「うっわ、A組からD組までグリーン車だぜ?」
「ウチらだけ普通車、いつもの感じだねぇ」
菅野のボヤキに中村も重ねる。それが聞こえたのか、D組の田中と高田*1が言い返す。
「おやおや、君たちからは貧乏の香りがするねぇ」
「えぇー、学費の用途はぁ、成績優秀者に優先されまぁす」
「スナック菓子食いながらとか、典型的な小皇帝だな」
悠人がその様子を中国が抱える諸問題に絡みつける。
「アイツら、結局のとこ脳みそすっからかんでしょ?」
「違いない」
カルマが扉をくぐりながら悠人に投げかける。
「トランプ持ってきたからみんなでやろうぜ!」
変な雰囲気を断つように杉野が声を上げる。
「賛成!」
茅野も賛成し、特に反対意見も出なかったためトランプをすることになった。
「大富豪か……久しぶりだな。8人だから、1位大富豪、2,3位富豪、4,5位平民、6,7位貧民、8位大貧民ってとこか」
「ルールは?」
通路を挟んで悠人が呟き、恵美が訊く。
3人側に渚、業、杉野、神崎、奥田、茅野の6人が座り、通路を挟んで反対側に悠人と恵美が座っている。シートを回転させてボックス仕様にしているので4人分だが、2人分は荷物置き場になっている。
「マシマシでいいんじゃない?」
カルマの悪魔的な目つきがチラリと見えた。気のせいだ。そうに違いない。
「いいんじゃない?」
悠人が返すと、神崎さんがルールの確認をする。
「えっと……
話をまとめると、以下のようになった
数字 | 特殊ルール名 | 効果 |
---|---|---|
- | スぺ3 | スペードの3に限り、ジョーカーに対してのみ上位に立つ |
5 | 5スキップ | すぐ次の手番のメンバーを飛ばすことができる。何枚出しても飛ばすのは1名のみ |
7 | 7渡し | 7を出した枚数分、任意の相手に自分のカードを押し付けることができる |
8 | 8切り | 場を流して自分からスタートにできる |
10 | 10捨て | 10を出した枚数分、自分のカードを捨てることができる |
J | 場が流れるまで強さが逆転し、スぺ3>ジョーカー>3>4>…………>K>1>2となる | |
ジョーカー | - | 2より強い。複数枚出しのとき、任意のカードの代用にできる |
他 | ||
革命 | 同じ数字のカードを4枚出すことで強さ逆転が発生。場が流れても継続。革命後の強さ順でより強いカードで革命できるメンバーがいる場合は革命返しとなり、逆転は発生しない。後述の枚数縛りを無視して、自由なタイミングで出せる | |
枚数縛り | 複数枚出しのとき、全員出す枚数は揃えなければならない |
なお、8人という人数を考慮してトランプ2組を使用する。(←ここ重要)
「柄縛りは採用しなかったのか」
「2組あるからやってもよかったんだけどね。あと階段とか」
「階段と柄縛りが同時発生すると無理ゲー感が強くなるからなぁ……」
「色縛りならどう?」
悠人と業の会話に、渚が提案をする。
『それだ!』
全会一致で色縛りと階段が加えられた。
色縛り
・前者と同一色のカードを出した場合、もしくは最初に縛る色を宣言した場合、以降のメンバーはその色に合わせなければならない。
・枚数縛りと同時発生の場合は、色の枚数の組み合わせで縛る。
階段
・前者から連続した数字を出した場合、もしくは連続する数字で複数枚出しを行った場合、以降のメンバーはそれに続く数字を出さなければならない。
・この場合のみ、枚数縛りを適用外とする。つまり、最初に何枚階段で出そうが、次のメンバーは1枚のみでも可となる。もちろん、複数枚出しもできる。
・枚数縛りを適用しないため、色縛りは赤or黒単色となる。
「あ、詰んだ」
配られて早々、悠人が声を出す。
「技持ちカードが壊滅的だ……」
「じゃあ蹂躙してあげましょうか」
悠人のつぶやきに、業が絶望を足す。
「それじゃぁ……」
周りは着実に枚数を減らしていき、6以下の弱いカードが出る機会も減っていく。パス回数はカルマ1、悠人4、他0という絶望っぷり。
