成り代わりリンクのGrandOrder   作:文月葉月

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勇者の暗躍

 

 ローマ市街地の東門への夜襲部隊を送り出すために、つい先程まで夜中とは思えないような喧騒に満ちていた、今はだいぶ落ち着いていた筈の連合ローマ帝国の野営地の一角が、何故か再び慌ただしくなっていた。

 外側の見張りと警戒に当たっていた数人が集まり、松明の炎とそれに伴う明かりを大きく動かしつつ、酷く焦りながら辺りを警戒している様子に、異常を聞きつけて駆けつけた者達が何事かと問いかける。

 敵からの奇襲か、それとも斥候の類が近づいていたのかという危惧に対して返ってきた答えは、ある意味でそれよりもずっと危険で厄介なものだった。

 

 

「狼だって!?」

 

「間違いない、明かりの中にほんの一瞬だったけれど確かに見たんだ!!」

 

「あれはでかいぞ、襲われでもしたらひとたまりもない!!」

 

「人と火をもっと集めろ、何とか追い払うんだ!!」

 

 

 そんな騒ぎの気配を敏感に感じとって、現場からは随分と離れた位置にありながら、そわそわと落ち着かなくなってしまっている者達がいた。

 自由の身でさえあったならば、『群れ』という最大の利点を持たない一匹狼程度ならば逃げ切れる自信もあるのだが、生憎と人によって飼われているその身は縄で固く繋がれてしまっている。

 大事な馬を狼に襲われては堪らないと思い、周囲の警戒に加わることにした世話役の行動は、彼なりに馬達のことを考えたものなのだろうが。

 人から伝染した不安や緊張を、臆病で神経質な性質に酷く障ったそれを宥めてもらうことができなかった馬達の精神は、何かしらのきっかけさえあればすぐにでも爆発してしまいそうだった。

 

 そうして遠くの騒ぎに気を取られてしまっていた馬達は、見張りの隙を見て暗闇の中を駆けたり、藪に身を隠したりしながら、もうすぐそこまで迫っていた見知らぬ者の存在に気付けなかった。

 ……とは言っても、それは仕方がない、無理もないと言えることだっただろう。

 実戦で磨かれた隠形の技を駆使した上に、『しのび薬』を飲んでささやかな生体音まで消していた彼の気配は、その姿を実際に目の当たりにでもしない限り、真後ろに迫られても気付けないと思われるほどに完璧に隠されてしまっていたのだから。

 

 マシュやロマニ達が知れば、『気配遮断』のスキルの賜物ではないという事実に目を剥くであろうものを惜しみなく駆使しながら、忙しなく動かされる明かりや人の目を掻い潜ってここまで辿り着いたリンクは、自身の存在に気付いていない上に、遠くの騒ぎに気を取られて無防備な姿を晒してしまっている馬へと向けて、手の中に隠すことができるような大きさのナイフを藪の中から音もなく滑らせた。

 その刃は馬の皮膚や腱ではなく、その身を繋いでいた綱に半分ほどの切り込みを入れる。

 夜の闇と、遠巻きに淡く揺らめく炎のみが僅かな光源になっているという状況の中で、馬の巨体を変わらず留めているように見えるそれは、一目で気付くことはあまりにも難しい些細な変化だった。

 

 

(変身の仕様が、太陽どころか光に照らされた時点でもう駄目なのが想定外だったけど……結果的にいい具合に陽動になったし、まあいいか。

 上手い使い方や活かし方は、また改めてゆっくり考えよう)

 

 

 頭の中ではそんなことを考えながら、慎重に、かつ手早く全ての馬の綱を切ったリンクは、最初から最後までその存在と行動を一切悟らせないまま、足早にその場を後にした。

 その足が次に向かうのは、陣地の外ではなくその反対側。

 夜襲部隊が発ち、外に向けての警戒に追加の人員が回ったことで多少手薄になっているとはいえ、それでも多くの人影が忙しなく動いていることが見受けられる中央部へと、大胆に潜り込んでいった。

 

