異世界に転生した双子座 -Twin Dragon Saga- 作:神鳥ガルーダ
私―――兵藤一誠が、暴走族から助けた少女はアーシア・アルジェントと名乗った。
彼女の名には聞き覚えがある。
イタリア出身の
成程、彼女が聖女と呼ばれる所以は
【聖母の微笑】は回復系神器のトップレベルの神器だと以前サイエスから聞いた事がある。
ただ彼女は一年前に…。
「…ありがとうございました」
「…気にすることはない…と、言いたいがもう少し危機感を持つ事だ。人間誰しも善人ばかりではない…というか、奴らの雰囲気を見ればどの様な相手なのか想像し易いと思うが……」
人は外見で判断できない…とはいうが、奴らは分かりやすいだろうに…。
彼女が育った教会は、結構善行的な所だったようだ。
教会というのは基本的に二つある。
聖書に記された信徒としての心構えを正しく教える所と、信仰が狂信に変わり、無自覚に人の道から外れてしまう場所。
アルバ―――【
それはまた後に語るとして、彼女は少し危機感を持つべきだな。
今もそうだ。
奴らに破かれた服は彼女の手持ちのソーイングセットで直せる程度ではないので、家に来るよう言ったが、あっさりと付いてきた。
先ほど騙されたばかりだというのに……。
彼女の純真さは【
あの聖闘士としての才能は
まあ、この瞬に対する評価は、
家に帰った私は母に事情を説明し、アーシアの着替えを用意してもらった。
「それにしても一誠。この娘を助けたのはいい事だけど、あんまり危ない事をするのは良くないわ」
母は一般人であり、朱乃や搭城姉妹が人外であり、私が超常の世界の関係者であるという事実を知らないからな。
さすがに一人息子が暴走族と喧嘩をしたと聞いては心中穏やかではない…か。
いや、私の実力を知っていても関係ないか…。
一般常識として、息子が荒事に関わるのを良しとする母親なぞいないだろう。
武門の出とか、その関係者でもない限りはな。
前世では母の愛というモノを知らなかった私だが、今生では理解している。
兵藤一誠として生まれたばかりの頃、父と母の愛情はしっかりと感じていた。
二人の事を思えば、私は戦いを捨て普通の一般人になるべきなのだろう。
だが、それは出来ない。
ドライグとアルビオンを宿した事から目を背けるわけにはいかない。
好むと好まざるに関わらず、いずれ私は超常の世界に巻き込まれただろう。
だからこそ、いずれは遠ざからなければならない。
二人を我々の世界に巻き込む事は許されない。
だが、せめて成人するまでは一緒に居たい。
成人して独り立ちする事は、育ててくれた親に対する最高の恩返しだろう。
故に成人するまでは、母の庇護にあるべきなのだろうな…この日本では…。
★☆★
アーシアがこの町に来た理由を聞き、私は不審に思った。
教会が正式に開くなど聞いていないからだ。
駒王町の超常関係問に関するの報告は、すべてチェックしている。
この国の地に日本神話以外の勢力が拠点を築くには、政府を通じて高天原に申請しなければならない。
日本神話の神々が大らかなので、他勢力の個人が住むのは良いが、さすがに組織に対しては最低限の申請は必要だ。
裏で何かを画策していようとも、申請だけはする筈だ。
そこで私は、アーシアが赴任する予定の教会に意識を飛ばし、確認してみた。
すると教会の中に顔見知りの存在を見つけた。
「…夕麻…。天野夕麻か」
私の(一応)元カノである天野夕麻。
つまり堕天使たちが再びこの駒王町に舞い戻ってきた。
と、なると教会にいる神父や修道女たちは皆、【
しかし、という事は目の前にいる少女…【聖女】アーシア・アルジェントも【神の子を見張る者】に所属しているというのか?