10枚も残している業の動向が読めない。というか、何かを狙ってる目つきしいる。
と悠人が思った瞬間、手番が回ってきた神崎さんが8切りから5で革命を起こし、まさかの1抜け。この時点で4枚以上持っているのはカルマと渚、悠人、茅野、恵美だったが、悠人は3,4を革命できるほど持っていない。茅野もパス。と、渚が3で革命返し。とはいえ神崎さんの1抜けは変わらない。
「やったっ」
「おー」
「さすが神崎さん!」
茅野と杉野が声を上げる。ここまで進行しているが、まだ悠人は7枚という残り方だった。業の場合、なにかのコンボを狙っている感じがするのでこの場合枚数は問題にならない。
「日頃の行いってか……」
「まぁ、業君が最初に7渡しでだいぶ押し付けてきたしね……色縛り、赤で」
「そう言いながらも俺に押し付けるのな……」
恵美が7渡し2枚を使い、悠人に10と9がやってくる。いずれも黒。
「はぁー、パス」
「悠人君不幸体質過ぎない?Jバックで」
「ハハハ勝った」
渚のJバックに、業が重ねる。
『あっ』
不穏すぎる発言に全員が声を上げる。しかし時すでに遅く、業が温めていたのであろう8切りで場を流し、更に2枚の8切りで残り6枚に減らす。
そして、ドヤ顔で3枚のカードを取り出す業。
《2,2,2》
「2を3枚か……ジョーカー3枚出せるやついるか?」
杉野が問いかけるが、全員首を横に振る。
「そりゃーそうでしょ、だってジョーカーはここにあるんだから」
そう言いながら、流れた場にジョーカー3枚を置く業。これで上がりだ。
『うっ』
全員が呻く。
「なんだよこれ!反則だろ!」
「引きが良すぎだろてめぇ!」
即座に食い掛る杉野と悠人。
「コレ勝てるやついないだろ……」
「いや、いける」
『嘘っ!?』
全員が驚き、悠人の次の手を見つめる。
《スぺ3,スぺ3,ジョーカー》
「うわぁ……」
「なるほどね……スぺ3が最強になるのはジョーカーが出ているときのみ。今までジョーカー0だったから静かだったわけか」
「んでもって、今ジョーカーが全部出たから、これでどうだっ!」
《9,9,10,10》
「階段か……」
「色縛り黒」
そう言いながら残り2枚になったカードを見てニヤニヤする悠人。それに気づいたのか、杉野が声を上げる。
「いや、10ってことは……!」
「10捨てで2枚捨てて上がり!」
そう言いながら手札の4と5を場に投げ出す悠人。ここに来てまさかの3位、富豪になる急展開。
『ファッ!?』
「いやー、恵美が9と10を両方黒でくれたからなんだよねぇ」
「やらかしたかぁー」
完全に勝者の風情を漂わせる悠人。
「あーもう!こうなったら次で上がる!」
逆ギレした恵美は、Jを3枚出す。
「Jバックで、色縛り、黒1、赤2」
「温存しておいてよかった8切り」
杉野が残り3枚をすべて出して上がり、4位平民。
「私もこれで、どうだぁっ!」
そう言いながら2を2枚出してそのまま場を流した*2茅野は最後に3,4を出し、宣言する。
「階段で色縛り、赤!」
「うっ」
どうやら渚は赤の5を持っていなかったらしく、パス。ここで奥田が5,6の階段で上がり、6位貧民。5スキップで恵美を飛ばして渚の手番になる。
「はい、7渡し」
そういいながら最後に持っていたJを渡す渚。これで7位貧民なので、恵美は8位大貧民となる。
「くぁーーーーーーーーーーーーーーー」
変な声を出しながら席に崩れ落ちる恵美。
「まぁフラグ立てちゃったし仕方ないね」
「もう一回やろう!そうしようそれがいいよ!」
悠人の冷静な評価に、まくしたてるように恵美が2回戦を始める。
「そうだ、飲み物買ってくるけど皆何がいい?」
カードを悠人と杉野、そして恵美が執拗かつ徹底的にシャッフルしているのを見かねた神崎さんの提案で、神崎、奥田、茅野が飲み物を買いに行くことになった。
「俺はパス。煮オレ持ってきたから」
「用意周到だな……自分は緑茶でいいかな」
まさかこんな些細なことがきっかけとなるとは誰も予想していなかった
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