 『伝説』を読み込んでいる者ならば当然知っている事実として、敵の本拠地や巣窟に単独で乗り込むことも多かった『勇者リンク』には、潜入や暗躍の優れた実力と実績がある。

 辛うじて立てる程度の足場しかない断崖絶壁の途中で、雨が止むのを何時間も待ったり、魔物の巣に夜襲をかけて、気付かせることも起こすこともないまま一掃したり。

 そんな経験が幾つもあるリンク自身には、このまま適当なところに身を隠し、行き交う人々のやり取りに耳を傾けて情報収集をするという選択肢もあったのだけれど。

 短い間に度重なった戦闘に酷く消耗している兵士達と、リンクが抜けた穴に加えてそんな彼らのフォローにも努めているだろうマシュのことを考えると、あまり時間をかけてはいられなかった。

 

 

(先のことを見越すのは大切だけど、今はそれ以上に、戦闘を一刻も早く終わらせることを優先しないと)

 

 

 敵を倒す、もしくは殺すことと、戦闘に勝つことや終わらせることは、決してイコールでは結ばれない。

 守るべき町と民を背にした戦闘に余裕のない兵士達が、ただひたすらに目の前の敵を倒そうとしている状況で、リンクと彼の教えを受けたマシュだけは、明確にその意図を持って戦っていた。

 怪我はさせても殺さないこと、戦えなくなった仲間を助けようとする、もしくは連れて逃げようとする行為を邪魔しないこと。

 それらは甘さや優しさ、ましてや戦いを前にして覚悟を決められない弱さなどでは決してなく、相手が本拠地を離れて遠く遠征を果たしてきた、物資や人手の補充が簡単には利かない身であることを考慮した上での立派な戦術だった。

 

 殺してしまえば、その分の人手や戦力は確実に減少するけれど、その割合は確定分で打ち止めになってしまう。

 しかしあくまで怪我人に留めれば、救出のために他者の時間と人手が必要となるし、治療しようとすれば物資だって消費しなければならない。

 死んでいればその分は浮くはずだった食料なども、例えその人が既に戦力にはならなくなっていたとしても、変わらず減り続けることとなる。

 一思いに殺してしまうよりも、多くを生かして帰した方が、却って相手側の足止めと消耗を促すことができるのだ。

 

 ……だというのに、相当与えた筈の消耗を欠片も窺わせない勢いで何度も攻め込んできて、早々に終わらせる筈だった戦闘がこんな時間にまで長引いてしまった。

 リンクはその理由を、自陣営の足手まとい、かつ余計な消耗を促すのみの存在となるようにお膳立てをされてしまった兵士達を、その思惑に気付いて『処理』できてしまえるような冷酷で的確な判断を下せる者が、敵の指揮官クラスにいるからではないかと思っていたのだけれど。

 今の彼の前には、『もしそうだとしたら厄介だな』と考えていた想定を、あっさりと裏切る光景が広がっていた。

 

 

「あーくそっ、まさかあんな子供にやられるなんて……」

 

「そう悔しがるなって、子供だろうとあの戦いっぷりはただ者じゃなかったぞ。

 とりあえず今のところは、無理しないでゆっくり休んでろ」

 

 

 野営地の中でもかなり多くの面積が割かれていると思われる救護所にて、負傷した兵士達は手厚い治療を受けているし、それに当たっている者達の表情や様子からも不満の色は窺えない。

 騎馬隊が加わっている訳でもないのに、あれだけ質のいい馬を多数連れてきていた事実から想定していた『嫌な可能性』がますます強まるのを、リンクはこめかみに薄っすらと伝う汗の感触と共に感じていた。

 

 

「これは、余計厄介なことになったな……」

 

 

 一人の優れた指揮官がいた方がまだマシだった、そんな現実を前に少しだけ舌を打ったリンクは、目的のものを探して更に奥へと入り込んでいく。

 小石を目的の方向の反対側へと軽く投げ、その音と存在に見張りの視線が思わずそちらを向いた隙に、音もなく一気に駆け抜けた。

 その先にリンクは、ようやく最終目標となるものを見つけることができた。

 

 

「………まずいなこれは、予想以上だ」

 

