この作品は原作沿いですが、バタフライエフェクトにより様々な出来事の日にちが前倒しになったり、後ろ倒しになっております。
そう、これはバタフライなエフェクトなんです。
* * * *
冬木市、上空にて———
ウェイバーは頭を抱えていた。
それは自身を囲む酒瓶の山に対してでもなければ、征服王の横で発泡酒を飲んでいるオスカに対してでもない。
何故か征服王の手によってチャリオットに乗せられた、バーサーカーのマスターに対して、である。
「なんでだよっバカァァアアっ!!!」
そして、ウェイバーを射抜かんばかりに見つめるバーサーカーに怯えつつも、間桐雁夜の蘇生を必死に行うのであった。
「敵のマスターだろ?なんでボクがこんなことしなきゃいけないんだよぉ」
その言葉をライダーとオスカは聞いてないふりをする。だが、間桐雁夜をウェイバーに押し付けてきたのはライダーだ。
唯一、雁夜のサーヴァントであるバーサーカーだけはぺこりと顔を下げた。それがさらに、ウェイバーの琴線に触れる。
———人様のサーヴァントはこんなに礼儀正しいってのに!
「見てるだけってのも暇だろバーサーカー、酒飲むか?」
「aaaaaa———」
「んだよ、感謝されど怒られる筋合いはねーだろ。誰が見たってお前のマスターは死にかけだろうが。それを手当てしてやってるんだぜ?」
「aaaaaa!」
「……まぁ確かに、オレは何もしてないが……いやでもオレに敵意向けるのも間違ってるだろーが。こっちだ、こっち」
バーサーカーと言葉が通じるのか、オスカは敵意を向けるバーサーカーに対してライダーを壁にするように立つ。
しかし———手綱を握るイスカンダルは、オスカに重たいげんこつをぶつけた。
ゴィイイイン、なんて重たい音が夜空に響く。
心配になったウェイバーがそちらを見ると、どうやらヘルメットは陥没しておらず、頭も無事なようだ。
さすが元はサーヴァントなだけあって、体も頑丈なのだろう。痛そうではあるけれど。
「ばかもん。余は先程そこのマスターを拾ってやって、小僧に救助を命令したのだぞ? お主は何もしとらんだろうが。
そも、小僧は余のマスター、お主は関係なかろう」
「ありゃ救助とはいわねぇ、拉致って言うんだよ。なぁバーサーカー?」
「aaaaaa———!」
ぴっ!とバーサーカーが指差したのは征服王である。そしてオスカにはばつ印を作ると———
どうやら、征服王がバーサーカーの中では正しいらしい。それでいいのかバーサーカー。
「なんだよお前、本当に狂化してんのか?意思疎通できるじゃねーか生意気な」
「aaaaaa……aaaaaa……」
「やんのかコラ?いっとくがオレはかーなーり、強いぜ?そして売られた喧嘩は買う主義だ」
「やめんかばかちん」
またしてもオスカの脳天にげんこつを振り落とす征服王。今度は先ほどよりも威力を強くしたのか、オスカはチャリオットの中で頭を抑えて転がりまわった。
「〜〜〜〜〜っっっ!!いてぇ……本当にいてぇよ……なんなのお前?」
「浮かれすぎだ、ばかもん」
気持ちはわからんでもないが、と征服王は続ける。
「お主も楽しみであろう? 聖杯問答。ランサーとの件が抜きであっても、古今東西の英霊と酒を酌み交わすなど、本来できぬことよ」
「つーか、本当にランサーが来るのか? 最終的に呼べなかっただろ」
「余は来ると感じておる。安心せい、この征服王が確信を持っておるのだぞ?」
「根拠は?」
「あるにはあるが……ま、企業秘密とやらだ」
征服王は、先日起きたホテル爆破テロが
なにせあれだけの規模を巻き起こして被害者がゼロなのだ。おそらく何処かのマスターが、他マスターの陣地を壊すためにやったことだろう。それは、ウェイバーとも認識が合致していた。
では、やられた陣営は何処か?
