異世界に転生した双子座 -Twin Dragon Saga-   作:神鳥ガルーダ

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禁断の恋愛

 僕―――兵藤一誠は、精神世界において歴代赤龍帝、白龍皇の残留思念との争いを何とか治める事に成功した。

 現実世界では、僕は急な発熱を出して父や母、イリナにトウジ小父さんなどに心配をかけてしまった。

 もう熱は完全に下がっているのだが、大事をとってもう数日ほど入院させられていた。

 日曜日なので母だけでなく、父も一緒にいる。

 イリナも心配してくれていたのか、見舞いに来てくれている。

 彼女と適当に駄弁っていると、病室の扉からノックの音が聞こえた。

 

「はい。どなたですか?」

 

 母が対応すると扉が開きそこには……果物の入った籠を抱えた執事さんを伴った、私よりも年上の少年が姿を現した。

 

「き……教こ………信家…さん!?」

 

「容体はどうだ一誠?」

 

 まさか教皇が見舞いにくるとは……さすがに想定外だぞ!?

 

「あら一誠、お友達かしら?」

 

「…一誠君の御両親ですね。初めまして、私は天国信家と申します」

 

 教皇の名を聞き、父が咳き込んだ。

 

「あなたどうしたの?」

 

「天国信家って、あの『天国金属』の御曹司の…?」

 

「ええ。ご存知でしたか」

 

「し…知っているも何も…」

 

 天国金属は父の勤める会社と取引先であり、そのため創業者一族の事はそれなりに知っており、教皇はまだ小学生という若さながら将来有望な次期社長として期待され、更にとある彫刻コンクールや刃物作品コンクールに正体を隠して参加し、最年少で金賞を受賞した事で、彫刻家や鍛冶職人の間でも有名らしい。

 まあ、外見は小学生でも中身は二百数十年生きた老練な方だからな。

 僕から見れば、不思議でも何でもないが、世間から見れば早熟な天才と思われても不思議ではないか。

 

『…サガよ。他人事の様に思っているが、お前もいずれ世間からそう見られるのは確実だぞ』

 

『人の心を読まないで頂けますか教皇』

 

「若様、そろそろ」

 

「ああ済まない爺。申し訳ありませんが時間がないので、すぐにお(いとま)しなければなりません。これを皆さんで召し上がって下さい」

 

 教皇がそう言うと執事のお爺さんが持ってている果物籠を母に手渡すと、すぐさま病室から出て行った。

 

「一誠…お前、天国金属の御曹司とお知り合いだったのか?」

 

「うん。だいぶ前に知り合ったんだ」

 

 まあ父の疑問は当然だね。

 天国金属の創業者一族は駒王町に住んでいないのに、何故一人で駒王町から出る事がない(と思われている)僕と知り合うのか?

 仮に教皇がこの駒王町に来る用事があったとしても、一般家庭のどこにでもいる(と思われている)子供とどんな接点があったのか?

 

「まあまああなた。子供にそんなモノ関係ないでしょうに…それよりもイリナちゃんもいる事だし、せっかくだから、さっそく頂きましょう」

 

 母はときどき父よりも度胸があるようで、息子が上流階級の令息と知り合いと知っても気にもしていない。

 まあ、知り合いになったからと言って本人が偉くなるわけでもないからな。

 ちなみに教皇の見舞いの品は、日本最高級の静岡クラウンメロン他、一般家庭ではなかなか手に入らないモノばかりであり、イリナも普段食べるのよりも糖度の高いメロンに目を丸くして食べていた。

 

 ★☆★

 

 歴代たちの残留思念との出来事からしばらくして、僕は神器(セイクリッド・ギア)の可能性を追求していた。

 【禁手(バランスブレイカー)】には、通常とは違う『亜種』として発現することがあると言う。

 僕は既に【赤龍帝の籠手】の【禁手】である【赤龍帝(ブーステッド・ギア)(・スケイルメイル)】と【白龍皇の光翼】の【禁手】である【白龍皇(ディバイン・ディバイディング)(・スケイルメイル)】を発現させているけど、【覇龍(ジャガーノート・ドライブ)】に頼らない闘いをするには、更なる進化が必要だと感じていた。

