異世界に転生した双子座 -Twin Dragon Saga- 作:神鳥ガルーダ
私―――兵藤一誠が活動する駒王学園喫茶部に新たなメンバーが増えた。
「アーシア。モーニングセットを3番テーブルに」
「はい。分かりましたイッセーさん」
先日、駒王学園に転入したアーシア・アルジェントである。
その可憐な容姿と純粋で優しい性格ゆえに、クラスはおらか同学年の男女問わず人気が出ている。
そんな彼女に多くの部活から勧誘を受けるが、本人は私と同じ部が良いと言って、喫茶部に入部した。
大多数の者は悔しがりながらも文句は言わなかった。
何故なら、喫茶部に入るという事は、そこに赴けばアーシアと会話できる可能性が高いからだ。
同クラスならばともかく、他クラス更に他の学年ではあまりアーシアと会話できる機会はない。
なぜなら、アーシアは殆ど私の傍にいるからだ。
私は自他ともに認める女好きだが、学園の連中は私のそういう面を知らない。
これでも私は、入学以来常に学年首席であるし去年、絡んできた不良学生共を軒並み返り討ちにしている為、私の怒りを買う事を恐れている。
しかし、アーシアが喫茶部に入るという事は、客として入ればアーシアと会話できる可能性が高い。
喫茶部に来る客を分類すると、私の入れる珈琲のファン、二大お姉さまの一翼である朱乃の作る軽食目当て、学園のマスコットである白音に接客されたい、と、別れているがこれにアーシアが加わる。
正直、木場の様に純粋に私の珈琲を楽しみに来てくれる者以外は、客と認めたくはないが、問題さえ起こさなければこちらから文句を言う事は出来ない。
あくまでここは喫茶部であり、部活動の一環で、管理を任されているだけで、私の所有物ではないからだ。
本来は、アーシアは駒王学園に編入せずに、母の手伝いをしてもらう予定だった。
しかし、今アーシアが学園にいる理由、それは天界からの援助の御蔭である。
★☆★
話はアーシアが駒王学園に編入する前に遡る。
今、私はアーシアを連れて駒王町を出て、別の町に来ていた。
駒王町とその周辺の町は悪魔の勢力下であるが、この町は超常の世界とはほとんど関りがないので、普通に神社仏閣及びキリスト教会がある。
カトリック、プロテスタント、正教会など、さまざまな宗派の教会がそれぞれ建っており、廃教会しかない駒王町の信徒たちも基本はこの町の教会に礼拝しにいく。
この町に赴いた理由は、知人から呼ばれた為だ。
しかもアーシアを伴って…という要請だった。
知人は教会関係の人間である。
アーシアに良からぬ事をする為なのか疑ったが、本人の気質的にまずありえないだろう。
指定したホテルに赴き、部屋に入るとそこに彼はいた。
「お待ちしてたっス。イッセーどん」
デュリオ・ジェズアルド。
教会が誇る最強の
そして、聖闘士の転生者でもないのに【
「今日は料理の研鑽ではないのだな」
「…それは後でお願いします」
彼の趣味は食べ歩きであり、世界中の美味い物を食べてはそれを再現させようとしている。
その理由は…教会が保護している先天性特殊能力者の孤児たちへの優しさからである。
強力な特殊能力も、宿った相手にとって過ぎる力ならば、災いとなる。
幼いうちにその能力によって死に至っていまうのも珍しくない。
その能力が暴走すれば被害が拡大するため、教会の施設から出る事が出来ない子供たちに、せめて美味しいモノを食べさせてやりたいという気持ちから、彼の食べ歩きの趣味が始まった。
戦いの場では、必要があれば非情になりきれるが、普段は心優しい青年なのだ。
「それで、アーシアを連れて来させた理由はなんだ?」
「…それは彼女にこれを渡すためっス」
そうすると手紙の束を渡してきた。
「これは?」
「…司祭枢機卿のストラーダのじいさんから預かってきたアーシアちゃん宛の手紙ッス」
それはアーシアが教会にいた頃に癒してきた人たちからの感謝の手紙であった。
「…アーシアちゃんが追放されてからも、手紙は送られてきていて、ストラーダの爺さんも気にかけていたんで、俺がアーシアちゃんに会う様命令されたと知って、渡す様に頼まれたんです」
「…ストラーダ猊下がですか…」
アーシアは感激の涙を流していた。
どうやら、教会から追放されたアーシアを異端として蔑む者ばかりではなく、気に掛ける者もいたようだな。
アーシアを陰から護衛していた天使といい、彼女は決して見捨てられているわけではない様だ。
それにしても司祭枢機卿のストラーダとは、かの聖剣デュランダルの使い手として有名なヴィスコ・ストラーダの事か…。
面識はないが、アジュカから聞いた話では、その実力は悪魔たちからも恐れられており、彼を見て生き残った悪魔たちのトラウマになっているらしい。
「そして本命はこっちっス」
次に渡してきたのはカードだった。
「何のカードだ?」
「天界のクレジットカードです。一月に1875ユーロ引き落とせるらしいっスよ」
つまり日本円にして約30万円(※)引き落とせるという事か?
