Muv-Luv ALTERNATIVE Toy Warrior 作:はんふんふ
1997年8月:BETAが直ぐそこまで来ていると言う噂から、町にいる人達は 1人また1人と避難を始めていた。
俺と父さん・タエ・くまさんのいつものメンバーで夕飯を食べている。
「町の人達も半分程避難してもうたな?」
「まぁ、しかたねぇだろ・・・。誰だって怖いさ。」
「そうやな・・・。皆が元気でいてくれた良いけど・・・。」
「大丈夫だよ。和真、避難先は日本らしいしあの国なら難民に酷い事はしないさ!」
「そうやな!俺達は、今できることをするだけやから!!」
「頼りにしてるよ?和真!」
「安心しろ、三郎!コイツ、ここ最近俺よりも強くなってやがるからな!」
「まだまだ、くまさんには教えて貰うことがたくさんあるけどね?」
「あたりめぇだ!!すべての事がお前に負けてしまったら、師匠の面目丸つぶれじゃねぇか!!」
俺達は、努めて明るくするようにしていた。
皆不安なのだ、避難する人達が溢れかえりどこも船の数が足りず、港では時たま暴動が起き軍が出ている程だ。
不安とは伝染する、俺達が不安の防波堤の変わりとなってせめて近隣の人達は守ろうとしていた。
1998年1月:
国連軍と大東亜連合軍と日本帝国軍の人達が町に来ては避難の準備が整っている早く避難しよう!と言ってくる、だが町に残っている人達はここで死にたいと頑なに拒否していた。
俺達は、そんな人達を説得するために残っている。
「BETAが目と鼻の先に来てるのに、何でや!!」
俺は、早く安全な場所に移ってほしい焦りから机を思い切り殴りつける。
そんな俺を見ていた父さんは、徐に立ち上がり言ってきた。
「───和真、君は避難しなさい・・・。」
「父さん・・・?どういうことや?」
俺は、お前だけでも逃げろと言う父さんに、怒りが湧いてくる。
「町の皆は、多分避難しないと思うんだ。生まれ故郷に骨を埋めたい・・・、その気持ちは僕にもわかるからね。」
「俺は、俺は嫌やぞ!避難するときは皆一緒にや!」
「和真・・・。」
「それに、父さんは残るつもりやろ?安心し!俺が皆を説得してみせるから!!」
俺が、そう言うと説得が出来ない事を悟った父さんは悲しそうなでもどこか誇らしそうに笑う。
「まったく・・・。頑固だね!誰に似たんだか」
「俺は、父さんの息子やで?似る相手は1人しかおらんやろ?」
「ふふっ!そうだね?」
「それじゃ、説得に行こうか?」
「おう!」
俺は、タエを抱き上げながら父さんと説得に向かう途中にある事を思い出し聞いてみた。
「そう言えば、軍の人になにを渡してたん?」
「手紙だよ。」
「手紙?誰宛に?」
「彩峰中将だよ」
「彩峰さんに何て送ったん?」
「僕達よりも他の地域の人を優先して避難させる事と、もし僕達の避難が間に合わない時は見捨てろとね・・・。」
「それって・・・。」
「あぁ、さっきも言った通りここに住む人達の意識は固い、だから無理に避難させて軍に損害を与えるような事はするなって釘を打っておいたのさ。」
「なんで?」
「彩峰はね、優しすぎる男なんだ・・・。彼は、救える人がいるなら救いに行く、そんな男だからね・・・。僕達が居ようが居まいが関係無く、使える力をすべて使ってここに居る人達を助けようとするはずだからね。でも、ここにいる人達は多分最後の最後まで避難しないと思うんだ。だから、来ても無駄だ!それよりも1人でも多くの人を救えって釘を打ったのさ!」
俺は、父さんの心情を察し努めて明るく話した。
「じゃあ、早いとこ皆説得しやんとな?」
