異世界に転生した双子座 -Twin Dragon Saga-   作:神鳥ガルーダ

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幕間
イリナの想い


 私の名前は紫藤イリナ。

 キリスト教プロテスタント宗派に所属する教会の戦士(エクソシスト)にして、7本に分かれた聖剣(エクスカリバー)の内の1本、【擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)】を任されている。

 教会の戦士の(おも)な役割は、(しゅ)の敵対者である悪魔や堕天使、吸血鬼(ヴァンパイア)を裁く為に討伐する事。

 そして、私は相棒のゼノヴィアと共に次の任務を受けるべく、ヴァチカンに滞在していた。

 本来、ヴァチカンはカトリック宗派の総本山であり、カトリックのゼノヴィアは兎も角、プロテスタントである私が赴く場所ではないんだけど、教会の戦士だけは宗派を越えた共通の敵に対抗する為、共闘関係にある。

 何よりも主や天使様たちにとって、宗派が違うにしても信徒である事に変わりはないんだと思う。

 相棒であるゼノヴィアは、『斬り姫』の異名を持つ教会の戦士で、【破壊の聖剣(エクスカリバー・デトラクション)】とかつて騎士ローランが所持していた【デュランダル】と、2本の聖剣を任されている。

 洗礼を受け、聖剣を扱えるようになった私と違い、彼女は天然の聖剣使いである。

 

「あら、何だか騒がしいわね?」

 

「ああ。今日は信徒の結婚式が行われているらしいぞ」

 

「…結婚…か…」

 

 結婚…。

 それを聞いて私が思い出すのは幼馴染で初恋の相手である兵藤一誠(イッセー)君の事だった。

 

 ★☆★

 

 私が幼い頃に住んでいた日本の駒王町は、実は悪魔の領土であったという事を私は教会の戦士育成機関に入る前にパパから知らされた。

 とはいえ、駒王町の住人たちが悪魔崇拝者(サタニスト)というわけではなく、大部分の人々は自分達の町が悪魔に管理されているとは思ってもいない。

 パパたちはそんな知らずに悪魔の領地にいる信徒たちの為に、駒王町の教会に務めていたのだという。

 でも、教会上層部の命令で、パパたちは駒王町を離れ、イギリスの教会に異動することになった。

 そして、私は教会の戦士としての素質があるという事で、戦士育成機関で教育を受ける事になった。

 でも、もしパパが駒王町の教会から異動しなければ、パパは私を戦士にする気はなかったらしい。

 私もそう思う。

 おそらく駒王町に残っていれば、私は信徒ではあるものの、幼馴染のイッセー君とずっと一緒に過せていたんだろうな。

 私の初恋の相手でもあるイッセー君は、同い年の男の子なんだけど、優しいお兄ちゃんという雰囲気もあった。

 私はイッセー君の他にも友達はたくさんいたけど、いつも一緒に遊んでいたのは、イッセー君だった。

 あの時の私は、かなりのヤンチャで、木登りやチャンバラ、野球やサッカーといった、女の子なのに男の子としての遊びばっかりしていた。

 まあ、野球やサッカーにも女子リーグがあるので、必ずしも男の子限定のスポーツというわけじゃないけど、小学生未満の女子が遊ぶスポーツじゃないのは確かだろう。

 今にして思えば、イッセー君はいつも私を守ってくれていた。

 木登りをしている時、バランスを崩して落ちそうになっても、必ず支えてくれたし、チャンバラをしている時も、私の顔に棒が当たらないように細心の注意を払ってくれていた。

 頭も凄くよく、パパの書斎においてあった旧約聖書や新約聖書(しかも英文の)をあの歳で読破して、よく私に聖書の内容を解りやすく語ってくれていた。

 ちなみにパパともよく将棋やチェスをやっていたんだけど、私の知る限りイッセー君の全勝だった。

 パパは本気で悔しがっていたので、態と負けていたわけではないらしい。

 

 

 

 

 