確かに彼女は異端審問を受け、聖女から【魔女】と呼び名が変っている。
いや、ありえんな。
先ほど彼女が聖書の神に祈りを捧げているのを見たが、あれは間違いなく敬虔な信徒としての祈りだ。
外面を取り繕った類ではなかった。
【魔女】の汚名を受けても、彼女の心根は清らかなまま。
ならば守ってやらなければなるまい。
私はグレモリー先輩に連絡をとり、魔王二人に依頼をする事した。
私は朱乃を伴い、オカルト研究部の部室を訪れていた。
魔王サーゼクス・ルシファーの仲介により、【神の子を見張る者】の総督であるアザゼルに直接連絡を取る事に成功した。
アザゼルは朱乃と共にいる私を見て驚愕したのは、見てて面白かった。
大方、夕麻から私の抹殺に成功したという報告を受けていたのだろう。
『兵藤一誠。お前、悪魔に転生したのか?』
…なるほど。
私が生きているのは、グレモリー先輩の眷属になったからと推測したわけだ。
「…初めましてアザゼル総督。私は赤龍帝・兵藤一誠。残念ながら私は転生悪魔ではない」
『赤龍帝だと!あのオーフィスを抱え込んだ赤龍帝がお前だと⁉』
どうやらアザゼルは、俺に刺客を送った事の不味さに気付いた様だな。
「…アザゼル。私の知り合いであるイッセー君を殺そうとした事に説明を求めるわ…」
不機嫌な朱乃の言葉にアザゼルが若干怯んだ。
理由はおそらく以前、私が予想した通りだと思うが、私が赤龍帝である事実が自らの判断ミスである事はアザゼルも分っているだろう。
下手をすれば、【神の子を見張る者】は【
「総督。あなたが私を抹殺させようとしたのは、私が神器を暴発させ、そばにいる朱乃に被害が出る事を恐れたのだろうと思う。私の先祖は超常の能力を持たぬ一般人だからな。だが、残念ながら私はすでに神器を使いこなしている。疑惑だけで刺客を送ったのは貴方の失態だな」
それを証拠に私と同じく一般人であった【
彼が五大宗家である姫島家の血に連なるからだ。
何らかの家の傍系でもないからと確認せず判断したのは、この男らしからぬミスだな。
アザゼルとは白龍皇としては何度か話をしているので、ある程度の為人は把握している。
アザゼルも今のこの様子では私が白龍皇でもある事には気付いていないな。
会っている時はアルビオンの気を全面に出して、私個人の気配を隠蔽しているためだが、今のところ問題はなさそうだ。
『そうだな。自分で確かめなかったのは確かに俺の失態だ。【神の子を見張る者】の責任者として正式に謝罪しよう。それで聞きたい事とはレイナーレ…天野夕麻が今、駒王町にいる理由だったな』
ほう、夕麻の本名はレイナーレというのか。
まあ、朱乃の様な混血でもないのに、日本名の堕天使というのもおかしいな。
『レイナーレの件は完全に奴の独断だ。しかも、保護したアーシア・アルジェンドを勝手に日本に来させたのもな。俺たちが別件で動いている隙に行ったようだ』
『イッセー君。【神の子を見張る者】は中堅の堕天使が先の大戦で数を減らした為、上層部と下部組織との間に齟齬が起こっている。どうやら下部組織の独断のようだね』
仲介役のサーゼクスのフォローに苦笑しながら納得する。
悪魔たちも今、堕天使に大打撃を受けてもらっては、不味いのだろうな。
三竦みのバランスが崩れると戦争が再開され三大勢力共倒れの可能性が高いからな。
そうなれば、他の神話勢力の思うがままにされてしまう。
「謝罪は受け入れましょう。それでレイナーレとやらがアーシアをこの町に呼んだの目的は?」
「…報告によれば、奴はどうやら俺かシェムハザの側近になりたがっていた。おそらく希少な神器である【聖母の微笑】をアーシア・アルジェントから奪い、自分のモノにして、俺たちに売り込もうとしているんだろうな」
神器は生来から持っている者だけが使えるわけではない。
【聖母の微笑】の治癒力は並みのヒーリング能力を遥に上回るからな。
アレに匹敵するのは、悪魔側が持つ【フェニックスの涙】くらいだろう。
「奴の処理はこちらに任せてもらっても?」
『ああ。俺たちの許可も取らず、勝手にグレモリー家の領地に入った奴だ。筋を通す為、奴らの処断はそっちに任せる」
「了解しました。それとアーシアの身柄もこちらに引き取らせもらいます。追放されようとも彼女の信仰心は消えていない。聖書の神に背を向けた貴方たちの傍は相応しくないでしょう」
『やむを得んな。どうもアーシア・アルジェントに関しては奇妙な事が起こっていたから様子を見る為に保護しただけだしな』
「奇妙とは?」
