フィオナ騎士団の騎士オスカ(女)   作:芥目たぬき

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物凄く書くの難しくて大変でした。長くお待たせした割に少ないですが許してください。


キャスター/アサシン

* * * *

 

 

「———くそ、がッ!」

 

逃げる、逃げる。ただひたすらに逃げる。

迫ってくるナイフの数は尋常な数ではなく、どこに逃げても隠れても、その追撃が止むことはなかった。

 

舌打ちをひとつうってから、路地裏の壁を蹴って更にスピードを上げる。

 

「(くそっ、こっちもだめってか!?)」

 

時刻は朝の8時をすぎた頃だ。

———この鬼ごっこが始まってからおよそ4時間くらい。体力の限界を感じながらも、全速力でひたすら走り続ける。

 

「……いっそまとめて出てきやがれッ!」

 

敵はアサシン。

オスカにとって、相性は最悪だった。

 

 

* * * *

 

 

いつかの、埠頭での聖杯戦争の幕開けより数日後。

 

オスカがキャスター陣営の居場所をやっとの思いで発見した時には、もう遅かった。

時刻はおよそ3時ごろ、その地下水路は真っ赤な血で染まりきっており、連れ込まれていた子供達の8割は絶命していたのだ。

 

その奥では()()()を作っているらしいキャスターのマスター、そしてそれを見つめているキャスターがいる。

おそらく、オスカ(自分)がここに立ち入った事は知っていてその態度なのだろう———と、オスカは足音を立ててその場で立ち止まった。

 

(キャスター)の陣地内、戦う環境としては最悪である。

 

「よぉ、引導を渡しに来たぜ」

 

そうしてやっと、こちらを振り返るキャスターとそのマスター。

どうやらマスターの方は気がついていなかった様子で、こちらをみて少しばかり目を見開いていた。

 

「サーヴァントがサーヴァントなら、そのマスターもマスターだな。」

「へへっ、そりゃどーも」

「褒めてねーよ……さて」

 

手には壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)を構え、ゆっくりとキャスターの方へと歩み寄っていく。

そして、()()()()()()()()()()()なところまで歩み寄ってから……その折れた大剣を、キャスターに向けた。

 

「アンタがどこの誰かは知らねーが……()()()()だ。この時代の無辜の民をこれ以上傷付けるこたぁ許さねーぜ」

 

それが、合図だった。

むせ返る臓器と血と排泄物の臭いの中で対峙したオスカとキャスターは、同時に動き出す。

 

コンクリートの地面を蹴り、すぐに敵の目の前にまで接近して、折れた大剣を振りかざした。

そしてキャスターは、手に持つ呪本を開いて手をかざす。

 

ここはキャスターの陣地内、場が不利なら速攻で方を付けなくてはならない———が、ニヤリと笑ったキャスターのその顔にオスカは一瞬、躊躇った。

魔力の奔流を肌で感じて、これが誘い込まれたものだと理解する。オスカの方が圧倒的に瞬発力も、筋力も優っている。なのに、この余裕があるということは。

 

自身が剣を振るおうとしていた、オスカとキャスターのあいだに———

 

「んなぁっ!?」

「ア、あぁっ……」

 

それは、突然現れた。

 

子供が数人、血だらけの肉団子のようにひとかたまりにされている。

グロテスクなそれは———死を望んでいるかのように淀んだ瞳を10個ほどこちらに向けている。まぶたがあり、皮があるそれはぐちゃぐちゃに混ぜられていて、生命活動だけを魔術によって行わされているようだった。

 

おそらく、キャスターのマスターが作成(拷問)したおぞましい作品。

 

剣を振るえば真っ二つに引き裂かれるだろう場所に突如として現れたそれに、オスカは息が止まった。

こちらを見つめる目玉。悲痛に歪んだ、原型をかろうじて取り止めている幼い顔。

 

そして、そして———

 

「ッ卑怯者がっ!」

 

戸惑うのは一瞬だけだった。

いっそ殺した方がマシだと、オスカはその剣を一気に振り下ろす。

 

血飛沫が上がり、子供の身体は木っ端微塵に爆散する、目玉が、歯が飛び散って、視界いっぱいに赤色が広がるものの、それすら気にせずに回転する大剣をその身体に押し込んだ。

まるでミキサーのように、血肉を抉りながら一瞬で子供を屠ったオスカは、再度剣を構え直す———が。

 