元よりこの土地に根深い
キャスター陣営は地下水道に潜んでいて、アサシン陣営は教会で匿われているというのがオスカの情報だ。そうなれば、残りはランサー陣営しか残っていない。
そして昨日街中に出ていたというランサー陣営。
おそらくだが、ホテル爆破から命からがら逃げ出せたランサー陣営がどこか身の隠せる場所を陣地にし、体勢を整えていたのだろう。
そして、ある程度立て直し出来たことから、息抜きも兼ねて街中にやってきた、と考えている。
特にあの爆破テロから数日が経っている。戦争とはいえ息抜きが必要になるし、それが戦争の素人であれば尚更だ。
丁度
……尚、戦争慣れし過ぎている征服王は初日からこの現世を楽しみまくっているのだが。
「ランサー、来るかねぇ」
「来るであろうよ」
昨日、街中に出てきて休息を取ったということは、勝負に出るのはおそらく今夜だろう。
夜の街を
* * * *
そして、ディルムッドは主人のケイネスと共にアインツベルン城へと侵入していた。
コンテナ街での戦闘の後、衛宮切嗣によって魔術工房を破壊されたランサー陣営。なんとか危機を脱出して、今日この時まで態勢を整えていたのだ。
そして、いざ怨讐の時と意気込みながら侵入したアインツベルン城。
———そこでは。
「aaaaaaathrrrrrrッ!!!」
「ジャンヌゥウウ!」
セイバーと謎のフルフェイスの男がバーサーカーとキャスター、そしてアサシンを相手に立ち回っていて、ライダーが子供達をたくさん乗せたチャリオットで海魔を轢き殺している。
そして、それをアインツベルン城のてっぺんから見下ろすアーチャー。
奇しくもこの場には、聖杯戦争に呼び出された7騎が揃ってしまっていた。
「うぜぇ!どけアサシン! キャスター討伐は教会からの命令だぞ!?」
「我らは貴様を殺せとの命を受け動いているのみ。キャスターが世間を騒がせ子供を幾人殺そうが、我々には関係ないのだ」
「くっ……何故私ばかりを狙うのだ、バーサーカー!」
「aaaaaaaッ———!!!」
「チィッ……セイバーよ! はやくキャスターを無力化せぬか! 余も、これ以上はなんともならぬぞ!?」
「「できるならやっているッ!」」
どうやら、フルフェイスの男はキャスターを倒そうとしているもののアサシンに邪魔されてできない。
そしてセイバーはバーサーカーに足止めされてキャスターの元へといけない。
ライダーはライダーで、子供の救助に手一杯でキャスターのところまで迎えないのだろう。
そして、その様子を高みの見物をしているアーチャー。
「マスター、ここは……」
「セイバーの首をとってこい」
「……キャスターはよろしいのですか?」
即ち、バーサーカーやキャスターと結託せよとこのマスターは言っているのだ。
しかしいまこうしている間にも取り残されている子供達は1人、また1人とバケモノに変性している。
騎士としては、ここはセイバーやライダーとともにキャスター討伐に向かうのが正解のはずだ。
ディルムッドは良心の呵責からマスターにそう進言するも———ややあって、睨みつけながら指示を下された。
「魔術を冒涜するものに天誅を下すのもまたロードの定め……ではあるが、貴様はセイバーを討伐してからにせよ」
「———しかし、主人よ!」
「くどい」
召喚されてから何度も言われた、その言葉。
ディルムッドは仕えるものであり、サーヴァントだ。マスターにそう言われれば、渋々ではあるが頭を下げて従うしかなかった。
そのままアインツベルン城へと単身乗り込もうとするケイネスの背中をディルムッドは見送りつつも———しかし、その瞬間ディルムッドはケイネスの真横にまで迫っていた。
「———!?」
突然の行動に目を見開くケイネスと、そして槍を構えて背後を睨むディルムッド。
振り向くと、雷音を響かせながらチャリオットが猛突進してきたのだ。
そこに乗っているのは、本来ケイネスが呼ぼうとしていた征服王・イスカンダルと、泣きべそをかいているウェイバー。
さらには顔を真っ青にしている子供達が、いっぱい。子供達の足元にはどうやら、成人男性らしきものが転がっている。
戦車はディルムッドとケイネスの鼻先でピタリと止まると、イスカンダルは笑顔で手を挙げた。そしてウェイバーはそのイスカンダルのマントに悲鳴をあげながら頭だけを隠す。これぞ、頭隠して尻隠さず、という姿である。
「……む、ランサーよ!やはり来てくれたかっ!」