「そうだね!頑張ろうか!!」
BETAが人を食べている・・・、それがすべて始まりだった。
どこの誰が言いだしたのか解らない、だがその言葉は瞬く間に町中に広がり今まで頑なに避難を拒んでいた者達は、我先にと軍が用意した避難施設に向かった。
俺と父さんは、1人で動く事が困難な人達を施設に運び、今施設の入り口にいる。
「父さん!くまさんはどこにおるんや!?」
「彼は脱走兵だからね、ここに来る訳には行かないのだろう・・・。大丈夫、彼は僕達とは別のルートで港に向かうらしいからね。」
「そんな無茶な!!」
「・・・僕も説得したのだが、聞いて貰えなかったんだ。すまない。」
「そんなん解ってるよ・・・。あの人は、頑固やけど強い人や無事に港まで来てくれる!」
「・・・和真?」
「なんや?」
「僕は、一端家に戻る事にするよ・・・。」
父さんが、そう言った時施設の外から銃声が聞こえた。
「な、なんだ!?」
「銃声!?」
「BETAだ!BETAが来た!!」
「ママ―――!!」
皆の不安がピークに達し、人の波が俺を襲う。
「と、父さん!!」
そして俺は父さんを見失った・・・。
施設の中に無理矢理押し込まれた俺は、人の波に呑まれながら父さんを探し周りを見ていた。
皆、恐怖に顔を歪め軍の人に助けを求めている。
―――少し前までは、笑顔で溢れていた人達が顔を絶望に染めている。
俺の、笑顔で溢れていた幸せな日々が一瞬で壊されたのを唯見ていることしかできなかった。
「父さん、どこにおんねん!!・・・まさか、ホンマに家に帰ったんか!?―――クソッ!!」
俺は必死に人の波を掻き分け入り口に向かう、やっとの思いで入り口に辿り着くと俺が初めて催眠術を使った子にぶつかった。
「ご、ごめん!!」
「ふぇ・・・。兄ちゃん?」
「大丈夫だった?」
「・・・うん。」
「お父さんとお母さんは?」
「解んない・・・。」
俺が辺りを見回すと、軍の人に何かを訴えているこの子の両親がいた。
俺は、手を引き両親の所に向かう。
「うちの子がいないんだ!」
「あの子を置いて避難なんてできません!」
俺は、向かう途中で立ち止まり隣で手を引いている子にタエを預ける。
「お願いがあるんだけど良いかい?」
「うん。」
「タエを一緒に連れて避難して欲しいんだ。・・・出来るかい?」
俺が問いかけると、その子は力強く返事をしてくれた。
「うん!」
俺はタエを預け、心配そうにこちらを見るタエの頭を撫でる。
「大丈夫、父さんは俺が連れてくるから・・・。」
俺は、そう言いその子を連れて未だに言い合っている軍の人と両親の下に向かう。
両親がこちらに気がつくと、こちらに走り寄り子供を母親が抱きしめた。
「今まで、どこにいたの!?心配したでしょ!!」
再開を喜び我が子を抱きしめる両親を見て、俺は安心し急いで入り口に向かおうとする。
その時、父親の方から声が掛かった。
「ありがとう、和真君!!・・・和真君どこに行くんだい?直ぐに避難をしないと。」
「父さんが家にいるんです。だから、俺は迎えに行きます!!」
そう言うと俺は、走って出て行く。
後ろから何か声が聞こえたが、これ以上時間を無駄にしたくなかった俺はすべて無視をして家に向かった。
「な、なんやこれ・・・。」
町は、まるで爆心地にでもなったかの様に家が燃えたり、押しつぶされたりしていた。
俺は、半ば放心状態になりながらも父さんの元に向かう。
すると、近くにあった家の中から瓦礫を押しのける音がした。
そして、そこから出てきたのは、頭がキノコのような化け物だった。