 他にもイッセー君の凄さがわかる出来事がある。

 あれは私とイッセー君の家の近所に住むお爺ちゃんが亡くなった時だった。

 よく私たちにお菓子などをくれたり、いろいろな昔話を語ってくれたりする優しいお爺ちゃんだったのを覚えている。

 敬虔な信徒でもあり、よくパパが担当していた教会によくお祈りに来ていた。

 そんなお爺ちゃんも、とうとう天に召される日が来た。

 敬虔な信徒であるが故に、生きる為にどうしても犯してしまう僅かな罪を悔いて、死ぬのを恐れていた。

 パパがどれだけ諭しても、お爺ちゃんの不安は晴れない。

 そこにイッセー君がお爺ちゃんの傍らに近づいていった。

 

「一誠君。わしは死ぬのが怖い…。自分の罪深さが恐ろしい…」

 

「…神は死んだ人を裁きはしませんよ。さあ心静かにしてください。これからお爺さんは神との生活が待っているのですから…」

 

 なんだか一瞬、イッセー君とお爺ちゃんが優しい光に包まれた様に見えた。

 するとあれだけ取り乱し、死を恐れていたお爺ちゃんはまるで眠るように穏やかな表情になって天へと召されていった。

 あまりの事にパパたちも絶句していた。

 今にして思えばあの時のイッセー君はまるで聖人のようだった。

 私たちプロテスタントには聖人という概念はないけど、あの時は確かにイッセー君はそんな風に見えたんだ。

 

 

 

 

 

 

 私がイッセー君への想いを自覚したのは、駒王町を離れる数日前の事だった。

 私の家に遊びにきていたイッセー君が珍しく部屋で転寝をしていた時だった。

 イッセー君の寝顔を見たのは二度目だった。

 一度目はイッセー君が凄い熱を出した時……あの時はイッセー君の事がただ心配だったけど、あの時は妙にドキドキしたのを覚えている。

 イッセー君が遊びにくる前、ママが視ていたドラマにキスシーンがあって、子供ながらにドキドキしていた。

 そして、興味本位にイッセー君に近づいて唇を見ていると、「キスってどんな感じなんだろう…」と、思ってイツセー君に顔を近づけると、イッセー君がいきなり目を覚ました。

 

「あ……イッセー君…こ…これは…」

 

 私は急に恥ずかしくなって、顔が熱くなった。

 子供心にも、寝ている間に勝手にキスをするなんて、悪い事だと思って…イッセー君に嫌われると思って、怖くなった。

 

「…イリナ、後で後悔するなよ」

 

 そう言うとイッセー君は、私の後頭部に手を回して、私の顔を引き寄せた。

 そして……私の唇が……イッセー君の……く……唇に触れて……。

 

「…イッセー君…!?」

 

 凄かった。

 今でもあの時の事は覚えている。

 体の力が抜けていって、でも全然いやじゃなくて……凄く嬉しかった。

 この時に私は……イッセー君の事が大好きなんだって自覚したんだ。

 でも、ようやく自覚したのに、その後すぐにイッセー君と離れ離れになる事になった。

 パパがイギリスの教会に異動になり、駒王町を離れる事になったからだ。

 

「嫌だ!イッセー君にもう会えなくなるなんて嫌!!」

 

「待つんだイリナちゃん!」

 

 そう叫んだ私は、パパの制止を聞かず家を飛び出した。

 がむしゃらに走った私はいつの間にか見知らぬ場所に迷い込んでいた。

 駒王町の中でも人がまったく近づかない場所だった。

 

「匂う…匂うぞ…。人間の…美味そうな子供の匂いだ…」

 

 そこで私の前に現れたのは、異形の魔物…人食いの魔物が悪魔に転生し、主から離反したはぐれ悪魔だった。

 戦士になった今の私なら簡単に討伐出来る相手だけど、何の訓練も受けていない当時の私にとって余りにも恐ろしい相手だった。

 恐怖で腰を抜かした私を喰らわんとはぐれ悪魔が襲いかかってきた。

 もう駄目だと思った時、私を庇う様に1人の男の子が立ちはだかった。

 イッセー君だった。

 私が飛び出した事をパパから聞いたイッセー君が探しに来てくれたのだ。

 

