シャーロット家短編集   作:あいうえおあおあお

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ONEPIECEに登場するシャーロット・カタクリと彼への周りの思いについて書きました、麦わらの一味がやってくる数ヶ月前の話です。
本来、気配を読むのが見聞色ですが、周りを観察する力=見聞色と少し拡大解釈をしています。
あとクラッカーの痛いのが嫌いってのは純粋に痛みが苦手ってことですが、心の問題にまで広げてます。それとクラッカーは年齢的にカタクリのマフラーの下も知っているはずですが、なぜか知りません。まあ、幼い頃に旅にでも出てたってことにしといてください
ブリュレは昔のカタクリは知っていますが、今のカタクリが無理をしていることをまだ知りません。
ダイフクやオーブン視点も書きたかったんですが、入りきりませんでした

元々pixivに投稿していた作品(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9216685
)なので勝手がわからないとこもあると思います、何か間違えていたらすいません


シャーロット家最高傑作

chapter:①ペロスペロー

 背中を一度も地面に着けたたことがない。ずいぶんと勝手な噂だ。そんな人間がいるものか。しかし、あいつはそんな人間であろうとしている。日常でも、戦場でも。くくく、どれだけ息苦しいことか。

 それにあいつは、いつも戦場で最前線に立ってきた。弟や妹達を守るためだろうが、まったく過保護にもほどがある。ペロリン♪ 戦場に立つことが出来る子は、ママの子供の中でも選りすぐりの戦士のみだ。余計な配慮はむしろあいつらの心身の成長を阻害するだけだというのに。

 そのくせ、決して敵から退くことは無い。だからこそ、あんな噂が出来る。くくく、まったく馬鹿な弟だ。それじゃ息苦しくなるのも仕方ない。せめて長男の私が、政治や外交であいつの負担を減らしてやらなけば。弟や妹の育成に努めなければ。あいつが気を遣う必要がない環境を作らなければ。あいつの居心地の良い国にしてやらなけば。

 

 早くあいつがあのマフラーを外せるように。まったく未来が見える男は忙しない。ペロリン♪

 

 

chapter:②コンポート

 気づく弟や妹は少ないけど、あの子がホールケーキアイランドにいる時に、家族の間でお菓子の原料が不足することはめったにない。常日頃から食糧の残りや周りの者の思いに気を配っているのだろうか、出かけるたびに仕入れて、家族兼用の冷蔵庫に補充してくれている。

 全くまめなものだ。そんな生活はとても疲れるだろうに。そうなってしまった原因はやはりあのマフラーの下なのだろう。私には、あの子が子供の時に助けてあげることは出来なかった。もちろん、あの子を虐めていた子供達を排除するのは簡単だ。事実、私もあの子もそうした。

 だが、そんなことで偏見が無くなるわけではない。私たちのママは偏見なんか気にしないからだ。良くも悪くも。そして、あの事件が起きた。あの事件で彼は変わった。自分らしく生きていた彼が周りの視線を気にするようになった。弟や妹からは理想とされ、敵からは脅威とされるようになった。そしてその虚像を崩さないために周りを観察する力、すなわち見聞色を鍛えた。見聞色を鍛えれば、その顔を覗かれる前にマフラーで隠せるから。やはり、そういう事なのだろう。

 

 あの子がマフラーを外せる日は来るのか。完璧超人は辛そうに思える。

 

 

chapter:③クラッカー

 兄さんの素顔を見たことは多分一度だけある。多分というのは誰にも確認が出来なかったからだ。いつ頃だったか、何の為に兄さんの部屋に入ったのか、どちらももう思い出せない。だがともかく、おれは兄さんの部屋に勝手に入り、シャワーを浴びている兄さんを待った。

 そして兄さんがシャワー室から出てきた時、おれはそこにバケモノを目にした。おれが悲鳴を上げるのが先か、おれが部屋から出るのが先か、それとも兄さんが手に持ったタオルで顔を隠すのが先か。それとも全て同時の出来事だったのか。その一瞬を過ぎると、おれはいつの間にかペロス兄の部屋にいた。どうやってそこまで行ったのかは定かでは無い。

 

 優しかったペロス兄は、事情を話すと急に怒った。部屋に勝手に入ってはいけないとか、兄さんは忙しいとか、そんな風に叱られたと思う。あのバケモノの正体については、なにも語ろうとしなかった。ただ、バケモノが怖いと口に出したその瞬間のペロス兄の表情は忘れられない。目の前におれがいるのにどこか寂しそうだった、今思うにあれはペロス兄自身が寂しかったのではなく、バケモノの気持ちを考えていたのだろう。その寂しそうな顔を見たとき、おれの胸にはチクりとした痛みが走った。

 そして、おれは強くなった。将星と呼ばれるぐらいにまで。そして、おれは身を隠した。強固なビスケット兵の中に。そして、おれは名を広めた。いくらでも手足や剣を生やす化物と。千手のクラッカーと。

 

