魔王倒したけどカズマが行方不明になった件   作:誰かも知れない

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終わりと始まり

体がフワフワして、なんだか心許ない。

 というか、何も見えないし聞こえない。

 

 ――そんな中、遠くから俺を呼ぶ声が聞こえた気がした。

 

 なんとなくそちらに向かってみる。

 そちらに行きたいと願うだけで、体が自然とそちらに向かった。

 夢心地というか、浮遊感というか。

 なんだろう、この不思議感覚は。

 

 呼ばれた気がした方へと向かうと、やがて目の前に、大きな光が――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ死後の世界へ。私は、あなたに新たな道を案内する女神、イリアス。後藤東さん、あなたはダンジョンの2層において亡くなりました。――辛いでしょうが、あなたの人生は終わったのです」

 

「…えっ?」

 

「あなたにはいくつかの選択肢が…どうかされました?」

 

「俺、佐藤和真ですけど」

 

 

 

「…えっ?」

 

『ええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!??』

 

 

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「つまり、君はうちの担当の世界で死んだ訳じゃないと」

 

「そういうことです」

 

「…面倒なことになっちゃったね」

 

そう言って頭を抱えているこの目の前の美人の女は、イリアスという女神らしい。

なんか俺のいた世界とは違う世界の担当なんだとか。

要するにどうやら俺は魔王を倒すための爆裂魔法で死んだ後別の世界の天界に来てしまったみたいだ。

 

「でも、俺はどうして別の世界の所に来てしまったんですかね?」

 

それも目が覚めたら美人が目の前に居るという幸せオプション付きで。

…何か裏とかないよな?

 

「恐らくだけど、魂の転送担当がミスっちゃったんだと思うよ」

 

「あぁ、なるほどね」

 

魂の転送に失敗したのか、なら仕方ないね。

 

「…ってんな馬鹿なことがあるかッッ!!」

 

「ひえっ」

 

「どうしてこうも天界の連中はめちゃくちゃなことしかしないんだよこの無能どもがああああああ!!!!」

 

「ひえええ」

 

「俺の頑張り返せよぉ…魔王倒した俺の頑張りかせよおおおおおおおおおお!!!!!!」

 

「ひええええええええッッ!!」 

 

…思わず怒りに任せて当たり散らしてしまったがこの人が原因ではないみたいだし、ここは一旦落ち着こう。

そう思い直してこの目に涙を浮かべながら赤べこのようにペコペコし続けるイリアスを宥めることにした。ついでに情報も欲しいし。

 

「…はぁ、ところで魂の転送失敗って結構起こるもんなんすか?」

 

イリアスに質問をぶつけると、涙を拭いながら答える。

 

「まさか、これは過去にも事例は殆どない現象だよ。確率的にいえば金のエンゼルが5回連続で当たる確率よりも低いんだよ?」

 

「どんな例え方だよ…」 

 

もっとましな言い回しあったろうに。

 

「まあ、こんな低確率を引き当てるのだからある意味ラッキーといってもいいくらいだね。なんか運気挙がるような壺でも集めたりしてたの?」

 

さっきまで泣いてたくせにニヤニヤしながら疑わしげな視線を送ってくるイリアス。

…こいつ切り替え早えな。

 

「いやいや、そんな迷信じみたことなんかしませんよ」

 

「ほんとにー?」

 

「むしろ俺が売りつけて金をむしり取ってやりますよ…帰ったらやろ」

 

新たな金儲けの糸口が見えたぞ!

まずはバニルに相談しよう。

 

「うわ」

 

明らかに嫌そうな顔をしよるぞこいつ。

…ちょっとムカつくからついでにこの女神のパンツもむしり取ってやろうかな。

 

「にしても俺のステータス、運の値だけは高いはずなんだけどなぁ…」

 

「んー…悪運も高かったのかな」

 

「悪運…あっ」

 

まさかアイツのせいか?

