これでやっと花嫁の1巻分が終了...
ながかった...
剣崎はたくさんの教材が入ったバッグを片手に中野姉妹が住むマンションを訪れようとしていた。
さぁエントランスに入ろうという時に、コンビニ帰りと思しき三玖と遭遇した。
「やぁ三玖、コンビニ帰りか?」
「うん。フータローは今から授業?」
「そうだよ...って三玖も受けるよな」
「当たり前。フータローとの約束を破るわけにはいかない」
そして三玖が持つマンションのカードキーで自動ドアを開けると、エレベーターに乗り込む。
そこで三玖は
「昨日は助けてくれてありがとう」
と剣崎に礼を言った。剣崎は
「だから別に礼なんていらないよ。
俺は目の前の人に傷付いて欲しくないだけさ」
そして「怪物と戦うのも俺がやりたくてやってるだけだからさ」と付け加える。
「やっぱりフータローは...仮面ライダーなんだね」
剣崎は三玖の発言に違和感を覚えた。なぜ三玖が仮面ライダーという呼称を知っている?
そして剣崎は三玖に問いかける
「あれ、なんで三玖が仮面ライダーって呼び方知ってるの?」
と言うと三玖は
「もうみんなそう呼んでる」
と掲示板サイトが映るスマホの画面を見せてくる。その中には
『謎のヒーロー 仮面ライダー その正体は?』
『もはや都市伝説ではない仮面ライダー』
『街を守る正義のヒーロー 仮面ライダー』
などと様々なタイトルで書き込まれていた。
三玖が言うからには、誰かが勝手に付けた名前らしくそれが浸透していったらしい。
なるほどこの時代のネーミングセンスは2004年と大差無いらしい。
そんなことを考えているとあっという間に30階に着く。そして部屋の前まで来ると三玖は耳元で
「今日もよろしくね、仮面ライダー先生」
と悪戯っぽく囁く。剣崎は少し気恥ずかしくなってしまった。
リビングに向かうと
「おはようございまーす」
と四葉の声が聞こえてくる。
「上杉さん!今日は準備万端ですよ」
「私は...まぁ見てよっかな」
「上杉さん、今日もよろしくお願いします」
「フータロー、約束通り日本史教えてね」
良かった。今日はみんな授業を受けてくれそうだ。なら俺も基礎復習の努力の成果を見せて...
「あら、また懲りずに来たの?ヘタレ教師」
「二乃...」
いきなり現れた二乃は意地悪そうに微笑むと
「前みたいに途中で抜け出ちゃわなければいいけど」
と剣崎に投げかける。だが前回いくらアンデットを倒しに行かなければならなかったとはいえ、授業を放棄したのは事実なので剣崎には言い返すことはできない。そして横を見ると三玖が二乃を鋭い目付きで睨んでいることに気付く。まるで
『何も知らないやつが偉そうに言うな』
とでも言うかのように。
これはいけない。剣崎はとにかく二乃を誘おうとする。
「どうだ、二乃も一緒に...」
「死んでもお断りよ。第一、レディーを置いて逃げるようなやつからの授業なんてタメになるはずがないもの」
と冷たく言い放つ。すると剣崎の横にいた三玖がクスリ...と小さく笑う。
何を隠そう、あの時駅前で二乃を救ったのは仮面ライダー-剣崎一真本人である。三玖からしてみれば、その事を知らずに散々剣崎を罵倒する二乃が滑稽に見えたらしい。
二乃は「何笑ってんのよ、三玖」と三玖に聞くが「別に、何も」と三玖は流した。
そこで二乃は「あ、そうそう。四葉」と四葉に声をかける。
「バスケ部の知り合いが大会の臨時メンバーも探してるんだけど、あんた運動できるし今から行ってあげたら?」
「今から!?えっと...でも...」
四葉は歯切れが悪そうだ。そこにすかさず二乃が
「なんでも5人しかいない部員のひとりが骨折しちゃったみたいで、このままだと大会に出られないらしいのよ。頑張って練習してきただろうに...あーかわいそう」
剣崎は黙って見ていたが四葉は
「上杉さんすみません!困ってる人をほっといてはおけません!!」