 僕は既に聖闘士としての闘法はほぼ取り戻している。

 流石に年齢的に、前世の全盛期にはまだまだ及ばないが、上級悪魔程度ならば十分対処出来るレベルには達しているとドライグとアルビオンが保障してくれている。

 しかし、聖闘士が真の力を発揮するには聖衣(クロス)が必須である。

 聖衣無しでは全力を出す事が出来ない。

 まあ、脱いだ方が凄い(ドラゴン紫龍)という例外も極稀にいるが……。

 赤龍帝の鎧と白龍皇の鎧は白銀聖衣(シルバークロス)黄金聖衣(ゴールドクロス)の中間レベルの強度を誇るので、十分聖衣の代用に足るので助かっている。

 しかし、あくまで代用に過ぎないので、聖衣の特性に限りなく近づけた【禁手】を発現させるのが、今後の課題となる。

 

『神器は持ち主の想いに応える』

 

『お前の想いに神器が応えれば、それに見合った【禁手】に至るだろう』

 

 ドライグたちにも肯定され、僕は新たな可能性を目指し邁進する事にした。

 それにしても、この様な神器を作ったという【聖書の神】という存在に畏敬の念を禁じえないな。

 こと何かを創造するという事に関してはずば抜けているのだろう。

 唯物神として偏狭なところさえなければ……他の神話勢力を敵に回す事もないだろうに…。

 前世でも(サガ)の死後に聖域(サンクチュアリ)と北欧アスガルドとの間に争いがあったとの事だが、この世界ほど様々な神々が起こした神話が乱立し、対立しているわけではなかった。

 

「まったく…厄介な事だな…」

 

『だが、この世界のギリシャ神話系列(オリュンポス)北欧神話系列(アースガルズ)の神々は結構おおらかだから、ハーデスやロキの様な一部を除けば三大勢力ともそこまで対立してないぞ』

 

 ハーデスとロキ…か。

 前世でどちらとも敵対関係だったから、この二柱に対しては僕も偏見を抱かざる得ないからなぁ。

 

『まあ、相棒の前世の世界のハーデスは人間を滅ぼそうとしていたのだから無理もないが、この世界のハーデスは人間には寛容な神だぞ。奴が気に入らないのは三大勢力の堕天使と悪魔達だからな』

 

『それはそうと一誠、気付いているか?』

 

 アルビオンが話を打ち切り、問いただしてきた。

 無論、気付いている。

 最近、この駒王町に悪魔の数が多くなって来ている事を…。

 向こうは僕の事に気付いていないが、僕は気付いていた。

 

「今日だけでも数人くらい悪魔とすれ違ったね。しかも下級じゃない中級以上の悪魔たちの様だ」

 

 以前、僕は悪魔と戦闘を行った事がある。

 まだオーフィスやサイエスと出会う前、駒王町を離れ修行していた時に下級の悪魔の襲撃を受けた。

 ドライグとアルビオンの見立てでは、『はぐれ悪魔』との事だ。

 はぐれ悪魔とは転生悪魔が主を殺してお尋ね者になった存在で、人間たちにとっても普通の悪魔以上に危険な存在である。

 あのはぐれ悪魔は、余りにも多くの人間を殺し続けたせいか、完全に血に狂ってしまい、既に理性を失い凶暴化していた。

 主を殺したという事は、上級悪魔を殺せるほどの力を有しているとも言えるが、それ程の力は感じられなかった。

 どうやら、実力で主を殺したのではなく、寝首を搔いて殺害したのだろう。

 光速拳一発で倒してしまった。

 あの時のはぐれ悪魔よりは強い悪魔達がこの駒王町に集まっている様だ。

 

「この町を管理しているベリアル家の悪魔が呼んだのだろうか?」

 

 そういえば最近、イリナの父であるトウジ小父さんの様子もおかしい。

 何か深く思いつめている様な感じがしていたが…。

 