「なんだと?」
「今日は酒宴をするつもりでのぉ。アーチャーに声かけて、バーサーカーのマスターを救助して余はここまで来たのだ」
バーサーカーのマスターを救助———すごく聞き捨てならない言葉が聞こえたが、何ともないようにイスカンダルは言葉を続ける。
「したら、先にキャスターが来ておって、そしてアサシンまで来たのだ。お主ら、来るのちと遅いぞ?」
これであとは酒宴をするのみなのだがな! と、空気を読まずに笑うイスカンダルと、呆然としてしまうディルムッドとケイネス。
「———まずはそこにいる落第生を叱りつけるべきなのか、このサーヴァントを私が呼び出さなくて済んだことを感謝するべきなのか……」
少しばかり、ケイネスはイスカンダルではなくディルムッドを召喚して良かったなどと、柄でもなく思ってしまった。
それは置いておいて。
「ふん……前哨戦、いや肩ならし程度ならよかろう」
「あ、主人よ? これよりセイバーを討伐するのでは……」
「教鞭を取るものとして、未熟者に魔術を教えるのもまた勤め。そうだな、ランサー?」
「はっ!」
こそっと、ライダーはウェイバーの耳元で囁いた。
「オスカめはこのような男が好きなのか?」
「ライダー、それオスカが聞いたら絶対怒るからな」
いま2人の前にいるランサーは、騎士としては堂々としているもののケイネスの言葉に苦渋を噛んでいるような表情をしている。
あのオスカがテンション高く武勇を語るものだから、もっとケルトチックな男だと思っていたのだが……
「まぁよかろう。余としても、現状では酒宴が開けぬのはわかっておるからな」
「え?」
「当たり前だろう、メインのランサーをここで削らねば、早々にセイバーを倒して帰っちまうわ。ここは余がランサーの力を無くし、あとはまぁキャスターとバーサーカーを丸め込まねば酒宴が開けぬ」
酒宴の前の一働きといくか!そう言って、ライダーは早速足元に転がっていた成人男性……すなわちバーサーカーのマスターを放り投げる。続いてウェイバーの首元をがっしりと掴んで持ち上げた。
まるで子猫のように首元を釣り上げられたウェイバーは、一瞬呆然としたあと手足をばたつかせて。
「なっななな、馬鹿かライダー!?無理だぞ、そんなの!だってボクは、そんな、先生に敵うわけがないだろぉ!?」
「しかし敵対するランサーもまた猛者である。余も一騎当千の強者と戦うならば、それ相応の余裕が必要なのだ」
抵抗虚しく、ぽいっとチャリオットから降ろされてしまったウェイバー。
ライダーは子供達と酒を丁寧に降ろすと、あそこからなら逃げられると自身が破壊した城門を指差した。
流石にそれを待つだけの度量はあるのか、ランサーとそのマスターはその様子をじっと見つめている。
「うむ、お前の良いところは何処だ?」
「なんでいまそんな事聞くんだよっ……あぁもう、ボクは頭がいいんだ!」
「よかろう。ならばお前なら、余の求める答えを導き出せるはずだ」
「なっ……ボクが先生を倒せる方法があるのかよ!?教えろよ、ボクのサーヴァントだろ!?」
しかし、その言葉に征服王はニカッと笑って———
「知らぬッ!」
「な、なぁ!?」
「余は、貴様が『余の求める事を成し遂げられる』と踏んでおる。
そう言ってチャリオットに乗り込んだ征服王は、不安げに見上げるウェイバーに対していつものように、王たる笑みを浮かべた。
それに対して、ゴクリと、生唾を飲み込んだウェイバー。
征服王は再度、己のマスターと、その横に倒れ伏しているバーサーカーのマスターを見やった。
そう、チャリオットから降ろされたウェイバーの横に倒れ臥す、間桐雁夜である。
「余の勘がな、そこな死体が答えを持っている……と伝えてくるのだ。スキルがそう言っている。」
「し……死んで……な……カフゥッ!」
どこぞの桜セイバーのように血を吐いて地面に倒れ伏せる男。血には虫が混ざっている。
「こ、これでボクがうまくいかなかったら……っ!」
「余のマスターなら上手く使えい。余は、貴様ならこの難題を切り抜けられると信じておる」
その言葉に———ウェイバーは半泣きになりながらも、足をブルブルと子鹿のように震わせながらも、ライダーを恨みがましく睨みつけるしかなかった。
ライダーとランサーは向かうと、ばちばちとライダーの宝具が音を立てていく。それはチャリオットを引く神獣の纏う雷の音であった。
———無意識に、ランサーの喉がゴクリとなる。
