フィオナ騎士団の騎士オスカ(女)   作:芥目たぬき

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毎度のことながら誤字報告ありがとうございます。
前話にて最初の文章から漢字の変換ミスがあって白目剥きました。泣いてないです。
あとコメントもありがとうございます。届くと嬉しくて舞い上がっちゃうのですが、返信書くのが苦手なので許してください。頑張ります。


作品を書くにあたって、原作沿いとなるとどうしても二次創作であまりスポットの当たらないキャラを推したくなります。
ネタかぶりしにくいって事もあるのですが、あまり本編で言及されていないフレーバー程度のキャラクターの方が魂を吹き込める分、書きやすいと思うのです。


マッケンジー夫人と共に

 

 

 

 

あの日以来、イスカンダルの捕虜となったオレはせっせと働いていた。

 

———ウェイバーが洗脳した、心優しい老(マッケンジー)夫婦の家事手伝いである。

 

「うっし、おばあちゃんここで良いか?」

「ありがとうねぇオスカちゃん。気を使わなくてもいいのに……」

「こちらこそ。お世話になってるのはウェイバーの方だからな」

 

夫妻にとっての孫のウェイバー。その従兄弟という設定にして、オレはマッケンジー夫妻の家に転がり込むこととなったのだ。

今まで住んでいたウィークリーマンションは解約し、狭い家の中でウェイバーの従兄弟として一緒に住み込ませてもらっている。

……まぁ、そこには多大な暗示の力が含まれているのだが。

 

本来なら誰かと一緒に住むなんて、オレの性質(魂喰い)のせいで叶わない事ではあるものの、聖杯戦争の短期間中ということと、ウェイバーの暗示の力をもってして誤魔化しきれることから了承したのだ。

———そこは少しだけ、捕虜になった恩恵なのかもしれない。

 

ということで、久しぶりの人の暖かさに頬を緩ませながらも、洗濯物のお手伝いをしているのであった。

 

「でも……不思議ねぇ。このTシャツ、3枚もあるのね?しかも、一枚だけこーんなにでっかい。」

「そりゃウェイバーのだ。いつか大きくなるんだーっ!なんて言いながら買ってたぞ」

 

おばあさんが持っているのはイスカンダルのお気に入り、大戦略Tシャツである。

 

 

 

 

 

もともとオレが持っていた『大戦略Tシャツ』をイスカンダルも持っていて、この家に住み込みを始めてから2日目に服が被ったのだ。

そしてその日、3人で外出した際に……

 

「……見られておるのう」

「見られてるなぁ」

「おっおっ、お前達が目立つからだバカァァア!」

 

ウェイバー(157cm)を挟んだ男2人(170cmの細身で少し鳩胸気味の男と、2m越えの巨漢)がお揃いの大戦略Tシャツを着ているのだ。

それはそれは目立つ。が、しかし。

 

「いや坊主よ、これはお主が浮いてるから目立つのだ」

「オレもそう思う」

「いや絶体違うだろ!? 2月なのに半袖短パンのゴリマッチョと、フルフェイスヘルメットのせいだぞ!?」

 

イスカンダルに視線で訴えられたので肯定すると、やっぱりきゃんきゃんと吠えるウェイバー。

しかしイスカンダルは自論を曲げないようで、家に帰ると早速インターネットを操作し始めたのだ。

 

———そして、お揃いのTシャツ3人組となったのである。

 

 

 

 

そんな経緯で3着あるTシャツを、おばあさんは手早くハンガーにかけて、それを受け取ったオレは庭先に干していくのである。

こういう時に身長が170cmあってよかったと、しみじみ思うのだ。

 

「おばあさん、この後は買い物か?」

「えぇ。そうだ、よかったら一緒に行かないかしら?」

「もちろん。荷物持ちは任せてくれ」

 

騎士として、紳士的にそう答えるとおばあさんはふふっと笑った。

 

「そうじゃなくて……あのね、オスカちゃん化粧っ気ないじゃない?」

「え"っ!? いや、その……」

「私、娘にずっと憧れてたのよ。うちは息子1人だったし、ウェイバーちゃんも男の子じゃない?」

 

