は』は、『不可能』を壊せずにいる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

もう、諦めてしまおうか。

 

 

 

 

 

 

『彼』は、再び目を閉じようとした。

 

 

目を背けようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかし、もう1人の彼の意識が、

 

 

 

 

 

「出番だ、『仮面ライダーブレイド』は...アンタにしかなれない」

 

 

 

 

 

 

『上杉風太郎』が、『剣崎一真』にそうさせることを許さなかった。

 

 

 

 

 

 

 

『君は...上杉、風太郎』

 

 

 

 

「あぁ、そうだ。

 

 

剣崎一真」

 

 

 

 

 

上杉風太郎は小さな笑みを浮かべて、剣崎一真と向き合う。

 

 

 

その瞬間、剣崎は風太郎に向かって、頭を地につける。

 

 

 

 

「すまない!

 

許してくれ!

 

 

 

俺のせいで...俺が君の身体で、勝手なことをしたせいで、こんなことに...

 

 

 

俺は、俺は...何てことを」

 

 

 

 

 

剣崎はひたすらに詫び、そして恥じた。

 

 

彼は、自分が人間に戻れたことを喜び、そして謳歌した。

 

 

 

 

ただし、その身体は上杉風太郎のものであって、自分自身のものではない。

 

 

 

 

 

だが剣崎は、誰よりも人間を愛した男は、

 

 

 

 

自分が人間に戻れたことが嬉しくて、『仮面ライダー』として人々を護れることが幸せで、

 

 

 

 

 

その事実から目を背けた。

 

 

 

 

 

剣崎は、許されないことをしたと思った。

 

 

殴られても、蹴られても、自分に文句を言う資格なんぞない。

 

 

 

この過酷な運命に、本来無関係であるはずの青年を引き込んだのは、剣崎一真自身だった。

 

 

 

 

 

『何が、『仮面ライダー』だ...

 

 

俺には、人を護る資格なんてない。

 

 

俺は...

 

 

 

 

 

「それは違うな」

 

 

 

 

しかし、自責を続ける剣崎を、風太郎が制した。

 

 

 

 

「別に俺は、アンタが俺の身体で何をしたかなんて気にしちゃいない。

 

 

それに、昔テレビで見てた『ヒーロー』のようになれるのは、案外悪くなかったしな」

 

 

 

そう言って頬をかく風太郎。

 

 

 

そこで彼は咳払いをすると、改めて剣崎に向き直る。

 

 

 

 

「よく聞いてくれ。

 

 

もう、時間が無い。この世界は、あとわずかで滅びを迎えることになる。

 

 

このまんまじゃ、『統制者』の思う壷だ」

 

 

 

 

「統制者!?

 

なぜ君がそれを」

 

 

 

「悪い。それを話す時間はない。

 

『ある男』から聞いた。

 

 

 

とにかく、今アンタがすることは一つ。

 

 

 

 

剣崎一真、アンタが『上杉風太郎』になれ。

 

 

 

もう、アンタにしか、この世界は救えない。

 

 

『剣崎一真』というたった1人の男の存在が

、この滅びゆく世界を変えられる」

 

 

 

 

 

「せ、世界が滅びるって...

 

 

それに、俺が、『上杉風太郎』になるなら、キミは...」

 

 

 

 

 

「いいんだ。俺は、消えることになる...

 

 

だがもうそれしかない」

 

 

 

 

「いいわけないだろ!?

 

消えるなんて、絶対ダメだ!

 

 

君が消えたら、勇也さんや、らいはちゃんは...」

 

 

 

 

「それしかないんだ!

 

 

俺に...アイツらを護ってやることは、できない。

 

 

 

もうこの世界は、『剣崎一真』にしか救えない!」

 

 

 

 

 

風太郎は、剣崎一真を手を掴むと、無理やり引き起こす。

 

 

 

 

 

「思い出せ!

 

アンタは、『仮面ライダー』だろ!?

 

 

 

アンタは人間を護るため...

 

 

 

 

人間ではない『相川始』を救うために、戦った、『仮面ライダー』だろ?!」

 

 

 

 

 

「...!!!」

 

 

 

 

 

風太郎は震える手から、剣崎一真を離す。

 

 

 

 

 

「いくんだ、もう、本当に時間が無い。

 

 

ここでアンタがいなくなれば、俺だけじゃない、もっと多くの人間が消えることになる。

 

 

 

 

 

頼む...親父を、らいはを、みんなを、救ってやってくれ」

 

 

 

 

 

 

上杉風太郎は、涙を必死にこらえた。

 

 

 

 

彼は、怖かった。

 

 

 

自分が消えることが、大切な家族に会えなくなることが、

 

 

 

 

だが、ここで決断しなければ、世界が消滅した後できっと後悔し続ける。

 

 

 

 

 

だから、彼は己を犠牲にする道を選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの時の『剣崎一真』と、同じように。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かった。任せてくれ、上杉風太郎。

 

 

 

俺が、『キミ』になって、世界を必ず救ってみせる。

 

約束する」

 

 

 

 

 

 

「あぁ...約束だ」

 

 

 

 

 

 

それだけ言葉を交わすと、

 

 

 

 

剣崎一真は走り出す。

 

 

 

いつの間にか、この真っ白な世界に、1本の道が出来ていた。

 

 

 

 

 

 

剣崎がそこを走り出すと、彼が足をつけた道が、消えていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

風太郎は、それを見送った。

 

 

 

 

 

 

『頼むぞ、剣崎一真。

 

 

きっと、『切札』はアンタだけが持ってる。

 

 

 

 

世界を救え...『仮面ライダー』

 

 

 

剣崎一真!』

 

 

 

 

 

 

 

 

───────────────────────

 

 

 

 

 

「何だと...?」

 

 

 

 

 

コーカサスビートルアンデッドが振り下ろした剣は、

 

 

 

ブレイドの体を切り裂くことは無く、片手によって止められていた。

 

 

 

 

ブレイドは剣を掴んだまま、立ち上がる。

 

 

 

その力に、アンデッドも思わず身をそらす。

 

 

 

 

 

『何だ、一体何が起こっている!?

 

 

まるで、先程までの『上杉風太郎』とは別人だ!』

 

 

 

そしてブレイドは剣を掴んだまま、

 

 

 

「ウェイ!」

 

 

 

 

と拳をアンデッドに叩きつけた。

 

 

 

 

「ヌゥ...!!」

 

 

 

 

たった1発のパンチは、先程までどれだけ攻撃を食らっても効く素振りを見せなかった江端を、吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

「俺は戦う!

 

人間のために、護るべき人のために!!

 

 

 

 

託された、想いのために!!!」

 

 

 

 

 

そしてブレイドは、吹き飛ばしたアンデッドに向かっていった。

 

 

 




久々の投稿になってしまいました。


実はこの間鎧武を見直し、YouTubeの方で2週目のキバを見ました。


次の作品はあるアイドルゲームをモチーフとして、キバか鎧武で書きたいです。

そしてこの作品もようやく最初に想定していたゴールまでの道筋が見えてきました。遅筆にはなりますが、引き続き応援お願いします。

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