「ぬっふっふ……待たせたのう、ランサーよ。その益荒男っぷりは特と聞いておる!故に、余にその槍の鋭さを魅せるが良いッ!」
「その言葉を後悔するなよ征服王、いざ参るッ!」
そしてサーヴァントの2人は、マスターから離れた場所へと駆け出した。おそらく、こちらまで被害を出さないためだろう。
———ウェイバーはやっぱり、自身を置いていったライダーを睨め付けるしかなかった。
そして……正面に向き直ると、やっぱり怖くて顔を下に背けてしまう。
「ふん、やはり三流以下の未熟者だな。我が魔術を使うことすら烏滸がましい……そうは思わないかね、ウェイバー・ベルモット」
「ぼ、ぼぼぼぼぼくは、見返す為に……き、来たんだッ!こ、こんなとこで……うぅっ……」
誰が見ても可哀想なほどに青ざめて、それでも対峙するウェイバー。
未熟だが、それでも自分と相手の力量の差はよくわかっているのだ。それも、自身が学んでいた者との差なのだから。
そして、その様子を見てウェイバーの足元にいた雁夜はどうしてこうなったと、今すぐにでも泣きたい気持ちになった。
———路地裏で寝ていたから悪かったのか。ならば時臣のせいである、おのれ時臣。
「……く、君のライダーが僕を君に渡したのは———ごほ、オレならなんとかする、と……そう思ったのかな?」
「あ、アンタなんとか出来るのか!」
「……この、程度……しか、出来ないけど」
そして(セイバーと戦うバーサーカーに魔力を吸われて)死にかけの雁夜が腕を振るうと、2人の前に現れたのは羽虫の軍勢だ。
それはウェイバーと雁夜を守るように囲む。
「ガハッ……く、これがオレの、魔術だっ……!」
「ふん、付け焼き刃で我が魔術に叶うと?」
その虫たちは、瞬時に2人の前から消え去った。
———当たり前ではあるが、ケイネスの魔術礼装の力である。貧弱な魔術は、ケイネスにとって見苦しいものでしかなかった。
それこそ、ケイネスの魔術礼装の前では赤子の手をひねるよりも簡単に、雁夜の魔術を卸しきれてしまう。
「———え、ええええええ!?ちょ、ちょっとアンタなんとかしろよ!?」
「む、無茶いうな……がふぅっ!?」
付け焼刃の魔術、さらに今はバーサーカーが全力でセイバーと戦っている状態。
雁夜とていっぱいいっぱいの状態で魔術を行使しているのだ。
「この程度の魔術で私を倒せると? まぁいい。ここでバーサーカーとライダーを落としてから、あの憎っくきエミヤキリツグに天誅を下そうではないかッ———!」
「ら、ら、ライダァーっ!助けろよ!僕のサーヴァントだろ!?」
しかし、そのライダーもランサーと戦っているがために呼び出すことはできない。
もし仮に令呪を使って呼んだところで、ライダーがこちらに来るならばランサーもこちらにやってくる。
サーヴァント同士の戦いの場が、マスターの目の前になるだけだ。
「バーサーカーは!?」
「なっ……冗談じゃ、ないぞっ……こんな、巻き込まれたことにオレの、令呪をきるわけにはっ……」
「だからって、ボクの魔術もお前の魔術も、先生には叶わないッ!令呪を使わなくていいから、バーサーカーを呼べばいいだろ!?」
———無理だ。
セイバーを前にしたバーサーカーは、マスターである雁夜の言うことを一切聞かない。
命令を届けるには、令呪をきるしかないのだから。
「会話は、終わりかね?」
「くぅ……っ、ふざけるな! ボクは、こんなところで終われないッ!」
「オレもだ、オレは、桜ちゃんを……っ!時臣に、復讐して……っ!」
マスターがこんな目にあっているというのに、未だにバーサーカーはセイバーを相手に全力で戦っている。
対峙するセイバーは防戦一方で、どうやらバーサーカーの後ろに控えているキャスターを倒したい様子だ。
おそらく、ここでバーサーカーをこちらに寄越しても、セイバーはこちらを追うことなくキャスターを倒しに行くはずだ。
……バーサーカーが剣を振るうたびに雁夜のなけなしの魔術回路が悲鳴を上げているのが、ウェイバーにもわかる。
雁夜のサーヴァントは、マスターがどうなろうと目の前にいる怨敵のことしか考えられないのだろう。
「ここを切り抜けるには———バーサーカーを呼ぶのが一番だろ」
「……じゃあここでオレに令呪をきれって、か? バーサーカーよ、ここに来いって……」
そして、雁夜はウェイバーに自身の手を掲げた。そこには、歪んだ令呪が1角消えた状態で浮かんでいる。