そういえばウェイバーから聞いた話だと、この夫妻の()()()息子と孫は、今カナダに住んでいるらしい。あちらに永住して、もうずっと音沙汰もないのだとか。だからこそウェイバーはこの家に転がり込んだのだろう。

 

一瞬だけ、頭に浮かんだ『戦車男』という謎の単語とヒロイン力高いウェイバーの姿が頭に浮かぶが……すぐさま頭を横に振った。なんだったんだ、今の。

 

「オスカちゃんも男勝りだし、嫌ならべつにいいのだけれど」

「いや、嫌じゃないんだけどな? ウン、エェト……」

 

しょんもりと落ち込むおばあさんを見て、咄嗟にそんな言葉が出てしまった。生まれてからずっと男として生きてきたのだ。その申し出はそう簡単に頷けるものではなかった。

 

……だが、しかし。

 

女の姿になるのが嫌なわけではない。女として、生きることが嫌だった。オスカは、騎士として生を謳歌したかったのだ。

 

老いてはいるものの女性を泣かせるなんて騎士の風上にも置けない。ここはオスカが騎士として生きていたエリンの土地ではなく、時代も場所も違う日本の冬木。

 

———きっと昔なら絶対に了承しなかった事だが、オスカもこの50年で()()()()のだ。

だからこそ、少しだけ照れつつもこくん、と頷いた。

 

「1度だけなら、イイケド……」

「まぁ! 本当に!?」

「でもっ! 今日だけだからな!?」

「わかったわ! うふふ、午後はお出かけするって、おじいさんに言ってくるわ」

 

そうして、洗濯カゴを持ってるんるんと室内に戻っていくおばあさんの後ろ姿を見送ってから、オレは晴天の空を見上げた。

 

———征服王にも、出掛けるって報告しなきゃなぁ。

 

 

 

 

 

 

「準備はいいかしら?」

「あぁ、いこうか。おばあさん」

 

街に出るからとおめかしをしたおばあさんと共に、珍しくヘルメットを被らずに外出する。

髪の毛はおばあさんの手で綺麗に三つ編みを施され、華奢な髪飾りでとめてある。さらに、顔に薄く化粧を乗せてもらった。

 

……なんだかとってもむず痒いが、これもまた1つの経験だろう。

 

もしこんな姿をフィオナ騎士団の誰かにでも見られたら自殺ものだろう。ケルトお馴染みの自害せよなんとやら、というやつである。違う。

 

「まずはブティックでお洋服を買いましょ!それから靴とアクセサリーを買って……うふふふっ!」

「あー、うん。頑張るぜ」

 

 

 

 

その後は、おばあさんがあれもこれもと持ってくる服から、自身の気に入ったものを選び購入。その服を着たまま靴屋にて歩きやすくて女性らしい靴と、雑貨屋でアクセサリーを購入。

それをおばあさんにつけてもらいつつ、オスカもまたおばあさんに合いそうなアクセサリーをこっそりと購入していた。

 

「疲れてないか? 休もうぜ」

「ふふ、そうねぇ。しばらくはこんな風にお買い物していなかったから、楽しすぎてクタクタになっちゃったわ!」

 

簡単な喫茶店にはいり、おばあさんを奥の座席に座らせてから手前の席へとつく。早速ケーキセットを2つとコーヒーを注文して、ふうと一息つくおばあさんにお手拭きを渡した。

 

ふと横を見ると、窓ガラスに映った自身の姿がいつもとは全く別で、なんだかとっても、変な気分である。

 

「ふふ……ごめんなさいね、私のわがままにつき合わせちゃって」

「いや、まぁ……楽しかった、ぞ?」

「いいえ。貴方が普段から男らしくって、あまり女の子扱いされるのが好きじゃないって、私知ってるもの」

 

———まぁ、女扱いされるのは好きじゃない。だが、このくらいならどうということはない。

オスカも長く生きているし、自身の性別が女だということは重々承知している。幼い頃なら認められなかっただろうが、今はもう折り合いがついているのだ。

 