俺は、その余りの醜く有り得ない姿に驚いて尻もちをついてしまう。
その音に気が付いたのか、化け物がこちらに近づいて来る。
俺は、涙で顔を汚しながら足に力が入らず立ち上がることも出来ないでいた。
「ぁ、く、来るな!」
俺の、叫び声を聞いてもお構いなしに近づいて来る。
そいつが、口を開けて俺まで後数歩の距離に来た時に俺は怖さの余り目を瞑ってしまう。
すると打ち上げ花火を目の前で打ち上げた様な音が聞こえた。
「早く立ち上がれ!このボケが!!」
くまさんが俺のすぐ後ろでロケットランチャーを持って立っていた。
目の前に居た化け物は、グチャグチャに弾け飛んでいる。
俺は、少し返り血を浴びたが気にも止めずに話しかける。
「くまさん・・・。今までどこに?」
「あぁ?お前アホだろ!俺が、どうやって軍から脱走したと思ってんだよ!」
そう言うくまさんの後ろには、Jeepが止まっていた。
「おら、さっさと逃げるぞ!」
「待って!まだ父さんが家にいるんや!」
「なんだと!?それを早く言えアホ!・・・たく、ボディーガードなんて引き受けるんじゃなかったぜ!」
くまさんは、そう言いながらも俺を立たせ車に乗せ家に向かってくれた。
家に辿り着くと、家は炎に包まれる寸前であった。
「父さん!!」
俺は、家の中に飛び込み父さんの部屋がある2階に行くために階段を目指すがくまさんが着いてこないことに気が付き振り返る、そこには玄関を睨めつけるくまさんがいた。
「早く行け・・・。俺は、足止めしといてやるよ。」
「でも!それじゃあ、くまさんが!」
「いいから行け!!俺に仕事をさせない気か!?」
俺は、くまさんの気迫に飲み込まれてしまう。
「あぁ!そうだ。お前は免許皆伝だ!おめでとう。」
くまさんは、いつも通りに気ダルそうに言ってくる。
そして、肩から下げていたカバンを下し中からショットガンとマシンガンを取り出し俺にショットガンを投げ渡す。
「それは俺からの祝いの品だ!ナイフと一緒に大切にしろよ?」
「く、くまさん・・・。」
「いいから行けって・・・。早くしないとあいつ等が集まってくるぞ!」
俺は、それを聞いて気が付く。
ここで話している間に俺達は危険になって行っていることを・・・。
だから、早く父さんを連れて皆で逃げるために俺は部屋に向かうことにした。
「くまさん!直ぐに戻ってくるから、それまで死なんでや!俺はまだアンタに教わりたいことが一杯あるんや!」
俺は、泣きながら答える。
「俺が教えれることは、もう何もねぇ~よ。たく強くなりすぎだボケ!それと泣くな!」
「直ぐに戻ってくるから!」
俺は、そう言って走り出した。
「行ったか・・・」
玄関からは、一体の闘士級と二体の兵士級が入ってくる。
「お前等か・・・。覚えてるぜ!俺はな!」
そう言って銃口を闘士級に向ける。
「お前が、隊長の首を持って行った・・・。」
次に、兵士級を睨みながら背中から愛刀の大型のククリナイフを取り出す。その取り出す姿は、まるで神聖な儀式を始める祭司の様だ。
「お前が仲間を食らっていきやがった・・・。」
頭の中には、隊の皆の顔が出ては消えていく。
「俺は、仲間が全員お前等に殺されるのを見て、ビビッて戦場から逃げ出した臆病者だ。」
ナイフをゆっくりと握りなおす。
「でもな、ここでまた大切な仲間が出来ちまった・・・。」
憤怒に荒れ狂う心を落ち着かせ、新たな仲間の顔を思い浮かべる。
「アホな連中だけど、今の世界には必要な奴らだ・・・。」
身体の奥底から湧き出して来るのは、仲間を守る絶対的な心の力と仇を取れる喜びの憤怒の力。
