異世界に転生した双子座 -Twin Dragon Saga-   作:神鳥ガルーダ

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誕生!龍闘士

 魔王とは、その名の通り、悪魔達の支配者である。

 

 ルシファー。

 レヴィアタン。

 ベルゼブブ。

 アスモデウス。

 

 彼らは四大魔王と呼ばれ、悪魔達の上に君臨していた。

 しかし、先の天使、堕天使、悪魔との三つ巴の大戦の折に、四人全てが死亡してしまった。

 本来ならば、その血族がその地位を継ぐのが当然である。

 しかし、彼らは四大魔王がまとめて滅び、弱体化しているという現実を見ず、停戦に反対し、戦争継続を主張したのだ。

 彼らに任せておいては、悪魔という種族が滅びてしまう。

 魔王の血族であるカテレア・レヴィアタン、シャルバ・ベルゼブブ、クルゼレイ・アスモデウス、ルシファーの息子であり、聖書に『リリン』と記されたリゼヴィム・リヴァン・ルシファーは能力は兎も角、魔王という職責を果たせる器とは思えなかった。

 それを危惧した大王バアル家を筆頭に反魔王派が結成され、魔王派との悪魔勢力を二分する内乱が勃発した。

 戦況は、反魔王派が優勢であった。

 反魔王派には、魔王に匹敵する悪魔が四人もいたからである。

 

 サーゼクス・グレモリー。

 セラフォルー・シトリー。

 アジュカ・アスタロト。

 ファルビウム・グラシャラボラス。

 

 特にその中でも、サーゼクスとアジュカは『超越者』と呼ばれ、悪魔というカテゴリーに入れていいのか解らないと言われる程の実力を有し、魔王の血族ですら問題にならない強さで魔王派を追い詰めていった。

 更に魔王派側の中心で、サーゼクスたちと同じ『超越者』と呼ばれるリゼヴィムは、元から次期魔王という地位に興味がなかったのか、大戦の途中で姿をくらましてしまった、

 魔王派の中で、ルシファーに仕える『番外の悪魔(エクストラ・デーモン)』ルキフグス家のグレイフィアは、リゼヴィム以外の魔王の血族よりも実力が上であり、魔王派のエースとして反魔王派と戦っていたが、戦場の中で敵であるサーゼクスと惹かれあい、更にリゼヴィムや他の魔王の血族たちの余りの愚かさに失望し、ルキフグスの責務を放棄し、反魔王派に寝返ってしまった。

 その結果、反魔王派が魔王派を下し、魔王派たちは冥界の辺境に追いやられた。

 そして、悪魔の中でも最強の実力と能力を持った4人の悪魔を新たな魔王に据えた。

 サーゼクスがルシファーを、セラフォルーがレヴィアタンを、アジュカがベルゼブブを、ファルビウムがアスモデウスを継ぎ、新たなる四大魔王となった

 特にアジュカの作った他の種族を悪魔に転生させる『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』によって、悪魔の勢力は除々に回復していった。

 

 ★☆★

 

 僕―――兵藤一誠は、死に逝くクレーリア・ベリアルの『女王(クィーン)』の願いを聞き、『(キング)』であるクレーリアとその恋人である教会の戦士八重垣正臣を彼女らを抹殺しようとする悪魔達と教会のエージェントたちから救った。

 しかし、そんな僕の前にあろう事が現・四大魔王の一人、アジュカ・ベルゼブブが転移してきたのだ。

 彼から感じられる力は凄まじいと言えよう。

 今の僕の勝てる相手ではない。

 前世の僕でも良くて互角……下手をすれば敗北を喫してしまうだろう。

 しかし、だからと言って諦めるわけにはいかない。

 僕はとっさに神器を展開させ、アジュカ・ベルゼブブと対峙した。

 

「…【龍の手(トゥワイス・クリティカル)】?いや、違うそれはまさか【赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)】か!?」

 

 一般神器である【龍の手】の形状は、【赤龍帝の籠手】と酷似している。

 その為、一見しただけで僕の神器を【赤龍帝の籠手】だと看破できないのだが、流石は魔王……この籠手に内包される力を感じ取り、コレが【神滅具(ロンギヌス)】である事に気付いたか。

 

「成る程、君は今代の【赤龍帝】という訳か」

 

 僕が赤龍帝である事を知り、後ろにいるクレーリアと八重垣氏が息を呑む。

 最も、僕は【赤龍帝】であると同時に【白龍皇】でもあるわけだが、流石にこれは秘匿しておいた方がいいだろう。

 それはさておき、さてどうしようか…。

 勝ち目は無いがこの場を逃げることは出来る。

 しかし、既に顔を見られ、赤龍帝である事を知られた以上、悪魔の勢力圏内である駒王町に住むことは不可能だろう。

 

「まあ、待ってくれ。とりあえず俺は君と争うつもりはない。むしろクレーリア・ベリアルの命を救ってくれた事に感謝しているくらいだ」

 

 何ッ!?