……だからといって、花のように扱われたり弱者として守られるのは好きではないけれど。

女である以前に、オレは騎士なのだから。

 

「確かにこんな姿、あまり趣味じゃあないが……おばあさんと一緒に街を歩くってのは、楽しかったぜ?」

「そう?ふふ、なら……嬉しいわ」

 

もうすぐ終わっちゃうから夢を叶えたかったのよ。と、おばあさんは悲しそうに呟いた。

 

「もし私に娘がいたら……いいえ、息子の連れてきた()でもいい。お母さんって呼んでもらって、そして一緒にお買い物してみたかったの」

「……そう、か。」

 

何故だろうか。

その姿に、似ても似つかないのに(オシーン)祖父(フィン)を思い出してしまったのは。

 

もしかしたら、フィンがオレを女にしようとしていたのは、おばあさんの夢と同じものを持っていたからなのかもしれない。

———なんて、今ではもう1700年も遅いことだけれど。

 

ならば、この人もオレのかつて見た夢を否定するのだろうか?

 

「なぁ、もし……」

 

———もしもオレが、すごく険しい道を挑戦しようとしたら、どうする?

その道は険しくて、一生結婚する相手ができないくらい厳しいものかもしれない。もしかしたらすぐに死んでしまうかもしれないし、常に生傷が絶えないだろう。

 

それでも、その道がどうしても眩しくて、どうしてもその道を進みたいと、オレがいったら。

 

 

オシーンは認めてくれた。それがオレの歩む道ならばと背中を押してくれたのだ。

 

フィンはその道を歩む事を、決して許さなかった。わざわざ辛く険しい道を歩くなと、何度も言われたものだ。

しかし、オレの最期の時にはフィオナ騎士団において最優の騎士だと言ってくれたのだ。最期の最後で、オレの道を認めてくれた。

 

そして、おばあさんは。

 

「悲しいわ。……だって、大切な家族だもの」

「そう、だよな」

「でも応援する。とっても大変だと思うけれど……本当なら安定した道を歩いてもらいたいし、不自由なく過ごしてほしい。

けれど、それが貴方の決めた道だって言うなら、応援するわ」

 

———それが、家族だもの。

 

 

 

 

そういって微笑んだおばあさんは、とても美しかった。

 

 

 

* * * *

 

 

 

そうして、ゆっくり2人でコーヒーブレイクを楽しんだ後、会計を済ませてから店を出て数歩したところで。

 

唐突に、腕に違和感を感じて手を振り払う。

すぐさま振り向きつつもおばあさんを後ろに庇うと、少しだけ腰を屈めて戦闘態勢をとった。

 

———そこにいたのは、黒髪の美男子。

 

「ディル……っ!」

「ユフッ!」

 

驚きに目を見開いているディルムッドは、どうやらオレの腕をつかもうとしていたらしい。

 

何故、こんなところで?

しまった、まずい、どうしよう———

 

そして、後ろから小走りに駆けてくる赤毛の女と、怒り交じりに歩いてくる金髪のディルムッドのマスター。

……早くおばあさんを連れて逃げなくては。

 

「(おばあさん、すまんが絶対にこの男を見ちゃダメだぞ。下を向いて、知らないふりをしてくれ)」

「えっ……な、なんで」

「(悪りぃな……えぇと、昔の馴染みなんだ。めんどくさい手合いだから、おばあさんに迷惑かけたくない)」

 

どうやらわかってくれたらしいおばあさんは、すぐさま後ろを向いてくれた。

 

そして正面を見ると、必死な形相のディルムッドがマスターと赤毛の女になにやら身振り手振りで話しているではないか。

———どうやら、オレの後ろにいたおばあさんには目がいってなかったらしい。

 

 

 

 

第1の問題が解決したと、少しばかり安心する。

しかし、ここからがさらなる問題なのだ。

 

いかにして、ディルムッドから切り抜けるか。もしオレがオスカだとバレたら———死のうかな。

 

「ユフよ、あぁ、まさかこんな所で出会えるとは」

 

しかしこのアンポンタンは、どうやらオレのことをユフと勘違いしてくれているようだ。

 