「それに、俺の初めての弟子の門出だ・・・。テメェ等には、悪ぃが綺麗な花道を作るために・・・。」
今か今かと身体の中で暴れる2匹の獣を解き放つためにトリガーに指を掛ける。
「死んでくれや!」
そして、許しを得た獣は解き放たれた。
「はぁ・・・はぁ・・・父さん!!」
俺は、息が切れるのもお構いなしで扉を空け放つ。
すると、部屋の中には何か巨大な物がいた。
そいつは、さっきのキノコ頭の化け物でそいつが咥えているのが父さんの腕だと気が付いた時には俺は、そいつに向かって飛びかかっていた。
「ぁぁぁぁぁぁああああああああああああああ!!!!!」
腰からナイフを抜いて頭から叩き切り、怯んだところをショットガンで撃ちまくった。
実弾を撃つのは2度目だが、体が勝手に動く。
俺は、弾が無くなるまで我武者羅に撃ちまくった。
「はぁ・・・はぁ・・・」
冷静になってくると、目の前にはグチャグチャになった化け物が転がっていた。
俺は、それに目もくれず父さんを探す。
「父さん!父さん!!」
部屋の中を見回すと窓際の壁に片腕の無い父さんがいた。
「・・・父さん!」
俺は、容体を確かめるために駆け寄る。
「カズ・・・真?」
「そうやで!迎えに来たで!!さぁ、早く行こ!?」
俺が、父さんのまだある腕の方に肩を回して持ち上げようとするが、父さんはそれを拒んだ。
「な、何するんや!早く逃げやんとさっきの奴がまたくるで!?」
俺が連れ出そうとするが、父さんは力無く首を振る。
「僕はね。医者だよ?・・・自分がもう助からないのは知ってるさ。」
「そ、そないな事あらへん!!下の階に行けばまだ包帯とかあるやろ!?まだ助かる!やからッ!!」
俺の叫びを聞いても父さんは、首を横に振るだけ・・・。
その間にも、血は流れ落ちて行き、父さんの周りは血の池の様になっていく。
「和真、1つ頼まれてくれないかい?」
父さんは、話すこと自体が苦しいようで多くを話せないでいた。
俺は、父さんはもう助からない、だから今父さんのために出来る事をしようと自分に言い聞かす。
「後の事は頼んだよ?」
後の事を頼む・・・。つまり、父さんの願いを俺が引き継ぐと言う事だ。
「わかった・・・、任せといて。」
俺の了解を得て父さんは満足そうに微笑み、手元に落ちていたハンドガンを手にする。
キノコ頭と戦闘になった際に使おうとした物だろうと俺が考えていると、父さんはその銃口を自分の頭に突き付けた。
「な、何しとんねん!!」
俺が、止めさせようとするが父さんは泣き出しそうな声で俺に訴えかける。
「凄く痛いんだ・・・。それにあいつ等に食われながら死ぬのは、嫌なんだ・・・。」
それは、父さんの願いだ。
化け物に食われながら死ぬより、楽に自らの手で死ぬ。
父さんは、その選択をした。
俺は、そんな父さんを見ながら、逃げて来た人達に何て無責任なことを言っていたのだろうかと自己嫌悪した。
そして、父さんの夢を引き継いだ俺は、なさねばならない・・・。
人を救わねばならない。
そして、死に逝く者には安らぎを持って救わねばならない・・・。
俺は、嫌がる脳を無理やり心で押さえつけた。
俺は、父さんの手から銃を奪い投げ捨てる。
父さんは、俺の行動に驚いていた。
「和真・・・。何を・・・!?」
「父さん・・・。人殺しは、地獄に行ってまうねんで?」
俺は、出来るだけ優しく話しかける。
「地獄に行ってまうと、天国に行った人とは会うことができひん。」
子供に子守り歌を聞かせる様に優しく話しかける。