『先の大戦で悪魔たちは自分たちの指導者である四大魔王を喪い弱体化している。他の種族を悪魔に転生させる【悪魔の駒(イーヴィル・ピース)】によってそれなりに勢力を戻してはいるが、それでもまだまだ天界や教会、【神の子を見張る者(グレゴリ)】と戦争再開できるほどではない筈だ』

 

『今現在の三大勢力は冷戦状態。今ここでベリアルと教会が争うとも思えんが…』

 

 疑問は尽きないが、ここで考え込んでも仕方がない。

 一応、警戒だけはしておこう。

 僕は、懐から筒を取り出し天に翳した。

 スイッチを押すと筒の中からドラゴンの形をしたメカが飛び出した。

 

『今のはサイエスの発明品の一つだな』

 

「うん。あのメカには僕の波長に合わせてあるから、あれを上空に飛ばしておけば、この駒王町で異変が起こっても探知し易くなるし、あのメカ自体にサイエスの捻くれた隠蔽術式(ステルス)が施されているから、科学、魔術両方の索敵からも見つかり難い」

 

 余り悪魔と教会の争いに巻き込まれたくないが、トウジ小父さんの事が気に掛かるからね。

 小父さんに何かあれば、イリナを悲しませてしまうから…。

 

『あの幼馴染には甘いな』

 

「男の子ッポイ外見だけど、イリナは女の子だからね」

 

 男が女を守るべきだと僕は思っている。

 色々と例外はいるが、基本的に男の方が女よりも腕力や体力は上だ。

 その分、口喧嘩などは女の方が強いけど……。

 まあ、男女問題は人それぞれの考えがあるから、そんなに簡単に結論が出る問題でもないから置いておいて…。

 もうすぐ暗くなるから、そろそめ帰らないと母さんが心配するから家に帰ろう。

 

 

 

 

 

 あれから数日たったが、未だ悪魔達も静観しているのか、派手な動きはない。

 しかし、トウジ小父さんはますます思い詰めている。

 イリナや小母さん、ウチの両親には気付かれない様にしているが…。

 少し探りを入れるべきか……しかし、下手に藪を突いて蛇を出す愚を冒すのもどうかと思う。

 やはり此方も静観するしかないか…。

 

 

 

 

 

 今日はイリナと遊ぶ約束をしていたが生憎、天気は下り坂…。

 ポツポツと雨が降り始めている。

 外で遊ぶのは中止して、家でカードでもする事になった。

 予定時間30分前、部屋でくつろいでいた僕の前に漆黒のオーラを放つ【龍門(ドラゴンゲート)】が開かれた。

 

「…オーフィス?」

 

 出てきたのは確かにオーフィスだったが……妙だ。

 【無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)】と呼ばれるオーフィスはその名の通り無限。

 しかし今、目の前にいるオーフィスはあの圧倒的な力が感じられず、明らかに有限だった。

 強さも僕よりも劣っている…いや、封じているのか。

 

「イッセー、ドライグ、アルビオン、久しい」

 

 やはりオーフィスか…。

 

『どうしたのだオーフィス?』

 

『今のお前は私達から見ても以前よりも弱体化しているぞ?』

 

「今の我は、本体から分かれた分身体。故に無限ではない」

 

 オーフィスの説明によれば、彼女の本体は未だにあの古代龍(エンシェントドラゴン)の世界―――以後この世界の事を『龍界』と呼称する―――に留まっており、サイエスが術式を用いてこのオーフィスの分身体を作ったらしい。

 本体と分身体は精神がリンクしており、こちらのオーフィスが体験した事はそのまま本体も体感できるらしい。

 オーフィス本体は無限だが、分身体は有限となり、そして無限ではなく有限の状態なので、更に力を封印出来るようになったとの事だ。

 封印され、更に彼女自身が力を抑えているので、力を感じなかったのか。

 この程度ならば、教会や悪魔たちにも気付かれないだろう。

 