 

 リンクの目の前にあったのは、数度の戦闘によって既に相当消費されていた筈の、それでも今後2~3日は今まで通りの戦闘と陣地の展開を続けられそうな程の、武器防具や食料といった遠征物資の山だった。

 相手側の勢いが衰えないことを不審に思い、今日中に何としてもケリをつけることにした自身の決断を、それを後押ししてくれた皆を褒め称えたい気持ちになってくる。

 目の前の光景とそれらの事実は、リンクの頭の中で情報や思考を促すための要素として巡り、ひとつの結論へと至らせた。

 

 

「『マスター』はともかく、連合の『皇帝』は……少なくともその纏め役である何者かは、『物』よりも『人』こそを重んじる立派な為政者と考えて良さそうだな」

 

 

 ネロと彼女が治めるローマに反目し、連合側についた者達は、決して恐れや欲に血迷った訳ではないのだろう。

 彼らは彼らなりに考えて、連合とそれを束ねる皇帝達にこそ真のローマを見出し、結果としてそちら側についただけなのだ。

 ネロや自分達が想定していたよりも、ずっと多くの民によって連合が支持されていることを、遠征部隊を余裕を持って支えられる程の物資の量と、それを滞りなく輸送できるだけの手厚い支援が施されている様子から想定することができた。

 

 

「いっそのこと連合が、力や恐怖で民に無理やり言うことを聞かせるとかの悪役的な振る舞いをしていたのなら、『苦しめられる民を救うネロ陛下』という形に持っていくこともできたんだろうけど。

 これは俺達が頑張るだけでなく、ネロ陛下にも皇帝としての威厳をちゃんと示してもらわないと駄目だなあ。

 ……難しいけど、まあ何とかやるしかないか」

 

 

 頭では今後のことを考えながらも、リンクの体は今この時のために決して惑うことなく動き、順調に『準備』を続けていた。

 積上げられた物資の山に登り、中央の辺りの荷を少しだけ動かして、両手で作った円ほどの大きさの僅かな隙間を作り出す。

 そこにリンクは、上向きにかざした手のひらに突如現れた青い球体を入れて、続けて先日のカリギュラ戦でも使用したゼリー状の物体を、今回は赤い色をしたものを、数個纏めて放り込んだ。

 少しだけ考えてもう二個ほど追加したリンクは、その隙間を念のために、適当な荷物で塞ぐと同時に踵を返した。

 見張りの目と注意を今一度誤魔化し、さっきの場所に駆け込む前に身を落ち着けた地点にまで戻ったリンクには、このまま誰にも気付かれないまま脱出することは勿論可能だったのだけど。

 夜の闇と周囲の空気にその気配を完全に溶け込ませていたリンクは、その隠形の技を意図して緩め、気を張っている者ならば気付くことができる程度の違和感を敢えて生み出した。

 

 途端に向けられた松明の明かりの中に照らし出されたリンクは、侵入者の存在を辺り一帯に伝えようとする叫び声を背に、一目散に駆け出した。

 何かを踏んだり蹴散らしたりしながら、脱げた外套の下にあった宵闇の中で自ら光っているかのような髪を晒しながら、まるで自分自身の存在を主張しているかのようなさまで逃げるリンクを、辛うじてあそこまで潜り込むことができた斥候が土壇場でしくじり、周りに気を配る余裕など無い状態で泡を食って逃げているものと、彼を追う敵兵達は考えている。

 彼が既に目的を果たし、これはいわば彼の個人的な思惑によって為されているだけのオマケなのだということは、想像すらしていないだろう。

 

 いつの間にか中枢近くまで潜り込んでいた、何を見て何を聞いているかも分からないような者をこのまま帰すわけにはいかないと考えた者以外に、派手な逃走劇が立てる盛大な音や、ほんの僅か視界に映ればそのまま追いかけずにはいられないような金色に引かれた者達も次から次へと加わって、追手の数は瞬く間に増えていく。