と上杉に謝る。授業を受けて欲しい気持ちは山々だが、剣崎にも授業途中で抜け出したという前科がある。それに困ってる人をを見過ごせない剣崎には、四葉の気持ちが痛いほどよくわかった。
だから剣崎は四葉を止めることは出来なかった。だがそんな剣崎に三玖は
「あの子、断れない性格だから」
と告げる。だが二乃は止まらなかった。すぐさま
「一花も2時かバイトって言ってなかった?」
「あー忘れてた」
と一花をバイトに行かせた。
二乃は五月にも図書館で勉強をした方がいいと勧めたが、五月は
「上杉さんは私たちのために来てくれました。それを無下にするすことは出来ません。」
と残ることにした。剣崎は最初に会った時に比べて随分と優しくなった五月に心の中で『ありがとう...本当にありがとう...』と呟いた。そして剣崎は気を取り直し
「仕方ない...じゃあ三玖と五月だけでも」
と授業を始めようとするが二乃は三玖にも茶々を入れ始める。
「あれー?三玖まだいたの?あんたが間違えて飲んだアタシのジュース買ってきなさいよ」
と三玖に部屋から出るよう促す。だが三玖は
「それならもう買ってきた」
とコンビニのビニール袋を指さす。
二乃は袋の中身を取り出すが、入っていたのは抹茶ソーダだけだった。「って何これ!?」と抗議の声をあげるも誰も聞いていない。
五月が
「上杉さん、授業はいつになったら...」
と聞いてくる。
三玖も
「あの子は置いといて授業始めよう」
と続ける。
剣崎は
「仕方ないか...よしじゃあ始めるか!」
と言ったところに二乃が
「あんたらいつからそんなに仲良くなったわけ?」
と尋ねてくる。二乃は続けて
「え?え?三玖も五月もこういう冴えない顔の男が好みだったの?」
とニヤニヤしながら聞いてくる。五月は
「私が上杉さんを?!え、そ、そんなこと...」
と顔を赤くして俯いてしまった。
だが三玖は
「二乃はメンクイだから」
と二乃を批判する。何気に三玖も酷いことを言ったことに剣崎は気付かない。そこで間髪入れずに二乃が
「はぁ?メンクイが悪いんですか?イケメンに越したことはないでしょ?」
と反論する。
「なーるほど。外見を気にしないからそんなダサい服で出かけられるんだ」
「この尖った爪がオシャレなの?」
姉妹の言い合いは続く。剣崎もさすがに横槍を入れる。
「まったく...二乃も三玖も仲良くしろよ。
外見や中身なんてそんなこと、今は関係ないだろ」
と少しキツめに言う。すると三玖は申し訳なさそうな顔をして
「そ、そうだね...ごめんねフータロー。
二乃はもう邪魔しないで」
と剣崎に謝る。
だが二乃は剣崎の方をむくと
「キミ、お昼は食べてきた?」
と剣崎に聞いてきた。
剣崎は
「そういえば」
と言った瞬間、お腹が『ぐぅぅぅぅ』となった。そしてそれを見た五月はプッと笑ってしまった。恐らく転校初日のことを思い出してしまったのだろう。
「じゃあ三玖の言う通り、中身で勝負しようじゃない。どちらがより家庭的か、アタシが勝ったら今日は勉強なし!」
三玖がピクッと反応する。剣崎は
「まさかそんな勝負するわけ...」
と恐る恐る三玖に聞くが
「フータロー。すぐ終わらせるから待ってて」とキッチンに立つ。
キッチンに立った三玖を見た瞬間、五月は
「わ、私!ちょっと図書館行ってきます!!」
といい、部屋を飛び出してしまった。
あれだけ意気込んでいたのに...と思いつつ、でもどうして急に逃げ出したんだ?と剣崎は不思議に思ったが直ぐにその答えを知ることになる。
そして出来上がった料理を見て剣崎は全てを察した。
「じゃーん!旬の野菜と生ハムのダッチベイビ〜」
「オ...オムライス」
と2人が手作り料理を出してきた。
二乃の料理は色とりどりの野菜を使ってとても美味しそうだ。
三玖のオムライス(?)は中々個性的な見た目をしている...