アーシアにカードを渡すとデュリオは、記憶媒体を再生させた。
すると光輝く12枚の翼を持った青年の姿が浮かび上がってきた。
「…
『映像での挨拶で失礼します。アーシア・アルジェント。私の名はラファエルと申します』
ラファエル…四大熾天使の一人。
とんでもない大物が出てきたな。
「…はぅ…」
あまりの大物故に気が遠くなりそうだったアーシアを、慌てて覚醒させた。
『私たちは貴女に詫びなければなりません。貴女ほど敬虔な信徒を異端として追放させた事は私たちにとって苦渋の選択でした。その理由をお話しするのが筋なのですが、これは天界最大の機密事項に当たり、
最高機密……【
今、この事を話してしまえばアーシアだけでなく、デュリオも異端として追放せざる得なくなるからな。
天界としてはデュリオを手放すわけにはいかんから、話せないわな。
『今回貴女に渡したカードは、今後貴女の生活を支える為の我らの援助です。ほとぼりが冷めた頃に渡すつもりで、それまでの間、貴女に
アーシアの護衛の天使は第三位の上級天使である座天使だったのか。
ならば、それを殺した奴は相当の手練れだな。
それにしても、月々に約30万円か…。
これだけあれば、アーシアを学校に通わせる事も出来るな。
教皇の後ろ盾のある朱乃や白音と違い、アーシアには学校に通わせてやる事は出来ないと思っていたが、問題はなくなったな。
『アーシア・アルジェント。貴女を教会に戻す事は出来ませんが、我々熾天使は決して貴女を見捨てる事はありません。いつまでもその敬虔な心を持ち続ける限り……これからの貴女の人生に幸ある事を祈ります』
こうして、ラファエルのメッセージは終わった。
やはりアーシアの追放の理由は【聖書の神】の死が関係しているのは間違いない様だ。詳細はわからんがな。
「よかったなアーシア。君は決して見捨てられていない様だ」
「はい。ありがとうございますラファエル様…そして主よ」
アーシアは涙を流しながらラファエルと神に祈りを捧げていた。
「…しかし、アーシアちゃんを追放しなければならない理由って…」
「デュリオ。それは私たちが知る必要のない事なのだろう。
デュリオまで追放されれば、教会でデュリオを待っている子供たちがさらに不幸になってしまうからな。
「それでデュリオ。今回はどんな料理を再現したいんだ?」
「はい。今回はペルー料理の……」
その後、私はいつものようにデュリオの料理再現の手助けをしたのだった。
★☆★
こういう理由でアーシアは駒王学園に通う事が出来る様になった。
しかし、疑問は残る。
アーシアの護衛である座天使を殺した者の正体がわからない。
アザゼルの様子を見ても犯人は【
ならば悪魔か?
しかし、座天使を殺せる者となると最上級悪魔級の実力でなければ無理だ。
アジュカやサーゼクスは感知していないとの事だ。
彼らが私を欺いていないのであれば、未だ現魔王たちに批判的な旧・魔王派の連中か、それとも三大勢力以外の者の仕業か…。
どうやらまだまだアーシアの件で、何かが起きるのかも知れんな。
原作でも、三大勢力の和平後は、天界はアーシアに対しかなりの配慮をしています。
この作品では、アーシアは悪魔に転生しないので、この段階で天界にアーシアへ配慮させました。
アーシアに手を差し伸べた天使をラファエルにした理由は、天使の中で最も人間に味方する天使がラファエルだからです。
聖闘士の転生者ではない小宇宙が使える人間はデュリオにしました。
これは最初から決めていました。
悪魔側の小宇宙使用者はまだまだ登場しません。
最も誰であるかは、皆さん大体予想がついているようですが…。
次回から原作第2巻の話になります。
(※)ハイスクールD×D 1巻の発売された時の相場は、1ユーロ約160円前後だったので、この額です。
現在、2019年の相場ではありませんのであしからず。