 四方八方から伸ばされる手や飛び交う怒号の中を、目の前に立ちはだかった者の頭を踏み越えたり、逆に股の下を抜けたりといったアクロバティックな動きで翻弄しつつ切り抜けていったリンクは、自分が仕掛けを施した位置から既に十分離れ、近くにいたであろう人達を皆上手く引き付けられたことを、もうそろそろ()()()()()()()()であろうことを確認すると、腰に下げられて揺れるシーカーストーンへと手を伸ばした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『起爆』の瞬間は、遠く離れた東門で防衛戦に徹していたマシュからも確認できた。

 先程話し合いを行なった城壁の縁から、眼下で戦うマシュと敵陣に一人乗り込んだリンクの二人ともを案じ、応援していた立香からは、綺麗な球状の青い衝撃が、初めに敵の野営地の一角にて迸り、一拍置いて同じところから幾つもの爆炎が、夜空を照らし出す勢いと威力で沸き上がった光景の一部始終が見えていた。

 遠巻きに目の当たりにしただけの者達でさえ、戦闘中であることを一瞬忘れて敵味方共に立ち尽くしてしまった程の光景は、現地においては比べようもない大混乱を引き起こしていた。

 炎に巻かれた中心部が遠征を支えていた物資の保管所であったことに加えて、あの爆発でパニックに陥った馬達が、十分頑丈だった筈の縄を引き千切って野営地の外にまで逃げ出すような暴走を始めてしまったからだ。

 

 火を消せと、馬を捕まえろと、怪我人の避難をさせろと、あの子供を逃がすなと。

 様々な声と思惑が飛び交う現場に、その元凶の姿は既に無く。

 あれだけ探しても見つからなかった狼が、野営地の明かりから十分離れたところに再び現れて東門へと向けて駆け出したことに、気付くことができた者はいなかった。

 拠点を襲った異常事態に予定半ばで撤収した夜襲部隊は、頼りの物資の殆どが焼失している上に、輸送手段である馬の多くを失い、これ以上遠征を続けられない現実を目の当たりにし、次の朝には野営地を引き払って丸ごと撤収していった。

 それらを成し遂げたのは、服だけでなく綺麗な髪や顔までを土埃で汚して帰ってきた、歳と見た目にそぐわない戦いっぷりで連合の兵士達を圧倒した少年であると。

 東門の防衛戦に加わっていた兵士達の興奮気味の語りによって、華奢な体で大盾を振り回す少女の活躍と共に、今後数日で町中に広まっていくこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大義である、そなた達の活躍によってローマの町と民は守られた!!

 酒場や通りでは、その場に居合わせた兵達が即興の吟遊詩人となって最新の英雄譚を語り、それによって励まされ、奮起した市民達によって、町はより一層の華やかさと活気に満ちておる!!

 ああそれと、そなた達の進言通りに付近を捜索してみたところ、連合軍が回収し損ねたらしい馬を何頭も捕まえることができた。

 丈夫で体格もよく、軍馬としての調教もしっかりと施された馬を手に入れられることは滅多に無いのだ。

 そなた達からの献上品として、ありがたく頂戴しておくぞ。

 やはり余の目は正しかった……もう誰にも文句は言わせぬ、そなた達は紛れもなくローマの救世主である!!

 此度の宴はそなた達のために開かれたもの、存分に至福の時を過ごすが良い!!」

 

 

 そんな声を上げるネロの心からの笑顔は本当に美しく、このために頑張ったと、頑張って良かったと、素直に思えるようなものだったのだけれど。

 残念ながら今のカルデア一同には、その笑顔は殆ど認識できていなかったし、折角のお褒めの言葉も殆ど聞こえていなかった。

 血の気が下がって青くなった顔を横並びに三つ揃えた彼らは、これ程までの危機的状況はかつてあっただろうかと、果たしてこれから起こり得るだろうかと、半ば本気で考えてしまっている。

 ネロが完全な善意と厚意で、気合いを入れて宴の準備を整えた成果が、多種多様な食材と調理法によって用意された大量の食事が、三人の目の前に山となって聳えていた。

 

 

「…………そ、そういえばどこかで、何かのネタで聞いたような覚えがある。

 古代ローマは食べ物が豊かで、食事は生きるためじゃなくて殆ど娯楽扱いだったって」

 