三玖は恥ずかしそうに
「やっぱいい。自分で食べる」
と言うが
「せっかく作ったんだから食べてもらいなよー」
と二乃は逃がす気は無さそうだ。
まぁ何はともあれ、食べてみなければ味は分からない。剣崎はまず二乃の料理を口に入れた。
「!なるほど、こりゃ美味い!」
「でしょ〜?」
と二乃は胸を張って答える。にしても美味いなこれ。下手したら虎太郎の手料理より美味しいんじゃないか?そんなことを考えながら二乃の手料理をペロリと平らげた。
そして次は三玖の料理を口に運ぶ。
「ウッ!」
と言い、剣崎は一瞬苦しそうな顔をする。この味...カテゴリーQが封印された時に失恋を味わった時の虎太郎の料理にそっくりだ。
恐らくこれを美味しいと言って食べれるのは橘さんぐらいだろう。
だが剣崎一真、ここで男を見せずしていつ見せる!剣崎は覚悟を決めると、皿の上の料理を一気に口の中に運び飲み込んだ!
そして死にそうになりながらも
「ご、ご馳走様でした...」
と手を合わせた。
「さぁ、どっちの料理が美味しかったのか答えてもらおうじゃない」
二乃は勝利を確信した顔で聞いてくる。一方三玖は浮かない顔だ。
剣崎は少し考えたあと口を開く。
「俺はこういう勝負事で嘘をつくようなことはしたくない。今回の勝負に関しては、二乃。君の圧勝だ。」
と告げると二乃は「当たり前じゃない」といい、鼻を鳴らす。
「約束通り今日は授業は無しだ。」
三玖は
「で、でも...」
と続けるも剣崎は、
「でもこれは約束だ。俺は約束を破るようなことはしたくない」
と三玖に言い放つ。「だけど」と剣崎は続ける。
「三玖の料理は...なんというか...すごく温かく感じた。なんて言えばいいのかな...
頑張って美味しくするぞ、みたいなそんな温かさが感じられたんだ。ごめんな、俺口下手だから、上手く言えないや」
剣崎は「はは」と笑い頭を搔く。だがそれを聞いた三玖は安心したような顔になり、小さな笑みを浮かべた。
「だからもしこれから三玖が料理を練習するようなことがあればその時はもう一度俺に三玖の手料理、食べさせて欲しいな」
と三玖に言う。三玖は少しびっくりした後
「フータローのためなら...いいよ」
と恥ずかしそうに承諾したのであった。
その様子を見ていた二乃は
「何それ!つまんない!」
と言い放ちその場を去ろうとした。
そこで剣崎の携帯が音を鳴らす。画面を見るとアンデットサーチャーが反応していた。このマンションから北西17kmの場所にアンデッドが出現していることを伝えてきた。
剣崎はすぐさま立ち上がると
「ごめん!俺もう行かなきゃ」
と言うと部屋を出ようとする。
二乃は「さっさと出て行きなさい」といい自室へ戻っていく。言われなくてもそのつもりだ。だがそこで三玖に呼び止められた
「フータロー...行っちゃうの?」
その目は不安一色だった。
だが剣崎は三玖の方を振り向いて
「大丈夫。すぐ帰れるさ」
と三玖を安心させる。
三玖は目を閉じたあと、
「分かった。じゃあ今日は私、1人でも勉強する。それが...フータローとの約束だから」
三玖は意を決する。それを見て剣崎も安心し、「じゃあ、行ってくる」と言うとマンションの駐車場に急いで向かう。
そして駐車場に着き、ブルースペイダーに跨ると、アクセルを捻り走り出した。
その頃一花は黒い車の後部座席に乗り、移動していた。次のバイト場所に向かうためだ。
一花は剣崎に対して、このように逃げてしまうことを申し訳なく思っていた。そして次くらいはちゃんと授業を受けてあげようかな。
そんなことを考えた瞬間、前方から「ドガン」という大きな音が聞こえた。そして車はスピンしガードレールに激突する。
何が起こったかわからず、目を白黒させる一花。とにかく車を出ようとドアを開き、外に出る。
「大丈夫かい!?一花ちゃん」
と声をかけてくる。どうやらドライバーの男性は無事なようだ。
だが車の上にいたのは最近街に出ると話題になっている化け物だった。
化け物-♠︎3 ライオンアンデットはルーフを蹴って地面に着他する。
「お、お前!何も...」
と化け物に声をかけようとした男性は化け物の左手により吹き飛ばされてしまった。
だが「うぅ...」と唸っているあたり、命に別状はないだろう。だがそこまで冷静な判断力は一花にはなかった。
そして化け物は一花に向かって歩いてくる。
化け物は右手につけた鉤爪をギラリと輝かせ、一花に歩み寄る。
一花は恐怖で声を出せない。
今までの思い出がフラッシュバックしてくる。まだ姉妹が小さかった頃、あの時は何をするのにも一緒だったなぁ。そして最後に浮かんだのは...何故かあの上杉風太郎という青年の顔だった。
もうちょいちゃんと授業を受けておけばよかったかな。そんなことを考え、一花は目を瞑った。そして抵抗を諦めた一花にライオンアンデッドが鉤爪を突き立て......