「父さんは、天国に会いたい人がおるやろ?その人に会うために・・・自殺なんてしたらあかん・・・。」
俺の言葉を聞いて父さんは今から俺がすることを理解したようだ。
けれど俺は、父さんには笑顔で居てほしいから・・・。
「やから、俺が父さんを会いたい人の所に連れて行ったる・・・。」
「和真・・・。まさか!?」
父さんは、感が良いなと笑いながら俺は父さんに催眠術を掛ける。
だが今までと違い、頭の中で波がまったく立たない湖に水滴を一滴垂らし波紋を立てるイメージが浮かぶ。
俺は、気にせずに催眠術を掛ける。
「父さん・・・。俺の目を見て?」
俺が、そう言うと父さんは反射的に俺の目を見てしまう。
止めようとしてくれたんやなと父さんの優しさを思いながら父さんを導いていく。
「父さん?会いたい人が天国におるやろ?もう目の前に来てくれてるで?」
俺が、そう言うと父さんの目から涙が溢れだす。
「ずっと・・・待っていてくれたのか?随分待たせたね、ごめんよ。そうだ、聞いてくれ息子が出来たんだ。」
俺は、母さんと話しているんだなと思いながらも誘導していく。
その時、頭の中の湖から腕が出てくる。
それは、神話に出てくるような幻想的な姿だった。
その腕は、真っ直ぐ伸びて行き、1つの小さな今にも消えてしまいそうな火の玉を優しく包んでいく。
「あぁ、他にも話したい事がたくさんあるんだ・・・。それは・・・ね・・・。」
そして、完全に火の玉を消してしまった。
腕が湖に戻ると、新たな滴が空から落ちてくる。
でもそれは、初めの綺麗な滴では無く真っ黒なそれこそ地獄の底の水の様な色だった。
父さんを見ると、父さんは笑顔のまま死んでいた。
俺は、その笑顔を見ながら1人静かに涙を流した。
再び父さんを見ると、父さんの胸ポケットに母さんと多恵が写っている写真があることに気が付く。
「これを、取にきたのか・・・。」
俺は、父さんを横に寝かせ写真を抱きしめる様にさせる。
「父さん・・・。天国に行けた?俺は、もうそっちに行かれへんけど多恵とタエは行けるから、それまで母さんと仲良くな?」
俺は、涙が流れ続けるのを気にもせずに別れの挨拶をしていく。
「それと、今まで・・・・お世話に・・・なりましたッ!」
最後の別れをすませ、俺はくまさんの元に向かう。
走って向かう最中俺の頭の中では、自分が何をしたのか心に刻み込む。
「俺は、最低な人間や!!」
流れる涙は哀しみと自己嫌悪の涙。
「俺は、父さんを殺した!!家族を殺した!!」
父さんの願いは自らの手で逝く事・・・。
俺は、それを自己満足のために邪魔をした。
「俺は・・・、俺は、殺したくなんてなかったのに―――。」
先程の行いを否定する言葉が自然と口からこぼれ出てしまう。
だが、心がそれを許さないと万力で俺の脳を締め上げる。
「俺は・・・、俺は!!」
痛みに耐えながらこの痛みを忘れる事は無いだろうと思った。
これは罰だと理解したから・・・。
俺は一階に走って向かう。
だが、一階には誰もいなかった。
あたり一面に血の跡があり、象の様な化け物一体とキノコ頭の化け物二体が死んでいた。
そして、その化け物達の死体の中にくまさんもいた。
俺は、くまさんの死を確認した後ネチャネチャと砂糖水の上を歩くような音を出しながら、ふらふらと外に出た。
外に出ると目の前にまた、キノコ頭の化け物が居た。
俺は、覚束ない足でそいつを殺すために歩く。
手に持つショットガンは既に弾切れだが、気付かずに銃口を化け物に向け引き金を引き続ける。
化け物が口を開け俺に飛びかかろうとした瞬間、そいつは地面と一緒に弾け飛んだ。