「封印を解いて力を解放すれば、分身体の我、全盛期の二天龍よりふた周り強い程度…」

 

 いや、それだけでも十分、桁違いなんだが…。

 

 

 

 

 

 イリナが遊びに来て、オーフィスを新しい友達として紹介した。

 名前はオーフィスの名前の一部をとり「フィス」とした。

 

「よろしくねフィスちゃん」

 

「よろしく……我の二番目の友達」

 

 流石イリナ。

 フィスの子供らしからぬ一人称単数代名詞にも、まったく気にせずすっかりと仲良くなってしまった。

 天真爛漫なイリナは、誰とでも仲良くなれる。

 牧師の娘という事もあるが、ご近所の方々に受けがいい。

 何故か遊ぶのは僕だけなんだけど……。

 とりあえず今日は生憎の雨模様なので、遊ぶのは家の中でカードゲームで遊ぶ事にした。

 トランプでババ抜きや7並べ、大富豪などを楽しんだ。

 フィスは初めて行うゲームに興味津々のようだった。

 夕食をウチで食べたイリナが帰宅していき、フィスはウチに泊まっていく事なった。

 両親にはフィスのことを、天涯孤独で身の回りの世話をする人はいるけど、その人は完全な仕事して行っているのであり、親身になって世話をしているわけじゃないので、ずっと独りぼっちだったと、少し脚色して説明した。

 すっかり同情した両親は、フィスにいつでも泊まりに来るといいと言って、滞在を許してくれた。

 多少、嘘を混ぜたので罪悪感はあるが、これでフィスがウチに自由に来る事が出来る様になった。

 そして夜が更けて、僕とフィスが就寝し少し経った後……。

 

「!?」

 

 駒王町のところどころで戦闘が行われているの感知した。

 

「イッセー!?」

 

 フィスも気付いた様だ。

 僕は意識を飛ばして、駒王町での戦闘を視てみると……どういう事だ?

 

「何故、悪魔同士で争っているんだ?」

 

 この町に管理者の眷属悪魔たちが最近、この町に来ていた悪魔達に襲われている。

 いや、それだけじゃない。

 

「教会の悪魔祓い(エクソシスト)達も動いている?」

 

 しかも、外来の悪魔たちを無視して、眷族悪魔たちと闘っている。

 外来たちと連携……いや、そこまではいってないが消極的な同盟…っといった感じだ。

 

「イッセー、どうする?」

 

「ここから一番近いところまで行って確認してこよう」

 

 

 

 

 

 フィスを伴い、家から一番近い戦闘現場に到着した。

 勝敗は既に付いており、管理者の眷属が倒れ伏し、外来の悪魔もたった一人を残し、死に絶えていた。

 確かあの悪魔は、管理者眷属の『女王(クィーン)』。

 成る程、それなりの強さがあり、襲撃者を殆ど返り討ったが、自身も致命傷をう受け、最後の一人にとどめを刺されかけているという事か…。

 ならば…。

 

「死ね!」

 

 外来悪魔が『女王』にとどめを刺す直前、僕は2人の間に割って入り、外来悪魔に拳を放った。

 僕の一撃を受けた悪魔は何事もなかったかの用にその場から去っていった。

 

「おい、何があった?」

 

「だ…だれかは…知らないが…頼む、クレーリア様…と八重垣様を助けて…くれ」

 

 『女王』の話では、この町の管理者であるクレーリア・ベリアルと教会所属の戦士である八重垣正臣は、いつの間にか愛し合う様になったらしく、密会を重ね、その想いを深めていった。

 しかし、その件がやがてそれぞれの上役たちに発覚してしまった。

 上級悪魔と教会の戦士の恋愛など、現在の情勢から見て、禁忌以外の何物でもない。

 教会の戦士を誘惑し堕落させるなら兎も角、本気で愛し合うなど認められないだろう。

 そして、教会側も神の敵対者である悪魔と恋愛など、堕落以外の何物でもない。

 それ以後、双方から関係を終わらせる様、説得が始まった。

 しかし、クレーリアも八重垣氏もまったく聴く耳持たず、仲はどんどん深まっていった。

 ついに業を煮やした両方は、クレーリアと八重垣氏を抹殺を決行したのだ。

 語り終えた『女王』は力尽き、息を引き取った。

 