ディルムッドの知るユフという女といえば、オスカには1人心当たりがあった。

それは、ディルムッドに愛の黒子を授けた憎き妖精である。

 

あの時、どんなやりとりがあってディルムッドにその黒子が刻まれたのかをオスカは知らないが、全ての悪の元凶であるユフの事は、思い出すことすらしたくないほど嫌いな相手なのだ。

 

「しかし……まさかこの極東の地にて再び我が初恋のユフと出会えるとは。そして我が名を呼んだと言うことは、オレのことを覚えているのだな!?」

 

———初恋。

ディルムッドの口からその単語が出てきて、オレはピシリと固まった。

 

それはどうやらディルムッドのマスターと赤毛の女も同様らしく、2人とも唖然としてオレの方を見ている。

 

「えぇと、どなたか存じませんがお手を離していただけますか?」

「離したら貴方は、あの日の幻のように消えてしまうだろう?」

「ワタシ ニンゲン マボロシ チガウ」

 

……あの日の朝、無人の小屋の柔らかなベッドで目覚めたのだ。そして4人であれは幻だったと結論を出したのである。

 

ディルムッドはあの後泣いて悔しがっていたし、再び会えないかと何度もその周辺に足繁く通っていたものだ。

 

片想いするディルムッドを近くで見て、オレは酷くイライラしたことを覚えている。

それもあって、ユフの事は思い出したくない思い出なのだが———

 

「ランサー、女性が困っているだろう。その手を離したまえ」

「マスターしかし、」

「その女性は紛れもなく人間だ。誤っても、妖精の類ではない。……わかったらその手を離したまえ」

 

しぶしぶ、といった様子で手を離すディルムッド。オレは少しばかり安心しながらも、マスターと赤毛の女をちらりと見やった。

オレから手を離したディルムッドの手を、そっと握ろうとする赤毛の女は———ディルムッドがそれとなく手を避けて、マスターの方へと振り返る。

 

そして、手を取れなかったと少し落ち込んだ様子の赤毛の女と、そんな女を見てさらに怒りを露わにしているマスター。

赤毛の女はオレに嫉妬の視線を燃やしていて、対してマスターはディルムッドに敵意を抱いている様子だ。

 

———なんだこれ。まるで、グラニアとフィンとの三角関係だな。

 

「全く……ソラウがどうしてもというから、こうして街へ出ているのに。なぜ貴様はこうも厄介ごとを……!」

「申し訳ございません、主人よ。ただ、彼女はユフなのです。あの美しい顔立ちも、豊満な体も———」

 

何いってんだこいつ。なに自分のマスターに豊満な体とか言ってんだこいつ。

 

……いやまぁ確かに、毎日潰しているにもかかわらず、なにかの呪いでもかかっているのかオレの乳房はやけにでかい。

しかし、そんなところを基準にされても困るのだが……あぁいや、こいつはバカだった。

 

「貴様の趣味は聞いておらん!」

「あら……いくら()()いても、肩幅広いしお肌ボロボロのおばさんの方がいいのかしら」

「何を言ってるんだソラウ!? 君の方が500倍、1億倍美しいに決まっている!それに君も、その……大きいだろう……」

「マスター、お言葉ですがユフの方が大きいです」

「ええい黙れ自害せよ!」

 

真顔で評価を下すディルムッドに怒り狂うマスターと、そして不満げにこちらを睨むソラウと呼ばれた女。

まさしく、グラニアとフィンとの関係性を連想させる。いやまぁ、こんな風に3人で歩けるようなときはついぞ来なかったけれど。

 

そう、赤毛の女はやけにグラニアに似ていた。それも、オレと出会ったばかりの時の尖っていたグラニアに。顔つきが似ているとかではなくて……あえていうなら、視線だろうか?