 バケモノ呼ばわり、望むところだ。いくらでもおれをそう呼ぶと良い。おれは同じ将星として、兄さんを支えよう。向かってくる誰もが怖がるバケモノになろう。家族の誰もに頼りにされる男となろう。兄さんに並ぶ十億越えの怪物になろう。もうあんな痛い思いはしたくないから。

 

 

chapter:④ブリュレ

 お兄ちゃんは私にとって完璧なお兄ちゃんだ。ただ圧倒的に強いだけじゃない。他の海賊団との戦闘では、いつも周囲の存在に気を遣ってくれているし、実際に助けられた弟や妹は多い。家族や部下でお兄ちゃんを嫌っている者もいない。お兄ちゃんが戦場に出ると聞いただけで逃げ出す敵は多いし、四皇の部下や傘下だってそれは同じ事だ。

 いつも気高く冷静で強く全てが完璧な人間、それが私たちのお兄ちゃん。でも、お兄ちゃんは自分のことをどう思っているのだろうか。

 お兄ちゃんが無理をしている。それはシャーロット家の中ではお決まりのジョークだ。決して、自分の欠点を見せたことがないお兄ちゃん。だからこそ、裏では必死にそれを隠しているんじゃないか。そんな風に邪推するのだ。無論、それはお兄ちゃんへの好意から来るものではあるが、アタシはその手のジョークがあまり好きではなかった。お兄ちゃんにはいつも完璧であって欲しかったのだ。だけど、これはひどく身勝手な思いなんじゃないだろうか。

 

 今から思えばお兄ちゃんが完璧になったのは、私が顔に傷を負ってからだと思う。お兄ちゃんは私に怪我をさせた者に報復をした後は、私のような怪我の原因を二度と作らないためかマフラーで口元を隠すようになった。

 弟や妹たちには家族の中でも特に優しくなり、いつも気遣ってくれた。貪欲に強さを求めるようになり、おやつの時間に以前のように皆でおやつを食べることを止め、社いに閉じこもって闘いの神や自分と対話するようになった。そんなお兄ちゃんを家族はみんな愛しているし、私も誇りに思っている。

 

 ただ、そんな時にふとそのジョークを思い出してしまう。お兄ちゃんはあの時からずっと無理をしていたのだろうか。私たちの期待がそうさせてしまっているのだろうか。

 

 もしも、完璧超人のお兄ちゃんの本来の姿が昔のままで、子供の時のようなありのままの自分を私たちに見せたとき、アタシはどういう反応をするのだろう。失望?許容?嫌悪?好意?今の私にはそれが分からない。無敗の男のそんな姿はもう想像できない。

 

 

 

 

 

chapter:⑤シャーロット家最高傑作

 おれは恵まれている。それは理解している。弟や妹達は慕ってくれているし、大切な兄と姉もいる。今の生活は順風満帆だ。ただ、息苦しい。

 

 このマフラーを外しても、大きく周りからの反応は変わらないだろう。ペロス兄やコンポ姉はおれのマフラーの下をよく理解してくれているし、ダイフクやオーブンもきっと味方になってくれるはずだ。しかし、それでも、おれはマフラーを外した数秒先が怖い。外した未来の皆からの反応が怖い。家族にとっての理想の自分でいられなくなることが怖い。

 自分でも情けないことだと思う。時間をかければ解決する問題だというのに、ほんの少しの拒絶を恐れて行動をしてこなかった。おかしな幻想を、弟や妹達がおれに持つのも無理はない。弱みを見せてこなかったおれのせいだ。彼らの信頼を重圧に思ってしまうのもおれのせいだ。

 

 最近、夢を見る。曖昧な夢だ。よく眺めてみようとしても、もやがかかったように見えない。起きてしまったら忘れてしまう。そんな幻のような夢だ。

 

 おれはブリュレの鏡世界で闘っている。敵は何度も見苦しく倒れ、何度も見苦しく立ち上がってくる。奴はどんなに傷ついてもおれに勝とうとする。そんな姿におれはなぜか興味を抱いてしまっている。なぜそこまで立ち上がることが出来るだろう。なぜ勝とうと思えるのだろう。倒れるだけでも恥だというのに。

 

 

 敵は信じられているからだと言った。そこで気づく、なぜおれがその敵に興味を持っているのか。なぜその敵から目を離せないのか。

 おれとその敵では、信頼の種類が全く異なるのだ。

 

 奴はいつもこのようになりふり構わず、仲間のために闘ってきたのだろう。そして奴の仲間はそんな姿に着いてきたのだ。

 一方、おれはどうだ。おれへの信頼は所詮、嘘で固めた完璧超人としての姿への信頼に過ぎない。それは、おれへの信頼と言えるのか。単なる虚像への信頼にすぎないのではないか。

 

 全力で闘わなければならないと思った敵は大勢いる。全力で闘わなければこちらの命が危ういという敵もいた。ただ、全力で闘いたいと思わせる敵には初めて会った。なりふり構わず、その敵のように。

 

 

 

 おれは夢の中の人物に敬意を抱いている。

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