 クレーリアの抹殺は悪魔たちの望みではなかったのか?

 

「今回のクレーリアの件は、一部の冥界の上役達の独断だ。俺達四大魔王が承認した事ではない。それどころか、俺以外の魔王は今回の件自体知らない」

 ・

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 ベルゼブブの話は悪魔社会における闇であった。

 

「…つまり悪魔側の本当の動機はその『(キング)の駒』による不正を隠す為に独断でクレーリアを粛清しようとしたという事か」

 

 悪魔達の一大興行競技であるレーティング・ゲーム。

 その裏では不正が台頭している。

 まあ。その事自体は意外でも何でもない。

 レーティングゲームとやらの利権は相当なモノだと予想できる。

 ならば、裏でその利権を求め不正が行われても不思議ではない。

 『王』の駒とは、使用者の力を強化するだけの駒だが、その強化率が半端ではない。

 それこそ、才能に恵まれない弱者を最上級悪魔以上まで高める程に…。

 『王』の駒の事は都市伝説レベルで噂として流れ、ゴシップ記者たちが面白可笑しく書き連ねる程度のモノ……ではなかった。

 実は現在のトップランカーの殆どがこの『王』の駒を使用しているらしい。

 使っていないのは、眷属悪魔から成り上がった者と王者(チャンピオン)である皇帝(エンペラー)ディハウザー・ベリアルのみだが、それ故にレーティングゲームで長年王者として君臨するディハウザーに対して心無いゴシップ記事が書かれていた。

 彼の潔白を証明する為、クレーリアはレーティングゲームの闇に関しての調査をしていた。

 そして彼女の調査は何れ、その真実に辿り着いてしまう危険性があった。

 その事を疎んだレーティングゲームの運営者たちはクレーリアが起こしたスキャンダルを隠れ蓑に、彼女を粛清する事を決定した。

 

「俺としても、こんな事で将来有望な若者を死に追いやるのは本意では無いが、老人達は俺に妨害される事を恐れ、四大魔王が集う重要会議の最中に事を決行してしまったんだ」

 

 アジュカも、情報を得る為に自分の隠れ家に近づいてきたクレーリアに警告は発していたのだが、敬愛する従兄を貶めるゴシップ話を払拭する為に、深みに嵌ってしまった。

 恐らくこの件が無ければ、悪魔達はまだクレーリアの説得を続けていた可能性がある。

 つまり、クレーリアの行動が原因で、今回の悲劇が起こったともいえよう。

 僕は後ろにいるクレーリアと八重垣氏に視線を向けた。

 自分の行動の為に愛する男と眷属たちを危機に晒した事を悔いているようだった。

 

「何故、これを部外者である僕に話す?」

 

「確かにこんな身内の恥を部外者に―――しかも赤龍帝に話すのは魔王としてやってはいけない事だろうな。しかし、赤龍帝を敵に回す事だけでも厄介なのに、更にオーフィスまで敵に回す気はないよ」

 

 ほう、僕の神器が【龍の手】ではなく【赤龍帝の籠手】である事に気付いたのと同様、僕のそばに居る少女が最強の【無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)】である事も見抜いたか。

 

「今は力を封印しているようだけど、その封印は本人の意思で簡単に解除できる類のモノの様だ。如何に俺が魔王でもオーフィスが相手では、多少抵抗が出来る程度だ」

 

「我、イッセーの友達。友達に手を出すなら容赦しない!」

 

 僕自身はオーフィスを戦わせる気など更々無いが……向こうとしては警戒しなければならないか。

 

 ★☆★

 