「確かに、令呪の力は———つよい。だからこそ、オレは、時臣を殺すことにしか、使わない……そうじゃないと、オレは……」
目的を達成できないだろう。
その言葉は、血を吐く雁夜の咳によって無くなってしまった。
最初の令呪は「アーチャーをやれ」と、コンテナでの戦いの時に命令したのだ。
あとの残った2画は時臣を殺し、あのサーヴァントを倒すために使わなくてはならない。
「でもアンタ……このままじゃ、聖杯戦争の最後が来るまでに死んじゃうぞ」
「死なない……死ねない。桜ちゃんを、救うために……っ!」
そして、フラフラと立ち上がった雁夜はウェイバーの横に立ち、その白く濁った目でケイネスを睨みつけた。
「殺す……ッ!邪魔するなら、殺すッ!」
「ふん、素人が……」
そして、辺りを羽虫が飛び回る。
雁夜の魂を犠牲にして魔力にするそれは、怒りや憎しみといった感情で突き動かされていた。
雁夜の身体は燃えていた。もうすぐ燃え尽きそうなのに、無理やり空気を吸い込ませて、そして更に魔力を燃やしていく。
———しかし、それでは。
雁夜の目的は為されないだろう。
「ばかかアンタ!? 死にたいのか!? 時臣とか言う奴に復讐して、桜ちゃんとか言う子を救うって今!言ったじゃないか!」
「オレは死なないッ!!!!」
こんなところで、死ねない。
だから、死なない。
そんな暴論を吐いた雁夜は、ウェイバーを少しだけ見た。
その顔は殺意に溢れていて、しかし死にかけの顔で、ウェイバーを睨みつけたのだ。
「……オレは、ここを絶対に生き残って、聖杯を手にするんだッ……」
「〜〜〜〜ッ!」
どうしよう。どうすれば、どうすればッ———!
ライダー、ライダーを呼ばなきゃこんなの助からない。
令呪で呼んで、そしてここから離脱する。そうすれば、ケイネスと雁夜の一騎打ちだけになって、ウェイバーはライダーの宝具で逃げ出すことができる。
……だけど、そうしたら、どうなる?
ウェイバーの脳裏には、先ほどの征服王の言葉が蘇っていた。
———「余のマスターなら上手く使えい。余は、貴様ならこの難題を切り抜けられると信じておる」
この難題を切り抜ける。ボクが雁夜を使って。
どうしろと言うんだ。そんなの出来っこないじゃないか。
「無理だよ、こんなの……!」
無理だ。どうしたって無理である。でも。
———ボクは、ライダーのマスターだ。あの征服王のマスターなんだ。
征服王はボクを信じるといった。
そんな言葉、今まで初めて言われたのだ。時計塔に入ってからも三流の、ろくな魔術刻印のないウェイバーは友達の1人もいなかった。
なのに、征服王は。
かのイスカンダル大王は、ちっぽけなウェイバーを信じると言い放ったのだ。
「あああぁぁあ———ッ! やってやるよ!くそ、ボクだって、マスターなんだッ!」
魔術師の端くれだ。こんなところで、小さくなっているだけではダメなのだ。
「雁夜ァァアアアッ!!」
「んなっ!?」
ウェイバーは、雁夜の顎を掴むとその視線を合わさせた。
これより行うのは、かろうじてウェイバーが取得している簡単な洗脳である。
だって、これならマッケンジー夫妻だって騙すことができた。一度実戦でやっているから、きっとうまくいくはずだ。
元は素人で、魔力を燃やして対抗力の無くなった雁夜ならば、この一瞬だけでもウェイバーの洗脳にもかかるはずだ。
———だから。
「汝、これより私の言葉を繰り返せッ!
「なん……だと……?」
ケイネスが驚き、目を見開く。
雁夜の顎を掴むウェイバーは羽虫に攻撃されながらも、その脳内に自身の魔力をありったけ使って暗示を刻み込んだ。
その言葉を言うだけでいい。だから、早く言葉を紡ぎ出せと彼の目を睨みつける。
「言えッ———!!!」
「令呪をもって命じる……! 狂化を解き、今すぐマスターとウェイバーを助けろ……っ!!」
願いは届けられる。
———そして。
その瞬間、黒騎士が3人の前に現れた。
* * * *
・雁夜拉致
聖杯問答に全員参加して欲しかったため、オスカが発見&征服王が拉致&ウェイバーが看護。
バーサーカーは救助という認識をとったものの、雁夜からすれば拉致である。
・頭隠して尻隠さず
ウェイバーくんクッソ無様なお姿晒してかわいいね❤︎ 頼むから来てくれ(弊デアに)
・ライダーvsランサー
アインツベルン城は木が生い茂っているのでケルト戦士のランサーの方が有利ではある。
が、純粋にライダーも強いのでいい勝負に持ち込んでくれることでしょう。
・主人公
出番がない