「一説によれば、古代ローマの貴族達は宴の席にて、お腹がいっぱいになったら孔雀の羽で喉の奥を刺激して嘔吐を促し、胃を空にしてからまた食べるということを繰り返したとか……」

 

 

 マシュが具体的な話をしてしまったことで想像力を掻き立てられ、更には端の方にきちんと用意されていた孔雀の羽を見つけた三人は、顔の血圧がますます下がっていくのを感じ取ってしまっていた。

 

 

「む、無理………それが歴とした古代ローマの文化だったとしても、バイキングではきちんと食べられるだけ皿に取りなさいと、取った分は責任を取って食べ切りなさいと教えられて、その通りだと思いながら今まで生きてきた俺に、そんな食べ方をするのは絶対に無理」

 

 

 食べたものではなく血を吐きそうな形相で呟かれた立香の言葉は、思い起こす状況に多少の差異はあれど、リンクとマシュにとっても共感できるものだった。

 

 

「………仕方ない、俺が頑張る」

 

「待てリンク、お前の食いっぷりが凄いのは知ってるけどこれは流石に…っ!!」

 

「分かってる、美味しく食べられる限界というものは俺にだってちゃんとある。

 だけど、お前やマシュにできるような無茶じゃないし……俺達に喜んでもらおうと一生懸命に準備をしてくれたネロ陛下を、また悲しませたくはないし」

 

 

 その言葉、その気持ちもまた、立香とマシュにはよく分かった。

 しかしだからと言って、リンク一人に重責を負わせて、それで万事解決と言うような気にもなれない。

 本当にどうしたものかとかつてない勢いで悩み、頭を抱える三人の耳に、通信越しの声が聞こえてきた。

 

 

《ふう、やれやれ……まさかこんな早くに、例のものを使う機会が来ようとは》

 

「エミヤ?」

 

《リンク、君達がレイシフトに赴く前に渡しておいたものがあるだろう。

 出すといい、必ず君達を助けてくれる》

 

「渡しておいたものって……もしかして、これのこと?」

 

 

 エミヤの要領を得ない言葉に対して首を傾げながら、それでも言われた通りにシーカーストーンから取り出したものを目にした立香が、雷に打たれたかのような衝撃を受けて目を剥いた。

 

 

「でかした、さすがはエミヤ!!」

 

 

 首を傾げていたリンクから、殆ど引っ手繰るような勢いで『それ』を受け取った立香はとても手慣れた様子で扱い始め、その光景はリンクの脳裏にも鋭いものを走らせた。

 

 

「成る程、これはそういうものなのか…っ!」

 

「汁物は残念だけど諦めよう、零れて大惨事になる可能性が高い。

 原則として入れるのはひとつにつき一種類まで、言うまでもないことだけど味が混ざるから。

 入れすぎると蓋を閉めた時に潰れるから気をつけて、かといってあまりスカスカでも中で崩れちゃうから、こうやっていい感じに隙間を詰めて……」

 

「センパイ、何かもの凄く慣れてますね!」

 

「庶民だからね!

 でもこの量だと、今度は痛む前にちゃんと食べ切れるかどうかが問題に……」

 

「大丈夫、シーカーストーンの中に入れている間は鮮度はちゃんと保たれるから」

 

「よし完璧!!」

 

「何かよく分からんが、随分と盛り上がっておるな!!

 うむうむ、楽しんでもらえて余は嬉しい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ふっ。

 マスター達の窮地を見事救ってしまった慧眼が、我ながら怖ろs」

 

「勇者に何をやらせておるかこの阿呆贋作者(フェイカー)が!!」

 

 

 見ていて腹立たしくなるような痛々しさで格好つけていたエミヤの脳天へと、ピコハンとハリセンを渾身の勢いで射出したギルガメッシュの行動と発言に、伝説の勇者が仲間達と共に、エミヤが投影したと思われるタッパーの山にひたすら料理を詰め込み続けるという脱力の光景を目の当たりにさせられた一同は、珍しく賛同したのであった。

 






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