 俺―――アジュカ・ベルゼブブは、今、今代の赤龍帝の少年と対面していた。

 はっきり言って目の前の少年の聡明さには舌を巻いている。

 この若さでこれほどとは、悪魔ですら類を見ない。

 同じ年頃の親友(サーゼクス)の溺愛する(リアス)も年相応の我儘姫だからな。

 それこそ生まれつき神格を持ったモノくらいだろう。

 しかし、目の前の少年からは神格は感じられない。

 神器所持者(セイクリッド・ギア・ホルダー)である事以外は間違いなく人間だ。

 まあ、かなり【赤龍帝の籠手】を使いこなしているのか、ドラゴンの気配も強いが…。

 そして今、俺が作り、老人たちに奪われた王の駒によって犠牲となろうとしていたクレーリア・ベリアルを救ってくれた彼と、交渉している。

 魔王としての立場では、二天龍は危険な存在だ。

 更に今の段階でこのレベルならば、10年も経てば最低でも最上級悪魔級、下手をすれば魔王級レベルの強さに達するだろう。

 後顧の憂いを経つ為に、ここで彼を抹殺した方が良いのかもしれないが、救いたいと思っていたクレーリアを救ってくれた彼を殺す気にはなれない。

 しかも彼だけならばともかく、そばにいる【無限の龍神(ウロポロス・ドラゴン)】に対しては如何に【超越者】と呼ばれる俺でも絶対に勝てない相手だ。

 流石にこんな事で自分の命を捨てられる様な立場ではない。

 それに上手くいけば、これからのクレーリアの命の保障にもなる。

 

「君がこの駒王町にいる事は、冥界政府には秘匿させてもらうが、ただ2人ばかし報告する事を許してもらいたい」

 

「2人?」

 

「ああ。俺と同じ魔王であり親友の四大魔王筆頭ルシファーを受け継いだサーゼクス・ルシファー。恐らくだが、バアル家は今回のクレーリア抹殺の真相をサーゼクスにだけは話すだろう…王の駒の事以外に関してだがな。そこで俺はサーゼクスに頼んで駒王町の管理をバアル家との共用ではなく、グレモリー家のみに変更するよう働きかけてもらうつもりだ」

 

 クレーリアの件は、バアル家にとっても表沙汰に出来ないスキャンダルだ。

 彼女がこの地を管理する事を認めたのはバアル家との事らしいし…。

 それはこの地を共用管理しているグレモリー家にも明かせない事だろう。

 

「彼らバアル家は大王という魔王の次の地位にある。そして彼らは大王を魔王よりも尊い存在であると自負している」

 

 今の魔王(おれ)たちは、先代の血族ではなく、悪魔の中で最強の実力を持つ4人が選出されたモノ…つまり、象徴の様なモノだ。

 実際の政治の中心は大王派が握っていると言っても良い。

 無論、魔王(おれ)たちに権限がないわけではなく、対立しているとはいえ、大王派は魔王たちを蔑ろにしているわけでないので、上手く均衡が保てている。

 バアル家としても、クレーリアの起こした不祥事を清算できるなら、駒王町をグレモリー家にすべて任せる事に異存はない筈だ。

 

「もう一人はディハウザー・ベリアル」

 

 バアル家は気にも留めていないが、ディハウザーはクレーリアを妹の様に思っている。

 そんな彼女が死にその理由が明かされなければ、当然ディハウザーは不信に思う。

 下手をすれば、レーティング・ゲームの現王者が冥界に叛旗を翻すかも知れない。

 多くの不正トップランカーを生粋の実力で押さえトップに君臨しているチャンピオン。

 その彼を敵に回すなど、冥界にとって損失以外の何物でもない。

 それに今回の事で、ベリアル家をバアルの派閥からこちら側に引き込める可能性が高くなった。

 レーティングゲームの王者として、彼の人気はとても高い。

 その彼が大王派から此方の派閥に加われば、やり易くなる。

 

「今すぐというわけではないが、ほとぼりが冷めた頃に彼にクレーリアが生きている事を極秘裏に伝えようと思っている…」

 

 今すぐ彼に伝えればその行動によってバアル家にもクレーリアの生存を知られてしまう可能性もあるからな。

 

「そして君の事を秘匿する代わりに頼まれてほしい」

 

「頼み?」

 

「ああ。クレーリアを匿ってほしいんだ」

 

「彼女を匿う?」

 

「僅かの間ならぱ、俺もクレーリアを匿える。しかし、長期間ともなればいずれ気付かれる。バアルも俺に直接手を出しては来ないだろうが、絡め手で来られれば何時までも庇い切れない。超越者などと呼ばれていても、俺はまだ一千年も生きていない悪魔だ。政治的には古い悪魔(ろうじん)らの方が上手だからな」

 

 魔王と大王が本格的に争えば冥界にとって非常に危険だ。

 先の旧魔王派との内戦による疲弊から復興し始めているのに、魔王派と大王派による内戦が再び起これば、今度こそ悪魔は滅ぶ。

 俺としても、冥界そのものの危機ともなれば、クレーリアを切り捨てざる得ない。

 だから、彼女を悪魔勢力と無関係な者の下に託そうと考えている。

 どうやら赤龍帝の術か何かによって、バアル家は彼女を粛清したと思っている。

 このタイミングで、彼女が現在、存在自体確認されていない彼の下に行けば、少なくとも暫くは誤魔化せるだろう。

 