 

「えぇと、すまない。人違いだったようだ。どうしても、とある方と貴方が似ていて……すまない」

「気にしてねー……しておりませんわ」

 

口調を取り繕いつつも、しゅんと落ち込んでいるディルムッドに声をかける。

 

いやしかし、コイツがバカでよかった。

最初はオスカだとバレるんじゃないかとヒヤヒヤしたが———

 

「で、では御機嫌よう。おほほほほ……」

 

三十六計逃げるに如かず、である。

オレは急いでその場を後にして、おばあさんと合流して早足で帰路へと就いたのであった。

 

 

* * * *

 

 

「……て事があったんだ」

「ほぉ、なるほど」

 

家に帰ってからランサー陣営と出会ったことを伝えると、征服王は興味深そうに、そしてウェイバーは考え込むように座った。

ウェイバーとランサーのマスター……ケイネスの間には因縁があるし、もしかしたらソラウの事を知っているかもしれないが。

 

「ソラウ……って、多分ケイネスの婚約者だ」

「うげぇ。婚約者ねぇ」

 

婚約者、そしてディルムッド。最悪の組み合わせである。

 

親友の幸せを望んでこの戦いに挑んでいる身としては、そんないばらの環境に親友が置かれているのが何とも哀れで、そして何とかしてやりたいと思うが……

 

「ま、考えても仕方あるまい。特に今回は、そのユフとやらとして接したのであろう?」

「おう。まさかオレがオスカで、聖杯戦争に関わってるなんて思ってないと思うぜ」

「ならば良し。大儀であった」

 

なにも良くないのだが。

 

ただまぁ今回知れた事は、まずランサーは板挟みの状態にあっている事、マスターとサーヴァントの仲は良くない事、そして3人で基本行動している、と言う事だ。

そういう意味では、多少なりとも収穫があったのかも知れないが……

 

「で、おぬしは何故ランサーが聖杯戦争に参加してるかを聞けなかったわけか」

「そりゃあなぁ。あの時あの場を切り抜けるには、知らぬ存ぜぬを突き通すのが1番だった」

「余としても、聖杯戦争に参加している連中の心のうちは一度聞いてみたいのぉ」

 

と、その言葉に反応したのはウェイバーである。じとりとした視線で、ライダーを睨みつけるのであった。

 

「まだ部下になれーってやつ、諦めてなかったのか?」

「おう。一騎当千古強者が集まるこの場で、余の軍勢の仲間となるもののヘッドハンティングは当たり前であろう?」

 

いつぞやのコンテナ街で征服王は、敵であるサーヴァント達に向かって軍門に下れと言い放ったのだ。

あの発言にはオスカも驚いたし、そもそも頷く奴がいるものかと思ったが……案の定、誰からも相手にされなかったではないか。

 

しかし本人は至って真面目らしく、何を当然なことを、と返す。己のサーヴァントの自由さにげんなりとしながらもウェイバーは今後の方針について頭を悩ませていた。

 

「……まぁ、なんでランサーが聖杯戦争に出てるか聞いた方がいいと思う。ライダーの言うことはともかくとして、オスカの目的の上では必要だろ?」

「んだよウェイバー、オレが聖杯取るの応援してくれるのか?」

「なっ……ばかばか!そうじゃない!」

 

にやり、と笑ったオスカに対してウェイバーは焦ったように手をバタバタさせて、それから征服王に助けの視線を向けるが……残念、征服王はわざとらしく戦車の雑誌を読んでいた。

 

そして、うんうんと少しだけ考えてからウェイバーは己の考えを構築していく。なにも、善意からそんな言葉を発したわけではないのだ。

 

 

確かに、ランサーの目的を知りたいのはオスカだけで、正直なところライダー陣営としては必要な情報ではない。……征服王がどう思うかは別として。

しかし、オスカは今ライダー陣営の捕虜(協力者)として行動している。しかも、その理由は()()()()()()()()()だ。

 

彼女はいつだって逃げられる状況にある。

それなのに捕虜としてここに居座っているのは、教会から言われた『真名をバラすな』という指示を破ってライダー陣営に教えてしまったが為に、その二次被害を抑えるためだろう。

 

……とはいえ、教会との縁は切れているみたいだから、如何に効力があるのか怪しいが。

 

