成り代わりリンクのGrandOrder   作:文月葉月

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VS ゴーレム

 

 誰一人として味方がいない状況で散々に怒られ、楽しみにしていた食事まで抜きにされて、流石に反省しながらも一仕事終えてきた後の空きっ腹に耐え切れず、かと言って皆の怒りと心配を思えば備蓄の食料に手を出す気にはなれず。

 焚火の燃え残りの炭を齧って空腹を紛らわせる、危機的状況に慣れ過ぎて最終手段のハードルが地に減り込んでしまっているリンクの姿に、一同がかえって盛大な精神的ダメージを被ってしまった夜が明けて。

 自陣営の戦闘準備が整い、兵士達が十分に英気を養ったとほぼ同時に、連合側が想定外の物資不足に陥り、一度でも崩れれば態勢を立て直すのが難しくなった現状を共に好機と判断したネロとブーディカによって、急遽戦線が開かれた。

 

 本拠地を荒らされたことによる混乱が収まりきっていない上に、万全の準備を整えることが出来なかった連合軍の士気は見るからに低く。

 このまま勢いで押し切れるのではないかと、帝国側の多くの者が少なからずそう思った戦況に、予想外の混乱が沸き起こった。

 闘志に満ちた雄叫びではなく、恐怖による悲鳴を上げながら逃げ回る兵士達を、頑強な岩の肌を纏った巨大な腕が、一度でも食らえば骨を粉砕されそうな唸りを伴いながら追い回す。

 自然発生したものとは到底思えない異形の存在を前に、ひっくり返ったロマニの声が戦場に響いた。

 

 

《馬鹿な、ゴーレムだって!?

 あんなものを造れる魔術師なりサーヴァントなりが、連合にはいるのか!!》

 

「……あれは流石に、兵士達には荷が重いな」

 

 

 悲鳴じみたロマニの叫びにも狼狽えることなく、逃げる兵士達の流れに逆らいながら、矢のように駆け出した者がいた。

 瞬く間に我が身へと迫る少年の存在を認識したゴーレムが、明確な敵と見定めた彼へと向けて固く握った拳を振るう。

 たやすく地を割る程の攻撃をあっさりとかわしたリンクは、その拳と腕を足場に跳び上がり、岩を固めて造ったかのようなゴーレムの体の中でも比較的脆いと考えられる箇所、岩の継ぎ目にあたる部分へと剣を突き立てた。

 『ガキンッ』と硬質な音を立てた一撃は、刃で岩を割るという快挙を成し遂げたものの、ゴーレムの駆動を妨げるまでは至らず。

 不快なものを振り払うかのようなゴーレムの身動ぎから、仲間達が思わずといった様子で上げた悲鳴を意識の隅で聞きながら跳んで逃れたリンクは、空中で身を捻った次の瞬間には、ゴーレムの体に突き刺さった状態で残した剣の代わりとなる新たな武器を手にしていた。

 柄がリンクの身長近くありそうな大槌を、落下の勢いも上乗せさせた威力で振りかぶり、渾身の力と必中の狙いで以って叩きつける。

 突き立てられただけでは継ぎ目の表層を割るのが精一杯だった刀身は、巨大な楔となって打ち込まれたことでゴーレムの体を芯まで貫き、魔術による起動に耐えられなくなった体はそれによって一気に崩壊した。

 

 

「すげえ、一発で決めた!!」

 

「リンクさん、流石です!!」

 

 

 数多の魔物と戦った知識と経験を持ち、それを改めて本として纏めた上に指導も出来る程の応用力を備えたリンクにとって、初見のエネミーの特徴と効率的な戦い方を瞬時に見極め、実践してみせるというのはそう難しいことではない。

 しかしそんな彼でも、余裕を保てなくなるような事態というものは存在していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに、ゴーレムが破壊されただと?

 ……来たか、彼だな。

 最重要命令だ、今報告された地点に全てのゴーレムを向かわせろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《……待って待って、何だこの反応は!!

 皆気をつけて、さっきのゴーレムと同じエネミー反応が一帯から集まり始めてる!!》

 

「ええっ!?」

 

「どういうことですか、ドクター!!」

 

《分からない、倒したゴーレムに何か仕掛けでもされてたのかな!!》

 

 

(……成る程な。

 分かったよカエサル、その考えに乗ろう)

 

 

「立香、マシュ。

 ここは俺に任せて、ネロ陛下と一緒に先に行ってくれ」

 

「なっ……え、リンクさん!?」

 

「今実際に戦ってみた感じからして、俺にとってゴーレムは特に強い敵というわけではないし、対処自体は十分可能だけれど、それでも数で来られたら流石に手間取る。

 だったらここは手分けした方がいい、ゴーレムは俺が引き受けた。

 その間に、お前達は『皇帝』の方を片付けるんだ」

 

 

 リンクの言うことは尤もだった。

 下手な者が口にすれば死亡フラグでしかないセリフも、彼の場合は普通に堅実な提案として受け止められた。

 大局を見据えた上での、戦略的な観点からしても妥当であると判断したブーディカも、歓喜と興奮のあまりに今にも駆け出しそうなスパルタクスを制しながら、リンクの発言に追随した。

 

 

「いいから行きなよ、今こうしている時間が既に惜しい!!

 リンクがゴーレムの相手を一手に担ってくれると言うのなら、露払いはあたしとスパルタクスで引き受けた!!」

 

「はははははっ!!

 反逆の勇士と女王は私に味方した、すなわち今こそ勝利は果たされる!!」

 

「そっちじゃなくてこっち、ああもうスパルタクスったら!!」

 

「……うむ。

 頼んだぞブーディカ、色んな意味でな。

 そしてリンク、そなたも吉報を楽しみにしておれ。

 ゆくぞマシュ、立香、偽なる『皇帝』に占領されたガリアを今こそ取り戻す!!」

 

 

 気合いと決意が込められたネロの言葉に、立香とマシュは、怯み躊躇ってしまった自分がいたことに気が付いた。

 ここから先の戦場に、一般の兵士やエネミーの類いではなくサーヴァントと相対するであろう状況に、リンクは……素人同然のへっぽこ魔術師と、宝具の真の力を扱えない半人前のデミ・サーヴァントを常に助けてきた、伝説の勇者は居てくれない。

 その事実は確かに、二人の心を冷たい恐怖と不安で苛んだのだけれど。

 

 

「……行くぞ、マシュ!!」

 

「はいマスター、オーダー了解しました!!」

 

「立香、マシュ、任せたぞ!!

 人理は、未来はちゃんと繋がってるんだってことを、皇帝に証明してやってくれ!!」

 

 

 恐れを抱いてしまった自分を自覚したその上で、二人は懸命に前へと歩み出る。

 そうして、ネロと共に駆けていった背を見送ったリンクに、心配や不安は無かった。

 並び立つ比較対象が悪いだけで、彼らはちゃんと学んできたし、ちゃんと成長してきたことを、先達として守り導きつつ、友として支えてもきた彼はよく知っている。

 立香達ならば必ずや、名将カエサルを前に怯みはしても退きはせず、彼が望むものを示してくれる筈。

 リンクはその確信と信頼を胸に、土煙を上げ、帝国も連合も問わず人の群れを割りながら現れた、視界を全て埋め尽くすようなゴーレムの群れに一人堂々と対峙した。

 





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