『教会から追放されたのに、放浪中に陰で天使が護衛をしていた。だがその天使は何者かに惨殺されていた…。妙だったし、希少な神器の持ち主で暴走の危険も特にないので保護したんだ』
なるほど教会はともかく、天界としてはアーシアの破門は不本意だったのだろう。
だが、おそらく聖書の神の死により、神の敵対者すら癒してしまう【聖母の微笑】は問題なのだろうな。
『天使たちの力の源は人間たちの信仰心だ。その信仰心に揺らぎが出れば、神が不在である天界からすれば死活問題だろうからな』
おそらくドライグの予想は当たりだろう。
つまりアーシアはその身に宿した神器の能力が、今の天界の手に負えないから追放されたという事か……哀れな。
天使たちも自分たちの行いが理不尽であるという自覚があったから、アーシアを陰で守っていたのだろう。
だが、その護衛の天使が殺された。
何やらキナ臭いな。
『イッセー君。そのアーシア・アルジェントが追放される原因となった悪魔に心当たりがあると言ってアジュカが調査している。もう少し待っていてくれるかい?』
「…了解した。そちらの方はアジュカにお任せしよう。では総督、失礼します」
「イッセー君が謝罪を受けたから私も何も言いませんわ、アザゼル。でも、やはりまだお父様との話し合いはしばらく保留させてもらいます」
『…朱乃、分かった…バラキエルすまない…』
今回の件で親子の歩み寄りはまた困難になってしまったな。
★☆★
その日の夜。
私は
それだけならば、こんな悪魔の領地でやる必要はない。
案の定そうだった。
彼奴等は、悪魔と契約を結んだ人間の殺害を計画していた。
悪魔と契約をした人間に死を…そう言って断罪しようとしていたらしいが、その全員が今、拘束されている。
まあ、はぐれ
星矢たちとの闘いを教訓に白銀聖闘士の連中も一切油断はしなかったしな。
まあ、奴らの中で一番強いフリード・セルゼンとかいう奴を倒したのは、別の者だったらしいが…。
「私が行った時にはすでにフリードなる者をズタボロにしていたぞ」
祭先生は顔を引きつらせながら、報告してきた。
「…何者なのです?」
「今生において、私が若い頃に流行った漫画の世紀末覇者の様な体格なのだが、何故か女性モノの服を着ていて……ミルたんと名乗っていた」
「…ああ、あの漢の娘ですか…」
私も先日、見た事がある。
確か柳生先輩の悪魔家業の客で、世紀末覇者の様な容貌なのに、魔法少女に憧れ、魔法が使いたいとして、柳生先輩を召喚したのだ。
たまたま通り掛かったので覗いたのだが、あの柳生先輩が完全に顔を引き攣らせていたレアなシーンを拝めた。
結局、冥界の子供たちが遊ぶ、魔法の真似事が出来る杖を渡してお茶を濁していたな。
「その杖ならあの男に剣で真っ二つにされていたぞ。その後、泣きながらフリードとやらを一方的にぼこぼこにしていたぞ」
フリード・セルセンの事は私も知っている。
確か、教会の戦士ダヴィード・サッロの弟子だった男で、天才と謳われたがその心根が問題視され、追放された。
追放されたとしても、天才と称された男を苦も無く捻るとは…ミルたん、何者だ?
とりあえず捕えた連中らは全員、【神の子を見張る者】に引き渡した。
私たちが処分することを許されたのは、レイナーレ率いる堕天使たちのみ。
構成員たちは引き渡す事がアザゼルの要求だったからな。
奴からすれば、ただでさえ人手が足りないのに、堕天使4名を切り捨てるのだ。
末端とはいえ、はぐれ悪魔祓いたち全員を失うのは認めなかった。
まあ、サーゼクスを通した交渉だったからな。
これでサーゼクスはアザゼルに貸しを作る事が出来たと喜んでいた。
「まさか生きていたとはね…驚いたわ。兵藤一誠君」
祭先生と別れ、一旦帰宅したおり、母にお使いを頼まれ、アーシアを伴いコンビニに買い物に出た私の前に堕天使が一人降り立った。
「天野夕麻…レイナーレか」
来たのは我が(一応)元カノだった。
没設定
「悪魔と契約した悪い子は、お仕置きだ」
フリード・セルゼンがミルたんに斬りかかる。
ミルたんはとっさに杖で受け止めようとするが、そんなモノで剣を防げるはずもなく…。
「ミルたんの杖が…悪魔さんに貰った杖が……」
呆然となるミルたんにフリードの追撃が迫る。
「危ない!」
フリードの凶刃からミルたんを守る為に割り込もうとする檀吉は怒りに震えるミルたんから発する小宇宙を感じた。
「な……この小宇宙は!?」
「…【グレートホーン】!!」
発生した【
まさしく黄金の野牛。
「ミルたんのステッキを返すにょ!」
「……お…お前に何があった、アルデバラーン‼」
没理由。
流石にアルデバランファンに殺されそうだから…。