「ハ、ハハハハ!ハハハハハ!神よ、ご覧あれ!!!!異教徒の不埒な蛮族の血をご覧あれ! オォオ、ジャンヌぅううう!」

 

キャスターは狂ったように嗤う。手を広げて、賞賛するかのように天井を見上げている。そしてその瞬間、なんらかの魔術が起動したのだろう。

オスカはすぐさまその場を後退し、血に汚れる床に足をついた。

 

そして、気がつく。

 

先程まで真っ赤な血が壁と床一面に広がっていたそこは、徐々に変容していく。飛び散った血痕から生えるように伸び上がってきたのは気色の悪いねっとりとした液体を撒き散らかす青緑の棘の生えた触手。真ん中に、口のようなものがあるのがさらに気持ち悪い。

 

太さはおおよそ人の首ほどの触手が8つの、イソギンチャクのような化け物———海魔が、壁、床、そして天井にびっしりと覆い尽くされていた。そして、こちらの血肉を貪り食おうと触手が手を伸ばしてくる。

 

子供を殺した事で精神的にダメージを食らっていたオスカは、その光景に多大な怖気を抱いた。

恐怖とは違う、生理的な嫌悪感からくるものである。背筋を這い上がる悪寒が、とても冒涜的な光景だとひしひしと伝えてくる。

 

 

 

 

前回の邂逅では、()()まで出来なかったはずだ。まだ召喚されたばかりのキャスターと出会った際、相当な数の化け物を召喚していたが、その時よりも今日は数がずっと多い。さらに、海魔の1匹1匹が大きくなっている。

このひらけた水路にて視界いっぱいに海魔を召喚するほどの魔力は、以前はなかったはず。

 

と、いうことは……それだけの魔力補給(人の捕食)を今日この日までしていた、ということか?

全く無関係の人を、先ほどの肉団子になった子供たちのように拷問死させて?

 

「人の命を、なんだと思ってッ———!」

 

オスカは怒り任せに壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)を振りかざした。

足に巻き付いていた海魔を千切り殺し、大きく、雑に大剣を振り回す。そうすれば、海魔の触手は挽肉のように細切れになっていった。

 

オスカのジャケットとフルフェイスのヘルメットが青黒い体液にびっちょりと染まるが———それは大したことではない。

 

「ハ、物量がなんだ!? オレ様はなァ、大軍の波を切り裂いて、敵王を殺した騎士だぞ!?」

 

人の山だろうが肉の山だろうが関係ない。オスカにとって、防壁とはあってないような物なのだ。

 

「さぁ、首を差し出せッ!」

「……なるほど、それではこれは如何ですかな?」

 

 

キャスターはさらに腕を振るう。すると、水路いっぱいに広がっていた海魔達がひとつの動きを見せたのだ。

 

オスカをその場に留めさせるために足に絡まり付いてくる海魔は壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)の一振りで離されないように、分厚い触手が幾重にも絡まってきている。

さらに、キャスターとの間に壁のようにして立ちふさがる海魔は壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)の回転威力を抑えるためか、渦状にぐるぐると回りながらも分厚い壁を作っている。

 

なるほど、オスカが()()()()()()()()()()()()()なら、その動きを少しでも鈍らせて威力を下げようとしているのだろう。

 

 

 

———だが。

早く、こんな茶番は終わらせなくては。

 

 

分厚く、壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)の威力を相殺するために回転する肉壁を見やる。

姿が見えなくなってしまったキャスターとそのマスターにまで届くかはわからないが、とりあえず、この()()の壁なら突破してみせよう。

 

姿勢を低く構え、ギュルギュルと回転する大剣を真正面へと向ける。肉壁のようにわらわらとオスカの前へと群がり始めた海魔に対抗し、オスカも壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)に魔力を通して回転速度をぐんと加速させた。

風をまとい、虹をうっすらと帯びた大剣を両手で強く構える。

 

いくら分厚かろうが策を講じようが、そんなのは関係ない。

突撃して穿孔(せんこう)出来ないというのであれば、肉壁を薙ぎ払えるだけの火力で、穴を開ければいいのだ。

 

やったことはないが、出来なくはないだろう。

そう思って、魔力を注ぎ込んだ大剣を解放する。

 

 

「セイバーの十八番(おはこ)、虹霓の一手! ———その身で味わえ、壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)ッ!」