 

「何か心当たりがあるの?」

 

「いやー、内のパーティにはとてつもなく運と知力の低いあほんだら駄女神がおりまして…」

 

「その人に影響されちゃったのかもね…って女神!?」

 

「はい、ちょっとムカついたので異世界に行く特典として無理やり連れてきました」

 

「うわー、無理やり女神を…うわー」

 

…ちょっとムカつくからパンツむしり取ってやろうかな。あと一回「うわー」っていったらむしり取ってやろうかな。

 

「でもその女神って、アクアのことだよね?」

 

「ご存知なんですか?」

 

「まぁ、同僚だからね。流石に知ってるよ」

 

この人やエリスのようなしっかり者の同僚がいるのになんでアイツは…ハァ。

 

「…でも今の情報で分かっちゃうとかアイツどんだけ」

「し、仕方ないじゃない!仕事やらないやってもやらかす怠け者女神で有名だったんだから」

 

「うわー」

 

まじで駄女神なんだな、アイツ。

つか今までどうして女神やれてたんだよ。普通クビだろクビ。

 

「まぁ、女神としての力は強かったからクビにはならなかったみたいだけどね」

 

まあアイツのチートじみたステータスとスキルを見れば、女神たる力があることは否めないけどさ。

つかそうじゃなかったらアイツは職を失ってたわけか。

 

…良かったなぁ、アクア!

欠けてるのが運と知力だけで良かったなぁ…ウウッ。

いかんいかん、目から涙が…。

 

「ちょ、ちょっとなんで突然泣いてるの!?」

 

「いえ、気にしないでください。嬉し涙なんで…ウウッ」

 

「何に対するッ!?」

 

ま、天界での悲惨なアクアの事情はともかく、とにかく俺は魔王討伐特典を得るためにもさっさと帰りたいわけなんだが…

 

「そもそも俺はもとの世界に帰れるんですか?」

 

「あぁうん、普通に帰れるよ」

「マジすか!」

 

帰れるとしても絶対なんかの対価払わないといけないとおもってただけに、これは朗報だ!

 

「ただ別の管轄といってもそっちの世界とこっちの世界は遠いから連絡をとるのに時間がかかるけどね」

 

「時間がかかるって、どれくらい?」

 

「うーん、1ヶ月くらい?」

 

「1ヶ月!?」

 

嘘だろ!?

 

「そっちの管轄とは横の繋がりがあるわけではないからね。一度上に報告してから転送の許可取んないとならないんだよ」

 

「…天界も日本の企業体系と大して変わんねぇのかよ」

 

流石に日本の企業の方がましだけどな!

 

「ま、そういうことだから気長に待ってね!」

 

マジか、すぐには帰れないのか…

 

「…ハァ、分かりましたよ」

 

「あれ、随分素直だね。てっきり『待てるかこの無能どもめッッ!!!』ぐらいは言うかと思ってたよ」

 

昔の俺ならばそれぐらい…いやそれ以上に罵詈雑言をぶつけてたに違いない。

だが…

 

「まあ今までの経験からもうこういう事態には慣れっこですから。どうせこれ以上はどうにもならないって」

 

なんならあのろくでもない世界よりかは悪いことにはならないだろう。

 

「…苦労したんだね、君も」

 

「つーわけで寝床と飯よろしく」

 

さあちょっとした休暇だ!

羽休めするとしよう。

 

「まあ今回はこっちの落ち度だからね、ちゃんと用意しておくよ。こっちの世界のリゾート地に一旦送ってあげるからそこで長期休暇を楽しめばいいよ」

 

「いや布団と飯さえあればいいんで」

 

「いやいやいやお宿は必要でしょうお宿は」

 

「いや布団と飯とシュワシュワさえあればいいんで」

 

「なんか増えてるし…ってまさか君ここに住み着く気!?」

 

「じゃないと近況とか聞けないじゃないか。転送が早まる可能性だってあるかもしれないし」

 

「いやあったとしても伝えてあげるからッ!」

 

「それにいじる相手もいないし」

 

「そっちが本音かッ!」

 

「うるせぇ!さっさとオフトゥンと豪華な飯とシュワシュワ100杯用意しろよ!こちとらついさっきまでカツカツで休まらない生活してたし怠惰な日常を味わいたいんだよ!今回の件は全面的にそっちが悪いんだ、遠慮なんてしてやるかッ!!」

 

「態度悪ッ!」

 

「んでもってここでゴロゴロしながらたまにアンタをおちょくるグータラニート生活をおくってやらあ!!」

 

「うわー。紐宣言だ、うわー」

 

