進路上に多数配置されていた地雷が起動し、参加者の多くがギャグマンガのラストシーンの如くキノコ雲に呑まれるという波乱の展開を経ながらも、全ての参加チームが何とか第一エリアを走り抜くことが出来た。
状況と観客席の盛り上がりを見計らい、マイクを手にしたイシュタルから、続く第二エリアへの進行が告げられる。
同時に切り替わったモニターの大画面に映し出されたのは、赤く溶けた灼熱の溶岩が画面越しにも熱さを伝えてくるような活火山の大地。
そこで、第一エリアでのアタランテのように待ち構えていたのは、
この先に進み、レースを続けるための条件として彼女が提示したのは、『自分と火口に向かってのチキンレースを行なって勝つ』こと。
あまりにも危険すぎる条件(一人はなぜか『
降り注ぐ火山弾や突如現れる溶岩流に阻まれながらの、過酷どころか危険極まりないレース模様の中で、多くのチームがそれぞれの理由で先頭争いから脱落していった。
そうして、最終的にブーディカと火口に向けての一騎打ちを行なうことになったのは、因縁深きネロとアルトリア・オルタのチーム。
火口に落ちたとしてもネロに勝ち、無残な敗北者を死の瞬間まであざ笑ってやろうとしたブーディカへと、勝利の女王ならば完全に勝てと、やけっぱちではなく完全な実力で勝利を収め生還した上で余を笑えと、ただ勝つか負けるかだけの楽しい勝負がしたいネロの真っ直ぐな言葉がぶつけられる。
自分がどんなに憎しみを募らせ、それを容赦なくぶつけたとしても、ネロの魂は決して折れない。
それを悟ったブーディカは、皆が知る彼女のような優しい笑みを浮かべながら、ブレーキを入れることなく火口に飛び出し、ネロとアルトリア・オルタの連携によって助けられた。
「……分かっちゃいた筈なんだけどなあ、あたしはとっくに亡者だってさ。
生前のあたしと英霊のあたしは違うんだ、ちゃんと割り切ってるって、一度は格好つけたのに。
土地の影響かなあ、ここに呼ばれたらいつもと霊基の調子が違って……ついついカーッとなっちゃったよ、迷惑かけてごめんね」
「気にするでない、余やローマを憎むのはそなたの正当な権利である。
それに楽しかったからな、余は満足であるぞ!」
「……まったく、本当に傲慢な皇帝様だ」
文字通り憑き物が落ちたような晴れやかな表情で、体の端から少しずつ金の粒子と化し始めているブーディカと、満足そうな笑みを浮かべるネロ、呆れてため息をつきながらも口元は確かに微笑んでいるアルトリア・オルタによって交わされる、激戦を締め括るに相応しい穏やかなやり取り。
それを容赦なくぶち壊すエンジン音が迫ってきたのは、聞こえ始めてからほんの数秒のことで、いくら彼女達が歴戦の猛者とはいえ呆気に取られた状態で反応するのは難しくて。
「ブレーキブレーキブレーキブレーキそれアクセrうわあああああああっ!!!」
「きゃああああああっ!!?」
ギリギリのラインを見計らって止まるどころか、直前で急加速した勢いのままに火口へと飛び出したマシンが、金の髪の搭乗者達を伴いながら瞬く間に視界から消え去るまでを、三人は開いた口と点になった目で見送った。
衝撃のあまりに吹っ飛んでしまった思考が再起動するよりも先に、長いロープを伴いながら火口から飛んできたカギ爪状の金具がネロ達のマシンに引っかかり、頑強な金属音を立てながら固定される。
慌てて覗き込んだ先には、咄嗟にマシンを捨ててロープを伸ばし、溶岩への落下を免れたリンクと、苦笑いの彼に片腕で抱えられながら、犯した失態の恥ずかしさに赤らんだ顔を押さえるゼルダの姿があった。
「……ゼルダ、俺がフォロー出来ないところで一人で運転するの禁止ね」
「…………はい、ごめんなさい」
せっかくいい感じに締め括られようとしていた第二エリアの攻防は、この直後敢えて空気を読まずに飛び出してきた挙句に、マシンの仕様ミスでリンク達に続いて火口へと突っ込み、こちらはそのままリカバリー不可で溶岩まで飛び込み、宇宙船の謎動力によって火山の噴火を誘発してしまった信長&ヒロインXチームの暴挙によって、ド派手ながらもぐっだぐだな結末を迎えることとなる。
噴火の勢いで宙高く吹っ飛び星と化した信長とヒロインX、先程までとは比べ物にならない勢いで襲ってくる噴石と溶岩から必死になって逃げる参加チーム一同の様子を中継越しに見守る羽目になった一同の表情は、総じて乾いた苦笑いであった。
第二エリア終了後の補給地点にて。
「リンク、そのマシン火口に落ちてなかったっけ?」
「ある程度手元から離れたら、自動的に回収されるようになってるんだ。
だから、危ない時に乗り捨てるのは選択肢として普通にあり」
「溶岩に落ちたくらいで壊れるほど、シーカー族の技術は柔なものではありませんしね」
「ハイラルぱねえ」