 

見る人が見れば『フィン・マックールの宝具(マク・ア・ルイン)と似てる』と評されるだろうそれは、真っ白な光に虹を帯びながら、敵めがけて一直線にエネルギーを叩きつける。

 

ビームが撃てずして、何がセイバーか。オスカもまた、本来の壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)の仕様からは少し離れているがビームを撃ち出したのだ。

 

 

———(ゴウ)ッ!と、強いエネルギーを持った光が海魔をたちまち蒸発させてしまう。

回転する分厚い肉壁も、ビームを前にして全て燃え上がってしまう。キャスターとそのマスターを守るべくして蠢いていた海魔は跡形もなく消し去った。

 

しかし。

 

 

「———くそ、結構魔力使うもんだなコレ……」

 

威力は上々。だが、それ以上に魔力消費がなかなかえげつなかった。

60年間溜め込んでいる魔力は充分な力を持っているものの、そのうちの数%は確実に持っていかれたのだ。

 

「見たか、キャスター!貴様の策、破れたり!さぁ、今度こそ首を……差し、出せ……」

 

拓けた肉塊の奥、先ほどまでキャスターとマスターが立っていたそこに、2人はいた。

いや、2人の身代わりがそこに立っていたのだ。

 

その身体はぐにゃりと、()()()()

そして、それは二体の海魔へと姿を変貌させた。

 

———まさか、オレが肉壁を破ることを見越して逃亡したというのか?

 

 

 

「チィッ、逃げるか貴様ァッ!」

 

再度壁を作ろうとする海魔達の奥、水道の先は幾方向にも分岐している。

なるほど、してやられたという事なのだろう。あれ程残虐で頭のイカれたやつでも、相性というものは理解しているらしい。

 

迫り来る触手は壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)を一閃し、すぐさま挽肉へと変える。ただ切るのではなく、当たったものを千切るように切る大剣は、触手を爆散させて青黒い体液を撒き散らかした。

 

それでもなお、湧き上がってくる海魔どもが手足に絡まりついてきて———

 

「クソがッ……いいぜ、全部まとめて殺してやる」

 

オスカは軽々と後ろに飛び退くと、海魔達から距離を置いてから大剣に魔力を流す。螺旋を描き始めたそれを、思い切りコンクリートへと突き刺した。

 

ここで逃げる事は簡単だ。オスカの武器である壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)は、肉壁を破ることには特に特化している。

また、キャスターを追うことも可能ではある。どこに逃げたかわからず、逃してしまう可能性もあるが、ある程度跡を追うことは出来るだろう。

 

しかし、そうなればここにいる多くの海魔はどうなるというのか。

この水路の真上には幸いにも人が住んでいないものの、この近くには住宅街も広がっているのだ。もし、これらが無辜の人々を襲うようなことがあれば———あってはならないことではある。

 

だからこそ、この場で、この雑魚どもは片さなくてはならないのだ。

 

 

 

 

 

———かつて、フェルグス・マックロイは虹霓剣(カラドボルグ)を持ってして3つの丘を破壊したのだそうだ。

折れた虹霓剣(カラドボルグ)である壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)。それでも尚、その虹霓は鮮やかな輝きを魅せる。

 

 

水路の床、コンクリートよりもっと下の方から唸るような音が鳴り響き、地割れが起きる。その地割れから極彩色の光が漏れでて、海魔達の足場をメリメリと音を立てて崩して———

 

そして、宝具開帳。

 

「光よ、螺旋となりて———これが、全力だ!いくぜ、壊・虹霓剣(ゲル・ナ・グコラン)!」

 

 

 

オスカの目の前より先、海魔がひしめき合っていたそこから地面が()()()()()、土やコンクリートで押し潰されて海魔達が断末魔の悲鳴をあげる。

範囲も威力も、まだまだ真の虹霓には至らない宝具。だが、それでもオスカの力量があれば形だけは1つの宝具として完成される。

 

 

 

視界いっぱいに、極彩色の光が下から上へと向かい、先ほどまでの悍ましい光景を全て一掃する。

そして、光がやんだ後、充分に水路を崩し切った頃に大剣を引き抜けば、残ったのは瓦礫の山のみ。

 

———見事なまでに、海魔を水路ごと一掃したオスカはふうと一息ついた。

これはまた、教会が苦労するかもしれないが……それは、関係ないことである。きっとガス爆発にでもするのだろう。

 