る前に青いバイクがアンデットを吹き飛ばした。
そしてそのバイクから誰かが降りた。
そうだ、確かこれは最近巷で有名な
『仮面ライダー』とかいうヒーローだ。
その仮面ライダーは一花に
「大丈夫か!?一...君!」
と駆け寄る。
ブレイドは一瞬一花の名前を呼びそうになってしまった。そうなればなぜこの仮面ライダーが一花の名前を知っているのかという余計な疑問が生まれてきてしまう。ブレイドはすぐさま発しかけた言葉を飲み込み言い換えた。
ブレイドは一花を駅前の時の二乃にしたようにお姫様抱っこをする。一花は
「ひゃっ」
と声を上げる。そしてブレイドは近くにあった建物の裏に一花をそっとおろした。
そして
「ここから動かないで」
と告げると剣を右手に持ち、アンデットへと走っていく。
アンデットは右手の鉤爪を振り回し、ブレイドを攻撃する。
ブレイドはそれを落ち着いて回避する。そして右手のブレイラウザーで上、右、左、と様々な場所から斬り付ける。
だがそれだけではライオンアンデッドは倒れない。ライオンアンデッドは手近な車を見つけるとそれを押してブレイドにぶつけようとした。
あまりにも隙だらけな攻撃、避けようとすれば簡単に避けられる。
だがブレイドの後ろには守るべき人、『中野一花』がいる。ブレイドは正面から車を受け止めた。
タイヤがギャルルルルと言う音をあげる。
「うおおおおお!!」
と声を上げ、ブレイドは全力で踏ん張った。
そして一花にあわや接触という寸でのところで車が止まった。安心するブレイド。
だが休ませる暇などないというかのようにアンデットはブレイドに接近すると右手の鉤爪をブレイドに叩き込む
「ヴェッ!」
と喘ぎブレイドは吹き飛んだ。
「仮面ライダー!!」
一花が叫ぶ。そしてアンデットは目の前の一花に対象を戻す。そして鉤爪を振り上げるが、
THUNDER
という電子音とともに、ブレイドが持つ剣の切っ先からアンデットに向かって電撃が放たれた。アンデットはすんでのところでその雷撃を鉤爪で防ぐ。
だがそれが命取りとなった。アンデットは鉤爪を盾にした時、自分の視界をそれで覆ってしまった。
そして雷撃を放ったあと、走り出してきたブレイドに対応することが出来なかった。
ブレイドは渾身の力を込めてアンデットに体当たりを食らわせた。
吹き飛び地面に叩きつけられるアンデット。
その隙にブレイドはカードホルダーを展開し、2枚のカードを取り出しラウズする!
