どうにか危機を乗り越え、道連れが増えた一行は、霊脈を発見したというカルデアからのオペレーションを頼りに、ラ・シャリテから幾分か離れた場所にある森の中を探索した。
そうして発見した霊脈は、光に寄せられる虫の如くに集まった魔物達で既に占拠されていて。
王妃だというのにやる気満々なマリーを宥め、非戦闘員だと言い切って任せる気満々のアマデウスに軽く溜め息を吐きながら、剣を抜いて率先して飛び出したリンクに、立香とロマニは揃って肩を落としていた。
《サーヴァントが増えて、これでようやく、戦闘面を殆ど任せきりになってしまっていたリンク君を休ませてあげられると思ったんだけど……》
「まさか二人とも非戦闘タイプだったとは……アマデウスはともかくマリーはやる気あるみたいだけど、王妃様を前線に出し続ける訳にはいかないって当のリンクが断固拒否してたし」
《どうも彼は、宮仕え、もしくは高貴な人の側付きだった経験がありそうだね。
マリー様を王妃と知って、咄嗟に膝を折ったあの動作は、とても手慣れたものだったよ》
「と言うことはリンクは、家族や友人だけでなく、仕えていた家や主人も失くしてしまったことに……」
《立香君、彼のプライベートに踏み込むのはやめよう。
向こうだって色々と知りたいことはあるだろうに、それでもこちらの都合を気遣って、敢えて聞かないでくれているんだから》
「……そうですね」
「立香、ドクター、掃討完了!
これからどうすればいい!?」
《ありがとうリンク君、あとはマシュと僕達に任せてもらえれば大丈夫!》
そうして無事にサークル設置は完了し、所属のサーヴァントの一時召還を始めとした、カルデアからのサポートを受けられる体制が整った。
これがそんなに重要な工程だったのなら、次からは真っ先にやっておいた方がいいと思うというリンクの冷静なツッコミに、一同は苦笑いで頷いた。
実際に、リンクの助けがなければ切り抜けられなかった、もしくは手こずったり何らかの被害が出ていたことが否めない状況を経てきた彼らには、人材に恵まれることの重要さが既に身に染みている。
今はまだ人理修復の素人集団でしかないカルデアに『今後』を意識させるための発言は、同時に、とある重大な事実に対しても考えさせられるものだった。
(『次』、か……)
あまりにも馴染み、そしてあまりにも頼りになりすぎているせいで、つい忘れがちになってしまっているけれど。
リンクはサーヴァントでもカルデアのスタッフでもなく、このフランスでたまたま出会った現地の協力者なのだ。
作戦が終了した後で共に帰ることは出来ないし、レイシフトでやってきたこの地からスカウトして連れて行くことだって出来やしない。
彼との旅路に『次』は無い、それを考えると気持ちが落ち込むのを立香は自覚していた。
(流石に、そろそろ潮時なのかもしれない)
協力してくれることはありがたいし、意地でも付いていくと言ってくれた彼の気持ちだって、本当に嬉しかった。
彼のおかげで、味方のサーヴァントが増え、カルデアからのサポートを受けられるようになるまでを乗りきることが出来た。
こうして体制が整ってきているからには、幾ら本人が了承してくれているとはいえ彼に頼り切る状況が続いてしまっていること、彼が居なければ動けなくなってしまいそうな現状を、見直してみるべきだという考えが立香の中で強くなってきている。
これから先は、サーヴァントと交戦する機会だって増えていくことだろう。
リンクがヴラド三世やカーミラとやりあえたのは、彼の強さが腕っぷしだけのものではなかったから、人とサーヴァントの間にある戦力差を戦術で以って覆して見せたからだ。
戦術や駆け引きが通じない、圧倒的な力で叩き潰して来るような相手が、今後現れてしまったら。
そんな時になってもまだ、彼が戦闘要員の筆頭として最前線に詰めているような状態が続いていたら。
(どこかで機会を見て、手遅れになる前に、ちゃんと別れるべきだよな……)
立香が密かに、至極一般的な感覚を持つ者として苦悩していることに、気付く者はいなかった。