「成る程…トウジ小父さんが思い詰めていたのは、それが原因か…」

 

 小父さんも必死に説得したのだろう。

 僕もイリナと教会に遊びに行った時にその八重垣に会ったが、挙動から見ても、優れた戦士であると解った。

 教会所属の戦士として一時の過ちで道を踏み外させたくなかったのだろう。

 

『この事が教会本部に知られたら、その八重垣なる者は異端として良くて追放、悪くて粛清だろうからな。そして、今、その粛清が行われているという事か』

 

『表沙汰になれば、一般の信徒達にかなりの動揺を与えるだろうな、悪魔に誑かされたのではなく、真剣に恋愛をするなど……表沙汰には出来まい』

 

 正直、クレーリアは兎も角、八重垣とやらには言いたい事が山ほどあるが……。

 

「助けるのかイッセー?」

 

「ああ。死の間際まで主の身を案じた忠義に免じてな」

 

 恐らくこの『女王』からすれば相手が悪魔である自分の願いを聞き届けてくれるか……そもそも何者かもわからない状況で、僅かな可能性に藁にも縋る思いで願ったのだろう。

 そんな忠義に免じて、小父さん達に気付かれないようクレーリア・ベリアルを救ってやろう。

 八重垣とやらはついでだが…。

 

 ★☆★

 

 牧師の服を着た男性と、レディーススーツに身を包んだ女性が追い詰められていた。

 

「八重垣君、これが最後だ。クレーリア・ベリアルとの関係を終わらせなさい。そうすれば本部にも取り成し、軽い処罰だけで済む様に手配する」

 

「嫌です、紫藤さん!僕はクレーリアじゃないと駄目なんです。それに僕が助かってもクレーリアはそうはいかない」

 

「…正臣。貴方だけでも…」

 

「駄目だクレーリア。君だけを死なせはしない。ずっと一緒だよ」

 

 教会側は八重垣を救おうとしていたが、悪魔側はそうではなかった。

 悪魔達は確実にクレーリア・ベリアルを殺す前提で動いている。

 

「悪魔達よ。そちらもクレーリア・ベリアルに最後のチャンスを与えてやってくれ。そうすれば八重垣君も考え直すかも知れん」

 

「……人間よ。我らの受けた命令はクレーリアを確実に殺せというモノだ。其方の八重垣なる人間の処置はお前達に委ねるが、クレーリアの命は確実に仕留める」

 

 今回は互いの望みが一致しているからこそ、協力をしているが本来、教会と悪魔は敵対関係。

 既にクレーリア・ベリアルの処刑の命が下された以上、教会の者に譲歩してやる理由はない。

 悪魔たちはそう言っていた。

 

「正臣。私はもう助からないわ。だから、貴方だけでも生き延びて…」

 

「嫌だクレーリア!君のいない人生など考えられない。お願いです紫藤さん、轟木さん、スミスさん。クレーリアはもう悪魔たちの下に戻れない。彼女も一緒に助けてください」

 

「……それは出来ない…。悪魔は倒すべき敵……彼らが言った通り、今回の仮初の協力が終われば、再び敵対する関係だ。クレーリア・ベリアルも悪魔である以上、君との仲を認めるわけにはいかないんだ…」

 

 紫藤トウジも解っている。

 人間に善人と悪人が居るように、すべての悪魔が邪悪ではない事は…。

 しかし、邪悪では無くとも悪魔は聖書の神にとって敵対者なのだ。

 個人的には思想と立場を越えて愛し合う事を素晴らしいと思う。

 だが、聖書の神を信仰する信徒達の手前、教会の戦士が悪魔を恋人にする例外など認める訳にはいかないのだ。

 

「もはや問答無用。死ねクレーリア!!」

 