KICK
THUNDER
《ライトニングブラスト》
電子音が鳴る。ブレイドの顔が真っ赤に染まり、左手に持った剣を地面に突き立てる。
そして高く飛び上がり空中一回転すると、
雷のエネルギーが込められた右足をアンデットに叩きつけた。
「グガァ!!」
と叫び声をあげアンデットが爆発する。
倒れたアンデットに剣崎は封印のカードを投げつける。アンデットはカードに吸い込まれカードには
BEAT
と刻まれた。
そしてすぐさまブレイドはバイクに乗るとそのまま走り出す。そして誰もいないところで変身を解除し、もう一度、先程戦闘をしたところへ向かう。
そこにはまだ地面に座り込む一花の姿があった。剣崎は何も知らないかのように
「どうしたんだ?!大丈夫か、一花!」
と一花に駆け寄る。一花は首を縦に降る。大丈夫なことはもちろん分かっていたが、こういう演技をするのは中々歯痒いものがある。
そして剣崎は携帯を取り出すと、倒れている男性のために救急車を呼ぶ。
直ぐに救急車が来てくれた。隊員達は男性を救急車に乗せ、走り去って行った。
「一花に怪我がなくて良かった。
ところでさ、さっきの男の人、誰なの?」
「あの人は...仕事仲間、うん!ただの仕事仲間だよ。いや〜ごめんね。フータロー君には助けられちゃったなぁ」
と「たはは」と笑う一花。とにかく剣崎の正体がバレたということは無さそうだ。
「それにしてもフータロー君、どうしてここに来たの?」
「え!」
しまった、そんな理由考えてなかったぞ。剣崎は「えーと、えーと」と必死に取り繕う理由を探す。だが一花は
「まぁいいよ。仕事仲間を助けてくれた恩もあるし、聞かないであげる。前に君が言ったように誰にだって言えない秘密はあるもんね」
剣崎はホッとし
「そうしてくれるとありがたいよ」
と返した。
そして剣崎は「あっ」と言い思い出した。アンデットサーチャーを見たあと急いでここまで来たためバッグをマンションに置いてきてしまったのだ。そこで剣崎は一花に
「これから一花はどうするんだ?」
と聞いた。一花は
「うーん。こんなことになっちゃったし、今日はもう帰ろっかな。あ、でもこの件だけは伝えておかないと」
と言い、スマホを取り出し電話し始めた。
恐らく相手は雇い主だろうか。何やら話したあと今日は休む旨を伝えてお辞儀をすると電話を切った。
「よし、これで大丈夫かな」
「なら一花。帰るならちょっとせまいけど乗っていくか?」
と剣崎はバイクの空いたシート部分をポンポンと叩く。剣崎がバイクに乗れることに初めて気づいた一花。そして
「ならお言葉に甘えちゃおっかな」
と言う一花だが何かに気づく。
「あれ、このバイク...」
さっきの仮面ライダーが乗ってたやつと同じとまで言いかけたところで剣崎は早口で喋り出す。
「あ、やっぱ気づいちゃった?そう、実はこれ最近街に出るヒーロー、仮面ライダーが乗ってるやつと同じ車種なんだよ〜。
いや〜同じ質問を何回もされて困っちゃったなぁ〜」
にしてもこの剣崎一真という男は本当に嘘が苦手である。だが一花は「ふーん」とだけいうと、剣崎から受け取ったヘルメットを被り空いたシートに座り、剣崎の腰に手を回す。
ちなみにこのブルースペイダー。シートが小さく剣崎は前に詰めて少し無理をしている状態である。そこにもう1人の人間が乗ってくる。かなりキツキツであり一花は剣崎の背中にがっしりと抱きついた。
剣崎の背中に一花の豊満に育った胸が密着させられる。
剣崎は一瞬やましいことを考えそうになったがイカンイカンと頭を振り、そのままマンションまで走り出した。
一花はマンションに着くまでの間、今日起きたことを考えていた。
仕事に関してはさすがに今日は仕方ないだろう。あんなことがあったあとだ。
だがそんなことよりも一花が気になったのは自分を助けたヒーロー 『仮面ライダー』についてである。一花はあの仮面ライダーの正体が気になって仕方がなかった。
一体誰が?自分が知らない人、それとも知っている人?もし知っている人ならそれに1番近いのは?
一花は今自分が抱きついている上杉風太郎の背中を見つめる。だがすぐに
「ま、そんなわけないか」
とひとり納得した。
そしてマンションに到着し、バイクを停めると一花と剣崎は2人で部屋へと向かう。
だが急に一花の電話がなった。
どうやら今日のできなかった仕事の埋め合わせの話であり、少ししたら戻るから先に部屋に入っててくれとの事だった。
そして剣崎はバッグを回収したらすぐに帰るつもりだった。
だが部屋に入った先にいたのは、風呂上がりでバスタオルを体に巻いてドライヤーで髪を乾かす三玖だった。
「ご、ごめん!三玖!」
と後ろをむく剣崎。だが三玖はこっちを見つめたまま何も言わない。
剣崎が後ろを向いていると
「誰?三玖?」
と声がする。
剣崎は違和感に気づく。ん?俺が今話していたのが三玖だろ?なんで自分の名前を?