ゆっくりとその場を後にして、住宅地の方に止めたバイクへと向かう。

 

 

「……ま、いっか。さっさと帰って寝るかねぇ」

 

 

 

 

 

なんて独り言を呟いた、その瞬間。

オスカは直感により、咄嗟に胴体を捻らせていた。

 

 

 

* * * *

 

 

———何者だ。

 

その問いには答えずに、再度投擲されるナイフを叩き落とす。

全く、一夜に二度の戦闘とは運がないのか、はたまた狙われていたのか……おそらく後者だろうと、あたりをつけた。

 

そして、またしてもナイフが投げられる———が、それは一本だけではなかった。

 

「(2人……いや、3人? いずれにせよ複数とは、面倒だな……)」

 

そして、暗闇からぬるりと現れたのは白くぼやけた骸骨面。全身が黒く、顔の面だけがやけに明るく感じる。

そしてそれは、背後からも。横からも、木の陰や街頭からゆっくりと現れてくる。

 

その数、およそ30前後と言ったところか。

……予想の10倍じゃないか。多いぞ、これは。

 

「ハッ、これしきの数でオレを殺せると?」

「精々吠えるが良い」

 

背後に立っていた男が答える。

それに応じるように、斜め前に佇む女が答えた。

 

「然り」

 

そして、言葉を繋げるように若者がナイフを回しながら近寄ってくる。

 

「我らから逃げられるとでも?」

 

背後から若い女の声が。

 

「無駄な抵抗は辞められよ」

 

正面の男が、嗄れた声を出す。

 

「さすれば、苦しまずに殺してやる」

 

オスカを囲むように立つ骸骨面達は、それぞれ言葉を繋げていく。

そのどれもがオスカを狙っていて……隙あらば、ナイフを投擲しようとしてきている。

 

「全く、誰か1人が代表して話すってことは出来ねぇのか?アサシンよ」

 

宝具を使って切り抜けるか———?いや、今日は使いすぎたし、なにより場所が悪い。

場所は住宅街の道路の真ん中。こんなところでは、オスカの宝具は使えない。

ここまで手の内がバレてるとなると———おそらく、璃正が寄越した、綺礼(息子)のサーヴァントなのだろう。

 

「我らは群にして個、個にして群」

「ふぅん……ま、数の暴力は得意だがな」

 

そう言い終わるや否や、オスカは真後ろに飛び退いた。———先ほどまで立っていたところに、15本のナイフが刺さっている。

 

さらに、飛んでいる最中の身にも何本かのナイフが投げつけられ、それを大剣で叩き落とす。

ついでと言わんばかりに、構えていたアサシンの3人に向かって剣を振りかぶった。

 

真っ赤な血が溢れ出て、それを傍目にオスカは走り出す。

 

 

 

 

アサシンとの鬼ごっこ、敵は100体。オスカにとって相性が悪い戦いの幕開けであった。

 

 

 

* * * *

 




ジルの海魔とオスカの宝具では、ジルが圧倒的に相性が悪いです。

肉壁の物量で押し切るタイプのジルに対して、螺旋する剣が相手では海魔がひき肉になります。
アルトリアが包丁で一口大に切り、ディルムッドが肉を串刺しにし、イスカンダルがミートローラーで肉叩きにしてステーキにするとしたら、オスカはフードプロセッサーでハンバーグにするようなイメージでお願いします。

・セイバーはビームが撃てる
フェルグス叔父貴のカラドボルグはガラティーン(ガウェイン卿の宝具)の原典
→ガラティーンはビーム
→ゲル・ナ・グコランもビーム撃ててもいいはず

威力はそこまで高くないと思ってください。撃ち方のイメージはマク・ア・ルイン参照。その身で味わえ!

・回る海魔の肉壁
イメージはタコの踊り食いの動き。食べてみたい。

・対アサシン
百貌は強いと思うんです。疲弊した敵を相手にし、なおかつ対城/対軍宝具を使えない状況に持ち込んでじわじわと体力削れば強いと思うのです。

拓けたところに集合したらオスカも宝具一発撃って倒せますが、アサシンの人海戦+消耗戦となると、一撃が重くコストのかかるオスカは相性ゲーで負けるはず。



オスカのドリル突進のイメージは、ブークリエ・デ・アトラント(尻宝具)です。光よ、螺旋となりて!
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