そしてもうひとつの理由として、オスカが相性の悪いアサシンに狙われているというところにある。

あの日アレだけオスカを追い詰めたアサシン軍団だったが、ライダーの捕虜になってからは襲撃は一切ない。魔術師の端くれたるウェイバーと、強力なサーヴァントであるライダーを敵に回したくないという事だろう。

 

たまたま拾った、前回の聖杯戦争のセイバー。それと手を組んでいられる状況というのは、とても良いことだろう。

 

———しかし、いつ裏切られるかわからない状況というのはまずい。

今はまだここにいるメリットがあるからいいものの……

 

「お前がいくら騎士だからって、ボクは魔術師だからヒトを信用しない。お前の持つ弱味だって、教会を現段階で裏切ってるんだから信用できないし……アサシンだって、ボクのライダーなら多分倒せるからな。

なら、お前に対してどれだけ恩を売って協力しあえる状況を作るかが重要だと思う……んだ」

 

だから、勘違いするな。

オスカという、前回の聖杯戦争のサーヴァントと協力関係を組んでいるというアドバンテージ。これを、最大限に活用するための餌。

 

「ボクはお前を繋ぎ止める為に、ランサーの目的くらいなら聞いてやった方がいいと思っているんだ。……あぁもう、笑うなーッ!」

 

そして、それを聞いてニヤニヤとするオスカとライダー。まったく、せっかくまじめに考えて話したのに!と憤慨すると、オスカは笑ったまま頭をぽりぽりと掻いた。

 

「いやぁ、甘ちゃんのヒョロヒョロ坊主かと思ってたがちゃんと考えるときは考えてるな、お前」

「むっふっふ。見方としては正しくあるな。で、あとはその策をどう作るかだが。安心せい、経験でそれは培われるものだ」

「何だよお前らッ! ボクを舐めやがってぇッ!」

 

まだ笑い続けるオスカとライダーの頭をウェイバーはぽかぽかと殴る。しかし、オスカと征服王から笑みが消えることはなかった。

 

「ま、お前の見立てもその通りだな。それと、受肉したオレだからこそ言えるが()()()()()()()()()()()()()()()()んだぜ。

ランサーの願い次第では、征服王の受肉の余りをランサーに回すことも出来るかもしれない」

 

お前らのことは気に入ってんだ、オレは。そういって気持ちよく笑うオスカに頭をガシガシと撫でられ、頭をボサボサにしてしまうウェイバー。

まったく、人の気も知らないで……とは思うものの、こうされて悪い気分ではないのも確かだ。

 

「ライダー、ボクの方向性に文句あるか?」

「無いな。そも、余は此度の聖杯戦争において呼ばれておる者共の願いを知らぬ!」

 

ドンッ!

 

大きく立ち上がった征服王は、室内にもかかわらずマントをはためかす。

そして———

 

「決めたッ! 余は、聖杯問答を開催しようではないかッ!」

 

 

 

 

 

 

 

 





・マッケンジー夫妻
オスカ的におばあさんの方が話しやすい。(お爺さんという存在に対して、オスカは苦手意識を持っているため)

・オシーン
マッケンジーおばあさんの言ってることと、フィニアンサイクル編の1話にてオシーンの言ってる事は大体同じことです。

・ユフ
愛の黒子を授けた妖精。当時10代後半だったディルムッドは彼女に恋をした。
その当時のオスカとユフは似ていないが、アラサーのオスカとユフはそっくりである。詳しくは恋の紋章にて。

アルトリア(セイバー)とアルトリア(ランサー)が似てないのと同じ原理です。

・協力関係
イスカンダルは捕虜と言っていますが、ウェイバーくんは正直オスカを信用していません。
オスカからすれば逃げようと思えば逃げられる状況において逃げ出さないのは、単純に
・教会から「正体がバレるな」と言われているにもかかわらずバラしてしまったので、二次被害を抑える為に言うことを聞いている
・一緒にいても不便はなく、むしろ機動力のあるライダーと未熟だが魔術師のウェイバーがいる分、キャスターに対する手が増える。
・アサシンに狙われにくくなる
・居心地がいい
上記の理由から、オスカは逃げ出さずに一緒に行動しています。
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