「…『スティール』ッッッ!」

 

「えっ、ひゃっ、なに…?」

 

「げっへっへっへっ!!お宝ゲットじゃあああああ!!!!」

 

「きゃあああああああああああ!!!!!!」

 

「なーっはっはっはっはっは!!!!うおらあああああああああああ!!!!!」

 

「返して!返してよ!私のパンツ返してくださいいいいいいいい!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

======================

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく祝・魔王討伐というこんなめでたいときに、カズマは一体どこに行ってしまったんでしょうか?」

 

「めぐみん…」

 

「さては私達を驚かすために隠れてるんですね?」

 

「めぐみん」

 

「いいでしょうカズマ、私は売られた喧嘩は買う主義ですから」

 

「めぐみん!」

 

「見つけ出したらとっちめてやりましょう」

 

「めぐみんッ!!」

 

「うるさいですよダクネス。さっきから人の名前呼んで、なんなんですかいったい?」

 

「…そろそろ帰ろうめぐみん、日が暮れてしまう」

 

「何言ってるんですかダクネス。まだここにカズマが隠れてるかもしれないんですから見つけ出してやらないと」

 

「案外テレポートで先に帰ってるかもしれないぞ?」

 

「それはあり得ませんよ。ここには爆裂魔法を使った形跡がありますから、カズマではテレポートする魔力も残ってないでしょうし。ならばここに隠れている可能性が高いのは間違いありませんッ!」

 

「しかし…」

 

「しかしもかかしもありません!とにかく今はカズマを探しましょう。手を休めてる暇はありませんよダクネス」

 

「…もうやめてくれ、めぐみん。もう手がボロボロじゃないか」

 

「そんなことはどうでもいいのです。とにかく瓦礫をどかさないと」

 

「どうでも良くなんか無いッ!それにもう体力も残ってないだろう!」

 

「別にこんな石ころ程度、わけありません」

 

「いいからやめろめぐみんッッ!!!めぐみんが今しなければいけないことはそのボロボロの体を治すことだッ!!」

 

「…ああもううるさいですね。そんなに言うんだったらダクネスは先に帰っててくださいよ。私一人でも見つけてやりますから」

 

「…もう本当は分かってるんだろめぐみん」

 

「…何がですか」

 

「分かってるはずだ、賢いお前なら」

 

「だから何がですか」

 

「爆裂魔法を使ってテレポートは出来ない。その上カズマが魔王と戦ってた場所は瓦礫の下だ」

 

「…」

 

「それにこの狭い空間で爆裂魔法を使ったんだ、巻き添えを喰らわないはずが無い」

 

「…」

 

「だから分かってるはずだ」

「…」

 

「分かってるだろう」

「…やめてください」

 

「いくらカズマでも」

「やめてください」

 

「生きている可能性など」

「やめてくださいッ」

 

「無いことぐらいッ」

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおッッッッ!!!!!」

 

「…めぐみん」

 

「わかってますよ分かってるに決まってるじゃないですかそんなことッッッ!!」

「でもそれを認められると思いますかッ!?そんなの認められるわけないじゃないですかッッッ!!!」

「なんでカズマが死ぬんですかッ!!なんでこんな無茶したんですかッ!!なんで魔王も消えて平和も戻ろうとしているのにカズマは戻らないんですかッッ!!!」

 

「…」

 

「諦められるわけないじゃないですか…カズマが生きている可能性を、諦められるわけないじゃないですか」

 

「…あぁ、そうだな」

 

「だから私は帰りません。捜索をやめるつもりもありません」

 

「だめだ、一旦帰るぞめぐみん」

 

「嫌です」

 

「めぐみん」

 

「…嫌です…」

 

「帰ろうめぐみん」

 

「…嫌ッ…です…ッ」

 

「帰るんだ。自分の身を犠牲にしてでも魔王を倒してくれた、カズマのためにも…帰るんだ」

 

 

 

「ッ…ふ…ッ…!」

「…う…ッ…ぅゔッ…うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ────────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日魔王は滅び、世界に平和が訪れた…

 

 

 

 

 

佐藤和真という男の消失とともに。

 

 

 




コメディとシリアスの織りなす感動(?)のストーリー、ここに開幕。
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