「まあ、助けた手前、ここでクレーリアを見捨てる気は無い。むしろ貴方がクレーリアを助けようとするのなら、此方としても都合がいい。しかし、何処に匿うかが問題だな」

 

「イッセー…『龍界』では駄目なのか?」

 

「…『龍界』にいくには『龍門(ドラゴンゲート)』を通らなければならない。龍門を開くには力あるドラゴンで無いと無理だし、通るのもドラゴンかドラゴンの力を有していなければならない。『龍門』を通るにはドラゴンそのものか、ドラゴンの魂を封印した神器(セイクリッド・ギア)の持ち主でしか通れない。【龍の手】程度では不可能だ」

 

『相棒。サイエスならば何とか出来るのではないか?』

 

「ああ。だから今、通信を開いた」

 

 赤龍帝が通信用の魔方陣による通信で事情を伝えると、目の前に龍門が開き、何者が姿を見せた。

 人の姿をしているが、気配はドラゴンだ。

 

「話は聴いた、丁度良いところであの魔王アジュカ・ベルゼブブとコンタクトが取れたのは、僥倖じゃったわ。ベルゼブブよ2週間くらいお主の方でその2人を匿えるか、そうすれば何とか準備は整うんじゃが…」

 

「2週間くらいならば問題は無い」

 

「そうか。あとお主の要請を聞く等価交換として、欲しい物がある。その2人を匿う為に必要なモノだ」

 

「ああ。無論、無償でやってもらおうとは思わない。それで何が欲しい?」

 

 サイエスというドラゴンが欲したのは、俺が開発した『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』だった。

 何でも、前から研究したくて仕方が無かったらしい。

 そして、その研究成果が彼らを救うモノになるとの事だ…。

 

「…正直、悪魔以外に駒を渡すのは不味いんだが……やむを得ないな」

 

 俺は懐から駒の入ったケースを取り出し、それをサイエスに手渡した。

 

「では、2週間後にな…」

 

 ★☆★

 

 もうすぐ約束の二週間が過ぎようする中、僕―――兵藤一誠とイリナたち紫藤家との別れがあった。

 教会から人事の異動を伝えられ、トウジ小父さんはイギリスの教会に転属となったのだ。

 おそらくこれは、今回の八重垣氏の不祥事が原因だろう。

 小父さんだけでなく、この駒王町の教会にいるすべての者が移動となり、ここの教会は廃教会となるらしい。

 泣きじゃくるイリナを宥め、僕と父さん、母さんは、紫藤家の人達を見送った。

 

 

 

 

 

 そして、約束の日。

 万が一の為に張った結界の中で、僕達はサイエスを待っていた。

 龍門が開き、サイエスが姿を見せた。

 

「完成したぞイッセーよ」

 

 サイエスは持っていた小箱を僕に渡してきた。

 開けてみると、その中にはドラゴンが刻印された硬貨……いやこれはメダル…だな。

 

「これは『ドラゴンメダル』。『悪魔の駒』を研究し、作ったモノじゃ」

 

 サイエスの説明では、悪魔の駒が他種族を悪魔に転生させるのに対し、ドラゴンメダルは、他種族にドラゴンの能力と「小宇宙」を持ったモノに転生させる…との事だ。

 悪魔の駒同様ドラゴンの能力だけでなく、元の種族として持っていた能力もそのまま使えるが、チェスの駒を模しており、宿した者にそれぞれの駒の特性を与える悪魔の駒とは違い、宿した者の属性と同じドラゴンの能力が付与する。

 

「このメダルには前にお前から貰った小宇宙の力を組み込んでいる。小宇宙の力を持つドラゴンはお前しか居らんから、実質上このメダルを使って眷属を作れるのはお前のみという事になる」

 