 悪魔達が一斉にクレーリアに襲い掛かる。

 その直前、彼らの目の前に一陣の風……もしくは閃光の様なモノが走った。

 彼らはそれを気にせず、クレーリア達に魔力弾を撃ち放った。

 八重垣は、活路を見出す為にクレーリアの手を引きながら、上司達に向かって行った。

 明らかにトウジたちを斬るつもりだ。

 彼らを斬り、その空間を通って脱出するつもりだ

 トウジとしても殺される訳にはいかない。

 彼にも愛する妻と娘が居るのだから…。

 

「許せ、八重垣君!!」

 

 八重垣の剣がトウジによって払いのけられ、轟木とスミスの剣が八重垣を胸部を貫いた。

 

「がっ!?」

 

「正臣―――――ッ…!キャァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

 愛する男が刺し殺される姿を見て彼の名前を絶叫しながら呼ぶクレーリアに、悪魔達の撃った魔力弾が降り注ぐ。

 八重垣とクレーリアは絶命し、その体が燃え始めた。

 悪魔たちの撃った魔力弾に炎の魔力が込められていた故に、2人の遺体は骨すら残らず灰となって、消えてしまった。

 

「…八重垣……君…」

 

 トウジと他の教会の戦士たちはその場で四つん這いになり、涙を流した。

 教会の戦士の若手の中でも名うての実力者であり、人格的にも好感の持てる青年だった。

 禁忌を犯したとはいえ、その彼をこの手で討った事は、彼らの心に深い哀しみを影を刻み付けた。

 

「人間たちよ。これで協力関係は終わりだ。次は互いに敵同士として合間見える事となろう……さらばだ」

 

 悪魔たちはそう言って笑うと魔方陣を開き、転移していった。

 任務を達成し、満足そうな顔を浮かべて…。

 

「…紫藤……私たちも戻ろう」

 

「……ああ」

 

 教会の戦士たちは、悪魔たちとは正反対に肩を落としながら、帰路に着いた。

 彼らは気付かなかった。

 八重垣とクレーリアが燃え尽きた筈の場所にあるのは、灰ではなく、高温によって溶けた石であった事を……。

 

 ★☆★

 

 僕―――兵藤一誠は、先ほどまで悪魔達と教会の戦士たちが居た場所を見下ろしていた。

 僕の後ろに人間の男性と悪魔の女性が呆然とした顔で僕を見つめていた。

 

「…君は確か紫藤さんの家のお隣さんの息子?」

 

 そう、この2人は先ほど殺されたはずの八重垣正臣とクレーリア・ベリアルだった。

 あの時、悪魔達がクレーリアを襲おうとした時、光速の動きで彼らの前に立ち、八重垣氏とクレーリア以外の者に【幻朧拳】を放った。

 幻朧拳は、相手の脳を支配する伝説の魔拳【幻朧魔皇拳】の派生技であり、対象者に強力な幻覚を見せる効力がある。

 【鳳凰星座(フェニックス)】一輝が使うもう一つの伝説の魔拳【鳳凰幻魔拳】の様に相手の神経を破壊する効力こそないが、幻覚の強度だけは勝るとも劣らないだろう。

 僕はこの魔拳をあの場にいる者たちに放ち、八重垣氏とクレーリアを殺したと錯覚させたのだ。

 死体が残らない様、燃やすように誘導し、彼らが疑問に思わない様に……。

 これで、彼らの命は助かるだろう…と、思ったが甘かった様だ。

 

『相棒!誰かがこの場に転移してくるぞ!!』

 

 ドライグが指摘した様に、僕の目の前に魔方陣が展開された。

 

「あ…あれはベルゼブブの紋章…と、いうことは!?」

 

 魔方陣から出てきたのは、妖しげ雰囲気を持った悪魔の青年だった。

 

「…間に合わなかったと思ったが……どうやら助かったようだねクレーリア・ベリアル…」

 

「魔王…アジュカ・ベルゼブブ様!?」

 

 な…何だと!?

 思いもかけない大物の登場に僕は戦慄を禁じえなかった。

 

 

 

 

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