俺は、仇を取られた事から怒りに染まった目を弾け飛ばした奴の方に向ける。
そこには、アニメに出てくるようなロボットが居た。
おそらく、タエを預けた子の両親が俺が向かった事を軍の人に伝えてくれたのだろう。
俺が、睨みつけているとロボットの胸の部分が前に押し出され中から変な服を着た人が出てきた。
「あなた!死にたいの!?早くこっちに来なさい!!」
俺は、反射的にショットガンを上着の中に隠す。
軍の人はコックピットから昇降用のワイヤーを使って降りてきて俺を支え無理やりコックピットまで連れて行き俺を押し込んだ。
軍人の人は手早く俺に救命胴衣のような物を着けそれを、色々な所から出てきたベルトで蜘蛛の巣に捕らわれた蝶のように固定した。
「しっかり、捕まっていてよ?それと気分が悪くなったら直ぐに言ってね?」
軍の人の呼び駆けに俺は頷くと、ロボットが突然動きだす、どうやら歩いているようだ。
軍の人は、何やら連絡を取ったり時折操縦桿らしき物を忙しなく動かしている。
それだけで、化け物共をさっきみたいに殺しているのがわかる。
俺は、時折此方のことを心配してくれる声を無視して只々この力が欲しいと感じていた。
この力があれば、父さんやくまさんは死ぬことが無かった・・・。
そう考えると、どうしようもないくらいにこの力を欲してしまう。
どうすれば得る事ができるのか、そればかり考えていた。
何分か動いた後ロボットは動きを止めた。
「やっと、港に着いたわよ?これが、避難用の最後の船だから急ぎなさい。」
「あの・・・、ありがとうございました。」
「良いのよ!民間人を助けるのが、軍人だからね?ほらっ!さっさと降りて避難しなさい!」
俺は、急かされ満足に礼も言えないままロボットから降ろされた。
港にある俺が乗る船は、日本に最初に行った船だった。
船内には、所狭しに人がいた。
俺は、あの頃の疑問がなんだったのか理解する。
「この船は、荷物を運ぶのじゃなく人を運ぶための船だったんだな・・・。」
そのまま、俺の呟きは船の汽笛に掻き消され船は動きだした。
船内では、皆疲れた顔をしており中には泣いている者もいた。
そんな人達の中で俺は壁に背中を預け見上げる、そこには、所々汚れた天上しか無い。
その汚れを眺めていると、段々と世界地図のように見えてきてその汚れた箇所が、BETAに蹂躙された箇所とそうでない所を明確に分けている様に見えてくる。
俺は、今から汚れが無い綺麗な大地に立つことができると全身の力を抜いていく。
そう俺は、安心し喜んでいた。
助かった・・・と、そこで自分が何を考えているのか、理解できなくなる。
俺は、1人だけ助かって安心していたのか?
父さんを殺し、くまさんも見殺しにして、それでも俺が助かったのが嬉しかったのか?
俺は、そんな考えを一瞬でもしてしまった自分自身の醜さに心の底から絶望していく。
その感情が、俺を汚れが無い綺麗な天上を眺める事を許さないと首を無理やり垂れさせ床を見させる。
床には汚れしか無く綺麗な箇所などどこにも無かった。
それが、これからの世界を暗示しているようで、暗い感情が俺の心を支配していった。
その時、タエの鳴声が聞こえ顔を上げると俺の前にタエがいた。
どうやら、無事にあの家族と共に避難できていたようだ。
俺は、タエをそっと抱き上げ抱きしめる。
この温もりを手放したくない、俺を助けて欲しい、そう心の中で懺悔しながら抱きしめる。
「・・・ごめん、ごめんな・・・タエ、ごめんな・・・ッ。」
俺は、唯ひたすらに泣きながら謝り続けることしかできなかった。