 この世界には小宇宙という概念がない。

 つまり、神々ですら第六感までしか無く、小宇宙の真髄である第七感【セブンセンシズ】以上の感覚を誰も持たない。

 あの世界から転生した僕と教皇以外は……もしくは僕たちと同じ境遇の者がもしもいるのならば……。

 ドラゴンメダルはドラゴンの力と第七感を与えるというモノ……。

 修行で小宇宙を引き出す聖闘士(セイント)よりも、海闘士(マリーナ)冥闘士(スペクター)の有り様に近いな。

 海闘士は、海皇(ポセイドン)の意思により導かれた天性の素質を持つ者が鱗衣(スケイル)に選ばれ、小宇宙を発現させる。

 冥闘士は、百八の魔星によって選ばれた者の魂を呼び起こし、冥衣(サープリス)を装着する事で小宇宙が発現し、冥衣に合わせた体質に変化させる。

 ドラゴンメダルは海闘士と冥闘士の特徴を合わせ持つと言えよう。

 僕は聖闘士がこれまでの聖戦で常に勝利を収めてきたのは、海闘士や冥闘士と違い、厳しい鍛錬を経て認められた者が聖衣を得ているからこそだと思っている。

 だから、正直このドラゴンメダルに対しては思うところもあるが……概念がない以上、どれだけ修行しても小宇宙は発現しないのでやむを得ないのだろうな…。

 

「しかし、クレーリアとやら…お主はそれで良いか?今まで上級悪魔として眷属を持っていた身が、自分が眷属となり、上級悪魔である事を捨てる事になるが…」

 

「…抵抗が無いと言えば嘘になるわ。ですが……私は表向きは死んだ身。もう悪魔社会に戻る事は叶わないわ。これ以上ベルゼブブ様にご迷惑をお掛けするわけにはいきませんし…。それに赤龍帝には私とそして正臣の命を救われた恩義があります…ならば、その恩に報いる為にも貴方に従いましょう」

 

「アジュカ・ベルゼブブ殿。貴方はどうです?彼女が僕の眷属になるという事は、将来有望の悪魔をドラゴンに取られる事になりますが…」

 

「クレーリアのいう様に、今は彼女を冥界に戻すわけにはいかない。戻せば今度こそ間違いなく大王の一派に処分されるだろう。魔王とはいえ、大王の意向を無視する事は出来ない…。それにレーティングゲームの不正を今、明らかにすれば間違いなく悪魔社会は混乱するだろう。そうなれば悪魔と冥界を二分する堕天使や、冥府の死神(グリム・リッパー)に隙を作ってしまう。何れは正さねばならないが、今はその時ではない」

 

 悪魔の王である魔王がここまで誠意ある対応をするとは……どうやら僕は悪魔という存在を見誤っていた。

 少なくともこの世界の悪魔は、邪悪な存在ではない。

 ただ、悪魔という種族である…というだけのようだ。

 人間に善人と悪人が居るように、悪魔もまた良い悪魔と悪い悪魔がいる…という事なのだろう。

 目の前にいる2人の悪魔からは、人間に対する負の感情は感じられない。

 少なくとも前世(かつて)の僕の悪の心よりも遥かにマシだ。

 

 

 

 

 当人であるクレーリアと八重垣氏、そしてアジュカ・ペルゼブブが了承したので、僕はサイエスから受け取ったメダルに小宇宙を同調させ、クレーリアと八重垣氏の体内に入っていった。

 すると、2人の体からドラゴンの気配と微量の小宇宙が発生した。

 

「…これでお主たちはイッセーの眷属となり、ドラゴンの能力を有する様になった。故にイッセーを介して、龍門を通ることが出来る様になった」

 

 ドラゴンの力を持ったとはいえ、その姿は前の種族そのままで、ドラゴンの姿になる事は出来ない。

 

「儂は、ドラゴンメダルによって転生した者たちを【龍闘士(ドラグナー)】と命名した」

 

 龍闘士(ドラグナー)

 成る程、海皇に選ばれた闘士たちが海闘士、冥王を選ばれた闘士が冥闘士であり、天龍である僕の小宇宙によって転生し、小宇宙を身に付けた戦士なので、龍闘士…か。

 

「とはいえ、修行も無しに小宇宙を扱えるというのは、イッセーからすれば納得いかんだろうからな。聖闘士とやらと比べると短いだろうが、修行は行わないと実用レベルまで小宇宙が高まらないからな」

 

 まあ、当然だな。

 楽に得た力では、ギリギリのところでしてやられる可能性が高い。

 こうして、僕は図らずともオーフィスを守る為の戦力を得る手段を手に入れた。

 正直、まだ抵抗があるが、僕だけではどうしようもない。

 

 

 

 

 

 今回の事で魔王であるベルゼブブ、その伝手でルシファー、最上級悪魔で魔王級の実力者ベリアルと繋がりを持つ事となった。

 【ギリシャ神話系列オリュンポス】よりも、【聖書】関連の悪魔と真っ先に繋がる事になり、更に後々まで永い付き合いになるとは……やはりこれからも穏やかな生活は送れないのだろうな…。

 

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