そんなこと考えていると
「お風呂入るんじゃなかった?空いたけど」
と告げられ、剣崎は確信した。
間違いない!こいつは三玖じゃない、二乃だ!
剣崎から血の気が引いていく。
まずい...よりにもよって二乃だとは思わなかった。
「いつもの棚にコンタクト入ってるから取ってくんない?」
と二乃は目が悪いせいで、剣崎のことを三玖だと勘違いしてお願いしてくる。
「お昼にいじわるしたことまだ根にもってるの?」
やばい、今すぐにコンタクトを探さなくては
「あれは勢いで...悪いとは思ってるわよ」
違う...どこの棚にあるんだ?
「何してんの?そこじゃないって
別に場所変えてないわよ」
二乃が迫ってくる。剣崎はライダー時代の時に築き上げた身のこなしで二乃と距離をとる。
「...やっぱ怒ってんじゃん」
本当にどうしよう。そう剣崎が考えたとき、
「全部あいつのせいだ」
「......!!」
「パパに命令されたからって好き勝手うちにはいってきて...
私たち5人の家にあいつの入る余地なんてないんだから」
そうか...だから二乃は...
「決めた!フータローは今後出入り禁止!」
だが今しかない。剣崎はバッグを持って玄関へと向かおうとする。
だがその時、二乃が足を滑らせる。
二乃の頭が床へと落ちていく。
「危ない!!!」
剣崎は考えるより先に走り出した。
そして二乃の上半身を右手で、下半身を左手で抱え...
あの時...剣崎がこの世界にきてライダーとして初めて人を助けた時のように...
彼女をお姫様抱っこで助けたのだった。
二乃はあの時のことを思い出した。
あの時...自分が怪物に殺されそうになった時、身を呈して自分のことを守ってくれたヒーローのことを。
『仮面ライダー』のことを。
だが今自分のことを抱えているのは...
今自分が最も忌み嫌う人間-上杉風太郎だった。
この時、剣崎一真はまだ理解していなかった。
「はい。なら明日に今日の分を。分かりました、必ず行きます。」
この落第5人組と一人ひとり向き合うことの難しさを
「中野さん上手で頼もしいよ〜」
「お役に立てて嬉しいです。次の試合も頑張りましょう」
「あのさお願いがあるんだけど、
このまま正式にバスケ部に入らない?」
そして剣崎は知ることになる。
「私は...フータローのこと...」
300年以上生きた剣崎ですら、まだまだ馬鹿のままだったということを!
「ちょっ、こ、この変態!」
「ち、違うって!俺は忘れ物を取りに来ただけだって」
「と、撮るって何をよ?!」
ガチャっと玄関の扉が開く音がする。
「一花?!怪物に襲われたって、それは本当なんですか?!」
「大丈夫だよ、五月ちゃん。
私は見ての通り元気だって」
そう話した2人は
バスタオルを巻いた二乃をお姫様抱っこする剣崎を見た。そして五月は
「最低です...上杉さん...」
と冷たく告げるのだった。
〜ある病院〜
「江端」
「はい、旦那様」
男は蜘蛛が描かれたカードを見ながら尋ねる。
「バックルとラウザーは?」
「はい、バックルは調整中、ラウザーは開発の最終段階に入っています」
「そうか、上出来だ。だが焦らないようにしてくれ。まだ時間はある」
「承知しております」
「今はとにかく...ブレイドにアンデットを倒してもらうしかないからね」
そう言うと彼は蜘蛛が描かれたカードを机にしまうのだった。
♠︎3 ライオンアンデッド
カテゴリー3に属する、ライオンの祖たる不死生物。
主に夕方から明け方に活動し、8km先にも届く咆哮で相手を威嚇する。
また、鋼のクローを装備した強靭な右腕から放たれるパンチは相手を粉々に粉砕する。