「キキキ…美味そうな獲物が増えた」

 

 はぐれ悪魔は歓喜の声を上げ、そのままイッセー君を引き裂こうと鋭い鈎爪を繰り出した…。

 

「ぐぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 イッセー君は繰り出されたその鈎爪を無造作に掴むとそのまま握り砕いてしまった。

 

「お…俺様の爪が…おのれ小僧!!」

 

 よだれを垂らしながら、その牙で噛み砕こうとしたけど、イッセー君の拳が光ったと思ったら、はぐれ悪魔は一瞬のうちにスダボロになってしまった。

 

「ヒ…ヒィィィィィィィィ!!」

 

 はぐれ悪魔はようやく相手が自分の勝てる相手ではない事を知り、身を翻して逃亡しようとしたけど、その胸に風穴が開いてその場で倒れ、消滅していった。

 当時の私にはよく解らなかったけど、おそらくイッセー君がとどめを刺したんだろう。

 何が起こったのかさっぱり解らなかった私をイッセー君が強く抱きしめてきた。

 

「大丈夫かイリナ!」

 

 その顔は今まで見た事がないほど焦燥していた。

 私は助かった事にホッとして、イッセー君の胸で泣き続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 はぐれ悪魔を倒した事をイッセー君に口止めされた私は、この事を誰にも、パパにすら話していない。

 今にして思えば、イッセー君は神器所持者(セイクリッドギア・ホルダー)だったんだと思う。

 でも、私はこの事を教会に報告していなかった。

 だって……私はイッセー君の事が好きだから……誰にも話さないっていうイッセー君との約束をずっと守っている。

 イッセー君が大学を卒業したら、私も戦士を引退して、イッセー君のお嫁さんになるのが、私の夢だ。

 イッセー君も「まあ確約は出来ないけど、お前のファーストキスを貰ったし、その時までお前がその事を覚えていたら、別に構わない。ただし、いい女になっていろよ。素養はあるんだからな」って言ってくれた。

 でも、少し不安になる。

 聞いた所によると、悪魔たちは神器所有者を悪魔に転生させて、自分たちの戦力にしているらしい。

 もし、イッセー君が悪魔になっていたら……私は彼を裁く事が出来るだろうか…。

 駒王町は悪魔の領地。

 子供の時ですら、はぐれ悪魔を瞬殺したイッセー君に目をつけないとは思えない。

 その時は……イッセー君を裁いた後、私も死のうと思う。

 自害は主の教えに反する行為だから、私はきっと煉獄にもいけず

地獄に堕ちるんだろうけど……。

 それとも、イッセー君に返り討ちに遭うかも知れない。

 イッセー君に殺されるんなら、それもいいかも知れない…。

 

 

 ★☆★

 

 私とゼノヴィアに与えられた次の任務は、堕天使幹部コカビエルに奪われた【天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)】、【夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)】、【透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)】の三本の聖剣を奪還する為、コカビエルが潜伏したと思われる駒王町への派遣だった。

 現在は、魔王ルシファーの妹が駒王町を管理しているって聞かされた。

 悪魔の領地とは聞いていたけど、まさか魔王の妹なんて大物の領地とは思わなかったけど…。

 正直、聖書に記された堕天使コカビエルが相手では、間違いなく私達は殉教する事になるだろう。

 イッセー君のお嫁さんになるっていう私の夢は叶わない…。

 でも、任務先は駒王町だから、最後に一目逢う事は出来る。

 私はイッセー君との再会を唯一の楽しみに、最後の任務に就く。

 

 

 

 

 

 この任務が、私の人生の転機となる事を、私はまだ知らなかった。

 

 

 

 




赤龍聖帝物語と少し内容が変え、原作聖闘士星矢のエピソードを流用しました。
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